バカと霊夢と幻想郷   作:こきゅー

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そろそろ明久たちが動き出します。

注意事項
・7/10 最近は期末テストも迫ってきているので、更新が遅めになります。

それでは引き続き、バカテストにどうぞ。




バカテスト 国語

第⑨問


次の漢字の読みを答えなさい。


Q.掲揚



姫路「けいよう」

教師のコメント:正解です。この意味は旗などを高い所にかかげることを表します。


坂本「かつあげ」

教師のコメント:盗んではいけません。


吉井「からあげ」

教師のコメント:揚げてもおいしくないです。


妹紅「けいよう」

教師のコメント:流石長生きしているだけありますね。これからも勉学を怠らずに。


鈴仙「けい……よう?」

教師のコメント:疑問で返さないで下さい。


永琳「けいよう」

教師のコメント:医師である以上、この問題は解けて当たり前ですね。


輝夜「    」

教師のコメント:お姫様である以上、最低限の知識は必要だと思います。まずは一歩外へ踏み出してみましょう。


チルノ「⑨」

教師のコメント:白紙よりはまだいい方だと認識しましょう。


姫路瑞希→吉井明久
私たちと教師と本格始動!~第一問~


私と鈴仙ちゃんと二人で迷いの竹林を歩き続ける。

心の中で、皆さんと過ごした思い出をひしひしと感じながら鈴仙ちゃんの後ろに付いて行く。

 

「あ、ここだ」

 

鈴仙ちゃんがふと立ち止まる。

視線を向けるとそこには一軒の木造の家が建っていた。

見た目はごく普通のログハウスのような感じだ。

ここに輝夜さんのお友達が住んでいるのでしょうか。

 

 

コンコン

 

 

鈴仙ちゃんが扉をノックする。

 

「はい」

 

すると中から声が聞こえた。

妹紅さんかな?

 

「今開けますよっと……」

 

中から出てきたのは髪の色が白く、少し大きなリボンを付けていて、あれは確かもんぺでしょうか?

もんぺを着用している女性が扉を開けた。

 

「妹紅、お久しぶり」

 

鈴仙が挨拶をする。

 

「あぁ、ご無沙汰だな。今日は何の用だ?」

 

「実は、姫さm――あぁいや! これを余ったのでお裾分けしようかと思って」

 

「裾分けって、誰から貰ったんだ?」

 

「これは瑞希が作ったものよ」

 

「瑞希?」

 

聞きなれない単語なのか、首をかしげている。

そこで私は自己紹介をすることにした。

 

「初めまして、姫路 瑞希と申します」

 

「あぁ、よろしく。私は藤原 妹紅(フジワラノモコウ)と言う者だ」

 

藤原さんが手を差し出したので私もそれに応じ、握手をした。

 

「それで、私が貰ってもいいのか?」

 

「はい、作りすぎてしまいまして、少し冷めていますが暖めて召し上がって下さい」

 

私は笑顔で言葉を交わした。

藤原さんは女の子なのにかっこよくて、憧れてしまいます。

まるで頼れる男性、ってイメージで安心感を抱いているからかもしれない。

 

「ありがと、筍ばかりで飽きていたところだ。あとで美味しく頂くよ」

 

「そういっていただけて嬉しいです!」

 

「嬉しいのは私の方だけどな」

 

ハハハ、と笑いが起きる。

この人は今まで話した事のないタイプでしたが、すごく有意義に過ごせました。

 

「それでは私はこれで、道は大丈夫か?」

 

「えぇ、私が付いていますから」

 

横から鈴仙ちゃんが胸を張って威張る。

 

「愚問だったな。じゃあまた会う機会があればそのときはよろしくな」

 

「はい! それでは、失礼します」

 

そういうと藤原さんは家の扉をゆっくり閉め、中へ入っていった。

 

「さて、それじゃ人里に向かいますか」

 

「はい!」

 

妹紅さんへのプレゼントも済ませたことですし、いよいよ人里に向かうときが来ました。

けれど、私は心に迷いが生じていました……。

 

 

 

「ここが人里よ」

 

鈴仙ちゃんの道案内のもと、無事に迷いの竹林を抜けることが出来た。

私一人だと、到底辿り着けなかっただろう。

 

「さて、んじゃ私は薬を売りに行ってくるからここでお別れね」

 

できましたら鈴仙ちゃんの仕事を協力したいのですが、断られてしまいました。

 

『今は瑞希のやらなきゃいけないことを優先しないと』

 

そう、今の私は外の世界からやってきた異世界人。

早く知っている人と合流をしなければ……。

 

「はい……今までありがとうございました」

 

いつか来ると分かっていた鈴仙ちゃんとの訣別。

私は自分の表情が不確かなままお礼を述べた。

うまく、笑えてるといいのですが……。

 

「ほら、泣きそうな顔しないの」

 

「ぐすっ……で、でも……」

 

「大丈夫、きっとまた会えるから」

 

鈴仙ちゃんはそう言うと私をやさしく抱きしめてくれた。

 

「また……料理を作ってもいいですか?」

 

「え!?」

 

え……?

 

「い、いや、なんでもないよ。勿論歓迎するから!」

 

一瞬、鈴仙ちゃんが苦悩の表情を浮かべていたのは気のせいでしょうか……?

目が涙でよく見えませんでした。

鈴仙ちゃんがゆっくりと私から離れていく。

 

「……大丈夫?」

 

私の顔を覗き込むと心配そうに声をかけてくれる。

このままじゃだめだ。

このままだといつまでも鈴仙ちゃんのお仕事が達成出来ないまま。

早く笑顔を作らないと。

 

「私が言った言葉、嘘に聞こえる?」

 

「そ、そんなことは……!」

 

私の作り笑顔をすぐに見抜いた鈴仙ちゃん。

 

「瑞希は兎が大好きだって言ってくれたよね」

 

鈴仙ちゃんの話を、声を聞く。確かに私は兎が大好きです。

あの時から、あの出来事があったから……。

 

「なら、私も妖怪で、月出身だけど、兎だから……

 

 

 

寂しいと死んじゃうんだよ?」

 

屈託の無いよう限界まで見せた笑顔で私に告げたその一言。

その表情に私は一点の曇りも感じなかった。

 

「だから、私は寂しくない。また会えるから」

 

「鈴仙ちゃん……」

 

この幻想郷に来て、この永遠亭に泊めてもらって、八意さんに風邪を治してもらって、てゐちゃんに手料理を振舞って、輝夜さんとゲームして……。

 

 

初めて出会ったのは……あなたでした。

 

「…………分かりました、約束ですよ」

 

「うん! きっと!」

 

さっきまでの私は嘘のように消えてなくなり、安堵の胸を撫で下ろす。

 

「今度会うときは、私の大切な皆様を紹介します」

 

「それは楽しみだっ」

 

期待しているといわんばかりに兎らしく、跳ね上がる。

……やっぱり可愛いな。

可愛くて、頼もしくて、私の大切なお友達。

昔の私じゃ考えられなかった出来事が、起こりえない出来事が、現実となっている。

小学生のあのとき……あれからずっと、私は明久君を尊敬して……。

坂本君や美波ちゃん……Fクラスの皆さん。それから、Aクラスの皆さん。

沢山のお友達が出来ました。

 

「……じゃあ行くね」

 

 

――そうだ。私は帰らないと!

 

「はいっ!」

 

鈴仙ちゃんは私に背を向け、八意さんの手伝いへと向かった。

 

「必ず、また会いましょう……」

 

そう心に刻み、明久君たちを探しに行こうとした。

 

 

――その刹那。

 

「……瑞希?」

 

鈴仙ちゃんと別れた私は、突如誰かが私を声を呼ぶ声が耳に入った。

この声は聞いたことがある。

私はまさかと思い、後ろを振り向くと、

 

「翔子ちゃんッ!!」

 

「……瑞希」

 

そこにはAクラス代表の霧島 翔子がぽつんと立っていた。

すらっとした紫色のロングヘアーが風になびく度に美しさを引き立てている。

寡黙で人見知りする性格で、その姿はクール。

黙っていればそれだけで美少女と言われる容姿を持っている。

 

「翔子ちゃん? どうしてココに……」

 

「……分からない。気が付いたらここに」

 

まずは翔子ちゃんから事情を聞くために近くの本屋の前にあるベンチに座った。

 

「話を続けますね。えっと、分からないんでしたよね……」

 

私の返事を答えるようにゆっくりと首を縦にふる。

 

「それじゃ今までどこで何を?」

 

私が聞くと今度は口を開いた。

 

「……稗田さんの家で住まわせてもらった」

 

聞きなじみのない名前に私は気になった。

 

「その方はどんな方なのですか?」

 

「……小さくて可愛い子」

 

あ、あれ?その返事だと翔子ちゃんがその子のお世話をしているように聞こえるのですが。

私は黙って話を続ける。

 

「どこに住んでいる方なんですか?」

 

「……あそこ」

 

翔子ちゃんが指をさした方向には人里に着いたときから目に映った豪邸が見えた。

 

「え! 大富豪の方ですか!?」

 

「……そういうわけでもない」

 

お金持ちの人でもない小さな可愛い子があんな家に住めるのでしょうか?

あ、もしかしたらその子は子供で、お母さんとお父さんがいるのかも。

 

「その子は一人で暮らしているの?」

 

すると翔子ちゃんは首をまたもや縦に振った。

んーこれは一目会っておきたいですね……。

 

「……瑞希」

 

私が考え事をしているといきなり翔子ちゃんが言葉を発する。

 

「なんですか?」

 

「……瑞希と一緒に行きたい場所がある」

 

するとよく見ると翔子ちゃんの手には本がチラりと見えた。

 

「その本は何ですか?」

 

「……稗田さんから借りてきた。ここに載っていない場所に行ってみたい」

 

「別にいいですよ、翔子ちゃんとなら安心です」

 

初めて幻想郷に来て翔子ちゃんと巡り合えたこの喜びを大事に、いつまでも離さないようにしたい。

 

「……ありがと。ココからそう遠くないから疲れない」

 

「私のことなら大丈夫です」

 

「……そう、分かった。」

 

「でも、その場所というのは私たち二人でも行けますか?」

 

「……大丈夫、何でも人里の人気スポットと言われているみたい」

 

人里の、ということは人間が主に寄る場所。

そんな所が危ないわけはなさそうです。

 

「……とってもきれいな場所。気になる……」

 

翔子ちゃんが微笑を浮かべている。

きっと楽しみにしていたのでしょう。

私はその気持ちを汲むことにした。

 

「分かりました。もし何かありましたらすぐに引き返しましょう」

 

「……分かった」

 

というわけで、私はもう少し寄り道をすることにしました。

 

 

――――☆――――☆――――☆

 

時は遡り、寺子屋にて博麗霊夢が訪れ、明久に伝言を頼んだその後のこと。

 

「それで、何のようだったんだ?」

 

ここからは俺、坂本雄二が話す。

アイツは博麗から伝言を聞いていたんだが、いきなり謝るとそのまま出て行ってしまった。

誰かいたのか……疑問が残るが、この人の用件はまだ終わってないようだ。

 

「んー、あんたでもいっか」

 

「その言い方やめてくれないか、俺がアイツより劣っているようじゃないか」

 

冗談はよしてくれ、もう夜だっていうのに目が覚めちまう。

 

「別に大した問題じゃないと思うけど……」

 

「………大問題」

 

俺の後ろからムッツリーニが反論する。

Fクラス全員に明久と比べられるのがいやだと思われてるはずだから、コイツも例外ではない。

 

「……そうなの。まぁいいや、とりあえず「結界は直したから」って言っといて」

 

ややめんどくさそうな顔をしながらメッセージを吐いた。

晩御飯時だからな、博麗も腹が減ってるんだろ。

だが、

 

「ちょっと待ってくれ、一つ聞きたいことがある」

 

俺はこの人に会った機会を無駄にはしない。

地霊殿で聞いたあの情報を探り出さねーと。

 

「もうなに? 早くしてよね」

 

やはり博麗のイライラが募ってきている。

さっさと帰ってもらうのがいいんだろうが、俺たちにもやらなければならないことがある。

ここは手短かに済ませるか。

 

「八雲 紫に会いたい」

 

「あいつか……それは私にも出来ないのよ」

 

予想外の返事に俺は動揺を隠せない。

どういうことだ、話が違うぞ。

 

「確かに、あいつは私にしょっちゅう会いに来るけど私はあいつの場所を知らないのよ」

 

「知っとけよ、それくらい……」

 

「別にいいじゃない、プライバシーは大切にしないと」

 

「お前はプライバシー侵害されまくってるけどな」

 

俺がツッコミを入れると少しほほを赤く染め、人差し指でほほを掻いている。

 

「兎に角、私はアイツに会う手段は知らない。これでいいよね?」

 

「待ってくれ!」

 

あんまり引き止めると話を聞いてもらえないリスクを背負うのだが、このまま収穫を得ずに帰らせるわけには行かなかった。

 

「これがほんとの最後だ。八雲は冬眠の時期に入ったのか?」

 

あいつが寝られるとかなりやばいことになる。

現段階で元の世界に帰る方法が八雲の力に頼るしかないからだ。

冬眠なんか入られたら俺たちはどこの家かも分からない奴を探し回るはめになる。

明らかに俺たちは不利な状況に陥るのは気に食わない。

 

「そうね……まだ大丈夫だと思うわよ、あいつ何か企んでたみたいだし」

 

「そうか、悪かったな。何度も呼び止めたりして」

 

「えぇ、いい迷惑よ。それじゃ」

 

俺は博麗に根掘り葉掘り聞いてみたが、時間があまり得られなかった。

博麗が月を背にハイスピードで飛んでいく姿が見える。

ふむ、いい月だな……今夜は満月か?

人里のような環境での星空はよく見えるな。

 

「雄二! 明久が戻ってきたぞ」

 

秀吉が慌てて俺を呼ぶ声が聞こえる。

あの野郎今頃帰ってきやがったか。

ん……よく見ると隣に誰かいるな。

あれは島田か! なるほど……そういうことか。

 

それから俺たちは島田と無事再会に成功した。

しかし、まだ情報が足りない。

この幻想郷という広く、狭い世界。

そんな不安定な場所に姫路はどこかで窮地を凌いでいるはずだ。

明久は文を信じているようだが……さて、どうしたものか。

 

「雄二、何ぼけっとしてるのさ」

 

色々思考していると間抜けな声が頭に響く。

 

「いや、お前はどうなんだ?」

 

「どうって……美波のこと?」

 

「違うな」

 

「じゃあ何のこと?」

 

「姫路の件についてだ」

 

「………」

 

確信を突かれたように渋い顔を浮かべた。

それまで手際よくネギを包丁でみじん切りしていた手がぴたりと静止する。

 

「まぁ、今は腹ごしらえだな。慧音先生も待ちくたびれてるだろうよ」

 

こんなにも苦い表情をしているのは稀なケースだ。

誰かを救いたい気持ち。

誰かのそばにいてやりたい心。

誰かが困っているのを放っておけない、バカ一直線の素直な精神。

コイツはコイツで色々悩んでいるに違いない。

 

「明久、お前も島田の様子を見てきたらどうだ?」

 

「え、でも……」

 

「お前が作る料理より腕が上なことを見せてやるよ」

 

「雄二……」

 

俺の気持ちを悟ったのか、明久は包丁をまな板の上に置く。

手を水で流し、タオルでふき取ると、こう言った。

 

「それじゃ、美波の様子を見てくるよ」

 

「あぁ、期待して待ってろよ」

 

そして、明久は島田のいる部屋へと姿を消した。

 

「………手伝う」

 

「ムッツリーニ!?いつから……」

 

「………ついさっき」

 

「そ、そうか……それで、手伝ってくれるのか。なら頼む」

 

「………了解」

 

さて、それじゃアイツの舌を驚かせてやるか!

 

 

「うーん……雄二の奴、急にどうしたんだろう」

 

僕は雄二に言われて美波のいるところなんだけど、さっきまでのアイツは妙にやさしかったな……。

確かに、最近の僕は結構疲れている。

最初は葉月ちゃん、雄二、ムッツリーニ、秀吉、そして……美波。

Fクラスのメンバーはそろいつつあるが、彼女の声をまだ聞いていない。

 

『明久くん、こっちでお弁当食べましょう』

 

そんなごく普通の台詞ですら、今の僕には感傷的に浸れそうだ。

 

「……っ! いけない、僕ったら何を……」

 

自分でも気づかないまま涙を零していた。

 

「今から美波に会うのに、こんな顔じゃ心配かけられちゃうね」

 

ちょっと洗面所でも借りようかな。

雄二が言ってたっけ、鏡を見れば面白いものが見れるって。

今からそれを確認して、笑えなかったら文句を言ってやるか。

 

――――☆――――☆――――☆

 

「あ! バカなお兄ちゃんです!」

 

「こら、葉月! もう夜なんだから静かにしなさい!」

 

僕が部屋に入ると葉月ちゃんが真っ先に僕を見つけた。

はしゃいでいると美波が妹をしつける。

 

「もう、お隣さんに迷惑がかかっちゃうでしょ!」

 

「ごめんなさいです……」

 

小さい子ながら、元気いっぱいだな。

 

「美波、調子はどう?」

 

「え? もう平気。それよりアキはどうしたの?」

 

「雄二が後を引き受けてくれたんだ」

 

「そうなの」

 

こうして美波と話せたことがどれほど意味のあることか。

 

「島田のことは慧音先生には話しておいたぞ」

 

僕が来るまでの間は秀吉が美波の様子を見ていてくれた。

 

「そうか、分かったよ」

 

さて、美波に会いに来たけどどうしようかな……これといって特にしたいこともないし。

やっぱり雄二の元に戻ろうか、慧音先生のために罪滅ぼししないとね。

 

「ねぇアキ……」

 

そんなことを巡らせていると美波がどこか悲しそうな目をしている。

 

「どうしたの?」

 

僕は優しく声をかける。

夜の人里に一人でいたんだ、暗くて、怖くて、たまらなかっただろう。

今は少しでも美波に笑顔が戻ることを優先するべきだ。

 

「瑞希……大丈夫かな?」

 

「あぁ、きっと大丈夫。それにあの腕輪も手に入ったんだ。席に着いたときにでも慧音先生に交渉してみるつもりだよ」

 

この召喚獣の力を使えば、僕のような非力の人間でもこの世界を渡っていけるはず。

点数はこの際気力で踏ん張ればいいし、あまり気にすることでもないだろう。

 

「そう……無事だといいんだけど……」

 

「無事さ。もし何かあったとしても僕と雄二で必ず救い出して見せる」

 

「ほんと?」

 

「うん、だからまた試召戦争しよう。そしてAクラスに勝とう!」

 

僕はただ、日常に戻りたいだけだ。

その為なら、僕はどうなっても――。

 

「……うん!」

 

「あれ、お姉ちゃんまた泣いて「シィーッ!」うぐむむーー!」

 

葉月ちゃんが何か言いかけたけど、美波がそれを慌てて阻止する。

 

「美波、大丈夫?」

 

「えぇ、大丈夫。ご飯が出来たらまた呼んで」

 

そういうと美波は葉月ちゃんを膝の上に乗せ、ゆっくりと抱いている。

 

「そう、分かったよ」

 

居座る理由もないことだ、僕は出て行くとしよう。

 

 

バタン

 

 

「おぅっと!」

 

「おわ!」

 

ちょうどそこに雄二がいたことに気づかず、危うくぶつかりそうになった。

 

「お前な、目はどこについてるんだ?」

 

「あのね、僕でもそんな質問答えられるよ……」

 

「へぇ~」

 

つまらなそうな顔をしつつ髪の毛を掻いている。

興味なさそうだなーコイツ。

 

「飯が出来た。島田たちも連れてきてくれ」

 

「分かった」

 

雄二がここに居る理由はどうやら晩御飯が出来たからのようだ。

これでカロリーを摂取することが……おなかすいたなぁ。

僕に伝言を言い残すと雄二は「先に待ってる」と言い、食卓のある部屋へと戻っていった。

 

「どうしかしたの? アキ」

 

「あ、うん、晩御飯が出来たってさ」

 

「そうなの、分かったわ」

 

「ご飯ですー!」

 

美波とは正反対な葉月ちゃんは我先にへと走っていった。

 

「こらぁ! ちょっとはおとなしくしなさい!」

 

それを面倒見の良い姉が追いかける。

 

「島田の妹は元気じゃのう」

 

秀吉が一番最後に戸から開けて出てきた。

 

「美波を見ててくれてありがとう」

 

「例を言われる筋合いはないぞい」

 

秀吉はニッコリと笑い、僕に話しかけてくる。

 

「それじゃ、一緒に行こうかの」

 

「うん、そうだね」

 

僕と秀吉は横に並んでゆっくりと廊下を歩いた所為か、一番最後にたどり着いた。

 

その後、雄二の作った料理に思わず感動してしまったり、慧音先生が調理法を詳しく聞き質していたり、洗面所に行っても面白いものなんてなかったじゃないかと雄二に言ってみたり、楽しい一晩を過ごせた。

 

――――☆――――☆――――☆

 

「慧音先生、ちょっといいですか?」

 

僕と雄二は皆が寝静まったころに慧音先生の部屋へとある頼みを聞いてもらいたくやってきた。

 

「なんだお前たち、まだ寝てないのか」

 

「俺たちの用件が済めばすぐにでも寝てやるさ」

 

相変わらず慧音先生だというのに雄二は口が悪いなぁ。

隣で僕は心の中でそわそわする。

 

「それで、用事はなんだ? 明日は朝が早いんだ」

 

慧音先生の顔色を窺うとなにやら複雑な表情をしていた。

しかし、僕もこのお願いだけはなんとしても受け入れてほしい。

僕は真剣な顔つきで前から思っていたことを言った。

 

「僕たちを自由に出回りさせてくれませんか?」

 

「………どういう意味か、理解してるんだろうな」

 

やはり怒声をこっそり交えた声色で返答する。

僕たちのことを思ってくれてるのはありがたいし、文に任せればいいんだろうけど。

 

「説明は俺がしよう。まず、この腕輪を見てくれ」

 

雄二はポケットの中から鉄人からもらった『白金の腕輪』を取り出した。

 

「これは?」

 

「俺たちの世界でいう召喚獣を召喚するフィールドを形成することが可能だ。コイツを使えば俺たちの秘めた力を解放することが出来る」

 

「そいつはどこで手に入れたんだ?」

 

「森だ」

 

「この辺りで言えば、魔法の森だな」

 

魔法の森――僕らがこっそり抜け出したあの森はそんな名称があったのか。

雄二は僕の隣で説得を続ける。

 

「明久の召喚獣は機敏な動きで敵を翻弄し、的確に急所をしとめる」

 

「ほう、言っておくが、この幻想郷では弾幕ごっこが主流だぞ? お前たちの戦争は私たちの遊びよりも上回っているというのか?」

 

「そうだ、俺がこの白金の腕輪を使い、明久が召喚獣で妖怪を倒す」

 

「僕たちは力を手に入れたんです、だからお願いします!」

 

「………」

 

慧音先生は僕らに背を向け、考えてくれているようだ。

しばしの沈黙が続いたが、慧音先生が口を開く。

 

「吉井」

 

「は、はい」

 

「私はな……短い間だったがお前を大切な一人の生徒として見てきたつもりだ」

 

「それに関してはありがたく思っています」

 

僕たちの中で一番長い付き合いなのは僕だろう。

そんな僕だからこそ、色々事情があるのも承知の上だ。

 

「それで思ったのだ。お前は私の想像以上にバカなんじゃないかって」

 

何故このタイミングでバカと呼ばれなければならないのか、僕は少し戸惑う。

 

「だが、今のお前の決意を聞かせてもらい確信した」

 

慧音先生はくるりとその場で回り、僕らの正面で目と目が合う。

僕は真剣に話を聞いた。

 

「………お前は、正真正銘のバカだ」

 

「僕はバカじゃないです!!」

 

どうしてこうなったんだ。

どこに行っても結局僕はバカにされるというのか。

 

「……そのとおり。明久はバカな奴だ」

 

「雄二ィィーーッ!!」

 

「明久、嘘が通じる相手でもないだろ?」

 

「そこは無理にでも通してよ!」

 

僕のプライドはズタボロだ。

こんな異世界でもバカとして認識されるなんて……。

僕はその場に項垂れる思いだった。

 

「そんなバカに提案があるんだが……そう落ち込むな」

 

「うぅ……」

 

慧音先生が僕を慰めてくれる。

あぁ、この優しさが雄二にもあれば……。

 

「明久は俺が片付けておきますんで、その提案とは?」

 

「さらっと僕をごみ扱いしないで!」

 

この野郎は友達として微塵も思えないようなことを次々と!

つくづくがっかりだよ!

 

「うむ、簡単なことだ。私に勝てばお前たちは晴れて自由の身だ」

 

「それって……弾幕……」

 

「あぁそうだ」

 

なんと慧音先生は僕らに弾幕ごっこを申し出たのだ。

隣では雄二が納得したかのように笑みを浮かべている。

 

「この幻想郷では、弾幕ごっことやらで階級を決めているようだな」

 

「そうだ。ここではこれが全て――」

 

雄二と慧音先生が僕を置いてけぼりにしながら会話を進めている。

 

「それじゃ、ついてこい。気兼ねなく戦える場所を提供しよう」

 

そういうと慧音先生は部屋を出た。

 

「ほら明久、いつまでめそめそしてんだ」

 

「ぐすん……」

 

そんなわけで、僕らは慧音先生と弾幕勝負を行うこととなった。

しかし、具体的なルールとか、まだちょろっと見たことがあるだけであまりやりたくはないなぁ……。

下手したら試召戦争よりも痛そうだし……。

 

「よいしょっと」

 

でも、あんまりぐだぐだするのも時間がもったいない。

時間はもうすぐ深夜一時になる。

窓から差し込む月の光は、僕らの世界の常識を超えるほど明るく照らしていた。

さて、眠気が襲ってくる前に、速攻で方を付けないとね。

僕らは慧音先生の後を追うことにした。




今回はここまでにします。
細かく仕分けすればきっと見やすいだろうし、更新ペースもあげれるかと思ったので。
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