バカと霊夢と幻想郷   作:こきゅー

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更新が遅れてしまいすいませんでした。
実は夏休みに入りバイト探したり、体調を崩したり、趣味に勤しんだり、この先の描写を悩んだりとしまして……。

それでは、どうぞ。




僕と私と太陽の畑~第一問~

「あのー慧音先生」

 

僕と雄二は現在、慧音先生に道案内させてもらっている。

ここは迷いの竹林と言って殆どの人が道に迷って出られなくなるという迷宮のような場所だ。

今この人を見失うと暫く筍だけの生活を送ることになるだろう。

 

「どうした?」

 

「いえ、雄二から聞いたあの話なんですが……」

 

「あれか、一応永琳に調べさせておいたからきっと大丈夫だ」

 

慧音先生が言ってくれると思わずほっとする。

医者として相当な腕前を持つといわれているらしいけれど……。

 

「俺も聞いて良いか?」

 

僕の話と入れ替わるように雄二が慧音先生に尋ねる。

 

「なんだ?」

 

僕たちは坦々と草の生えている地面を歩いている。

さっきから同じような景色でまるで同じところをぐるぐる回っているようだ。

なるほど、これじゃあ僕のような一般人だと尚更こんなとこ来ちゃ危ないな。

 

「あんたの昨晩の変身、あれは何だったんだ?」

 

「あ、それ僕も気になります!」

 

突然、目の前の人が化け物みたいな風貌になったんだから事情を聞きたい。

あの時は映画か何かを見てる気分だったよ。

 

「説明したじゃないか、私は満月の晩にはあーいう風に変貌するんだよ」

 

「それって狼男とかの部類に入るんですか?」

 

「狼……でもないが、まぁ私は半人半獣なんだ」

 

慧音先生は口をごもらせていた。

どうやらあまり触れられたくなさそうに見える。

 

「そうか、アンタも色々あるんだな」

 

「生徒に気遣ってもらうほどでもないよ」

 

雄二が察すると、慧音先生はさっきまでの様子に戻った。

 

「ところで、坂本は私をなるべく頼ることはしないんじゃなかったか?」

 

「あぁ、寺子屋で言ったあの一言か」

 

確か僕らが四人集まって会議をしていたときに慧音先生がお茶とお菓子を持って部屋に入ってきたんだよね。

あの後に僕らは魔法の森にこっそり抜け出して……。

これ以上は思い出さないことにしよう、僕の頭が軽く吹っ飛んでしまう(物理的に

 

「俺たちは、もう選り好みできなくなってる。どんな手段を使ってでもここの事や八雲について調べつくしてやる」

 

拳に力をグっと込める雄二の姿は、もう後に引けなくなっているように見えた。

それは僕にも当てはまることだけどね、これから先は一方通行。

戻るという選択肢はあの夜からなくなっている。

 

「うむ、良い判断だ。そんなお前たちにこれを」

 

そういうと慧音先生は雄二に一枚の紙を見せてくれた。

 

「これは……破れたページの一枚みたいだが」

 

「そうだ、私があの場所にお前たちを先導していたときに拾ったものだ。人気の無いとこで何故これが落ちていたかは分からない」

 

僕もそのページを横から覗いてみる。

そこには「太陽の畑」と書かれており、その項目の下には写真が載っていた。

 

「綺麗な向日葵畑だね」

 

「そうだな……ん? 明久、ココを見てみろ」

 

雄二が何かに気づいたらしくあるところを指で差す。

 

「『危険度:中 遭遇する妖怪:妖精など』……これは?」

 

破れたページは書物の一部だったらしく、文字がびっしり詰まっていた。

その一部がこの危険度と書かれてある項目だが……。

 

「あまり近づかない方が良さそうだな」

 

「その通り、そこには妖精もそうだが一番厄介な妖怪が住み着いている」

 

僕らには姫路さんたちを探し出すという目的がある。

なので今はあまり関係なさそうだけど慧音先生が真剣に話してくれているのでしっかりと聞いておこう。

 

『教科書に載っていることは全て大事なんだ、だから一切のものを暗記するのが好ましい』

 

僕と慧音先生と葉月ちゃんの三人だけの頃、慧音先生が特別授業を開いてくれたときに言っていた言葉を思い出す。

この太陽の畑も、何かしら意味があるはずだ。

 

「その人の名前は『風見 幽香』。花をどこまでも愛する妖怪だ」

 

「「………?」」

 

一体どんな凶暴な妖怪が出るのかと思いきやまさか花が大好きな妖怪だなんて。

思わず顔がニヤついてしまう。

 

「肩書きはどうでもいい」

 

「花が大好きなのはどうでもいいってことですか?」

 

「そうじゃない、だが君たちは彼女にもし遭遇したとしても決して花にだけは触れるな」

 

意味深な言葉を言われ、僕は頭を回転させる。

 

「それは花を傷つけられたくないからですか?」

 

「正解だ。彼女は人をなんとも思っていない冷酷な心の持ち主だからだ」

 

思わず生唾をごくりと飲み込む。

大好きな花を汚されたら、その人はただではすまないということか。

 

「太陽の畑に行くことがあればくれぐれも風見 幽香と遭遇しないことを祈る。お前たちはこれから幻想郷の隅々を探し回るんだろうからな」

 

慧音先生には僕らのすることがもはや筒抜けみたいだね。

うん、もし姫路さんたちが見つからなかったらありとあらゆる場所に出向くつもりだよ。

これは雄二も同じ思考に違いない。

 

「その紙の持ち主に心当たりがある、もうすぐ人里に着くがそこからは別行動だ」

 

雄二が持っていた紙は慧音先生へと返す。

教師ということあってか、論文等の作者には知り合いが多いのかな。

 

「ほら、見えてきたぞ」

 

そこには今ではすっかり見慣れた光景が写っていた。

 

「それじゃ雄二」

 

「あぁ、島田たちには悪いがもうすぐ日暮れだ。留守はこいしに任せてあるから安心しろ」

 

「分かったよ」

 

「それじゃお前たち、元気でな」

 

慧音先生はゆっくりと紙を握り締め、僕らに背中を向けて歩いていった。

どこか哀愁漂うのは、きっと今後はもう会う機会が少ないと悟ったからだろう。

 

「さようなら……」

 

またいつか、寺子屋で。

 

 

「よし、雄二。僕たちも行こう!」

 

人里に着いたときにはもう日が落ちかけていた。

妖怪というものは夜になると活発になるらしい。

霊夢と会ったあの狼のような妖怪の類はスペルカードシステムを無視して襲ってくるみたいだし。

姫路さんたちを一刻も早く探し出さないと。

 

「明久はあっちを頼む、俺はこっちを」

 

雄二が僕に指示を出しているときだった。

 

突然、人里が揺れ始める。

 

「ま、また!?」

 

妹紅さんの起こしたあの衝撃とは明らかに度を越えた震動が僕らを襲う。

 

「明久! 上だ!」

 

「う、うえ?」

 

地面が揺れているのに、何故下ではなく空がある上を見ないと行けないんだ?

僕は不思議に思いながらも雄二の指す上空を不安定な足場で立ちながら何とか見る。

 

「な……!!?」

 

僕は思わず言葉を失った。

 

そこには極太のレーザーが天に向かって放たれていたからだ。

その瞬間のみ、空はまるで朝のように青々としていた。

 

「まさか、あれが原因で……?」

 

「だろうな……」

 

まるで空を撃ち抜いているように見えたそのレーザーは暫くすると何事もなかったかのようにそれは消失した。

その後、穏やかな赤みに染まった空へと戻る。

 

「……今の、なんだったの?」

 

「分からん。だが、なんだか妙な胸騒ぎがする」

 

「奇遇だね、僕の第六感も言ってるんだ」

 

 

「「あそこに姫路さん(翔子)がいる」」

 

山の反対側から見えたレーザーを頼りに僕らは目的地を決めた。

相当厄介なことになりそうだけど、僕にだってやれることはあるんだ。

なら、行動に起こさないときっとあとで後悔する!

今回はまさしく、命がけの探索になるだろう。

 

「歯ぁ食いしばれよ、行くぞ! 明久!!」

 

「そっちこそ、肝を据えておきなよ! 雄二!!」

 

これが終われば、きっといつもの生活に戻れる。

今頃は姉さんも僕の事を探して心配しているだろう。

けれど、そんな姉さんの気持ちを踏みにじるようにもしかすれば無残な姿で帰ってくるかもしれない……いや、帰ってくることすらできないかも。

 

僕と雄二は人通りの少ない人里を全力で走り去っていった。

 

 

――――☆――――☆――――☆

 

「あれは一体どういうことだ?」

 

私は上白沢慧音、寺子屋で教師を務めている。

昔から先生として子供たちに勉強を教えているが、どうも理解出来ないようだ。

私の教え方がいけないのだろうか、いやいつかきっと分かってくれるはず。

 

「吉井たちが有無を言わずに行ってしまったな……」

 

これ以上は口出し無用だよな……。

心配だが、私にはやるべきことがある。

 

「早く稗田氏のところへ向かわねば」

 

この破れた一枚のページは稗田阿求の物と確信していた。

私は彼女からいつも資料として借りていたからな。

主に授業に使わせているので感謝を忘れずに大切に扱っている。

それがこの有様だ、一体何が……?

私は急ぎ足で稗田家へと前進した。

 

「………ん?」

 

紙を右手に急いでいるとあまり見かけない人影が通り過ぎる。

常に人里に滞在している私は人付き合いにも慣れているのだが、今のは誰だったかな?

 

「ちょっといいか?」

 

気になった私は二人組に後ろから声をかけた。

私の声に応じてゆっくりとこちらを向く。

 

「なんだい?」

 

「私らは急いでいるんだが」

 

どちらも妖怪ではない。それは気配で分かる。

この二人の男はただの人間……。

すると私の脳裏に一線の電流が走った。

 

「お前たち、まさか外来人か?」

 

「そうですよ」

 

「でも心配には及びません。私たちには『力』があるので自立していけますよ」

 

「そうか……なら、気をつけてな」

 

「「それでは、さようなら」」

 

去り際に見せた彼らの笑顔は、はっきりと意思が伝わってきた。

一体、何がそこまで余裕が持てるのだろうか……。

 

「おっと、急がないと」

 

余計な時間を費やしてしまった、早く急がないと。

私は今度は重たい脚を走らせた。

 

 

――――☆――――☆――――☆

 

『………クッ』

 

『よせ夏川、まだ笑うな』

 

『いやさ、今からあいつらがどんな目に会うのかと思ってな』

 

『だからといって、あの教師にマークされたら面倒なことになる』

 

『そうだな、面倒な種は芽が出る前に処分しないと』

 

『とりあえず、俺たちの役目は終えた』

 

『あの人に会うまで、どうなるかと思ったぜ』

 

『ホントだよ、野蛮人に追い掛け回されるわ変な魔女に実験されそうになるわ……』

 

『お、おう……そうだったな……』

 

『この命、あの人たちに尽くさないと』

 

『上手くいけば元のところに返してくれるらしいが……』

 

『嘘だとしても、今は言うとおりにするしかないな』

 

『それもそうだな……』

 

『んじゃ戻るか』

 

『おう』

 

 

『それにしてもこうも上手くいくと鳥肌が立つぜ』

 

『何もかもあいつらは俺たちの手の平で踊らされてるんだろう』

 

『ちげーねーわ』

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