「おら、もっと俺を守りやがれ。ゲシゲシ」
「ちょちょty――うわああああああ! 雄二! 当たる! 当たるから!」
こいつあとで絶対コロス。
「何言ってんだ、盾なんだから当たってなんぼだろ?」
訂正、今すぐコロス。
「もう限界だ! まずはテメェの息の根を止め――」
「おっと危ない」
「フィワッ!」
僕の召喚獣は今操作が効きにくいから僕自身でもうまく操れない。
その所為でさっきも自分の召喚獣に危うくやられかけた。
「ほら、もうすぐだ」
雄二は風見たちのいる方角へ真っ直ぐ走っていた。
藤原さんがやや押され気味だ! 急がないと!
「雄二! もっと早く!」
「だったらお前を台車にしてやろうか?」
「自分の足で走りやがれこの外道!!」
どこまで僕のことを道具のように扱えば気が済むんだ。
「お前が悪いんだぜ。俺に同情なんてするから……」
「へ?」
「お? 見ろ明久」
今何か言いかけた気がして話を逸らされたようにも見えた。
しかし雄二の指した方向には何もなかった。
「ん? あれ?」
だが、何もないのがおかしいのだ。
本来なら僕の召喚獣が暴走してるはずなんだけど……。
「どうやら召喚フィールド外に出ちまったようだな」
なるほど、僕ら召喚獣はあの空間内しか実体を保てないもんね。
どうやらそのおかげで弾幕も消滅したようだ。
「おい吉井! 坂本!」
もう少しで届きそうな距離で藤原さんが僕たちに呼びかける。
「おしゃべりしてていいのかしら?」
「……お前、弾幕は使ってこないのか?」
獲物を仕留める捕食者のような目つきで藤原さんを追い詰める風見。
不味い、一気に押されてる! 助けに行かないと。
「じたばたするな、駄々をこねる子供みたいだぞ」
「呑気なこと言ってないで降ろしてよ!」
「ここで降ろすとお前は無鉄砲に飛んでいくだろ?」
「え、当たり前じゃないか」
「じゃあ降ろさない」
「何を言って……!」
雄二が鋭い眼力で僕を見つめる。
「俺たちはアイツを信じる必要がある。さっき何か言いかけたはずだ、それを汲み取れば分かる」
真剣な眼差しで藤原さんを見る雄二を僕は何かあると思いそのまま黙っておとなしくすることにした。
「なあ風見、あんたが弾幕嫌いなのかどうかはこの際どうでもいい、だけどな!」
「この期に及んで何かするつもり?」
「ああ、お前は今の幻想郷を受け入れていないように見えるからな。博麗に変わって私がお前に取り憑いて直々に教えてやる」
取り憑くって……あの幽霊が人の体に入って何かしらの影響を与えるっていうアレ?
え、だとしたら藤原さんは人間じゃないんじゃ……そもそもあの身体能力や発言を考えると納得できる。
「藤原さんは幽霊なのか!」
「お前といると憑かれるわ」
あ、あれ、雄二はどうしてそこまで残念がるのだろうか。
「そこの人間、危ないわよ」
「思いっきりやらなきゃ、人生そこで終了……そうだろ? 『パゼストバイフェニックス』!!」
僕らに視線を向けたわずかの隙を藤原さんが懐に忍ばせといたスペルカードを取り出すと藤原さんは姿を消した。
同時に赤い大きな翼のようなものが風見を中心に浮かび上がった。
「めんどくさいことになっちゃったわね……でも、ちょっと面白いことになりそう」
「来るぞ明久!」
風見はまるで背中に羽でも生やしたかのようなさっきと違う姿で僕らに急接近する。
僕らは召喚フィールド外にいるわけだから生身の体で咄嗟に反応した。
だが間合いを詰められてしまい、あっという間に風見に届くと思った。
「な、なにあれ!?」
「ふふふ、これで共倒れ……あっけなかったわね」
風見の打撃がくると思ったが風見の周りに魔方陣が浮かび上がった。
あれは慧音先生で見たことがある形……まさか、あそこから弾幕が!
風見はそれを知ってわざと僕らに近づいたのか。
「私が弾幕を出すまでもなかったわね」
「藤原さん……なんで」
僕には彼女の行動が理解できず、思わず声を落とす。
血迷った挙句、自らを犠牲に――だが無駄な犠牲を払っているようにしか見えない。
「早く逃げないとどんどん弾が降って来るわよ」
風見の言うとおり、そして僕の予想通り、魔方陣からは弾幕が出てきた。
ほっと息もつかぬまま、それが破裂して小粒の弾幕へと拡散。
これはちょっとキツイかも。
「やるぞ」
僕がちょっと弱気になっていると雄二からいきなりの提案。
「待ってよ雄二、これはいくらなんでもキツイんじゃ……」
「なぁに、こうすりゃいいんだよ」
そういうと雄二は右腕を天へかざす。
「起動(アウェイクン)!!」
何をするのかと思えば雄二はもう一度召喚フィールドをその場に呼び出した。
「ダメだよ雄二、二つ以上は干渉……あれ?」
「どうやら、このくらいの距離なら上手くいきそうだ」
本来、召喚フィールドは複数が近くにあると『干渉』を起こしてしまい、どちらも消滅する仕様となっている。
だけど、今回の場合は離れていた所為か無事に召喚できた。
「しかし、二つも召喚フィールドできるとはな……俺自身の負担が半端ねえが、ここは任せたぞ」
「あぁ! 試獣召喚(サモン)!!」
数学
2-F 吉井明久 12点
&
UNKNOWN UNKNOWN UNKNOWN
VS
UNKNOWN 風見幽香 UNKNOWN ♪幽夢 ~ Inanimate Dream
もう雄二の召喚獣は召喚したところではったりは見破られているわけだし、呼ぶ必要がないと判断した雄二は僕の召喚獣でこの場を何とかしろとご命令のようだ。
まったく、まだ僕は野獣を守る盾のままのようだ。
だけど、それでお姫様を守れるなら……。
「この場は僕が受け持つ!!」
僕の召喚獣を操作し、とりあえず小玉だからこの点数でも木刀で打ち返せる。
「終わりよ、とどめは私が……!!」
しまった、今の僕は隙だらけ、服を着ていないのも同然じゃないか!
風見の声に慌てて対応しようとする。
しかし、彼女は一向に襲ってこない。
どうした? 小粒の弾に当たったか? 何が起こって……!
「…………やってくれるわね、蓬莱人」
僕は風見を見て驚愕してしまう。
「………今だ!」
彼女は僕らの目の前で身動き一つとれなくなっていた。
「こんなもの、力付くで……(無駄だよ)ッ!」
あいつは何か霊力的なロープのようなもので縛られているが今にも引きちぎろうとしている。
だがそれはまるでゴムのような性質をしており風見の力を弱める力があるようだ。
(一つ数えりゃ、抜け出せぬ)
ふと耳に聞こえる声に意識を研ぎ澄ます。
この声は……藤原さん!!
よかった……生きてて、ということはあの炎の翼みたいなのが藤原さんの化身ってことかな。
(二つ数えりゃ、考えすぎる愚者となり)
「……………こうなったら」
風見が何かを仕掛けるつもりだ、けど僕はこの弾幕の対処で雄二の助けに行けない。
あんな無防備で攻めに入ったら、どんなカウンターを食らうか分からない。
「雄二!!」
(三つ数えりゃ……………)
「おい風見」
「何よ、今それどころじゃ――ッッ!?」
「こいつは翔子の分だ、ありがたく受け取りやがれクソヤロウ!!!!」
(………こいつらの苦渋の輪廻から解き放たれる)
――――☆――――☆――――☆
雄二は風見が縛られている内に、真正面から鉄のような拳を食らわせた。
さっきの威力は鉄人にも劣らないほど痛烈なダメージを負わせたはずだ。
現に風見の表情が少し歪んでいるのが見える。
雄二の方はすぐさま間合いを空けるために全力で走る。
「雄二!」
僕は雄二の嬉しそうな顔を見て思わずにやけてしまう。
良かった、霧島さんの分は雄二が直接やるべきだ。
最初は協力する予定だったが、そんなの不公平じゃないか。
「明久か、怪我の方は大丈夫か」
「うん、まだ戦えるよ」
さあ、これから追撃の開始だ! なんとしても謝らせてやる!
あとはあいつの口からあの言葉を吐き出させてやるんだ!
「雄二、今からどうしようか」
状況としては藤原さんが以前風見を縛り続けている。
もしかすればこのまま一気に畳み掛けれるかもしれない。
つまり、攻めるなら今しか。
「どうするもこうするもねーだろ」
雄二も僕と同じ思いだろう。
あんな化け物、倒す機会めったに訪れない。
誰かの助けなしではとても成し遂げられそうも……。
「いいか、俺たちはこのまま間髪いれずにとことんやるぜ」
「おう! このまま一気に! 息をする暇もないまま潰す!」
「……その必要はねえ」
雄二の突然の言葉に目の前が真っ白になった。
「どういう意味だ?」
「フフフフフフフ」
雄二があんな風に笑うところ、初めてみた。
笑い終えると雄二は一旦呼吸を整えてから口を開く。
「逃げ――!?」
僕の知る雄二は、目の前にはいないんだろうなぁ。
うん? どういうことかって? そのままだよ。
「………?」
雄二が何かを言いかけた時、急に僕の目の前で姿を消した。
「あれ? 雄二?」
一体何が起きているんだ……? この状況は何によって起きている?
「雄――ッ!?」
何がなんだか分からないまま、僕はいつの日だったか、経験したことのある感覚に襲われた。
そうだ、僕は今――落ちている。
『あれ、坂本君と吉井君が……あれ!?』
『…………どういうことだ』
『気紛れにしては……らしくないわね』
『おっと、もうそろそろ時間が厳しいところだ』
スペルカードの制限時間が切れ、幽香を縛っていたものが無くなった。
やっと自由になれたことに幽香は喜びを感じている。
『ふぅ……窮屈だったわ』
『だろうな、私もスペルカードに細工をしたから調節が上手くいかなかった』
同時に幽香の後ろについていた翼も消滅。
妹紅は一仕事を終えたような表情で再び太陽の畑に現れた。
互いに顔を向き合わせ、第3ラウンドを始めようとしている。
『私は……どうしよう』
そんなこの決闘に似つかわしくない一人の少女が目的を見失い、戸惑っていた。
『あの二人にこのことが終わったら秀吉たちのこと聞こうと思ったのに……妹紅さん大丈夫かな……隠れてろって言ってたけど、この向日葵なんか不気味なのよね』
騒然と一人する中、彼女たちの弾幕ごっこはまだ終わらなかった。
『これからどうする? 容疑者が行方不明だそうだが』
『場所は分からないけど、協力者なら皆目検討ついたわ』
『そうなのか、私はあんな能力使う奴あまり見たことが無いから不安が募る』
『大丈夫よ、彼女は味方であり、私の敵だから』
『そうかい、んじゃもうちょっと遊んでいくか?』
『そうね……本気で遊ぼうかしら』
幽香が視線をやや空へと向けた。
妹紅はそれに気付き、釣られるように後ろを振り向く。
するとそこにはまるで流星群とも呼べる謎の光の塊がこちらに向かってくるのが見える。
『あれは……弾幕だな』
『それも、並大抵の人では太刀打ちすら難しいスペルカードね』
『どうするつもりだ? 先にあっちをやっちまうか』
『その必要は無いわ、アレは私が打ったものだから』
『売った? 喧嘩をか?』
そうこうやりとりをしている内に徐々に距離を縮める彗星。
近づくにつれてそのスペルカード所持者の姿がゆっくりと確認できる。
『あらら、そんなに眉間にしわを寄せて……』
『そんなことよりやべーぞ、このままだと直撃する!』
『……小さな星屑が大きな箒星になって帰ってきたわね。魔理沙』
『「ブレイジングスター」、ちゃんとスペルカードは宣言したぜ!!』
この日の結末は新聞記者である射命丸文により後日報道されるのであった。
明久たちに起きた奇妙な点については詳しく載せることが出来なかった。
幽香や妹紅、魔理沙に取材を行ったが、どちらも曖昧な答えしか返さなかった。
幽香は何か知っているようだったが話しを逸らされ、このような証言を残した。
『
ここで明久と雄二と風見たちin太陽の畑編は終了します。
そろそろ夏休みも終わりを迎えますので修正作業にでも移ろうかなと思います。
スマホだと投稿するのは厳しいので……いつもスマホは見直し用として活用しています。
次回からの流れがちょっと考えてないので投稿が遅れるかもしれませんがなにとぞよろしくお願いします。