バカと霊夢と幻想郷   作:こきゅー

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物語りも終盤になってまいりました。




バカと黒幕と幻想郷
バカとテストと夢幻伝説~第一問~


僕はごく普通に生まれ、これまである程度普通な人生を過ごしてきた。

小学生の頃から僕はバカ丸出しで、みんなの笑いものにされてきた。 もちろん、いい意味でだよ?

入学式のときも、セーラー服を着ていっただけなのにすごく笑われた。 ちょっと制服が無かっただけだというのに。

けど、高校生になって二年目、僕の人生の歯車は大きく進路を変えた。

 

「…………」

 

僕は文月学園に入学した。 きっかけは進学校であり最近出来たばっかりでなにやら新システムを導入したという理由で入学金が安かったから。

僕は入学して、一人暮らしをして、平穏な日々を送れたらと思っていた。

けど、僕はどうもおせっかいをやいてしまう。

葉月ちゃんを助けた代わりに僕は史上初の『観察処分者』に認定されてしまったのだ。

 

「…………色々あったなぁ」

 

今、僕は不気味な感触のする床で寝転がっている。

過労のため、深い深い眠りに落ちようとしている僕は決して目を開けることはないだろう。

 

 

「……このまま暫く寝てもいいよね、みんな」

 

姫路さんと霧島さんを無事に救出できたんだ、あとはもう霊夢にでも頼んでみんなで帰らせてもらおう。

もう精一杯頑張ってきたんだし、僕のお願い聞いてくれてもいいよね?

 

『………まだだよ』

 

ふと、僕の耳に聞こえてくる不思議な声。

本当に不思議だ、だって僕の頭でもこれは普通ではありえないんだって分かったんだから。

僕は口を開いていない、さっきのも独り言だ。 なのに、僕に問いかけるように聞こえた声は『僕の声』だったんだもん。

 

『……ねえ、僕……』

 

「何を言ってるのさ、僕は僕だよ」

 

『そうじゃないんだ、君は僕であり、僕は君なんだ』

 

あー、ダメだ。 僕の頭の容量がこれ以上入らないと警告音を鳴らしている。

一体全体どういう意味なんだろう、そんな風に考えたりもしたが思うように思考が働かないでいた。

 

『……まだ終わってはいない』

 

「何言ってるんだよ……もう終わったんだんだ。いや、終わらせた」

 

『あの戦いはただの序章に過ぎないんだ……』

 

まるで目の前にいるかのようにか細く今にも消えてしまいそうなもう一人の僕となのる謎の生命体は何もかも見てきたかのような言い草をする。

一目見たい、そんな気持ちがふつふつと僕の中で湧いてきた。 けれど、眠気の方が勝り体も上手く動かせないでいた。

僕はただもう一人の僕と会話することしか出来なかった。

 

「ねえ、僕、もっと教えてくれないかな……」

 

『そうしたいんだけど、あまり時間がないんだよ』

 

「そうなんだ……なら仕方ないね」

 

『まったく、僕ってばこんな呑気だったかな……』

 

こんな複雑な感情を抱いたのは初めてだよ、まさか同じ僕にバカにされるなんてね。 

 

『……まだ幻想(ゲーム)は終わってはいない』

 

「……え? ゲーム?」

 

『そうだよ、だって僕はまだラスボスを倒していないじゃないか』

 

「そんなの、コードを抜くだの電源を切るでもいいよ」

 

『そんなことしたら普通消えちゃうと思うんだけど……』

 

なんだかね、今の僕は無気力なんだよ……これまでこの世界に来て色んなことを経験した。

この世界の住民がどんな風に思って過ごしているのか、この世界がどんな秩序で保たれているのか……おおよその事は学んできたつもりだよ。

姫路さんたちも今は秀吉たちと居るはずだし、僕はここで少し寝かせてもらうよ。

 

『……そろそろ僕は行かなくちゃいけない。僕はどうしたいのか自分で決めればいいよ』

 

「……うん、少し休んだらちゃんと起きるから」

 

姫路さんの安心した様子をこの目で見てみたい。 あの笑顔溢れる素敵な笑顔をもう一度……そう思うと不思議と力がみなぎってくる。

勿論、美波や秀吉、葉月ちゃんや皆に会いたい……そんな気持ちが自然に溢れてきた。

 

『その意気だよ。……それじゃあね、――』

 

「……え? 今なんて――」

 

その後、僕は意識が途切れ深淵の闇へ落ちていくかのように眠りへとついた。

 

それから暫くして、僕は意識が戻った。

 

「……あ………」

 

それは誰かが僕を呼んでいる声のせいだった。 しかし体が重く全身がだるい、僕は口を開くこともなく無視することにした。

 

「お………ひさ……」

 

僕を呼ぶ声はしつこく何度も僕を起こそうと呼びかける。

今の僕はそういう気分じゃないというのに、だんだん声の特徴がはっきりと伝わってきた。

この感じ、野太い声で聞くだけで吐き気がするほど憎たらしい声。

こんな声で起こされたその日には占いランキング十二位を堂々とテレビで知らされることとなるだろう。 そうなってはおしまいだ、朝から水溜りを足をどっぷりと浸かったり犬の尾を思いっきり踏んでしまったり不運が尽きない日となるだろう。

だからそんな声にはこんな態度で良いだろう。

 

「おい明久、起きろ」

 

「うるさいなーもう少し寝かせろよー」

 

 

ブッチン(何かが切れた音)

 

 

ゲ ン コ ツ !

 

 

何かコードのようなものが切れたと思った時にはもう遅かった。

 

「Ρx☆ctf$аΕ!!」

 

僕の頭上で振り下ろされた鉄球のようなものが僕の頭にすとーんと落ちてきたかのような鈍い音と共に感じたことの無い痛みがじんじんと痛む。

その痛みに耐えられるわけはなく、今の僕は水面に跳ねる飛び魚のように暴れていた。

 

「うぉぉぉ!!おぉうぅあpじゃj:£!!」

 

「ったく、うるさい魚だな」

 

何か不快な声がふと耳に聞こえる。 この声は僕を何度も起こしてきた声だ。

僕は憎しみだけで痛みに耐え、声のする方角へと向けると腹の底から怨念の声を出す。

 

「キサマか雄二ィィィーッ!!!」

 

「おう、いい朝をお届けしてやったぜ。感謝するんだな」

 

てめぇのモーニングスマイルなんざぁ見たかねえよこのヤロウ!!

 

「んー、少し強く殴りすぎたか」

 

「そうだよ! もう少し手加減してくれてもいいだろ!?人を起こすときのパワーじゃないよこれ!」

 

少しは手加減をしっているかと思ったがこんなにも痛覚が激しいのは慧音先生の頭突き以来かもしれない。

 

「さて、落ち着いてきたところで明久よ」

 

「まだ痛みで全身麻痺みたいになってるんだけど!?」

 

僕は頭を両手で抱えているにも関わらず話を進めようとしている。 コイツの外道っぷりを改めて素肌で感じさせてもらったよ……。

 

「ここ、どこだか分かるか?」

 

「あぁ? ここ? そんなの知るか!」

 

「なんだ、覚えてないのか」

 

これ以上は僕の理性が持ちそうにないので、とりあえず雄二の言われた通りにする。

雄二がまたもや僕を呆れたような様子で僕に尋ねてくるけど、ここがどこなのか知っているのか?

僕がのた打ち回ってる内にわずかに視界にこの場に関しては映っていたが、もう一度今度はゆっくりと辺りを見回してみる。

僕らが居る今この場所は……あれ、どこかで見た記憶があるぞ。 僕の中でぼやけていた記憶の断片が繋がりそうになる。

 

「お? 思い出してきたな。よしもう一発」

 

「雄二、冗談だからその拳はもうしまおうか」

 

もう、頭に手をかかえて思い出すことに集中してるんだから邪魔しないでほしいよ。

えっと……この場所は何度か見たことがある、これは僕が実際に連れてこられたからだ。

そして、それはつい最近の出来事でありまだ記憶に鮮明と残っていた。

この時空が歪んでいるような壁や床、そこらじゅうに不気味に瞳がみつめているように思えてくる奇奇怪怪な場所。

こんな芸当出来る奴はアイツの仕業だと悟った。

 

「はいは~い、呼ばれた気がしました~」

 

僕が予想した直後、不意打ちに僕らにとって不愉快な声が耳に入りこんでくる。

僕たちを辺境の地へ連れてきた張本人。

どこから出てきたのか分からない神出鬼没なアイツはまさに僕らにとってラスボスと言えるだろう。

 

「来たなラスボス! お前を倒して元の世界に帰らせてもらう!! 雄二!」

 

アイツさえ倒し僕が勝者となれば僕らを元通りの生活に戻れるんだから全力で倒しにかかる。

ステージも雰囲気でてることだし、あの夢で伝えたかったのはこのことだろう。

僕は目の前で浮いているのか何かに座り込んでいる姿勢で頭上にいる八雲紫に決戦を挑む。

しかし僕は所詮ただの人間だ、戦う術はないだろう。 でも、文月学園で授かったあの力を使えば――。

 

「雄二! 早く白金の腕輪を発動させて!」

 

僕たちを悠長に眺めながら余裕ぶった表情を浮かべる八雲さん。

今からその顔がどんな風に歪むのか楽しみだな~。

 

「私を倒すのは構わないけど、それでいいの?」

 

雄二がもたもたしてるのかなかなかキーワードを唱えてくれない間、八雲さんが何かを言い出す。

 

「なんだ? 僕にビビッて命乞いか?」

 

「命までとるとは……明久も外道になったもんだ」

 

「雄二ィ! いつになったらフィールドを出してくれるんだ!」

 

こうしてる間にも八雲さんはどこかに消えてしまうかもしれない、決着をつけるには今しかないというのに!

姫路さんたちを傷つけたこんな世界なんてさっさとおさらばしたいのに!!

 

「明久、熱くなりすぎだ。もう一度殴ってやろうか?」

 

「ふざけるな! そもそも雄二が僕の頭を拳骨してきたからこうなってるんじゃないか!」

 

「まったく、家電製品は叩けば直るんだが……」

 

「――ッ!」

 

僕は思わずカーッとなってしまい雄二の胸倉を掴む。 このままコイツをこの場で張り倒してもいい。

そんな風に思えてしまった。

 

「あらあら、内戦かしら。醜いわね」

 

「こうなったら直接――倒す!」

 

「やめとけ」

 

雄二と僕の温度差にふと気がついた。

………おかしい、いつもの雄二ならここで僕と協力して八雲さんを倒そうとすると思うんだけど。

霧島さんだって、もうこんなところに居たくないと思ってるはず……彼女のことを思えば一目散に襲い掛かるはず。

現に僕だってこんなにも冷静でいられないというのに、幻想郷では勝った者が敗者に何でも言うことを聞かせることが出来る。

弾幕勝負を挑んで、僕は勝って帰るという計画があるんだが雄二はもっと他の手があるのか?

次第に僕は自信が失い雄二を掴んだ手を離す。

 

「雄二、何か策でもあるんだね?」

 

「今はない。俺は八雲と話が出来ればそれでいい。向こうもその気なんだよな?」

 

「えぇ、その通りですわ。私があなたたちをここに連れてきたのよ」

 

扇子を広げ妖しく映る不適の笑みで放つ言葉は僕の脳裏に深く築きこまれた。

 

「八雲さんが……でも何故?」

 

「あら、流石デュラハンと呼ばれたことだけありますわね。紫って呼んでもいいって博麗神社で言わなかったかしら」

 

「気が進まないんだ……僕はまだ八雲さんやこの一連に関して何も分からないままだから」

 

結局この人は何が狙いで何が目的なんだろう、僕たちを連れてきたのも狙いに含まれているのか?

いや、それは後回しだ。 あのまま行けば風見を倒せた――いや、必ず倒し謝罪を求めてやりたかったのに。

僕たちはあの後で強制にここに連れてこられたのか。

だとしたら何故そんなことをするんだろう、まるで風見との勝負を無効試合にしたかったみたいじゃないか。

 

「さ、始めましょうか。これから話すのは全ての始まり、そして――全てを終わらせる方法をあなたたちに伝えます」

 

これから八雲さんが何を話すのか分からないが、倒すのは一旦待った方が良さそうだ。

肩や足の震えが止まらない、自分がその場で浮いているような感覚に陥ってしまうほど精神が安定していない、けど僕たちは聞かなきゃいけない。

八雲さんが話そうとしているのはきっとそんな大事な話。

僕は耳の穴をかっぽじってしっかりと聞くことにした。

 

「さぁ、準備はいいかしら?」

 

「ああ、いいぜ」

 

「僕もいいよ」

 

八雲さんがその場から飛び降り日傘を開くとふわふわと可憐に着地した。

いよいよ、僕たちはこの事件の真実を知ることとなる。

 

「まず、注意事項として一つ。私はこの異変の首謀者ではありません」

 

「……いきなり何嘘ついてるんだ?」

 

この世に及んでまだ言い逃れするつもりか。

 

「嘘ではないわ、私はあなたたちをこの素晴らしい世界に連れてきただけ」

 

「……つまり、お前を操っている者もいるのか?」

 

「それもハズレですわ。私は誰にも縛られたりしないわ」

 

八雲さんの性格上、確かに上司とか先輩とか自分より身分が上っていう人はいなさそうだ。

いたとしても、あまり言うことは聞くつもりなさそうだし。

しかし、だとすれば一体どういう意味なんだ? 首謀者がいないなんて、まさか、

 

「まさか八雲さんの気紛れ、なんてオチじゃないですよね?」

 

「そんなことはないわ。断言してもいい」

 

彼女の風貌から嘘を吐いている雰囲気は感じられない。 瞳も逸らさず一文字一文字はっきり話す八雲さんは本当のことを伝えたい一心なんだと思った。

 

「……だとすれば、八雲以外の人間が動いているのか」

 

「正解。大正解よ」

 

「……そうなのか?」

 

あの八雲さんが黒幕じゃない? にわかにも信じられない状況だ。

僕たちは散々八雲さんに翻弄され続けてきたのに、全て八雲さんの手のひらで弄ばれているんだって思ってた。 けど、

 

八雲さんは犯人じゃない。

 

「もう一度、今度ははっきりと言うわね。私はあなたたちを連れてきたけれど、酷い目に遭わせるつもりはさらさらなかった。反対に楽しんでもらいたかった」

 

真実を語るその様子は一切ぶれることはなく、いつもの胡散臭い八雲さんはどこにもいなかった。

 

「……あなたたちには本当に辛い経験をさせてしまったと心より後悔しているわ」

 

「だったら、何故こんなことになったんだ?」

 

雄二の言うとおり、僕たちに楽しんでもらいたかったなら何もこのタイミングで、しかも誘拐みたいな成り行きになっている。

学園で突然生徒が消えてしまうなんて、そんなのまさに神隠しじゃないか。 鉄人だって、学園長にまで心配をかけて僕たちを探しに来たということだ、尋常じゃないことがあったはず。

 

「……全ての準備が整う前に、あの子たちが迷い込んだの」

 

「あの子たち?」

 

全ての準備とは一体何をしようとしていたのか気になる僕を横に、どこか切なげに首を下に向ける八雲さんはまるで涙を隠そうとしているかのような表情が一瞬僕の目に映る。

 

次に、ここで僕らは真のラスボスの名前を聞かされることとなる。

 

「その人たちの名前は『岡崎夢美』、『北白河ちゆり(きたしらかわちゆり)』。彼女たちは科学を拒絶し魔法に魅了された人たちよ」

 

「誰なんです? そいつらは」

 

僕は思わずのめり込む様に話に食い付く。 そいつらがこんな惨劇を繰り返させているのなら僕たちは止めさせなければならない。

 

「幻想郷にとっては異端者(イレギュラー)な存在よ。過去にも可能性空間移動船という乗り物でこっちに来て異変を起こしているわ」

 

「そのときはどうやって解決したんだ?」

 

「霊夢が直々に退治したわ。他にも愉快な方たちが興味本位で向かったみたいだけど」

 

ここで霊夢の名前が聞けるとは思わなかった、いったい霊夢は何者なんだろう。 僕が思っている以上に彼女は只者ではないのかもしれない。

 

「そのとき八雲はどうして動かなかったんだ?」

 

「私はまだ彼女の傍で居たかったのよ……」

 

言葉だけ捉えればただのわがままにも聞こえるが、八雲さんは霊夢を信頼しての行動だったのだろう。

まるで、僕が雄二のことを実は信頼しているかのような関係だね。

 

「……そのことには触れないでおこう。話を戻すぞ」

 

「ええ、御免なさいね」

 

「その岡崎と北白河というやつらは何が狙いだ?」

 

ここで僕は普段働くことのない脳を天才が突然ひらめくがごとくフル回転し、一つの答えが生まれた。

 

「この幻想郷で行われる以上、やつらの狙いは、この世界だよ!」

 

「それは過去の目的ね。確かに岡崎にとってこの世界は魅力的だった」

 

僕の名推理は脆くも崩れ去った。

 

「今回の狙いは、あなたたちの持つ――」

 

八雲さんの話の途中で僕らは信じられない光景を目の当たりにする。

このスキマ空間にいるはずのない彼女が突如と彼等の前に姿を現した。

 

「そこはあたしに話をさせてくれないか、紫」

 

奥の方で気のせいかも知れないが、聞き覚えのあるような声を響かせてくる。

ゆっくりとこの空間内を歩いて姿を現すのは、白髪をして顔にしわが目立つ年老いた女性。

目つきは鋭いがどこか迷いがありそうな面持ちで登場した。

 

 

「「が、学園長ォォォォーーーーッ!!!?」」




今日は11月11日、ポッキーの日ということで少しだけ文面が増えました(関係なく増量されています。)

因みに私はトッポが好きです←
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