俺と無意識と地霊殿
俺は坂本雄二だ。
あのババアに無理矢理なにかされたおかげで体を打っちまったようで上手く動けない。
地面がやたらとジメジメしてる……洞窟かどこかか?
目が思うように開かねえ。
誰か……いたら助かるんだが……人が偶然通りかかるとは思わねえし……。
「じーーーーーー」
…………通りかかるはずねえし……。
「ねえ、大丈夫?」
通りかかりやがったーッ! なんて好都合なんだよ……。
ま、まぁこれで助かる。
「あ、あぁ……体が上手く動かないんだ」
「ふ~ん、壊れやすいのね」
……は?壊れやすい?
声から察して子供くらいか……にしてはやけに物騒な表現を使いやがるな。
それとも大人か?
とりあえず、子供とここでは考えておこう。
「あなた、助かりたいの?」
「あ、あぁ……そりゃ死にたくねえからな」
「そっか、なら私の家に連れてってあげる」
「い、家って……大丈夫か?」
「なにが?」
「お前に俺が運べるのか?」
助かるのは有り難いんだが引きずられるのもなぁ。
「あら、生意気ね。いいわ、私の力で連れて行ってあげる。しっかり掴むように」
「あ、あぁ……」
俺は命令口調で言われる通りしっかりと手さぐりで探した手を掴む。
私の力って……少しイタイ気がするんだが。
右手に触れる手が暖かいようで洞窟らしき場所での通る風が冷たく感じられる。
「私から離れると命はないからね」
やけにおっかないな……まぁ言う通りにするか。
「掴んだね、それじゃ行っくよ~」
「はい到着」
…………はぁ!?
「おいおい冗談はよしてくれ」
「嘘だと思うなら目を開ければいいじゃない」
目を……そういやさっきより瞼が軽いな……。
俺は言われるがままに開けてみた。
「ここは………どこだ?」
周りにはステンドグラスが特に見られる……それに広い、どっかの屋敷か?
というか日本にこんな建物があるとは……相当な金持ちの子供なんだろうな。
「ね? 私の家でしょ?」
「あぁ、疑って悪かった。ありがとな」
俺は気がついたらベッドの上で寝かされていた。
どうやって俺を此処まで……見た目も思った通りだし……。
「それじゃゆっくりしていってね!」
「あぁ、ちょっと待ってくれ!」
「なに?」
あのババアのせいであんたは誰か、ここは何処なのかとか聞いとかないとな。
「お前は誰なんだ? あと此処は何処なのか教えてくれないか?」
「私は古明地こいし、ここは地霊殿だよ」
古明地……あまり聞かない苗字だな。
地霊殿?
これまた聞いたこと無い建物だな……まさかとは思うが……聞いてみるか。
「なぁ、ここは日本か? あと今年は何年だ?」
「にほん? なにそれ。今年は20XX年だけど?」
…………日本という国を知らないだと?
「日本って国知らないか?」
「国? よく分かんないけどここは幻想郷よ」
……またファンタジーみたいな名前出されても信じきれるはずがねえ。
こいし……と言ったな、まだ子供だから分からんのかもしれん……。
俺があれこれ考えてるとこの部屋のドアからだれかが入ってくる音がした。
「こいし、外来人の調子はどうかしら」
「あ、お姉ちゃん!」
扉の先からだれか来たな……こいしの身内か?
こいしの言動から予想すると姉妹みたいだな……。
「大分楽になったみたいね」
こいしの姉が俺に状態を尋ねる。
「あんたがこれ治してくれたのか?」
「えぇ、応急処置程度ですけどね。私はこいしの姉の古明地さとりです」
こいしに……ん? 待てよ。
さとりって……どこかで昔聞いたような。
「その通りの『サトリ』だと思いますよ」
おぉそうかそうか。
…………って今コイツなにしやがった!?
「今あんた、俺の心を読んだか?」
「えぇ、読みました」
なんだ!?あいつ、サトリと言えば昔の妖怪だったはず。
人の心を読むことができ見た目は猿っぽいはずだが……。
「猿だなんて失礼ね」
………また読みやがったよ。
「因みに私は心読めないから安心してね」
こいし、それさっき俺が思った疑問なんだが。
「その代わり無意識を操る程度の能力を手に入れたんだけどね」
「…………何の話か順に教えてくれないか?」
「そうね、うちに外来人が来るのは滅多に無いことだし、何から教えようかしら」
「まず、さとりと言ったな。人間か?」
「いえ、妖怪よ」
「私も妖怪だよ! 人間とか襲いまくるよー」
妖怪は人間を襲うのが使命みたいなもんだったか……まぁ心を読む時点で普通の人間じゃなかったな。
「次に、幻想郷ってなんだ?」
「私たちは幻想郷とは深い関わりがないので答えられないわ」
「そうか……俺は元の世界に帰れるんだよな」
「八雲 紫という妖怪に頼めば気分次第で帰してくれるんじゃないかしら」
なんて勝手な奴だ。
「説得するなら博麗 霊夢を探せば楽になると思うわ」
「随分親切に教えてくれるんだな」
「私たちに敵意はなさそうなので、まぁただの人間に負けるほど弱くないしね」
…………下手に行動したらすぐ殺されるということか。
「そういうことです」
またか……慣れるまでそう時間はかかりそうにねえな。
「あなたはまだ疲れが取れていない。私たちは失礼するわ」
「あぁ、ありがとな」
「いくわよこいし」
そう後ろのドアに振り向いた時だった。
「……!」
な、なんだ……あのさとりについてる目は……!
こっちを睨んでやがる……!
「はーい」
よく見ると似たようなのがこいしにもあるじゃねーか。
あっちは瞳を閉じているが……。
ガチャ(さとりたちが部屋を出る音)
「なんだったんだ……あの目みたいな……」
不気味に俺の方を見ていた……気持ちが悪い。
「まぁ……どうするか……」
さとりに全部お見通しというわけ……か。
疲れより焦りの方が取れてないっつーの。
「さっきの整理をしとくか」
俺は雄二でここは幻想郷というとある大陸かなんかでそこの地霊殿という場所にいるらしい。
俺を助けてくれたのは古明地姉妹でさとりとこいし。
あの二人だけが住んでいるとは限らない、豪邸のような雰囲気を感じるが……。
もしかしたら明久もここに連れてこられた可能性がある。
そいつも聞いとけばよかったな……。
姫路たちに心配かけることになりそうだ……なるべく早く帰りたいところだ。
「今のところこんなもんか」
まだまだ分からねえことばかりだが、今はあの二人に厄介になるしかないみたいだ。
素直に休ませてもらうとするか。
元神童睡眠中...
「起きなさい。……起きてください」
んあ? なんだ、人が気持ちよく寝てるっていうのに……。
無意識に俺はその声のする反対の方向へと寝返る。
「…………起きないと雄二の服を剥ぎ取る」
「それだけは勘弁してくれ!!」
なんて起こし方なんだ……って、あれ?
「あなたのトラウマを読ませていただきました。ご飯持ってきたので食べてください」
あぁそっか、さとりか。
「……あ、あぁ」
飯と言われ見せられた物は俺たちが日頃食っているような飯だった。
「……ありがとな」
「それでは、冷めないうちに食べてください」
暖かそうだな……さとり自身は俺のことを歓迎してくれているのか?
ま、いただくとしよう。
「あ、そうそう。三〇分後くらいにお皿を取りに来ますので」
「あぁ、分かった」
そう言い残すとさとりはまた部屋を出ていった。
「御馳走様っと」
見た目通りにうまかったな……人間と妖怪の食べるものって案外似る物なのか?
「ふぅ……大分楽になったな」
この屋敷に世話になって何時間、何分経ったのか分からないがもう普通に歩けたりサンドバック(明久)を殴ることも出来る。
コンコン
「ん、空いてるぞ」
丁度三〇分経ったのか……皿を回収しに来たらしいな。
「失礼しまーす」
…………誰だ?
部屋に入ってきたのはさとりではなく見ない顔だった。
「あなたがさとり様に拾われた新しい実験材料ね!!」
「…………」
こいつはいきなり何をわけわかんねェことを言ってやがるんだ?
「私は霊烏路 空、お空と呼んでちょうだい」
「……あぁ……」
なんか本格的な妖怪みたいなのが出てきたな。
お空か、右腕はやや小さなオレンジ色の大砲のような細長い棒を、左足はゴツゴツした岩のようなものがくっついていた。
胸にはさとりとはまた違った不気味さを放った眼がある。彼女は何者なんだ……精神年齢は低そうだが体は立派な大人……ギャップを感じるな。
ここの連中はみんなあんな目ん玉みたいなのがついてるのか?
「あ! 全部食べたのね、えらいじゃない」
「普通にうまかったからな、ありがとうと言っといてくれ」
「分かったわ。それじゃゆっくりしていってね」
「おう」
ガチャ
バタン
「どうやってあんな手と足になったんだ……?」
アイツも妖怪なんだろうな、明らかに変な羽みたいなマントみたいなのが背中にあったし。
「あ、実験材料とやらはどうなったんだ?」
結局、お空のやつ完全に皿を持って行くので頭一杯だったな。
それに俺を拾ってくれたのはこいしのはず……まぁいいか。
「あ……ついでに今何時か聞いとけばよかったな……」
さっきから俺はどこか抜けている…まだこの状況に慣れていないのか……。
「お空……ここの奴らは皆おかしな奴ばかりなのか……」
俺は、この先どうすればいいんだろうな……。
明久を探し、もしいなければ……俺はここにいる意味がない。
「…………寝るか」
もう考えるのがだるくなっちまった。
起きたらまた考えるか。
そうだな……明日はここから出してもらおう。
元神童熟睡中...
「おはようございます」
「…………zzz」
「また……起きないですね」
「…………」
「………雄二の印鑑をもらっていく」
「てめェなに勝手に婚姻届に――」
って、またか……普段の俺なら一人でこのくらいいつもしてきたはずなのにな……。
「…………精神的にかなり疲れているようですね」
「そりゃ……な」
「なるほど……妖怪にまだ馴染めないようで……」
「そのとおりだ」
「…………ふむふむ」
「今度は何を読んでいるんだ?」
「…………いいですよ、外に行っても」
「んあ?」
「あら、考えてなかったのですか? あなたの心の中にありましたよ?」
そうだったっけ……昨日の寝る前にそんなことを考えてた気がする。
「それで、一人で行くつもりですか?」
「さとりみたいな妖怪がうじゃうじゃいそうだな……できれば付き添いがほしい」
「そうですね……わざわざ死なせるくらいならここで始末させた方がいいですからね」
「それがいい」
全く、少しでも気を抜けばやられそうだぜ……。
「では、付き添いは「私が行く―!」誰がいい「私しかいないでしょ!!」かしら……」
ことごとく無視してるな……さとりの会話の間にこいしが入ってきてる。
てかいつ来たんだ!?
「こいしが行くのぉ!!」
「…………こいし、あなたには早すぎる」
「えぇーっ!!」
「ええーじゃありません。あなたはあの異変の後からずっと外との行き来してるじゃないですか」
「だって、退屈なんだもん」
「ハァ……まあ昔よりは自由になりましたからね……」
「お? これは私を外に連れていってもらえるフラグ?」
「フラグって……」
こいしの方はかなり明るいようだな……。
さとりとは対照的だな。
「仕方ないですね……それじゃ、この人の案内はこいしに任せます」
「やったぁぁあああ!!」
こいしは体全体で喜びを表現している。
よっぽど嬉しかったんだろうな……。
「まぁ、外はこいしの方が詳しいだろうし」
「お姉ちゃん大好き~♪」
こいしはさとりに勢いよく抱きつく。
「あ、こら、やめなさい! 人前で恥ずかしい///」
「えへへ~」
…………俺は、どうしたらいいんだ??
「全く、こいしったら……それじゃ、任せるわ」
「は~い!」
やっと終わったみたいだな……いつもあんなのやってるのか?
「そういえば、あなた名前はなんなの?」
こいしが俺に名前を尋ねる。
姉の方は心を読めるくらいだ、とっくに名前は知ってるよな。
「ん? あぁ……まだ俺からは言ってなかったな。俺は坂本 雄二」
「では雄二さん」
さとりは軽く一礼をした。
「あ、あぁ」
「早くいこ~雄二さん~」
こいしが俺の手を引いて急かす。
「分かった。また世話になるぜ」
「任せといて~」
とまぁ、俺とこいしはこの地霊殿と別れを告げて外へと向かった。
これから、さらに俺を困惑させてくれるんだろうな……もしもの為に情報収集をしておこう。
さとりたちには、ほんと世話になったな。
「ランラン~ルンルン~」
「…………なあこいし」
「へ? なに?」
「お前、なんで浮けるんだ?」
妖怪なのは分かった。
心を読めるさとりと無意識を操るこいしと分かった。
だが、空飛べるとか聞いてないぞ!?
「そっか、普通の人間は飛べないよね」
「普通で悪かったな」
てか、俺が普通の人間だったらここの人間はどんなやつらなんだ……。
「雄二さんのこと一杯知りたいな~」
「唐突だな……俺もこいしのことやその他の人たちのことを知っておきたい」
「私が知っている限りでよければ」
「充分参考になるさ」
今はこいししか信用できるやつはいないからな……。
「ありがとね、それで何が聞きたいの?」
「具体的にはない。ただこいしの知ってる妖怪や人間について教えてくれないか?」
「それくらいならいいよー。じゃあまず巫女から」
巫女……まず普通の巫女じゃなさそうだな……。
「名前は博麗 霊夢、幻想郷で一番怖い人ね」
怖いというと……あぁ、巫女は妖怪を退治する。
こいしは妖怪、そりゃ怖いわな。
「見た目は鬼でいつも千人以上殺してるわ。東の境涯に住んでいるんだけど、ここの穴を抜けたらすぐ会え――」
「悪い用事ができた!!!」
その巫女危険すぎだろがオイ!!
なんだ、邪神にでも仕えてんのか!?
「あははは、もちろん嘘だよ。千人も殺すわけない」
そ、そうか……ここでの常識は俺らの常識を超えているからてっきり本当のことかと……。
「幻想郷で最強なのは霊夢さんっていうのは確かだけどね」
「こいしも霊夢という奴に退治されたことあるのか?」
「う~ん、今生きてるから退治されてないんじゃないかな?」
ま、そりゃそうか。
「でも強かったなー私、あの巫女と戦って人生変わった気がするの」
「ほぉーそれはよかったな」
「今まで私は無意識に行動しててね、誰にも気づかれないようにしてたの」
「バレると退治されるからか?」
「ううん、違う。地底に住む者はそういう掟に縛られていたの。ほんとは外に出てもダメなんだけどね」
「なるほどな、こいしは無理やり外に出たかったのか」
「今はそんなの関係なくなってきてるけどね」
俺はこいしから幻想郷の歴史を少し学んだ。
話してるこいしの表情はほんとに楽しそうで浮き浮きしていた。
こんなのが妖怪だなんて、正直俺は信じられそうにない。
「あと、人形使いのシーフかな」
「シーフか……悪い奴だな」
「いつも紅魔館の本ばかり盗むらしいわ。名前は霧雨 魔理沙」
「そいつも人間か?」
「うん、あと魔理沙さんは白黒の魔法使い」
「…………ん?」
「人形はその通信してた向こう側の持ち物だったみたい」
「…………んん?」
ダメだ、話についていけん。
「つまり、楽しい人間ってことよ」
「そいつもこいしを退治しに来たのか?」
「退治というより遊んでもらったわ。私の弾幕を避けきれる人間が地上にはあんなに居たのかと思わされるわ」
「弾幕?」
弾幕……あまり聞かない単語だな。
「あ、そっか。雄二さん外来人だから知らないよね」
「勿論しらん」
「じゃあ少しだけ教えてあげる! 弾幕は幻想郷では不可欠なのよ?」
「それが無理なら……?」
「死が待ってる」
「マジか………俺のような普通の人間でも出来るようになるか?」
「修行すればいいんじゃないかな? 詳しくは霊夢さん達に聞いた方が手っ取り早いかもね」
「なるほどな……」
弾幕か……俺たちの世界で言うなら召喚獣みたいなものか?
「どんなのか見せてくれないか?」
「いいよー、どんなのがいい?」
「適当に任せる」
「はーい、それじゃあね…………」
こいしは無邪気に喜ぶ子供のようにどの弾幕を見せようかと考えている。
島田の妹並みに可愛い奴なのかもな。
「あっ! これにしよ!!いっくよ~」
そういえばこっちの世界で召喚獣は使えるのか?
理論的には学校がないから無理な話だが、幻想郷なんて場所がある時点で普通を超えている。
理論がどうとか、原理がどうとかそんなのはどーでもいい。
よし、実際に試して――
「抑御――」
お、おい……こいし……なんでこっちに向いてるんだ!?
「ちょ、おま――」
「――『スーパーエゴ』!」
うぉぉおおおおなんか出て来やがったあ゛あ゛ぁ!!!!
「頑張って避けてね(はぁと」
「誰がこっちに撃てと言ったぁぁああああああ!!」
「え? 違うの?」
「当たり前だ!!早くこれを消し――」
その時、青い謎のハート型の弾幕に直撃した。
ピチューン(雄二が弾幕に被弾する音)
「…………あ」
――――☆――――☆――――☆
「雄……丈………?」
……ん?なんか……聞き覚えの声が聞こえる。
「雄二さん大丈夫?」
ガバッ!!(勢いよく俺が起きあがる音)
「あ、気がついた」
「こいし、さっきはよくもやってくれた……な?」
あ、あれ?俺……あぁ!?
「ど、どうしたの?」
「なあこいし、俺はあの時被弾したよな」
「そうだけど?」
「…………死なないもんなのか?」
「手加減したからね、それに弾幕は基本遊びみたいなものだから」
遊び……?
「危険すぎるわ!!」
「雄二さんだからよ、コレを皆で遊んでるわ」
「マジかよ……」
俺もあーいうの慣れとかないと危ねえな……。
「それで勝った人が正しいらしいわ」
つまり弾幕で勝てれば何でも言うことを聞いてもらえるのか。
「目が覚めたみたいね」
「おう、また世話になる」
いつの間にかさとりが俺の様子を見に来ていた。
「…無心にしても無駄ですよ」
「やっぱりか……」
さとりは意識で想うことを何でも読み取る。
だから無心、何も考えないよう意識してしまえば結局は無駄ということになるのか。
「…………雄二さんは情報がほしいみたいですね」
「あぁ、もしもの為にと思ってな」
「なら、地霊殿を案内しましょうか?」
「え、いいのか?」
「別に見られたくないものなんてありません。まぁ、少し恥ずかしい気があります」
「この屋敷には前々から気になっていたんだ。ありがとな」
「それでは、今度は私が案内しましょう。一応この家の主ですから」
「えぇーっ! 私は何すればいいのよー」
「付いてきてもいいわよ、別に邪魔さえしなければね。雄二さんをこんなボロボロにしちゃった訳ですし」
……そういや、体がなんか冷えるな。
「あ、忘れてた。それじゃ、終わったら出てきてね」
「お待ちしていますよ」
さとりとこいしはそう言い残し部屋を出ていった。
「…………ん?」
俺は恐る恐る布団の中を覗く。
「なんで俺はパンツ一丁なんだぁぁあああああああああああああああ!!?」
これじゃ俺変態じゃねえか!!ッチ、こいしたちそれで……。
「あれが代わりの服か、着させてもらおうか」
ったく、こんなことが翔子にバレたらえらいことになる!!
「あ、終わったみたいね」
「……うん、似合うと思うわ」
「この格好のどこが似合うって言うんだ!!」
なんで俺がメイドの服なんか着なちゃいけないんだ!!
てか、チョイスおかしいんじゃねェのか!?
「おくうが持ってきた服でね、使い道がなかったからつい」
あ、それでメイド服か。
って!なに納得しかけてるんだ俺は!!
「ついでこんなもん着さすな!!」
「でも似合って――」
「似合うはずねぇだろうが!!」
「……家にいる間だけでもだめですか?」
さとりがここで一つ提案を挙げてきたと同時に俺も我を取り戻してきた。
「家の中だけか……大丈夫だろう(翔子が此処にいるはずねぇし)」
「大丈夫ならいいのですが……あ、因みに雄二さんの服からこれが出てきたのですが」
そう言うとさとりはポケットに入れていたある物を俺に渡した。
「これは……俺の再生プレーヤーじゃねえか。持っててくれたのか」
「渡すタイミングがなかなかありませんでしたし……」
「中身は……今はいいか。それより、俺の服、生意気かもしれないがよろしくな」
「今洗濯していますので一通り見終わったら乾いているでしょう」
そんなにここの文明は進んでいるのか、それともここが特別すぎるのか?
「では行きましょうか。まずはエントランスでも」
「あ、あぁ、頼む」
「はーい」
地霊殿……か、どんな屋敷なんだろうな……。
俺は今無意識に期待をしているんだろうか……。
そんな気持ちを持つほど、俺は今無事なんだなと改めて思いさせるな。
――――☆――――☆――――☆
こうして俺は地霊殿を見学させてもらったが特に目星になりそうなものとかなかった。
ただ、途中に人魂みたいなのがいたがどうやら怯えていたように見える。
さとりたちが居るせいか?
「多分そうでしょうね、因みに人魂ではなく怨霊ですよ」
なおたち悪いじゃねーか!!
「お姉ちゃんは怨霊も恐れ怯えさせるからね~」
「それだけ権力とかあるってことか……」
「そうね……私は人間、妖怪にあまり好かれることはなかった。でもペット達に好かれるようになったわ」
「私はお姉ちゃんのこと好きだよ!」
「こいし………」
さとりは若干テレながら、こいしはにっこりとしながら互いに見つめあっている。
なんだこれ……ただの姉妹愛だよな?
「んんっ! え、えーっと……」
さとりが俺に気づいたのか恥ずかしがって咳払いをするが焦りを隠せていない。
「にゃーん」
「あ、お燐だ!」
そこにやってきたのはお燐という黒猫だった。
「餌ならあげたはずだけど……雄二さんを見に来たのね」
「にゃー!」
「俺を?」
多分俺がさとりたちに害を与える人物か見極めに来たのか?
ほぉ、ペットがいかに主人に懐いてるかよく分かるな。
「雄二さんなら大丈夫よ、あ、そういえば雄二さんは弾幕について知りたいようでしたね」
「そうだな……地霊殿の中は大体見回った感じだし……」
「あとは中庭だけですのでもしよかったら弾幕の実戦してみませんか?」
「そいつは助かる、だが相手は誰だ? ちなみにこいし以外で頼む」
「えぇー……」
「えぇーじゃねーだろうが!!」
あいつとは暫く弾幕になれてからだ。
「…………そうでしたね、こいしのスペルカードに被弾してここにまた戻ってきたんでしたね」
「ん? スペルカードってなんだ?」
「こういうのだ――」
「ストーップ!」
あぶねェ……またこいしがなんか弾幕をぶっ放ちそうになった。
もうこいしはやるな!!
「えぇぇ……」
「弾幕の練習ならお燐が丁度いいんじゃないかしら」
「…………」
俺は人間以下と釣り合う器ってことか。
「にゃー!!」
気付けば猫が何かを訴えたそうだ。
「『私をなめてると痛い目見るにゃ』と言っています」
「そうか……まぁ物は試しだな。よし、中庭でやろうじゃねえか」
「分かりました」
「雄二さん頑張ってね~」
元神童達移動中...
「ここが中庭か……少し熱くないか?」
俺たちは弾幕の練習のため中庭へと移動した。
が、どうやら普通の中庭じゃなさそうだな。
「地底ですからね、この下には灼熱地獄跡がありますから」
なんか、聞くだけでやばそうだな……。
ん、待てよ、地獄? 地底?
「ちょっと待て、此処は洞窟かなんかじゃないのか?」
「まぁそうなんですが、ここは幻想郷の地底と言ったところです」
「地獄……じゃないんだな?」
「元は地獄の一部でしたけどね」
元……か。
それを聞いて安心した。
俺はてっきり死んでいる者の世界にいるのかと思っちまった。
「にゃあ~」
「お、おう、分かった。弾幕とやらを教えてもらおうじゃねーか」
「…………お燐、優しくですよ?」
さとりが俺に気を使ってくれている。
……猫に気を使われるのもなんか泣けてくるな。
そんな中、俺は一つ疑問を浮かべた。
「…………ん?」
突然お燐の様子が変わり始めたぞ?
そのまま見続けているとだんだん猫の面影はなくなり――。
「ジャジャーン!!」
「っ!!?」
……今起こったことを話そう。
黒猫はゴスロリだった。