バカと霊夢と幻想郷   作:こきゅー

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第二問

「ただいま」

 

あれから妹紅さんは夜遅くまでずっと秀吉を探索に出かけてくれた。

 

「どうだった?」

 

しかし、妹紅さんの顔が横に振る。

一人で帰ってきたのが秀吉はまだ見つかっていない確証とも言えるでしょう。

 

「そう……」

 

「竹林中を探し回ったがどこにも木下らしき姿は見当たらなかったよ」

 

「となると、秀吉はアタシとは結構離れた場所にいるのかも……」

 

「そうかもしれないな」

 

アタシの話に相槌を打ち、腕を組んだ状態で考え事をする妹紅さん。

 

「今日はもう遅いから明日もう一度探してみるよ。この竹林は迷うばかりか無駄に広いんだよ」

 

「そうね……」

 

玄関前でアタシが入れた麦茶を渡すと軽い口調で礼を言いながら受け取る。

そしてアタシを横切りながら机へと向かう。

ずっと探しっぱなしだったからだろう、きっと疲れてるんだわ。

大きな溜め息を吐くとコップの中身をゆっくり飲み干す。

 

「ん? そういや木下は今日何をしてたんだ?」

 

「特に何も。しいて言うなら家内を調べてたわ」

 

「そうか。家の中、なんもなかったろ? いつもは貧相なもんしか食わないからね」

 

「………不死身だから?」

 

「不死身でも食わなきゃ餓死に近い状態になるな。生き地獄みたいな?」

 

「そう……随分とフランクに話すのね」

 

「まぁね、昔は色々あったからさ」

 

今目の前にいる人は一見すれば普通の人間。

けれど、本当は人間でもただの人間を止めたニンゲン。

 

「………辛くないの?」

 

アタシは思わず口を開いてしまい、喉の奥に潜めていた言葉を思わず出してしまった。

 

「……そうだね」

 

すると今まで家族がいる家に仕事から帰ってきたサラリーマンのような妹紅さんが急にシリアスになっていく。

 

「あ、いや! いいわ、ごめん! 忘れてくれない?」

 

アタシってば何聞いてるんだろ……妹紅さんにお世話になりながらその人の過去まで知ろうだなんて。

人の数だけ問題は抱えているものなのに、それを無粋にも聞き出そうとするアタシって……常識外れだわ。

 

「昔は昔、今は今を楽しんでるんだ。だからもう過去のことなんてちっぽけなものさ」

 

「そう……」

 

そんなアタシに対して、妹紅さんはいつもどおりの雰囲気で私に話を続ける。

 

「御免な、あまりこういうのは人に話す柄じゃなくてさ……」

 

「いえ、元々アタシが悪いんだから妹紅さんが謝る必要はないんです!」

 

「そうか、それじゃ私はそろそろ眠らせてもらうよ」

 

テーブルの上に飲みきったコップを置き、妹紅さんはその場を立つ。

一度洗面所に向かい、寝巻きの格好に着替えるとベッドで横になる。

 

「明日こそ、お前の弟連れてきてやるさ。だかアタシはもう寝よう」

 

「う、うん……」

 

そのまま妹紅さんはアタシを置いて先に就寝する。

ふと壁にかけてある時計を見ると時刻は深夜二時を過ぎていた。

 

「アタシも寝ようっと」

 

夜更かしはお肌の敵、既にアタシはパジャマに着替たのでそのままベッドの中へと潜り込みすぐにでも寝ようとした。

 

「………………」

 

 

「…………………………」

 

 

意識が残ったままアタシはあれから何時間も経過していくのを感じていく。

どうも眠れない。

 

「……やっぱり、気になるわ」

 

妹紅さんを起こさないように小声でぼそっと呟く。

こんな馬鹿げた世界、存在しているなんて思わなかった。

けれど、あの人はアタシたちに出来ないことを平然とやってのける。

そこにアタシは密かに疑問を抱き続けていた。

妹紅さんが出かけていってからすぐだった。

アタシはあれから気になって家の中を調べた、なるべく迷惑のかからないように。

しかし、年代物が偶に見つかるだけで後は普通の家庭と変わらない生活を送っているようだった。

 

「……ここは一体、何なのかしら……」

 

色々考えたが、収集がつかなくなってきたのでアタシはいつの間にか眠りについた。

 

 

――――☆――――☆――――☆

 

「…………ん、ん」

 

アタシはいつものように目を覚ます。

けど、いつもより目覚めが悪い。

あんまり眠れなかったからかしら……。

 

「………?」

 

まだ眠いアタシは目をこすりながらゆっくりと視界を開けていく。

するとアタシは妹紅さんの家で寝ていたはず……なのに、記憶に無い場所にいた。

 

「あれ、ここは……?」

 

あまりにも変だ。

目が覚めたというのにまだ意識がぼんやりする。

すると目の前に一人の少女が通り過ぎるのが見えた。

 

「あの子は……丁度いいわ」

 

アタシはそのままの格好でその子供を追いかけることにした。

しかし、ここはあまりにも現実的ではなかった。

まるで宇宙にでもいる感覚。

それでもアタシは素足で追いかけている。

また夢でも見ているのかと思えてくるほどだった。

 

「はぁ、はぁ……ねえ! ちょっとキミ!」

 

途中でその少女は走り出し、アタシは慌てて後ろを走って追いかける。

数分ぐらいでその子との距離は縮められた。

 

「なに?」

 

振り返ったその子はあまりにも平民とはかけ離れた存在、そう感じれた。

着物姿に周りには五つの物体がふよふよと浮いている。

 

「ちょっと聞きたいんだけど、いい?」

 

「あまり時間をとらせないならいいわよ」

 

許しも得たことだし、アタシは早速ここがどこなのか尋ねることにする。

 

「あのね、ここはどこなのか教えてくれない?」

 

「さあ? どこかしらね」

 

しかし、アタシの期待する返答ではなかった。

 

「キミも分からないの……」

 

だとすればここは一体……夢だと思っていたけれど、一向に夢から覚める気配が見えない。

 

「ふふふ……アナタ、そんなのんびりしていていいのかしら」

 

「どういう――!?」

 

少女が最後に放った言葉を残すと突如体に異変が起こる。

頭が痛い……何が起こったのか理解が出来なかった。

アタシは痛みに耐えることで必死になる。

他の事を考える余裕がないほどに頭痛は続いていく。

 

「――ッ!」

 

激しい頭痛に耐えている中、ふと脳内に浮かんだ数字。

それがゼロから始まりどんどん数を増やしていく。

 

「………?」

 

するとなぜか徐々に頭の痛みが引いていった。

しかしこの映像が脳内から離れはしない。

アタシはそのまま精神を研ぎ澄ましたかのように集中を続けた。

 

「んッ!!」

 

ある数を境に再びアタシに頭痛が襲い掛かる。

一体これは何なのよ……早く、夢なら覚めて!

 

「……んぁ……いッ………」

 

数字が三桁になるとそれはアタシの頭の中でゆっくりと加速し始めた。

 

100……

 

200…………

 

300………………

 

「…………ふぅ」

 

またもや謎の頭痛の軽減により安堵する。

アタシはふと目の前にいる少女に目を向けた。

 

「……あれ?」

 

あたさは目の前にいたはずの少女に会った。

ついさっきまですぐそこにいた。

けれど、その女の子はいなかった。

 

「大丈夫?」

 

「え、えぇ……」

 

小さな子供だった女の子の代わりに、見知らぬ十代前半と思われる女の子が目の前にいる。

 

「うぅッ!」

 

また痛みが戻ってきた……それと同時にまた数字も加速する。

何度も繰り返してきた所為でもう限界が近づいてきた。

頭の中が思わず真っ白になってしまいそう。

意識が飛んでしまってもおかしくない。

けれども流れてくる映像ははっきりと頭に残っている。

 

(これは……誰?)

 

「おーい、大丈夫?」

 

ふと声が聞こえる方向に目を向ける。

するとさっき会ったばかりの女の子が心配そうな顔を覗かせる。

 

「何とか……」

 

前とは口調が少し違う感じがするのは気のせいだろうか。

頭痛はどうやら治まったみたいだ……『数字』が四桁を超えた辺りで突然何事もなかったかのように平然としてられる。

アタシの目の前にいるこの子、容姿は最初に会った小さな女の子とは違い、二回目に会った中学生くらいの女の子。

けれどなぜかしら……別人とは思えない。

まるで初めの少女が時が経ち、成長したかのような……。

 

「なにぼけっとしてんのよ、そんなに殺されたいの?」

 

「へ?」

 

背丈が伸びているだけでなく髪もロングヘアーで床まで付きそうなくらいの長さまで伸びている。

そんなお姫様のような女性とも言えるこの人は今、アタシを殺そうとしている?

 

「隙だらけじゃない、あんた、真面目にコロシアイするつもりあるの?」

 

「ちょちょ、待った!」

 

頭痛の次は殺人!?

訳が分からないわよ、変な映像が頭の中を離れないし、一旦整理したいってのに!

 

「待ったなし、そんなの『輝夜』の辞書に載ってないわ。ねぇ……――。」

 

その直後だった。

 

「ッッ!!!!」

 

一瞬、何が起きたか分からなかった。

声にならない悲鳴でアタシは目を覚ました。

気がつくと私はベッドの上で汗をびっしょりとかいている。

周りを見渡すと見慣れた家。

ここは妹紅さんの家だ……つまりさっきのは夢だったということになる。

 

「………一度整理しましょ……」

 

そう、あの夢の中で頭痛の最中ずっと離れなかったあの映像。

あそこにいたのも幼い子供だった。

けれど、初めに頭痛が襲ってきたとき、その子は笑っていた。

幸せな家庭に元気いっぱい生まれてきたその女の子は精一杯自分はここにいるよと証明するように産声を上げる。

 

次に変な『数字』が頭に浮かんできてから、その子は成長していく。

どんどん世の中について学び、遊び、食べる。

普通の子供のような生活。

が、それも長くは続かなかった。

 

次の記憶では、その子は泣いていた。

 

どこかの山頂と思えるところで泣いていた。

 

そしてその子はどこかへと去っていった。

 

「その間もずっと頭が痛くって……」

 

それからは……記憶が薄れていてうまく思い出せない。

アタシは頭の中の記憶を頑張って探った。

少し経つと、その女の子の映像が思い浮かんだ。

 

映像の中の女の子は外見が変わっていた。

白い髪に包まれ赤い線の入った白いリボンをいくつも着けている。

その女の子は何かと戦っているような姿で頭に残っていた。

ふと顔を思い出すとアタシは一人の女性にたどり着いた。

 

「これって……妹紅さん?」




今回はミステリーな感じで。

こういうの初めて書いたのでどういうことなのか分かれば幸いです。
勿論、東方の知識をある程度必要ですけどね(今回は藤原妹紅だけでも詳しければ大丈夫と思います)

それでは次回が夏休みに投稿する最後となりますね……orz
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