バカと霊夢と幻想郷   作:こきゅー

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第四問

そのときの妹紅さんは笑っていた。

アタシのことを横目にもせずに全力で、笑顔を絶やさずにいた。

それは不気味とも思えたがアタシは幸せで溢れる笑顔なんだと思う。

しばらく笑い続けた妹紅さんは我に戻ると恥ずかしそうにベッドに座る。

 

「あ、あは……すまない、取り乱した」

 

「気にしないで、さっきのあなたとても楽しそうで嬉しそうだった」

 

彼女にとって人の何百倍の人生を歩む中、そう楽しいことばかりじゃない。

悲しいこと、辛かったこと……そういうのも何百倍味わう命。

妹紅さんはきっとお父さんの仇を取れたのだと思った。

 

「よし! だんだん落ち着いてきたことだ、行ってくる!」

 

そういい残すと勢い良くドアを開けるとそのまま飛んで行ってしまった。

いってらっしゃい、そんなことを言う暇もないほどに。

そして一人残されたアタシはクスリと思わず笑みがこぼれだす。

なんだかんだ言ってもまだ子供なのね……。

 

「アタシはどうすればいいのかしらね……ふふっ」

 

――――☆――――☆――――☆

 

「ただいま……」

 

おやつ時に意気揚々と出て行った妹紅さんがなぜか落ち込んだ様子でゆっくりと戸を開け帰ってきた。

何かあったのかしら……アタシは思わず傍にかけより聞いてみることに。

 

「どうしたの? 殺せなかった?」

 

この質問もどうかと思ったけど、彼女たちでは日常茶飯事なのよね……どこか違和感がひっかかるわ。

 

「いや、門前払いされたよ」

 

「どうして?」

 

アタシはまだ輝夜のことをよく知らない、しいて言っても夢で見たぐらいだ。

妹紅さんの話を聞く限りでは意地汚く他人を汚らわしい存在と思ってそうな感じだけど。

そうね……養豚場の豚を見るような目……こんな感じかしら。

 

「話せば長くなるんだが……」

 

モヤモヤとした様子で妹紅さんに何が起きたのかを説明してくれた。

 

 

 

 

少女説明中...

 

 

 

「背後で頭を殴られた!?」

 

「正確には頭突きだな……あれはぜってー慧音の仕業だ」

 

「慧音って、確かあなたの知り合いの?」

 

「そうなんだよな……私の推測が正しければ慧音が永遠亭にいたことになるだが……まぁその理由は今から話そう」

 

慧音というのは妹紅さんの唯一心を開かせた存在らしい。

秀吉のことを言い出す前にアタシはその人のところに保護される予定だったし。

 

「実は永琳に慧音から伝言を預かってな……」

 

一息つくとさっきまでの出来事を全て話し始めた。

 

 

「……いって~なぁ、今日はついてないよ」

 

いきなり後ろからゴツンだもんなぁ……あれは間違いなく慧音の仕業だ。

しかしなんで慧音がこんなところに……。

 

「そこの放火犯さん」

 

ふと聞こえる声に目を向けると輝夜の側近である永琳がいた。

 

「私は燃やしてなんかいないよ」

 

「今日は良い天気ね、誰かさんが屋根を吹き飛ばしちゃったからよく見えるわ」

 

「は、ははは……そうだな」

 

「どう責任とってやりましょうか……目の前に実験体がいることですし、新しい試薬でも」

 

目が死んでる顔で試薬とか言われても絶対コロス気だろこの人。

それはいかん、いくら死なない私だからといってアイツの試薬は一度飲むと走馬灯をみる羽目になる。

 

「まままま、待ってくれ! 悪いのは全部輝夜なんだ! あいつから喧嘩売ってきやがってさ」

 

「だからといって、私たちまで巻き込まないでくれる? これじゃ患者が入院できないじゃないの。幸い診察室は無事だったけど」

 

「すまん、つい頭に血が昇って……」

 

「はぁ……まぁいいわ」

 

「ホントか!?」

 

いつもなら矢が飛んでくるんだが珍しいこともあるもんだ。

 

「言っておくけど、条件付きだから」

 

「あ……永遠亭直せとかそういうのか?」

 

「いいえ、違うわ。姫様が原因なら試薬は姫様に飲ませるから、安心して頂戴。ここはウサギ達と姫様で直させるから」

 

「え? まぁ、アイツが苦しむ姿が見れないのは残念だが……」

 

ついでに輝夜と殺し合いもできないことにも残念だな。

しかし、私は永琳の言動にどこか疑問が生じる。

 

「どうかした?」

 

「いや、気紛れにしては妙だなって。あんたはいつも輝夜の味方だったじゃないか」

 

「味方が敵になることもあるのよ。今回に関しては姫様の過ぎた悪戯だったんでしょ? なら、教育者としてしっかりしつけないと」

 

そういうことなら仕方ない、輝夜の苦しんでる姿を脳内で思い浮かべでもしますか。

 

「そ、そうか……ありがとよ、胸のうちがすーっとするぜ」

 

「さて、それじゃアナタのやってもらいたいことをそろそろ言っても良いかしら?」

 

「あぁ……いいよ」

 

すっかり忘れたが、一体何を私に頼むんだ?

この前は鈴仙の代わりに鈴蘭畑に摘みに行かされたが……私にしかやれない危なっかしいこと頼むんだろうなぁ……。

少し鬱になりながらも永琳からの頼みごとを聞く。

 

「それでは妹紅、あなたは今から吉井明久たちの援護に回ってくれる?」

 

予想外の言葉を耳にした。

驚きはした、けれどまずはその名前の人物を割り出さないとな……ん?吉井?

 

「吉井明久? あぁメイドと居た外来人か」

 

「あら、知り合いだったの。なら話は早いわ。その人たちが危ない目に会ったら守ってあげて」

 

「ほう、永琳ってそんな柄だっけ?」

 

「私も怪我とかさせたくないけど、なにより一番あの子たちを思っている人がいるのよ」

 

「もしかして慧音か?」

 

「あら、察しがいいのね。それとも本人から聞いて……いやそれはないか」

 

おそらく伝言の内容を言った時の私のリアクションを見ての判断だろう。

一旦ひらめかせた顔を浮かべたがすぐに素顔へと戻る。

 

「慧音なら多分会ったぞ」

 

「あら、そうだったの」

 

「私がこんなところで突っ立っていたのが理由さ」

 

「ふーん、そうだったの。それじゃ用件は伝えたから私は永遠亭の修復作業に入るわ」

 

「あ、あぁ……それじゃ慧音に会ったらこう伝えてくれ。「分かったよ」ってな」

 

 

「………とまぁこんなことがあってだな」

 

妹紅さんの話が終わり、大体のことは飲み込めた。

だけど考えるより思わず言葉に出してしまう。

 

「吉井君? 坂本君まで?」

 

「なんだ、知り合いなのか?」

 

「え、ええ……同じ学校の同級生よ」

 

「そうか……もしかしたらあんたの弟も一緒にいるかもな」

 

「その可能性も捨てきれないわね」

 

寧ろそっちの方が何倍も良いんだけど……直接会うまでは心の奥底に最悪のケースを考えてしまう。

 

「それじゃ、早速出かけるか?」

 

妹紅さんが親指を玄関先に立てる。

笑顔で問う彼女はアタシの安堵の気持ちを読み取っているのかもしれない。

吉井君たちならきっと秀吉を見付けてくれていることだし。

 

「そうね、今すぐに――あっ!」

 

「ど、どうした?」

 

「いえ、折角ここで数日お世話になったことだし掃除でもしないと」

 

「いや、別にいいよ。ここには私しか住んでないから」

 

「で、でも……」

 

「私はがさつな女だから気にするな」

 

押しに押されアタシは自分自身に不本意と思いながらもそっちを優先させることにした。

全く、妹紅さんも女の子なんだから少しは部屋を飾ってもいいと思うけど……。

 

「さぁ、急がないと見失うぞ」

 

最後の一声をかけられ、決心がついた。

 

「それもそうね……それじゃ今すぐにでも!」

 

そうと決まればすぐにでも探し行くわよ!

吉井君たち待ってなさい……秀吉の知ってること全部吐き出させてあげるから。

 

 

――――☆――――☆――――☆

 

妹紅さんと共にとりあえず人里という場所を目指すため竹林を抜ける。

あれほど長く広い竹林も本筋を通ればいくらか短縮されるのね……脇道にでも逸れてたのかしらアタシ。

迷いの竹林と言われるくらいだからどうあがいても正しい道を歩くことは不可能なのかも……どういう原理なのかしらね、こういうダンジョンっぽいのって。

 

「付いて来てるか?」

 

妹紅さんの後ろにぴったりといるわよ、ちょっとでも離れると命取りですもの。

アタシは軽く返事をする。

 

「もう少しで抜けるぞ」

 

「そう……」

 

出口が近いと報されるとアタシは秀吉の目撃証言、もしくは一緒に居ることを確認。

妹紅さんは吉井君たちのボディガードを勤めるようだ。

 

「妹紅さんって、ほんとお節介よね」

 

「そ、そうだな……丸くなったというのかな」

 

ここからは顔が見えないが、指で頬を掻く仕草が見える。

おそらく今苦笑いをしているのかな。

 

「妹紅さんって普段は何してるの?」

 

「いつもは木下みたいな遭難者を救護する活動、たまに慧音の手伝いをしてるかな」

 

慧音とは聞くけど、どんな人なのか正直聞いてなかったわね……気軽に話しでも。

 

「慧音ってどんな人なの?」

 

「慧音か……人里で寺子屋の教師をやってるよ。アイツとは竹林で偶然出会ったんだ」

 

「竹林で? 慧音さんは迷わなかったのかしら」

 

「竹林は人里とそう離れてないからな、もしかすると危険区域かどうか調査するためにもぐりこんだのかもな」

 

「もしかするとって、覚えてないの?」

 

「何百年前の話なんて覚えてないからなー、忘れちゃったよ」

 

……ん? どこか言葉を曖昧に濁すようにごまかしているように見える。

何か隠しているのかしら、それとも人に話す程度じゃない?

もしかすると本人にとって恥ずかしい思い出でもあるとか?

 

「お、抜けたぞ」

 

考え事をしている内にいつの間にか竹林を抜けていた。

目の前に広がるのはどこまでも続く無限回廊のような景色だ。

青々しい草原が風をつれて独特の匂いをかぐわせる。

一歩脚を踏み出すとふわりと踏み潰す感覚を新鮮に思う。

ん~いい空気ね。田舎ってこんな感じなんだろうな~。

 

「ここから更に歩いていけば人里だ。永琳によると慧音と一緒に帰っていったと言っていたが」

 

「いいじゃない、早く行きましょ。方角あっちよね?」

 

「あ、こら! ちょっと待て!」

 

体がふわふわ浮かべるような気持ちで妹紅さんを置いて思わず走ってしまう。

といっても飛べるからすぐに追いつかれてしまう。

むぅ……複雑な気持ちだわ。ま、まぁ早く行きましょうか、ようやく見付けたアタシの数少ない到達点の内の一つなんだから。

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