バカと霊夢と幻想郷   作:こきゅー

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今回は今までの黒幕のフラグを一部回収、および色々爆発させてみましたっ。


バカとネズミと招かれざる客

月が沈むと太陽が顔を出す。

これは一日の終わりと始まりを現す。

それは変わることなく行われる事実だ。

今日も今日とて僕は香霖堂で働いている。

 

「今日は久保君と話でもしようか」

 

「いいですね」

 

この店は古道具ばかりだが汚れているわけではない。

店内の清潔感はFクラス以上なのは確かなのだから。

もっとも、彼はAクラスに招き入れたいほど輝いているけど。

 

「僕に何か質問でもあれば聞いてよ」

 

話をすると言っても、僕は商品の埃を払っているため手を動かしながら会話をする。

 

「それでは、失礼ですが霖之助さんって店を開いているのに商売しようとしないのですか?」

 

だんだんこの店の寂れ加減に腹が立ってきたところだ。

といっても僕の店ではないし衣食住が揃っているだけで僕にとってそれは利益しか生まない。

けれど、霖之助さんにとってのメリットとは僕にはどうも想像がつかなかった。

 

「前にも言ったけど僕は別に食べなくても死ぬワケじゃないんだ。たまに魔理沙がくれるキノコとかで十分なんだよね」

 

「半分妖怪ということはたまに人を襲ったり……そういう欲求はありますか?」

 

いい具合に商品の頭を綺麗に磨けたので僕は元の場所へと戻す。

 

「僕はそういった物騒なことに関わりたくないね。霊夢や魔理沙みたいな力は僕にはないから」

 

「そうでしたか」

 

前々から思っていたけど、この人と僕はどこか似ている気がする。

眼鏡とか、性格とか、もっと決定的な共通点が……。

いや、決めつけは良くないな。親近感は沸くが僕のような男性に好意を抱くという感情は霖之助さんにはないだろう。

 

「それで、商売についてだったね。それは僕が商売について熟知しているからだよ」

 

「……ほぉ」

 

これは意外な返答がきました。

本人も少しドヤ顔になっている、これは話したくて仕方がない顔だな。

霖之助さんの話は興味が尽きない。 どれも一理あると僕は思うからね。

 

「僕は結構長生きをしている。それは人が心の底から神様に手を合わせていた時代も知ってる」

 

外見は大学生といった印象だったが、相変わらず霖之助さんが僕の何百倍もこの世に居るという実感が沸かない。

ファンタジーとはそういうものだろうか、今度吉井君にゲームでも借りてみようかな。

 

「実はこの信仰が商売と深く関連していることが僕の中で気付いたんだ。霊夢から聞いた話もあるけどね」

 

「僕には無関係な事柄だと思いますが」

 

「それは違う。信仰とは神に対して何千人もの人間が『祈り』を代償に『願い』を叶えてもらってる。商売も同じだ。一つの店に何千人ものお客様が『お金』を代償に『商品』をもらってる」

 

この話も僕は真剣に耳を傾けてしまう。

僕も歴史はある程度知っているので自分の知識と照らし合わせ自分で考え直してみる。

そして、その結果は

 

「……一理ありますね」

 

「だろ? だから商売をするには僕自身がこの幻想郷の神とならないといけないのだ」

 

それは多少無理な気がする。

 

「しかし、僕はその神の力を手に入れた! この写真によってね」

 

霖之助さんのポケットから取り出されたのは一枚の写真だった。

が、それは意外を超えて度肝をつら抜かれた。

 

「よ、よよよ吉井君ッ!!!?」

 

なんとそこには上半身だけセーラー服という何ともドジ可愛い姿の吉井君が写っていた。

僕は思わずのめり込むように写真に近づく。

 

「お、おい……これはやらないぞ。この写真のおかげで人里では密かなブームなんだよ。……ところでこれ男だったんだね」

 

「え、ええ。そうですよ?! え?気付かなかったのですか?」

 

中途半端な女装をされているのか、はたまた自分の意思で着ているのか分からないがこの写真の吉井君は高校生くらいだと察知した。

しかし、僕は話もろくに聞かず本能のままに手が伸びてしまった。

 

「買うならいいけどね」

 

「言い値で買いましょう」

 

互の眼鏡が妖しく光る。 それはとても不気味な光景だった。

普段あまり高揚しない彼らのすこぶる笑顔は下品とまで言えるほどだ。

 

「いいけど、久保君お金持ってなかったよね?」

 

 

 

 

 

 

あ。

 

 

 

 

 

「ま、待った。僕の店で自殺を計らないでくれ!」

 

だって僕、無一文でこの世界に飛ばされたわけですし……。

 

「座敷わらしみたいに隅でいじけないでくれ……」

 

僕はなんて残念な男なんだ……一生に一度訪れるチャンスをみすみす逃してしまうのか。

あの写真は過去の物だろう、おそらく商品の調達場所とやらで見つけた物だと予測する。

ならば、僕もその場所に連れてって欲しい、例えこの身が滅びようとも!

 

「ま、まぁ今まで働いてくれたし一枚くらいなら――ッッ!?」

 

「大好きですッ!!!」

 

「待て久保君、落ち着くんだ。そのヨダレを僕の服につけないでくれ!」

 

君が! 離すまで!!この写真は渡さない!!!

 

「ほ、ほら。今からそれは君の物だ」

 

「感謝致します」

 

頭を強く下げ心の底から感謝の言葉を述べる。

こんなレアな写真、ムッツリ商会ですら手に入らないぞ。

 

「この写真が手に入ったら、僕は家でムフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフ」

 

「お、驚いたな……そんなにその写真の効力があるとは。変な魔力にでも当てられたかな」

 

隣で何か言っているが僕は吉井君しか頭になかった。

久しぶりの吉井君だ、違う世界で彼を拝める日が来るとは……なんという僥倖だ!

アルバムでもあればいいのだが、この店に僕の求めてる品はない。

仕方がない、胸ポケットにでもしまっておこう。

 

「それでは、奥の商品の手入れに行ってまいります」

 

「あ、あぁ……行ってらっしゃい……」

 

まだ店を開けるには早い、今日は始まったばかりなのだから。

そう、僕の心の時もカチカチと動き出した。 チュンチュンと鳥たちが僕を祝ってくれている。

ふふふ、この世界も悪くないかも……あとは本物の吉井君に会えればもう死んでもいいね。

 

「さて、今日も頑張ろうかーッ!」

 

大声を上げて両手を大の字に広げると商品に当たったのかガタっと動いた。

思わず僕も反射的にビクりとする。

 

「触れた感触はない。だとすると……ネズミか何かかな?」

 

ネズミだったら別に問題はない。彼らもまた生きているのだから。

汚いからと言って差別する男女がいるが失礼だと僕は考えている。

まるで小学生の頃によくあるアリを潰す行為のようなものだ。

僕は寛大な心でネズミを迎え入れようとした。

 

「ほら、そんな埃っぽいところにいないでこっちにおいでよ」

 

口で軽く音を鳴らすとねずみのしっぽのようなしなやかな線が影から出てくる。

 

「あれ? 少し大きいな……」

 

しかししっぽだとしてもそれはあまりにも長すぎた。

ネズミは見たことがあるから記憶しているがこれは僕の知っている普通のネズミとは違うようだ。

 

「………誰だい? そこにいるのは」

 

僕は一つの説を仮定した。

目の前にいるネズミ、それの正体だ。 このネズミのようなしっぽはまるで人の足の長さはある。

だとすれば僕の知っているネズミではなく、それ以外と考えるのが自然だろう。

結果、盗人か何かだと行き着いた。

 

「隠れてないで出ておいで」

 

まさかこんな店に泥棒が出没するとは思わなかったな。

物好きがいたと片付ければそれで納得するだろう。

霖之助さんに報告したいがこの場を離れるときっとネズミもどきは逃げてしまう。

ならば、ここは僕の力で捕まえてみせる!

 

「大丈夫、今は吉井君も一緒だ……」

 

小さく自分に言い聞かせるように言う。

胸ポケットにしまった写真に手を当て、自分を奮い立たせる。

 

「吉井君、僕に勇気を!!」

 

 

 

 

 

「一人で盛り上がってるところ悪いんだけど、何やってるの?」

 

「――ッ!?」

 

声にならないほど全身に震えが起き、驚いてしまう。

いつの間にか目の前にはあのしっぽの本体が下から上目遣いでこちらをじっと見ている。

 

「えっと……ネズミ小僧さんだね?」

 

「店主かと思ったら別人で焦ったじゃないか、ハハ」

 

この目の前のネズミ小僧さんは見つかったというのに余裕の笑みを浮かべる。

 

「どれどれ……その写真は誰が写ってるんだい?」

 

「見せるわけには行かないよ。それよりこっちに来るんだ。泥棒さん」

 

「素直に捕まる犯人がどこにいるというのだ。私は逃げる」

 

「逃がさない。君は悪いことをした。僕が捕まえて見せる!」

 

「ちょっと面倒なタイプの人間か……だが――」

 

次の瞬間、瞬きもしないうちに彼の元から姿が消えていた。

同時にあるものも失っている。

まさしく瞬の出来事。 油断してなくとも人間の彼には捉えることは不可能。

 

「っく! どこに行った……?」

 

僕はみすみす彼女を逃がしてしまった。 おそらく裏口から侵入したのだろう。

この店にネズミ小僧が入れるほど穴が空いているわけがない。

何日もここで手入れしている僕にはその自信があった。

 

そして、僕の中で何かが抜かれている感触に襲われる。

思わずハッとなり胸ポケットに手を当てる。

 

 

 

 

 

 

「な い ッ !」

 

馬鹿な!!あの一瞬で逃走だけでなくさらに盗みを働いたというのか!

ネズミだけにすばしっこいやつだ、僕はネズミが嫌いな人の気持ちを理解した。

 

「この久保利光ッ! 絶対に逃がさん!!絶対にだァー!!」

 

「なにやら騒がしいけどどうかし……荒れてるなぁ」

 

「香霖さん! 僕急用を思い出したのでこれで外出許可を!!」

 

「え、あ、あぁ……別にいいがこれはナズ「必ずネズミ小僧を捕まえて戻ってきます!」あ、ちょっと!?久保君!!」

 

こうして、僕は香霖堂を離れ、愛しの彼の写真を取り返す冒険が始まった。

 

 

「待っていてね吉井君ッ!!すぐにでも悪の手から連れ戻してッ! 連れて帰る!!」

 

 

 

――――☆――――☆――――☆

 

 

 

『な、なんだかさっきからすごい寒気がするんだけど』

 

『気のせいじゃないかしら。ほら、あれが香霖堂よ』

 

『な、ならいいんだけど……それに今久保君の声が聞こえたような……』

 

『だったら店主にでも聞いてもみましょうか。あそこにいるんでしょ?』

 

『う、うん……そうだけど……』

 

『もう少しよ、頑張りましょう』

 

 




「ただいま帰りました」

「遅いぞ、どこに行っていた?」

「いや、夏川が人里観光をしたいっていうもんで」

「俺たち言われたとおり太陽の畑ってところでやってきたから」

「まったく、勝手なことをしないで欲しいものです」

「す、すまない。以後気をつけるよ」

「っていうか、俺たちいつになったら帰れるんですか?」

「っふ、故郷が恋しいのならそんな感情捨ててしまえ。お前は私の目的が達成されるまで従うしかないのだから」

「「へ、へーい……」」

「教授~、そんな言い方ないんじゃないですか? ほら、士気下がってますよ~」

「……ちゆり? 人質はどうしたの?」

「あぁ、それなら例のアイツに任せてますよ。なんか一匹鴉が増えてましたが、確か姫……姫か……」

「「ちょっと用事を思い出しました」」

「男というのは欲望に素直だな、ここにもいるじゃないか。童話のお姫様のような格好をした人が」

「マントがひらっとしても見えないんだが」

「それに、岡崎さんはどっちかっていうと下僕を従える鬼畜お嬢って感じッスかね」

「………ぷぷっ」

「てめーらゲンコツ食らわすぞ」

「「「すいやせんっっした!!」」」

「はぁ……あ、そうそう、帰ってきてついでなんだがお前らの得意科目はなんだ?」

「そうッスね……まぁ、物理だよな……夏川」

「そうだな、常村。それなら召喚獣での扱いも楽になるってもんだ」

「なら、今度試召戦争が開催される。お前たちもそれに参加しろ」

「……ん? なんでそんなことを?」

「吉井明久、もとい科学とオカルトと偶然の賜物を是非見てみよう、体感してみようと思った」

「あれ? 吉井って俺たちが太陽の畑で花を一本折れば自動的に痛い目に合うとかかんとか」

「それか、失敗だな」

「なぁんだ、折角清涼祭の借りを返せると思ったのによぉ」

「とにかく、物理が得意なら私が教えてやろう。私に任せればお前たちの努力次第では四桁も余裕だ」

「「マジッスか!?」」

「大船に乗ったつもりで任せろ。さ、こっちへ来い。ついでに私が作った仮想空間を試してみたい」

「ほ、ほんとあの人ってすげえよな……」

「あ、あぁ、なんでも異世界からやって来たとか言ってたが……」

「教頭とは違うやり方で俺たちへ進学のアシストをしてくれるんだからな」

「あー、君たち、教授の講義を受けるのか?」

「そうッスけど?」

「なんスか助手さん? 何か手伝えることでも?」

「いや……えっと………Good Luck!!」

「…………物凄い親指を突き立てられてもなんのことやら」

「とにかく行ってくるッス」

「ッグ! …………そういえばそこにあった教授の道具がいつの間にか使われた痕跡があるんだが……アイツに聞いてみるか」







「見張りっていうのも、退屈なものだな~」

「うえええーん!!外怖いよ~!!文ぁぁ~~っ!!」

「な、泣かないでよはたてさん。僕も泣かれたら困るんだよね。教授の言いつけだからさ」

「うう……そこの二人も何か言ったらどうなのよぉ」

「「………zzz」」

「え、寝てる!?」

「閉じ込めた当時は抵抗してたが、今は随分と大人しくなったね……僕も手荒なことをしなくても済むから楽だよ」

「と、ところでアンタ何者なのよ! 私を捕まえるなんて、今にも天狗がぞろぞろ――」

「あ、それ無理みたいだよ。空間自体が捻じ曲がってるから同じ時間、場所を共存しても辿り着く術は宇宙レベルで存在し得ない☆」

「うううう……」

「あああぁごめん! 泣かないで! 僕もあまりこういうことはしたくないんだけど……」

「じゃ、じゃあアンタここから出してよ!!ってか、アンタ誰なの!?」

「僕? 僕はただの高校生さ。特別なシステムを用いた進学校、2-Aクラス代表の――」

「……あれ? 私それどこかで()たような……」

「っま、そういうわけでおとなしくしててよ。時期が来たら返してくれるって」

「確証は!?ねえ! 私無事に帰れる安全は保証はァ!? 文ぁぁぁ~~~ッ!!!」

「ま、まただ。うぅ、ちゆりさ~ん、早く帰ってきてよ~」







「……紫様、姫海堂はたてが奴らに捕まりました」

「場所は?」

「分かりません。私の視覚、嗅覚、全てを駆使していますが……」

「そう……あの二人は無事かしら……」

「お気持ちは察します。ですが今は試召戦争に備えては?」

「そうだい紫、あたしがいるさね」

「藤堂さん……ありがとね、二人とも」
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