バカと霊夢と幻想郷   作:こきゅー

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第四問

           世界史

2-F 吉井明久     176点

  &

2-F 坂本雄二     235点

  &

UNKNOWN 藤原妹紅  UNKNOWN

   VS

UNKNOWN 風見幽香  UNKNOWN ♪幽夢 ~ Inanimate Dream

 

「おい明久」

 

吹っ飛ばされた衝撃で消えてしまった召喚フィールドをもう一度出す。

今度は世界史、僕の苦手科目じゃなくてよかった。

 

「おい……明久」

 

さて、今度は僕らが有利になるような状況を作り出さないと。

 

「まずはお前からコロス」

 

「さっきからなんなんだもう!」

 

全く、人がいろいろ整理させているというのに雄二は何をさっきから僕に言いたがっているんだ。

仕方なく僕は雄二の声に耳を傾けることにした。

 

「お前、手のひらを俺に見せるように出してみろ」

 

「へ? なんで」

 

「いいから」

 

この行為に一体なんの意味があるというんだ、藤原さんと風見は僕らのやり取りを遠目で観察している。

風見は面白がるように、藤原さんは不思議がるように眺めている。

早く挑発だの何かしらしないと……しかし、雄二の顔はふざけているようには見えなかった。

 

「しょうがないな……はいっ」

 

僕はとりあえず言われたとおりに適当に右手の手のひらを雄二に見せ付けるように開いた。

 

「よし、そのままじっとしてろ……」

 

「え、なになになに!?」

 

突然雄二が拳に息を吐いている。

コイツ、僕を殴るつもりか!?

 

「動くな、怯えるな、構えてろ」

 

でも、いつものようなただ僕をいたぶるために殴るつもりじゃないようだ。

 

「わ、分かったよ……」

 

僕はしぶしぶ右手の手のひらを再び出した。

 

「………ふんっ!」

 

「ーつッ!!」

 

くぅ~結構痛いな……まるでシャブの練習かのような構図だけど……。

 

「明久、その威力を覚えろ」

 

「そりゃ今もひしひしと痛むけど……」

 

戦闘前に雄二は僕を傷つけるつもりなのか……それともアイツなりに心配してくれてるのか?

 

「俺の全力の一撃だ、風見のことを考えて殴った」

 

「……それって、僕へ八つ当たりがしたかったってこと?」

 

僕のこの時間を返して! そんなしょうもない理由で!?

 

「んなわけねーだろ。俺は悔しいんだ」

 

「悔しい?」

 

「風見の戦闘能力はガチでやべえ、俺なんかの人間じゃ歯が立たない。不意打ちとかじゃねーとまともにダメージは食らわせられないだろう」

 

どこか悲しげに、それでも力を秘めるような様子の雄二を見て僕はさっきまでの自分自身の態度を反省する。

こいつはこいつなりに大真面目だったんだな……。

 

「一発目は姫路の分だったな、じゃあ、二発目は翔子の分だ」

 

「そんなの、当たり前じゃないか。雄二の鍛え上げられた肉体で思いっきりぶん殴ってやれば――」

 

「ダメだ、俺はアイツには勝てねえ。触れることすら……!」

 

僕の言葉を遮ると下を向き歯を食いしばっている雄二の顔がちらりと見えた気がする。

そうか、雄二は雄二自身で霧島さんの仇が取れないと思っているのか……あの化け物には正攻法では勝てない。

かといってまた同じ手で食らわせられたとしても相手の怒りを買うだけだ。

ならば、正面から正々堂々、アイツの顔に傷をつけてやればいい。

 

だが、それは無理だ。

 

逃げ腰になっているわけじゃない

 

姫路さんたちのことを忘れたわけじゃない

 

僕らには、強すぎるんだ。

 

人間と妖怪の境を思い知らされる程、徹底的に僕らはこの短時間で嫌でも理解させられた。

 

雄二はただ悔しいんだ……自分がただの人間だから、何も出来ない自分に。

 

「だから明久、俺がさっきやった一発をアイツにぶつけてほしいんだ」

 

「雄二……」

 

「そんな顔するな。同情はいらん。それに俺でもやれる機会があれば勿論やるつもりだ」

 

「そっか……分かったよ」

 

僕は右手の手のひらを眺める。

そこには赤く少しだけ腫れてる僕の手のひらがあった。

 

「頼むぞ明久、お前の肉体じゃ無理だろうから召喚獣で頼む。全力でサポートしてやるからよ」

 

「あぁ、やってやる」

 

雄二のあんな顔初めて見た……大切なものを自分の手で守れない歯痒さが雄二を襲っているのだろう。

だが、そんなときに僕に頼ってくれた。

僕は、霧島さんともう一人の分を僕の召喚獣の拳に込めることにした。

 

「そろそろ始めましょうか」

 

風見も痺れを切らしたのか、さっさと終わらせたいのか戦闘を急かす。

 

「あぁ……いいよ。お前に勝って皆で帰る」

 

「あなたのような人間に私に勝てると? バカね、そんなのは儚い夢となって散るのよ。その命と共に」

 

「吉井、極力無理はするな、私は慧音の伝言を聞いてお前を助けに来たんだからな」

 

「え、そうなの?」

 

なるほど、この前会ったばっかりの人をわざわざ体張って助けに来たのはそれが理由か。

慧音先生には最後まで心配かけちゃうな。

 

「あとで謝らないとな……」

 

「その為に、あの死に急ぎ野郎を倒さないとな」

 

そうだ、さっきは油断してたが今度は正面から正々堂々と僕らのやり方で殴ってやる!

不意打ちなんてせこい真似はしない、アイツに負けの味を飲ませてやるんだ!

 

「行くぞ、風見! 今度こそ姫路さんたちの分の雪辱を果たす!!」

 

といってもまずは作戦を練らないと……あの一撃で僕らは壊滅状態に陥ったのだから。

ごり押しが通じる相手じゃない、何かないのか……。

 

「あら、そっちの子から来るの?」

 

「え?」

 

少ない僕の脳みそをフル回転しているといつの間にか雄二が無言で風見を睨みつけている。

 

「ふふふ、いつでも攻撃を仕掛けてきてもいいわよ。そこの蓬莱人さんもどうぞ?」

 

「私はサポートに徹するよ。こいつらの目を見てると私がでしゃばるのは良くないそうだ」

 

「それだと、あなたの望みは打ち砕かれますわ。こんな風に!」

 

無言の圧力でその場を構えてる雄二目掛けて突進を仕掛ける風見。

なんだあの速さ……桁外れだ!

 

「オラァアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」

 

「ダメだ雄二! 対応が間に合――!?」

 

今、一瞬だけど雄二が僕に向けてアイコンタクトをしたような……。

 

「そのうっとおしい式神を潰せばただの無能に還るでしょう」

 

「行ッけェエエエエエエエエエエエエーーーーー!!!!」

 

雄二は何を考えているんだ……まともにやりあってたら勝ち目はない、心理戦で攻めるしかないというのに。

そのことに長けている雄二がなぜこんな無謀な……。

 

待てよ、雄二はどう見てもなりふり構わず風見に一撃を食らわせたいはず。

その様子は僕からは自殺行為に見える……雄二の狙いってまさか!

 

(上手くやれよ明久、今はこれしか手が無いんだ)

 

あのアイコンタクトってそういう意味か!

 

「式神もろともバラバラに切り裂いてアゲル!!」

 

互いに距離を縮める雄二の召喚獣と風見。

攻撃範囲に入ったことを確認した風見はニヤリと笑った。

一方雄二はそれまで真っ向勝負の威勢をしていたが、急にその場に立ち止まる。

 

「あら、もう諦めちゃうの? だったら思いっきり痛くしてあげる!」

 

 

ザシュッ……

 

 

風見は鋭い爪先で雄二の召喚獣を真っ二つに切り裂く――

 

 

「今だ明久!!」

 

 

「そんな! バカn――」

 

 

「食らえ幽香!」

 

 

――雄二の召喚獣は実体を持たない。

風見が確実に仕留めたと思った相手はまるでテレビの画面の向こうのキャラクターの映像が乱れたかのようになっていた。

 

 

「これは雄二の分だァァ!!!」

 

「………明久」

 

本日二度目、明久は風見の美しくも醜い顔面をその拳で打ち砕いた。

 

「もう一発ッ! こいつは霧島さんの分だ!」

 

「ッチ、その式神実体を持たないのね……」

 

風見は僕の召喚獣の一撃をものともしてない様子だった。

世界史の点数には自信があったし、召喚獣は人間の何倍もの力を発揮出来る。

それなのに、アイツの顔に傷が出来ただけ……だったらこうしてやる!

 

「………何の真似かしら」

 

「雄二! 今だ!!僕に構わず風見を殴れ!」

 

「あのバカ……あの一発を翔子の分で殴ればあとは逃げれたのに」

 

僕は召喚獣に気を取られているうちに素早く風見の背後をとることに成功した。

そして僕は風見に羽交い締めをかける。

遠くでなにやら口をぼそぼそ動かしているが、今がその機会だ、雄二!

 

「………すぐに振りほどいてもいいかしら?」

 

「やれるもんならやってみろ!」

 

「では、お言葉に甘えて――ッ!?」

 

次の瞬間風見は予想外の手応えに動揺をしてしまう。

 

「ただし、お前の足元は僕の召喚獣が封じているけどな!」

 

「そこでじっとしてろよバカ野郎!」

 

「今ならやれる! 雄二、早く!」

 

雄二が物凄い剣幕で僕らとの距離を縮める。

少し離れているからな、少し急いでもらわないと……!

 

「私をそれくらいの浅知恵で勝てると思ってるなら、前世からやり直したほうがいいわよ」

 

風見はニヤリと不気味に笑うと恐ろしいほどの腕力で無理やり拘束状態を振り払った。

 

「ぐっ!」

 

僕はそれに耐え切れず、地面に放り飛ばされてしまった。

急いで体制を整えようとするとすぐ目の前には風見の姿が。

 

「遅い」

 

「うわッ!」

 

思わず驚き、慌てて防御する姿勢に入る。

早い……なんてスピードなんだ。

 

「こっちだ!」

 

「「!!?」」

 

やられると思った刹那。

藤原さんが弾幕を僕らのいる方向にぶっ放す。

 

「うわわわっ! ちょっ!」

 

風見だけを狙っているのじゃなく、沢山の弾幕をただ撃っているだけらしく僕も避けなきゃ当たってしまう。

でもこんな量避けられる気がしない!

 

「おおおおおおおおい! ひぃぃ~っ!」

 

「あ、悪い」

 

悪いで済むか! 当たったらピチューンだぞピチューン!

すっごく痛そうなんだかr――痛い! カスるだけでも強烈に痛い!

 

「明久には効果抜群のようだな」

 

「雄二ィィィィーーーッ!!!」

 

「ほら、真面目にやれ。風見は全部避けたぞ」

 

「は?」

 

嘘だろ? どうやって?

僕には弾と弾の隙間がないくらい密度の濃い弾幕に見えたんだけど……。

てか、それを一発も被弾せずに風見は避けたっていうのか。

 

「全く、弾幕ごっこはすると言ったけど、私は肉弾戦の方が好みなの。なるべく控えて下さる?」

 

「何言ってんだ。幻想郷で弾幕飛ばさないでどこで撃ち合うっていうんだよ」

 

「まぁ、ここぐらいしかないでしょう――」

 

「ふん!」

 

会話の途中、風見が消えたと思ったらいつの間にか藤原さんが風見の攻撃を防ぐ。

右足をなぎ払おうとするがそれを避け、反撃に出るところを風見が余裕の表情で阻止。

舌打ちをすると藤原さんは一旦距離を空け、もう一度弾幕を放つ。

今度は御札をばらまくように乱射。

しかしこれまた風見には朝飯前のごとく避けられる。

 

「御札? あなた霊媒師か何かなの?」

 

「ちょっと三百年くらい妖怪退治をしていたもんでね」

 

「「三百年!!?」」

 

僕と雄二の声が見事にハモる。

は? え? 待って、何を言ってるのあの人。

三百年って、つまり……。

 

「どうみてもお婆ちゃんには見えないよ!」

 

「いや、違うだろどう考えても」

 

「おい吉井、この件が終わったら話をしよう」

 

「ごめんなさいとてもおばあさんは見えないです」

 

溜め息を思わず漏らす雄二と藤原さん。

 

「明久のせいでどうも調子が狂うな」

 

「ご、ごめん……」

 

「全くよ、殺す気が薄れてきちゃうじゃない」

 

敵にまで言われるこの始末。

 

「うう……」

 

「おっと、油断大敵だぜ?」

 

僕の発言で場の空気が変な感じになるも、一瞬の気を緩みを藤原さんは逃さなかった。

 

「そうね、続けましょうか」

 

しかし風見もそんな手には引っかからず、冷静に持ち直した。

 

「っく、僕の作戦がこうも見破られるとは」

 

「落ち着け明久、嘘が駄々漏れだぞ」

 

分かってるよ! こんな嘘すぐバレることぐらい!

でもどうしよう、何かアイツを嵌める算段をつけないと……。

 

「明久のような1ビットの頭の容量じゃ何も思いつかないだろ」

 

「失礼な! 1キロバイトくらいはあるよ!」

 

「少ないなオイ……」

 

そんな僕らが無駄話をしている最中にも風見と藤原さんは戦っていた。

藤原さんが空からの奇襲を仕掛けようとしたところを風見がそれをかかとおとしで決める。

その隙を狙い、弾幕を放出しようとしたが一旦退避したかと見せかけ右ストレート。

すぐさま対処し、左手も同じようになり腕の取っ組み合いとなる。

 

「今なら行ける!」

 

相手は硬直状態。

僕の召喚獣で藤原さんのように弾幕を撃ってサポートに入る。

 

しかし操作が思うように上手くいかず、若干暴走気味に弾幕がばら撒かれる。

 

全方位のランダムで、しかも大玉。

速度もバラバラでこれじゃあ何の意味も無い。

 

「お前は大玉しか撃てないのか!」

 

しまった、これじゃあ雄二にも当たってしまう恐れがあるな……。

 

「ごめんね☆」

 

「よしお前は今から俺の盾にしてやる」

 

そういうと雄二は笑ったまま僕の巫女服の後ろの首のとこを持つとそのまま僕を持ち上げる。

 

「お、おろして雄二! 僕が悪かったよ!」

 

「お前はまだ被弾経験がなかったなぁ?」

 

僕の後ろでどす黒い声が聞こえる。

真っ黒くて怨念の詰ったかのような声。

 

「ゆ、雄二……ぃ?」

 

「盾が喋るな。行くぞ!」

 

うふぇえええええええええええ!!!

ちょ、ちょま! うわあああああああああああ!!

 

「あいつらは何して……るんだか……」

 

「こっちにくるみたいね」

 

「そう……だな」

 

「あら、案外力ないんですね。このまま押し倒しちゃおうかしら」

 

「そう簡単に……やられるかよ!」

 

「強がりだけは一人前ね。けどこのまま向日葵のように埋めてあげる!」

 

「そいつは……勘弁してほしいな……死ねないけど痛いんだよ……ね!」

 

僕は必死に自分で撃った弾に後悔しながら必死に避けた。

ていうか殆どが風見たちに届いてすらいないっていうね……。

このまま被弾すればただのやられ損じゃないか!

 

「明久!」

 

「HA☆NA☆SE!!」

 

あ、当たる!目の前にゆっくりと迫る僕の弾幕ゥ!!

 

「ふんぬぅ!!!」

 

「おお! 避けた!?」

 

「どうだ見たか僕の本気のえびぞりを! 顔面スレスレで怖かったんだからな!」

 

「その調子で最後まで盾でいてくれよ!」

 

「イヤァアアアアアアアアアアアアアア!!」




戦闘シーンはやはり苦手なようです(大量の汗
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