課題がめんどくさすぎたり紅楼夢で頭が一杯だったり、疲れて書く気力がなかったり……。
『――以上が、私共の発表です』
『そんなこったろうと思ってたよ。アナタの異論は結論しかなっていない』
『科学より優れている、そんな事実はあってはならない』
『…………』
『これより、本日の議論を終了します』
『…………くそが』
『……大丈夫ですか?』
『……ありがとう、私の顔色なんて見なくて良いのに』
『いえ、アレさえ上手く成功していればこの世界に存在表明が出来るのに……』
『今日はとりあえず帰りましょう。明日から計画を練るわよ』
『……へ? 計画って……なんの?』
『決まってるでしょ、もう一度行くのよ。データ採取にね』
『で、でも……もう諦めたほうがいい気がするぜ?』
『私は諦めないわ、科学が人を救うなんて……その為にも彼女たちの力が必要なの!』
『……まぁ、私はどこまでもご主人様についていきますけどね』
『ありがと。それじゃ今日はここで、また明日』
『は~い』
――――☆――――☆――――☆
「さて、ここが人里だが……」
妹紅さんが溜め息混じりに呟きながら苦悩の表情を浮かべる。
それもそのはず、ついさっき空が急に異変を起きたのだから。
いきなり光線が空を撃ち抜くなんて……聞いたことないわよこんなの。
「どうするの? もしかしたら吉井君たちはあの発生源にいるかも」
「それならヤバイな……外来人が弾幕ごっこをやりあうのはキツいぞ」
「彼はいつも厄介事の中心にいるからね……」
ってそんな呑気なことを言ってる場合じゃない!
アタシ一人じゃ何も出来ないけど、妹紅さんと協力すれば助け出すことが可能になる。
「妹紅さん! お願い、吉井君たちを助けに行きましょ!」
だけど、こんなこと尋ねることすら無駄に思えるほどの清々しく返事をしてくれる。
「当たり前だ」
そういうと妹紅さんは一目散に現場へ向かっていった。
流石というべき速さで、あっという間に距離を離されてしまい置いてかれる。
「ちょ! 待って!」
これじゃさっきの逆じゃない……妹紅さん一人に全てを任せるつもりはない、アタシは急いで後を追う。
息が乱れるくらい全力で走って追いかける。
こんなに本気で視界がグラグラゆれるほど走ったのはいつ以来かしら……。
――――☆――――☆――――☆
「えっと……こっちでいいのよね」
完全に妹紅さんを見失うとふと自分がいるこの道に不安がふつふつと湧いてくるようになる。
知らない世界で道に迷うというのは既に経験済みなアタシにとってそれは恐怖以上の出来事。
「方角的には合ってるはずだから……このまま進んでいけばいいはず」
体力的にも限界が来てからアタシは歩いてその場へ向かっている。
回復してきたらもう一度走るつもりだけど、多少焦燥感に襲われつつあるので走れずにいた。
それから数分ぐらい歩いていくととある場所へと辿り着くことに成功した。
そこからは爆音が耳に乱暴に入ってくる。
戦車で砲撃しているかのような重い音もあればピストルで撃ったような軽く、速い音もする。
今アタシの視界には向日葵が邪魔でよくは見えていないけれど、ここを抜ければきっと戦場なんだと察した。
「もう妹紅さんは着いているのかしら」
アタシは慌てて向日葵畑の隘路を潜り抜けてこの目で確認をしようとした。
アタシの予感が当たればきっと吉井君たちもここに……ようやく秀吉へのヒントが見つけ出せる。
そう思うとアタシは重いはずの足取りが軽くなっていた。
(ホントはとっても怖い……けど、こんなところでくたばるわけには行かないのよ!)
そう自分を奮い立たせ、命の奪い合いが行われる戦争へと着々と脚を踏み入れる。
もしもアタシが殺されたりしたらどうしよ……被弾でもしたらただではすまないこともあるって妹紅さんが言ってくれた。
だからなるべくなら安全圏で探したかったのに……もう、あの学園は疫病神とか居るんじゃないの?
迷いの竹林のような大きく伸びた向日葵の間を潜り抜けている途中だった。
何かが見えてきたので、アタシは咄嗟に出口かと思いスピードを早めた。
するとその最中になにやら見慣れた顔がアタシの目に飛び込んできた。
「吉井君と坂本君!?」
アタシの予想はずばり的中していた。
しかし、その予想より結果は酷い有様となっている。
坂本君は意識を失って、吉井君は見た目は今にも倒れそうな様子だった。
だけど、アタシは大丈夫だと悟る。
それは吉井君が頑丈だからとか、タフだからとか、そういうのじゃない。
彼の隣で妹紅さんがいたからだった。
「妹紅さん……」
良かった、道合ってて。
さて! 吉井君たちがなんでこんなところで悲惨な状況を作り出しているのか分からないけど、アタシに出来ることをするだけよ!
「坂本君! 坂本君ってば!! ほら、起きなさい!」
とりあえずアタシはそこでへばってる坂本君の意識を回復させるために顔をペチペチとビンタしたり体をゆすってみたりした。
同時に必死に呼びかけも忘れずに何度も目を閉じている坂本君に声をかけた。
「吉井君が頑張ってんのに、あんたはそこで呑気に睡眠でもとっていいわけ!?」
しかし、彼は一向に目を覚ます気配が起きなかった。
体中を良く見るとそこかしこに傷やあざのような物が目に映りこむ。
吉井君の怪我もそうだけど、坂本君も相当重傷だった。
けれど、それなら尚更アタシは起こさなければならない。
「いつまで寝てるつもりなの!?いい加減目を覚まして!」
吉井君ですら必死に困難に立ち向かおうとしているのに、坂本君の性格上そんなことは多分許さないだろう。
なら、アタシはFクラスの代表をなんとしても戦線復帰させなければならない。
そんな使命感のようなものがアタシを行動に移している原因なんだろう。
「………んぐ」
「起きた!?坂本君!」
そして想いは届く……何度だって諦めないで繰り返し、続けていればきっと願いは叶うのよ!
「……お前は…秀吉?」
「まだ寝ぼけてるみたいね、ちょっとしびれるけど我慢しt――」
「悪い、謝るからそのスタンガンをひとまず地面に置いてくれ」
この男は何を色々台無しにしてくれちゃってるのかしらね。
「――折角代表から一つ護身用に貰ったのに」
まさかこんなところで取り出す羽目になろうとは思わなかったな……。
「木下さん!!?どうしてここに!」
坂本君が目を覚ましてすぐのこと、吉井君がアタシに気付いたみたいだ。
今まで戦闘に夢中になって気付かなかったのかしら……まぁ、この無駄に成長しきってる向日葵が視界に入らなかっただけかもしれないけどね。
「ちょっと妹紅さんのところにね。って今はそんなことより、吉井君は戦闘に集中しなさい!」
「うん、分かったよ!」
「木下……すまない、今は落ち着いて話が出来そうにない。またあとで会おう」
それぞれ傷を抱えながらも勇敢に向日葵畑の中央へと戻っていくその後ろ姿をアタシはただただ見つめることしか出来なかった。
色々聞きたいこと、あったのになぁ……アタシってば、こんな性格だったっけ。
自分はいつも周りと比較して生きてきた。
勉強だって、ライバルが沢山居るから頑張ってこれた。
追いつかれないように、抜かされないように、見捨てられないように……。
だからそれ以前の人間なんて眼中にすら入らなかった。
「それが今では、こんなだもんね……」
Fクラスなんて、烏合の集い程度の生き物としか見てなかったけど、あの二人に出会ってからその概念は大きく狂わされた。
アタシは間違った問題は分かるまで解答集とにらめっこする。
けど、これはどんなに捻っても分からない、理解不能だわ。
彼らのことも、アタシの事も――。
「おっと、危ない危ない」
我に返り、自分が置かれている状況を再確認する。
ここは少し戦場から離れているけど飛び火がかかる距離。
早くここから動かないと被弾する恐れがある。
「とりあえず、こっちに!」
アタシは一人で向日葵から遠くに移動を開始した。
その際にも、アタシをまるで鳥かごの中にいる鳥のように逃がさないとしているような向日葵が行く手を阻む。
「もう、うっとおしいわね!」
断ち切りバサミか何かがあればちょん切ってやるのに! あーもう、イライラする!
いつの間にか歩幅を広め、早く歩くようになっていた。
前にある向日葵をもろともしないようにした所為だろうか、どんどん吉井君たちと距離を置く。
「……ここまできたら安心よね」
とりあえず季節外れの異常なオバケ向日葵の群れを抜け、草原へと出た。
人里方面ではない方向に出てきちゃったみたいね……。
ここからなら広い空を見渡せるわね。
もうすぐ日が落ちそうになると風が秋を運んでくる。
「うぅ……少し肌寒いかも……」
早く弾幕勝負というの終わってくれないかしら……さっさとやっつけちゃえば良いのに。
敵はどこの誰だか知らないけど、妹紅さんがいるから百人力でしょうね。
だって、死なないんだから、これはもう最強の助っ人よね。
「吉井君、早く片付けちゃいなさいよね……」
「それはどうだろうな」
「!!?」
突然、草陰から誰かの声が聞こえた。
ガサガサとゆれ始める不自然な動きはそこに誰かがいるのだと察知した。
「だ、誰!?」
アタシはその方角に向けて大声で尋ねた。
不意な出来事なことで不安が一気に心の底から湧いてくるのが実感する。
敵の仲間? それとも味方?
そんな誰ともしらない正体不明の存在に恐怖した。
「彼らは見たところ外来人、勝てる望みは限りなくゼロだったでしょう。しかし、藤原妹紅の参戦により戦況は大きく傾く。それは彼女が純粋に強大な力を持ちすぎているから。しかしそれは彼女の武器にもなれば自らを滅ぼすかもしれない」
流暢に話しながらゆっくりと近づいてくる人影がはっきりと見える位置に近づいてくる。
その特徴は胸に大きなリボンを付け、髪から下まで全て赤を纏っていた。
「……えっと、どちら様で?」
「アタシの名前はどうでもいいだろ? アナタが知りたい情報は敵か味方か……」
どこか哲学的な彼女はずうずうしくもアタシの質問を塗り替えようとしてくる。
こういう自由な感じが多いのかしら、この世界の人間って。
とりあえず、敬語もめんどくさくなってきたから、普通に話すことにした。
「それでいいわ、あんたは敵なの? 味方なの?」
「そうね、どちらかといえば敵だわ」
「なんですって……」
思わず脚を後ろに引いた。
本能がアタシに逃げろと呼びかけている。
幻想郷でいかにも頭の中身がやばそうな相手に狙われるなんて御免だわ。
「おっと、動くんじゃないぜ?」
「!!?」