バカと霊夢と幻想郷   作:こきゅー

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バカテスト 日本史


第七問:次の文章の()に当てはまる単語を入れなさい。

⑨:三権分立とは()()()の三つですが、()とは()に当てはまり、()は()、()は()となっている。


姫路「三権分立とは(行政)(立法)(司法)の三つですが、(行政)とは(内閣)に当てはまり、(司法)は(裁判)、(立法)は(国会)となっている」

教師のコメント:大変よくできました。


土屋「三権分立とは(ピー)(バーン)(ブシャア)の三つですが、(ピロピロ)とは(ガシャーン)に当てはまり、(アベシッ!)は(ピチューン)、(ブーン)は(バキューン!!)となっている。」

教師のコメント:それはもうやりました。


吉井「三権分立とは(行政)(司法)(漢方か憲法)の三つですが、(漢方)とは(薬局)に当てはまり、(憲法)は(第九条)、(僕)は(もう限界です!!)となっている。」

教師のコメント:最後まで諦めないでください。


ミミちゃん「三権分立とは(きゅ)(きゅき)(きゅきゅ)の三つですが、(きゅ)とは(っきゅ)に当てはまり、(きゅき)は(きゅきゅー)、(きゅきゅ)は(きゅ~~~~~ん)となっている。」

教師のコメント:可能性移動転送船にお帰りください。


ウチと亀と恩返し

レミリア・スカーレットと名乗る紅魔館のお嬢様と面会をし、お礼を述べた後、この館でメイドとして働くことになった。

 

「あら、お似合いですよ?」

 

ウチは早速休んでいた自分の部屋に戻り、咲夜が調達してくれたメイド服に着替えた。

スリーサイズは教えてないのに、なぜかウチのサイズにぴったしなメイド服だった。

 

「そ、そう?」

 

「えぇ、とっても」

 

咲夜がウチのメイド姿を褒めまくる所為で何だかテレてしまう。

まるで晴れの門出のような気分になってしまうウチに、咲夜が言いつける。

 

「では、早速ですが仕事をしていただけませんか?」

 

「分かったわ、それで何をすればいいの?」

 

「そうですね……」

 

咲夜は指をあごの下に置き、時々ウチをチラッとのぞいてはまた考え込んでいる。

そういえばメイドって具体的にはなんにも分かってなかったわね……。

やっぱ掃除とか、ご奉仕とかなのかしら。

 

「あ! もしかして……」

 

「ん? 何かやりたいことでもありますか?」

 

「いらっしゃいませ、ご主人様! とか言うの?」

 

やっぱメイドといえばこれよね!

 

「違います!!いや、間違ってもないかもですが……とにかく違います!」

 

あれ、違った? ウチが知ってるメイド情報ってこれくらいしかないんだけど。

いらっしゃいませ、ご主人様が違うと言われる原因……。

 

「あ、お嬢様だったわ」

 

「そこじゃないです!!」

 

………あれ?

 

「もう、いいですか? メイドとしてすることはですね………」

 

咲夜がメイドとしての心得を教えてくれた。

そういえばレミリアに代わって咲夜にこの世界について色々知りたかったけど、そのことを考える暇がなかった。

 

 

 

 

少女説明中...

 

 

 

 

「大体把握したわ!」

 

意外とこっちとそっちのメイドの常識ってずれてたみたいね……。

 

「島田さんには今から清掃をしてもらいたいのですが……」

 

掃除か……別に嫌いではないけど、ここって広いから大変そう……。

 

「お願いできますか?」

 

咲夜がフラットにお願いする。

ちょっと大変かも知れないけど、文句が言えた筋ではないしね。そんな丁寧にしなくてもウチの返事は決まっていた。

 

「勿論! 全然余裕よ!」

 

「助かります。ではこちらが清掃用具となります」

 

どこから取り出したか分かんないけどウチは咲夜から掃除用具を受け取った。

 

「それでは、よろしくお願いします。私は洗濯をしてきますので」

 

「分かったわ」

 

承諾すると咲夜さんは「では、私はこれで」と言い残し、この場から去って行った。

 

「さて、取り敢えず掃除しますか」

 

そういえば場所を言われてなかったけど、まぁ、全部掃除すればいっか。

 

 

 

帰国子女掃除中...

 

 

 

「ちょ、ちょっとタイム……」

 

流石に広すぎるわ……まだ半分も終わってないようね……あれから何時間掃除をしたのか分からないほど一生懸命やったんだ

 

けど。

 

「島田さん探しましたよ」

 

ふと気がつくと咲夜が私の前にいた。

あれ?さっきは人の気配なんてしなかったような……気のせいかしら。

 

「そろそろお昼にしませんか? お嬢様が一緒に食事を取りたいと仰っています」

 

「レミ……お嬢様が? 分かったわ」

 

危ない危ない、本音が思わずでるとこだったわ。

あの気高いお嬢様がウチと同じ部屋、同じテーブルで食事……以外と優しい一面もあるのかもね。

初めて見た時はウチを見下しているような、まるで新しい玩具が手に入ったかのような、そんな目だった。

まぁ、もう一度会って見れば分かるわね……。

 

ウチは掃除用具を「お願いね」と、咲夜に任せると一瞬で掃除用具を片づけた後、お嬢様のいるロビーに案内された。

 

たまに思うんだけど咲夜って普通の人間じゃない気がするのよね。

パッと現れたり、消えたり、どこから出してるのか謎だわ。

 

「待っていたわ」

 

ロビーの扉を開けるとそこには長いテーブルの奥にちょこんとレミリアが座っていた。

やっぱりちっさいなあ。

 

「どこでもいいから適当に座りなさい」

 

こんなに椅子が多いからどこに座ろうか迷っていたところに言われてしまった。

 

周りには誰もいない。

この場にいるのはウチを含めて咲夜とレミリアだけだった。

 

取り合えず、レミリアの近くに座りましょう。

 

「うわ……なにこれ!」

 

席に着くと真っ白なテーブルクロスの上に豪華な料理が並んでいた。

まるでどこかの高級料理店を醸し出しているようだわ!

ナイフとフォークも綺麗に拭かれていて、まるで鏡みたいだし。

 

「これ、誰が作ったの?」

 

「この料理は全て咲夜が作ったのよ」

 

レミリアが自慢そうに答える。

あんたは作ってないのになんでそうドヤ顔なのよ……。

いや、確かにあんたのメイドすごいけど……って、ちょっと待って、これ……。

 

「咲夜が……全部一人で?」

 

「はい、お口に合うかどうか……」

 

いやいや、まず量を気にしようよ! 明らかにお嬢様一人食べる量じゃないから!

 

試しにフォークとナイフを手に取り目の前に置かれている料理を一口食べてみる。

こうして持つと、なんだかドイツで暮らしてた日々を思い出すわね……。

 

 

パクッ

 

 

「――ッ! 美味しい!!」

 

なにこれ! 今まで食べたことがないくらい美味しいわ!!

 

「良かった……人肉を変えてみたのですが……」

 

ん? 今咲夜がなにか言ったような……気のせいね。

 

「あら咲夜、私の料理にも入ってないの?」

 

「いえ、お嬢様にはちゃんと人肉を使用しました」

 

………聞かなかったことにしよう。

 

「御馳走様」

 

それからウチはレミリアに話を聞くことをうっかり忘れ、料理を口の中に入れることで頭がいっぱいになってしまっていた。

レミリアはすっかり食べ終えたようだった。

 

「あら、お嬢様、デザートは……」

 

咲夜がレミリアに問いかける。

いつも食べてるのかな?

 

「………今日はいいわ」

 

「分かりました」

 

レミリアが上品に口の周りを綺麗に拭く。

 

「……………」

 

なぜかウチは、レミリアよりも必要以上にそれを見つめる咲夜に目がいってしまった。

よっぽどレミリアのことが好きなのかしら。

 

「………咲夜、見すぎ」

 

「し、失礼しました!」

 

レミリアにバレると咲夜は慌てて視線を外した。

 

「それで、なぜアナタを食事に誘ったか分かってるわよね?」

 

レミリアと咲夜の会話に夢中になっていたウチは不意に向けられた話についていけず聞き返してしまう。

慌てた咲夜って小動物みたいで、あまり見ない一面だったから。

 

「え? なに……じゃなかった。なんですか?」

 

「………あー、やっぱ私が説明した方がいいわね」

 

レミリアの言ってることをウチはよく理解できないまま話を聞き続ける。

 

「単刀直入に言うけど、アナタはここに幻想郷について尋ねてきた……違う?」

 

レミリアの口から出てきた言葉に驚きを隠せなかった。

 

「な、なんで知ってるのよ……」

 

「簡単なことよ。幻想郷に住んでいる一部の人間、妖怪はなにかしらの能力を持っているの。私はその能力を使ってあなたの予想を言っただけ。私の能力は『運命を操る程度の能力』よ。覚えておきなさい」

 

「因みに私は『時を操る程度の能力』です」

 

「……………」

 

頭が破裂しそう……。

え、まって、ここには人間以外もいるってこと!?

あ、そっか、レミリアの後ろに羽があるのは妖怪だからか。

 

「ちなみに言っとくけど、そんのそこらの雑魚と一緒にしないでよね。私は誇り高き吸血鬼、覚えておきなさい」

 

む、子供の癖に偉そうに……だけどその時のレミリアの表情を見ているとまるで蛇に睨まれた蛙のように動かなくなってしまった。

今襲われたら確実に生き血を全部吸われてるわ……。

 

「お嬢様、あんまり恐がらせないであげてください。それに、お嬢様は人間の血は直接吸わないのでご安心ください」

 

「私は小食派なのよ」

 

「それで、ウチはいつになったら元の世界に帰れるの?」

 

ウチが最も聞きたく、知りたい情報。

このために食事に誘われてあげたのよ! 教えてもらうまでここから離れない!

 

「そんなにここは居心地が悪いかしら?」

 

蔑みながら誇り高きレミリアは質問を質問で返してくる。

 

「居心地とかどーでもいいの! ウチは元の世界に帰りたいだけ!」

 

そんなムカつく態度につい鋭く言葉を放ってしまう。

 

「……………」

 

咲夜はウチとレミリアをただ見守るだけ。

だけど、ウチがなにかしたら動くでしょうね……。

 

「外の世界にねぇ……」

 

レミリアが人差し指をあごの下に置いている。

考えている素振りなのかしら……これで気が変わってくれると嬉しいんだけど。

 

 

バリーン!!

 

 

「「「!!?」」」

 

突然ロビーの窓硝子が割れ、一瞬の静寂がこの部屋全体を包み込む。

ウチから見て真正面のガラスが見事に破片だけとなっていた。

 

「どうやら、鼠が迷い込んだようですね……大きな黒い鼠が」

 

咲夜がどこから出したか分からないナイフの刃先を窓を割ってこの館に侵入したとされる犯人に向けた。

 

「まあまあ、そんなに怒らないでくださいよ~」

 

そこにいたのはレミリアより大きく黒い羽をした女の子がいた。

手にはメモ帳にペンを持っている。

 

「えっと……あ、いた!」

 

その女の子がウチを見つけると猛スピードでこっちにやってきた。

 

「ッ!」

 

「あ、すみません、速すぎましたね」

 

気がつけば眼と鼻の先にまで彼女は迫っていた。

人並み外れた動きにウチは瞬時にコイツは妖怪だと理解する。

 

「ねえ文、私はアナタとお話がしたいんだけど」

 

うわー咲夜がめっちゃ妖怪を睨んでる。

相当キレたみたいね。

 

「いや、だからそれはあとで――」

 

「一回ピチュれ」

 

 

シュッ……(咲夜がナイフを投げる音)

 

 

「あ、ヤバ――」

 

 

ピチューン

 

 

「いやぁ申し遅れました。私文々。新聞を書いてます射命丸 文と申します」

 

「……あんた、大丈夫だったの?」

 

自己紹介されても、この新聞記者、さっきナイフ刺さったんじゃなかったの?

 

「えぇ、このくらい慣れてます」

 

「このくらいって、あんた新聞記者なのに無茶しすぎじゃないの? 硝子から侵入するなんてどこの特撮?」

 

「あやや……珍しく門番が起きていたので仕方なかったんですよ」

 

門番? ここにまだ人、もしくは妖怪がいたのね。

 

「美鈴が!?」

 

横から咲夜が声を荒く驚き叫んだ。

 

「バカな!!奴は二十四時間どこでも、どんな体制でも熟睡可能な妖怪だぞ!?」

 

次にレミリアも同じテンションで悪乗りをしている。

完全にその人をバカにしてるわね……この二人。

あ、妖怪か……人間だったら仲良くなれるかと思ったのに、残念。

でも、どんな妖怪なんだろ……確かその人がウチをここまで連れてきてくれたみたいだけど。

 

「えぇ、だからインタビューをしたんですが断られました」

 

「美鈴もあんたの取材には嫌がるのね……殆ど寝てるところしか新聞に写さない所為ね」

 

「だって、寝てないと意味ないじゃないですか」

 

「なんの為の門番よ……」

 

咲夜が深く溜め息をする。苦労でもさせられているのかな。

会話についていけないウチも咲夜と同じ行為をする。

 

「取り敢えず、硝子は修理しておくわ。その代わり、記事は印象良く頼むわよ」

 

「任せてくださいパッ――」

 

「死ねやゴラァ!」

 

「咲夜……そんな汚い言葉を使わないで」

 

「ッハ! 申し訳ございませんお嬢様!」

 

え、一瞬咲夜の意識がなかったように見えたんだけど……ウチがぼさっとしてる間に何が……。

 

「私の残機は残り一ですよ……」

 

「余計なことを言うな、次はないと思え」

 

「ほんとに次がないから困ります……さて」

 

咲夜と話を着けた新聞記者がこっちに顔を向ける。

 

「アナタは島田 美波さんですよね?」

 

「……なんでウチの名前知ってるのよ」

 

「私たちにとって外来人は珍しいですから。って咲夜さん! 幻想郷について説明はまだだったんですか?」

 

「お嬢様自ら説明しようとしたらあんたがやってきたんでしょうが」

 

「あやぁ、私ってばとんだミスを……」

 

「そうだわ、あんたでもいいから幻想郷から帰る方法教えてよ!」

 

このさい誰でもいいわ! ウチは若干ムキになりながら新聞記者に聞いた。

 

「モケーレムベンベったら、またカリスマぶって意地悪してたんですね~」

 

モケーレムベンベ?

え、なにそれ。

 

「うー?」

 

「お嬢様危ない!」

 

「――ッハ!」

 

「……………」

 

一体なにが起きたの……人間のウチには辛過ぎる。

 

「いいんですよ、カリスマブレイクしたって……あやあやあや」

 

「……ぅー」

 

「天狗! これ以上お嬢様のカリスマを冒す真似はよしなさい!!」

 

そう言ってるけどなんか、咲夜の鼻からいつも土屋が出してる液体が只漏れしてるんだけど。

 

「咲夜さんだって、本当はカリスマに溢れるお嬢様じゃなくて、いつものお嬢様に戻ってほしいんじゃないんですかぁ?」

 

何だろう、もしアイツがアキなら関節を一つもっていってやりたいくらいムカつくわ。

 

「う……」

 

ていうかそろそろ誰か輸血の準備を!

咲夜が倒れちゃうじゃない!!

 

あ、あれ? なんだかレミリアの様子が……。

 

「レミリアは ちびレミィに しんかした」

 

それどこのゲームよ……。

ていうか名前からして退化してそうなんだけど。

 

「うーうー☆」

 

「お嬢様……」

 

「あや、これは世にも平凡的なカリスマブレイクじゃあーりませんか」

 

「誰の所為よ(ポタポタ)」

 

ヤバい! このままじゃほんとに――

 

「うー?」

 

「お嬢様、下から私を見上げないで……」

 

 

ブシャアーッ!

 

 

「さ、咲夜!!」

 

赤い液体を鼻から円を描くかのような曲線で吹き出した瀟洒な彼女は、そのまま地面に倒れてしまった。

危ない、もう少しで純白なメイド服がこの館みたいになるところだった。

 

「オー直角からの見事な倒れっぷり。しっかりそのお姿カメラに抑えました!」

 

もう! 誰かこの現場を何とかしてーッ!

 

「あややややや!!」

 

「ちょっと静かにしてよ!」

 

「………う……」

 

あ、咲夜! まだ意識はあったのね!

 

「………お、お嬢様は……」

 

「え、なに!?」

 

なにか伝えようとしている……?

 

「……お嬢様は……島田さんと……」

 

そうウチに伝えると咲夜は静かに息を引き取った。

 

「咲夜ァァアーッッ!!!」

 

その時の彼女の顔は、なぜか満面の笑みだった。

 

 

――――☆――――☆――――☆

 

 

「すみません、私としたことが……」

 

咲夜はその後窓硝子が割れた音に誘われて来た妖精メイドたちに運ばれて行ったわ。

それにウチも同伴することにした。

 

「いいのよ、気にしないで、慣れてるから」

 

鼻血は何回も出す人がいるからね……。

今は咲夜の輸血が終わり、安静にしてなきゃダメな状態。

 

「慣れてる……?」

 

「あ、気にしないで、こっちの話よ」

 

「そうですか……」

 

ていうかなんでウチが看病しなきゃいけないのよ! もっと適任な人がいるじゃないの!

 

「すみません、お嬢様のことを悪く言わないであげてください」

 

………今、咲夜、ウチの思ってることが分かったの?

 

「いえ、なんとなくそんな顔をしてらしたので」

 

やっぱり読んでいるじゃない! え、なにこのメイド怖い!

 

「………?」

 

なんでそこは分からないのよ!

 

ウチと咲夜しかいないこの狭い部屋のドアを軽く叩く音がする。

 

「失礼するわ」

 

「あんたは……」

 

そこにいたのはあの魔女だった。

 

「そう警戒しないでよ、島田さんにはなんの悪意や敵意はないんだから」

 

「…………」

 

いまいち信用できない……この魔女、弾幕とか言って何かをウチに飛ばしてきたし。

 

「島田さん、パチュリー様はお嬢様のご友人です」

 

「え、そうなの?」

 

あの吸血鬼と魔女が……ねぇ。

 

「ちなみに、パチュリー様は島田さんがこの館に運ばれてきてから看病をしたり、怪我を治したりしてくださったんですよ?

 

 

「あ、こら」

 

そこにいた魔女はさっきのような冷たい顔をしていなくて、テレている表情をしている魔女がいた。

 

「え? それほんとなの?」

 

「た、確かに怪我とか治してあげたわ。でも看病は咲夜もしたんだから、私だけじゃどうにもならなかったわ」

 

「パチュリー様、もったいなきお言葉です」

 

「…………」

 

この魔女……パチュリーって言うんだっけ。

ウチが考えすぎてたのかもしれない。

魔女という肩書の所為で怪しく思いこんでいたのかも……。

過信しすぎた所為でもあるわね……ウチはちょっとだけ勇気を出してみた。

 

「ね、ねぇ……魔女さん?」

 

「ん?」

 

な、なんて呼べばいいのか分からずつい「魔女さん」なんて言ってしまった!

 

せめて名前よね、確か本名はパチュリー・ノーレッジ……ここは無難にパチュリーで……。

 

「……ごめんなさい、急用を思い出したわ」

 

「え……急用?」

 

急用って……なんなのよ。

 

「そうだわ、折角だから図書館に遊びに来ない?」

 

「図書館なんてあった?」

 

ウチが掃除した中にはそんなものなかったけど……。

 

「この館は地下があるのよ。私はそこである物を研究しているの」

 

研究……特に興味も湧かないなぁ。

でも、またメイドとして掃除させられるよりそっちの方が楽しそう。

それに、こっから出る方法とか載ってる本があるかもしれないし。

 

「その図書館に、ウチなんかがお邪魔していいんですか? 研究の最中なのに」

 

「ええ、構わないわ」

 

その返事を聞いてウチは笑みがこぼれるように出てしまった。

ふと目を横に向けると咲夜の姿が映った。

そうだ、病人を残していって……大丈夫かな?

 

「私のことなら問題ないですよ。それに、これは忠誠心なんですから」

 

鼻血をどうやったらそんな風に言えるのかしら。

咲夜の症状に気を使い、地下へと向かった。

 

「ここが図書館よ」

 

咲夜のことは心配いらないようだし、ウチは心のモヤモヤを残しながらパチュリーの言う図書館へとやってきた。

 

「どうかしら?」

 

「すごいわ……こんなに沢山本があるなんて!」

 

予想してたのより断然凄いわ! どこまで目をやっても本や棚ばかり。

一人でふらっと奥にいったら迷子になっちゃいそう。

 

「……といっても島田さんには読めないかも知れないけど」

 

「え?」

 

パチュリーの言ったことを理解できなかった。

 

「試しに一冊読んでみて」

 

ウチは言われるがままそこらへんの本を手に取り中身を見てみる。

 

「………ん?」

 

あれ? この本白紙じゃない!

何ページ捲っても白紙が続いて……どういうこと?

 

「ここにある本は普通の人間には読めないの。魔力やなにか、特別な力を持っていないと」

 

「そ、そうなの?」

 

「でも大丈夫、今からちょっと実験に手伝って貰えればきっと読めるようになるわ」

 

そう、実はパチュリーはウチの持っているある物について興味があるらしくここに呼んだらしい。

 

「実験ってなにするの?」

 

「……協力してくれるの? こんな私にも、力を貸してくれるの?」

 

え? な、なんか雰囲気変わった……?

 

「う、ウチにできる事なら……」

 

「ありがとう」

 

その時のパチュリーの顔は今にも泣きそうな顔をしていた。

そうだわ、このタイミングよ!

 

「ねぇ魔女さん」

 

「なにかしら」

 

「魔女さんのことをパチュリーって呼んでいい?」

 

「もちろんよ! あぁ、こんな気持ちになれたのは何時以来かしら……」

 

さっきまでの泣き顔はまるで清々しいほどの青空のように快晴へと変化していた。

 

「じゃあ早速、行きましょ、パチュリー!」

 

「えぇ……」

 

(体が軽い……こんな幸せな気持ちで人間と会話するなんて初めて)

 

 

 

 

 

「もうなにも怖くない」

 

 

「こんな気持ち初めてと言ったな……あれは嘘だ」

 

「………?」

 

え、なにが起きたのか分からない。

 

「さて、実験準備をするから少し待っててくれる? こあ、手伝って頂戴」

 

パチュリーに呼ばれふわふわとやってきたのはこれまた黒い羽をぱたぱたさせた女の子がいくつか本を重ねて持ってきている

 

あ、なんかかわいいかも……。

 

「分かりました~」

 

こあと呼ばれたその女の子(多分妖怪)はパチュリーと図書館内のどこかへと向かっていった。

 

「………といっても」

 

本が読めない図書館でなにをして暇をつぶせばいいのかしら。

まぁ時間はとらせないって言ってるし、適当に見て回ろうかな。

 

それにしても本が多いわね……どこかウチにも読める本はないの?

 

「出来たわ!」

 

どこからかパチュリーの声が図書館内に響き渡る。

準備が整ったようね……。

 

「では、島田様をパチュリー様の元にご案内致します。因みに私、小悪魔と申します」

 

「こあ……くま?」

 

小悪魔って、あの乱れてる……アレ?

でも、全然オーラというかそんな感じじゃない。

見た目的にただの可愛い少女にしか……。

 

「小悪魔……さん?」

 

「はい、そうです」

 

「あなたも妖怪なの?」

 

「その通りです」

 

「名前が小悪魔って変じゃない?」

 

「…………」

 

え、そこ無言!?

 

「では、行きましょう」

 

しかも軽くスルーしてるし」

 

「………名前ほしぃな」

 

ウチに背を向けた後、小悪魔からなにか呟いているような……うまく聞き取れないわ。

というか……いつから居たんだろう、あの娘。

 

「パチュリー様、お連れしました」

 

「ご苦労様」

 

小悪魔に連れて来てもらったところはパチュリーを中心に床に巨大な模様が描かれていた。

 

「これは簡単に言うと魔法陣よ」

 

「魔法陣?」

 

またファンタジーなものが出てきたわね……。

 

「島田さん」

 

「なにかしら」

 

パチュリーが面と面を合わせて話す。

 

「簡単に説明すると、アナタたちは特別な式神を仕える能力があると聞いたわ」

 

「……………ふぇ?」

 

頭から煙が出そう……ショートしてるのかな。

 

「……今のアナタの顔、すごく⑨っぽいわ」

 

「………………きゅー?」

 

「ふふ、ごめんなさい。では本題に入りましょうか」

 

ッハ! ウチってば今までなにを!

 

「えーと、私はその式神をこの目で見てみたいの。しかし、アナタたちは限定された空間でしか使えない……そこで、この魔

 

法陣の上で試獣召喚(サモン)って言ってみてくれないかしら」

 

ん? それっていつもやってるアレかな?

だったら簡単ね、実験っていうから少し怖かったりしたけどもう大丈夫ね。

 

「分かったわ」

 

ウチはゆっくりと魔法陣の中心へと歩き始める。

たいして距離はなく、あっと言う間に魔法陣の真上へと到着した。

 

「それじゃ、行くわよ!」

 

こうするのも何だか久し振りな気がする。

いつもの日常に早く戻れるように、ウチも頑張らなくっちゃ!

 

「試獣召喚(サモン)ッ!」

 

ぽんっと小さな煙を立て、中からなにやら人形のようなものが見えている。

間違いない、いつも試召戦争で見慣れているウチの召喚獣だわ。

 

「これがあなたたちの世界の式神、『召喚獣』ね」

 

見た目は犬のような容姿をしているが人型である。

そこには軍服を着ていて、片手にランスを装備しているのが美波の召喚獣であることを差していた。

あれ、でも確か軍服の時は武器はサーベルじゃなかったっけ……まぁいいか。

 

「ちょっと動かしてみてくれない?」

 

パチュリーに言われ、ウチはちょちょいと動かしてみせる。

うん、いつもしていることだわ。

だけど一つだけ絶対に違うと言える点がある。

それはウチの点数の表示がされていないことだ。

 

「まだ完全なものではないんだけど、島田さん、なにかあれば言ってちょうだい」

 

「そうね……特にないけど……」

 

点数や武器と服装とかはどうでもいいかな。

 

『ッ!』

 

 

こてっ

 

 

突然美波の召喚獣が尻餅をついてしまった。

 

「あ、あれ?」

 

「なにかあった?」

 

「いつもなら壁とか、障害物とかすり抜けられるんだけど……」

 

可笑しいわね……。

 

「完全に具現化してしまったのかしら……」

 

「ちょっと試してみるわね」

 

どうやら物に触れられるようになったウチの召喚獣。

確か召喚獣の力は人の数倍だったはず……試しに本棚を持ち上げてみよう。

 

『っん!』

 

「「ッ!!」」

 

「あ……」

 

簡単に持ち上がっちゃった。これって……つまりアキの召喚獣の仕様と同じってこと!?

 

『ふにゃっ!』

 

 

こてっ

 

 

あ、ウチの召喚獣がこけちゃった。

でも、アキと全く同じならフィードバックで痛みが来るはず……ん~痛くないわね。

 

「あの本棚を軽々と……しかも主人の思い通りに動くなんて、素晴らしいわ」

 

本棚のてっぺんは思わず見上げてしまうくらい大きいものだった。

それにギッシリと本がはめ込まれているのだから相当重くなっている。

それを召喚獣は易々と持ち上げたのだ。

小柄な召喚獣が主の思い通りに動く上に、物を軽々と持ち運べる能力等を含め、パチュリーは感動を隠せないようだ。

 

「そ、そうなのかな……」

 

絶賛され、思わずほほを赤らめる。

でも、壁がすりぬけられないってことは、アキの召喚獣と同じになったってことなのよね。

痛みは感じないけれど、アキと同じか……そう思うと自然に笑みがこぼれて出る。

だって、これでアキを二人で殴ることが出来そうなんだもん(はぁと

 

「兎に角、あなたたちのとても興味深いデータを得ることが出来た。他の人たちのも是非見てみたいわ」

 

「他のって……何人かこっちに来てるの?」

 

アキや瑞希以外にもここに連れてこられた人がいるのかな?

 

「結構連れてこられたみたいよ。詳細は分からないけど」

 

そっか……取り合えず、ウチと瑞希とアキは確実ね!

アキならウチたちを助けに絶対来てくれるはずだもん。

 

……もしかしたらアキが助けられる側かもしれないけど。

もしそうだとして助けてあげたら私の永遠の奴隷にしてあげよっかな。

アキの財布がすっからかんになるまでクレープとかウチの為に全部費やせてあげよっと。

 

「あの人は一人でなにをぶつぶつ言ってるんですか?」

 

「さぁ、私にも分からないわ。けど、今は放っておきましょう」

 

「分かりました!」

 

パチュリーと小悪魔の声を横に、ウチは完全に空想の世界に入りこんでしまった。

 

「あ、あの~島田さん?」

 

「そしたらウチがアキにこう言うの!『アキの腕を頂戴!』って」

 

「ひぃぃ! パチュリー様! 怖いです!」

 

「あー、島田さん?」

 

「えへへ……ん? なに?」

 

「「……………」」

 

え、なんでパチュリーたちはウチのことを冷たい凍りついたような目で見てるの?

 

「兎に角、この魔法陣に不備があったようなので、また後日お願いできるかしら?」

 

「い、いえ! これで完璧です!!どこも悪くないです!」

 

「え、でも召喚獣が実体――」

 

「大・丈・夫・です!!!」

 

「は、はぁ……」

 

今だけしか味わえないこの優越感を壊してなるもんですか!

 

「じゃあ明日まで待ってくれないかしら。あなた達の世界にもある物に似せて私が作ってプレゼントしたい物があるの」

 

「プレゼント?」

 

「期待して待ってて、うまく行けばきっと役に立てる物よ」

 

「うん、なら期待して待ってるわ」

 

「それじゃ、咲夜の看病の途中だったわよね、ありがと」

 

「お礼言われるようなことしてないわ」

 

ただ召喚獣を出しただけだし。

 

「そう……」

 

「……………」

 

しばしの間、図書館内に微かに流れる空気が伝わってくる。

 

「ん? どうかしたの?」

 

「あ、いや、その……出入り口が分かんなくて」

 

「それならこあに案内させるわ」

 

「私にお任せください!」

 

パチュリーの使い魔として働いている小悪魔。

こあはご主人様に言われ、胸を手でドンと叩き、自慢げな顔をする。

 

「ありがと! 助かったわ!」

 

ここの図書館はほんといろんな本があるから、今度は瑞希と一緒に行こっかな。

そんなことを考えながら、ウチは図書館を出ることにしたのだった。

 

「では、咲夜さんを宜しくお願いします」

 

図書館の出入り口を出たところで、小悪魔が頭を下げる。

 

「任せておきなさい!」

 

まぁもうあの人なら回復しててもおかしくない気がするんだけどなぁ。

 

「では、私はこれで」

 

「うん、またね」

 

そう言うと小悪魔は軽く礼をし、図書館の出入り口をバタンと閉めた。

 

「さて、咲夜は今頃どうしてるかな……」

 

ウチはゆっくりとのんびり咲夜のいる部屋へと足を運ばせた。

 

 

 

――――☆――――☆――――☆

 

「やっぱ地上の方が明るいわー……紅いけど」

 

さて、あとは咲夜の部屋へと向かうだけね。

 

「あ、よかったぁ……目が覚めたんですね!」

 

足を動かし始めた矢先、後ろからふとそんな声が耳に入ってきた。

 

「えっと……」

 

「あ、私は怪しい者ではありません! 味方です!」

 

ん~……緑色のチャイナ服を着ていて、帽子に「龍」って載ってる。

身長はかなりデカい………し………

 

「ハァ……」

 

「え!?どうかされましたか!?」

 

「何でもないわ……」

 

ただ二つの大きな膨らみが見えただけだから……。

 

「だ、大丈夫ですか? まだ疲れているのでは」

 

「いいの……あんたが動くと視界に入ってしまうから」

 

「えぇ!?」

 

あ、初対面でなにを言ってるんだろう……。

胸がデカいからって、流石に失礼だったわね。

 

「ご、ゴメンナサイ……私って、邪魔でしたか?」

 

「あー! 謝らなくていい! いいから!」

 

そんなに気を使わなくてもいいのに……。

 

「そうですか? よかった……私、紅 美鈴と言います」

 

ホ、ホン? メイリン?

 

「……ウチ、中国語話せないけどいいかな?」

 

「私は妖怪ですので、ご安心ください」

 

いやいや、妖怪は人間からみて安心できるものじゃない気がするから。

咲夜たちが言ってた妖怪ってこの人みたいね。

 

「ウチは島田 美波、美波でいいわ」

 

「では、美波……ん~……さん付けじゃだめですか?」

 

「いいわよ、ウチはなんて呼べばい――」

 

「『メイリン』でよろしくお願いします!!(サッ)」

 

「わ、分かったわ……」

 

土下座してまで美鈴っていってほしいの? ……小悪魔みたいなもんかな。

 

「あなたがウチを助けてくれたのよね、ありがと」

 

「いえいえ、門番として困っている方を助けるのは当然の結果ですから!」

 

門番って、そういう仕事だったっけ?

でも感謝したいのは事実、ウチはあの人にどこかに飛ばされて、意識を失ったところを美鈴に助けられたのだから。

 

「ん? その右手にあるのはなに?」

 

ウチはふと美鈴が持っていたやや大きめの謎の塊が気になった。

 

「あ、これですか? どうやらチルノたちが面白半分に凍らせて遊んでたみたいなんですが飽きちゃって……私にくれたんで

 

すよ」

 

「へぇ……そう」

 

また誰かわかんない人が出てきたわね……凍らせてってとこがまた妖怪地味てるわね。

ウチは氷の塊を垣間見た。

 

「って! それなにを凍らせてるの!?」

 

「え、多分亀だと思います」

 

だよね! 亀だよね! 生き物だよね!!

凍らせちゃダメじゃない! 死んだらどうするの!?

 

「早く溶かさないと!」

 

「氷を……ですか?」

 

「そうよ!」

 

でも、この亀かなりデカいわね……浦島太郎とかに出てきそうだけど……今はそんなことを考えている場合じゃないわ!

 

「何とかしないと……でもどうやって」

 

下手に溶かしたり、壊したりしたら中にいる亀がバラバラになっちゃうし……。

 

「あの~……私がどうにかしましょうか?」

 

「どうにかって……どうするの?」

 

「私が中にいる亀を無事に氷を割って見せます!」

 

「不安だけど……頼むわ」

 

「お任せ下さい!」

 

そう言うと美鈴は氷をそっと床に置くと集中力を高め始めた。

 

「……………」

 

沈黙が紅魔館全体に静かに響き渡る。

ウチは思わず息を呑みこむ。

 

「……………」

 

この人……体から溢れ出る気迫が物凄い量だわ!

気迫だけで人を圧倒してしまいそうな……そんな気迫。

これなら行ける!

 

「……………」

 

「……………」

 

「……………zzz」

 

「寝るなァァーー!!」

 

「み、美波さん!?どうしたんですか! 私の上で何を……」

 

え? あれ? ウチの関節技が効いてないの?

色々考えている内に美鈴がさっとウチから離れ、口が開く。

 

「あ、すみません私また寝てしまってたようで……起こしてくれたんですね」

 

「え、えぇ……そうよ」

 

間違ってはいない、からいっか。

でも、普通関節を曲げられたら誰だって痛がって起きると思ったんだけど……。

 

つまり、この人になら全力でやってもいいってことね! アキの為に業のキレを磨いておかなくちゃ!

 

「では、改めて……」

 

美鈴がもう一回気合いを込める。

ゆっくりと息を吸い、ゆっくりと息を吐く。

これを繰り返し、集中力を再び高めているのだ。

 

「………ッハ!」

 

美鈴が右手を拳で勢いよく氷目掛けて割った。

 

「おおぉ!」

 

結果、奇麗に氷を割ることができた。

 

 

真っ二つに。

 

 

「ちょっとぉぉお!!」

 

「あ……」

 

ど、どうすんのこれ!?

結局亀死なせちゃったの!?

 

「やっちゃったぜ☆」

 

「なにいってんのよ!」

 

この中国モドキどうかしてるんじゃない!?

 

「大丈夫ですよ、亀ですから」

 

「亀でも無理なことはあるわよ!」

 

真っ二つになった亀を見て、美鈴にツッコミを入れる。

この亀……もう助からないのかしら。

 

「亀……咲夜さんに料理してもらいたかったのになぁ……」

 

「結局殺す気満々だったの!?」

 

もうこの人疲れる……。

でも、ウチは今笑顔で過ごしてるのかも……なんだかちょっと楽しい気分だわ、亀には申し訳ないけどね。

 

「やれやれ……勝手に殺さないでくださいよ」

 

「「!!!?」」

 

い、今、どこから声が!?

かなり年老いた感じの弱々しい声だったけど。

 

「ここ、ここですじゃ」

 

声に導かれ視線の先はウチたちの今立っている床へと向いた。

そこには先ほど奇麗に割れた氷の中から亀が無事に生きているのである。

 

「あ、あれ、あんた……さっき美鈴に殺されたんじゃ……」

 

「人聞きの悪いように言わないでくださいよぉ」

 

美鈴が大阪のおばちゃんのような手ぶりをしながら笑う。

いや、事実殺そうとしてたじゃない。

 

「私なら大丈夫ですじゃ。それより、そこの娘さんは優しい方ですな」

 

「え? そ、そんなこと……ないわよ!」

 

不意の褒め言葉に思わずテレてしまう。

 

「いえいえ、私が氷漬けにされとる間に娘さんの優しい気持ち、ちゃんと聞こえておったよ」

 

「そんなもう! テレるじゃないの!」

 

この亀、かなりいいやつね!

ウチに助けてもらったことがそんなに嬉しいのかしら。

 

「………あの、美波さん?」

 

「ん? なに? 亀殺しさん」

 

「私はまだ容疑者です!」

 

「「まだ」よね、いつかテーブルに並ぶ予定だったんじゃないの……」

 

「そんなことはどうでもいいんです! それより、何か感じませんか?」

 

「へ? 何を?」

 

「この亀ですよ! 普通ペラペラと喋りますか?」

 

「………あ」

 

確かにそうね……普通亀が喋る訳ない。

ましてや、お礼を言ったりすることがあるはずがないのがウチたちの常識。

 

「自己紹介が遅れました。私は玄爺(ゲンジイ)と申します」

 

「げんじい?」

 

亀で年老いたおじいさん……そのままね。

 

「玄爺さんはどうしてチルノたちに凍らされていたんですか?」

 

「………ただの遊び目的じゃろ」

 

「ですよねー……でも、あまり見かけない妖怪ですね」

 

「え? この玄爺さんも妖怪なの?」

 

「ええ、ちなみに私も妖怪です」

 

「美鈴は言わなくても、さっき聞いたわ」

 

まぁ、あの氷塊を一発で割るところ人間では会得できない力を持ち合わせているのが十分分かる。

雰囲気はスレンダーでナイスバディの優しい活発な女性って感じなのにね。

 

「………ホント、なんなのあの胸は……」

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