『気のせいじゃないかしら。ほら、あれが香霖堂よ』
『な、ならいいんだけど……それに今久保君の声が聞こえたような……』
『だったら店主にでも聞いてもみましょうか。あそこにいるんでしょ?』
『う、うん……そうだけど……』
『もう少しよ、頑張りましょう』
バカと紅白と世にも奇妙な結界
どこかで僕を呼ぶ声がした。
それは気のせいではない。 けれど、その声を聞いては行けないと第六感が警笛を鳴らす。
おかしいな、知ってる人の声だった気がするのだけどなぁ。
「どうしたの? アナタごときがそれくらいで動揺するなんて」
「いや、僕を買い被りしてないかな?」
僕の隣ではクスクスと微笑みを見せる幽香が僕をからかう。
幽香の家を出るときに持ってきた荷物は僕の着ていた博麗の巫女服だけとなった。
あとはそれを香霖堂に持っていき修繕してもらえれば、僕は幽香と別れ雄二たちと合流し、今後の活動について話し合うことになるだろう。
まったく、試験勉強以上に忙しくて目が回りそうだよ。 もっとも、僕は勉強嫌いだけどね。
「さて、そんなこんなで着いたわ」
人里から少し離れたところに僕たちの目的地であるそれはもう目の前に建っていた。
「……見た感じ、ボロっちぃ店だけど人いるの?」
店というより廃れた家屋にも見えるこの香霖堂という建物は僕の想像を斜め上に超えていた。
店の前には一昔のポストやたぬきの置物などいかにも貧相な感じを漂わせる。
というより、この店は営業しているのか?
「さ、入りましょ」
幽香は僕の常識では考えられないほど手馴れているらしく店へとあっさり入ろうとした。
あ、よく見るとドアのところに「OPEN」と書かれた立札が見える。
なんだ、一応経営はしてるみたいだね……それなら僕も幽香の後ろに続いて入ろうかな。
と、思ったその時だった。 不意に僕の背後から僕の名を呼ぶ声が聞こえた。
「あら、明久じゃないの」
僕は聞き馴染みのある声に迷うことなく後ろを振り向く。
「霊夢!」
「相変わらず元気そうね」
僕の姿を確認すると霊夢は軽く笑った。 ただ僕に会えた偶然に驚いているようにも見える。
「霊夢? 霊夢と言ったわね?」
「あれ? あれれれ? なんでアンタが……え?」
「こんにちは」
幽香はドアの手前で足を留まり僕たちのいる方へと向けると霊夢は何とも形容しがたい表情を浮かべ、言葉をつまらせている。
「えっと……偶然ってことでおk?」
「答えはノーよ。彼と私は一緒に行動しているの」
「……明日はヤリでも降るのかしら」
「「どういう意味だ(よ)」」
僕と幽香がほぼ同時にツッコミを入れる。 霊夢の言うとおり、僕と幽香が今こうして息を互いに合うこともほぼ奇跡に近いのかもしれない。
僕のような普通の人間が、風見幽香という妖怪と共に意思を通じて行動しているのだから。
「どういう経緯でこうなったのよ」
「それは私から説明するわ」
「あ、じゃあお願いしようかな」
僕もここまで来るのにいろんなことが合ってどこから話せばいいのかわからなかった。
だから幽香が代わりに説明してくれて正直助かったよ。 ここまでの一連の流れを整理しようとすると何時間かかかるのもある。
そして数十分の間、人気のない香霖堂の前で説明へと入った。
少女説明中...
「明久、人間卒業おめでとう」
「それは違うよ!!」
「あら、私に挑む人間なんて明久含めて片手しか数えられないけど?」
どうして僕と幽香が一緒にいることを話しただけで霊夢からは異様な目で見られないといけないんだ。
「そうよ。幽香は能力こそ戦闘向きじゃないけど性格は人なんてゴミクズにしか思ってないんだからね?」
「ちょっとひどい言われようね……まあ花と霊夢と明久と他一部の人間以外なんて視界に入らないけど」
魔理沙もこの中に含まれているのかな? まともに戦える時点で幽香にとってそれは度胸のある人間として覚えられているのだろうけど。
だとしたら魔理沙も霊夢と同じくらい実はすごい人なんじゃないか!? 今度会ったら色々聞いてみるもいいかも。
「……………それにしても明久がねぇ……私の巫女服もその時に?」
以前と霊夢は前に会ったときより僕のことを不思議そうに観察するように見ている。
ため息交じりに話す彼女は僕の存在を疑うような素振りで話す。
う……まるで尋問されてるかのような張り詰めた空気に僕は咄嗟に話題を変えた。
「そうだ霊夢、どうして霊夢がこんなボロボロの店に?」
「ボロボロ……ボロボロかぁ……ふふふふ」
僕の台詞に何か不自然な点でもあったかな? 霊夢は全身で笑いを抑えながらボロボロとひたすら繰り返しつぶやいていた。
あ、あれ?僕だけなの?バカにしかこの店はおんぼろに見えないのかな??
「ふふふ、霖之助さんが聞いたらきっと激怒するでしょうね」
「そうよ明久、店主の前ではあんまりマイナスなことは言わない方がいいわよ?」
二人して僕を見ると同時に一笑する。
「その店主は気分屋なの? だったら発言には気を付けるけど……」
「そうね、そっちの方が早く直してもらえるかも……」
「あら、二人とも霖之助さんに用事があったのね。だったら私も同行するわ」
「別にいいわよ。用事が済めば私はそろそろ行こうと思ってるし」
「そういえば時期的に少し遅いわね……って、さっきの説明で聞いたか。命知らずな犯人もいるのね。私も見つけたら殴っといてあげるわ」
霊夢と幽香はいつの間にか自然と会話が進んでいた。
僕はそんな二人を見ていると微笑ましいという感情もあるが少しだけ異常にも見えてしまう。
霊夢は確か妖怪退治を専門家とする博麗の巫女のはず、それがこんなにも妖怪と仲良く話しているのはどういう関係なのだろう。
それを言えば萃香やルーミアのときもそうだった。まるで普通の女の子が生き生きと話しているだけの情景だった。
例外があるとすれば人里を襲ったあの妖怪たちぐらいか……あの時は防衛に徹しただけでただ退治したいという訳じゃなかった。
もしかして霊夢は実はとっても優しい――。
「あ、ごめんごめん。さっさと用事終わらせようか」
僕の脳内である考えは霊夢によって隅に追いやられた。
ま、そんなわけないよね。 だって僕は霊夢に一度半殺しをされてるんだから……あ、思い出したら鳥肌が。
「それじゃ、開けるわ」
幽香が先陣を切り、香霖堂のドアノブに手をかけ、手前に引く。
キィィとおんぼろの扉らしい音を横に僕らは中へと踏みだした。
さて、香霖堂とはどんな店なのか、霖之助とはどんな人物なのか、様々な疑問や期待が過ぎる中、店内から声が聞こえる。
「てめえらうちの店を散々バカにしやがって、帰ってくれ!」
どうやら、僕たちの会話はある程度筒抜けていたようだ。
最悪の幕開けで始まってしまった……どうするのこれ。
――――☆――――☆――――☆
「それで、君たちが僕の店に何の御用かなぁ?」
あ、だめだ。この人完全に目が逝っちゃってる。
そんなに悪口を言ったつもりはなかったのだけれど、相当気を悪くしたようだ。
腕を組んでメガネの奥に潜ませる鋭い眼光に思わず息をのむ。
「まあまあ、嘘じゃないんだし許してあげてよ」
どう弁解しようか悩んでいるとき、霊夢がそこらの椅子に座ってくつろぎながら僕を庇ってくれる。
まるで自分の家のようにリラックスしている霊夢を見て僕は相当この店に通っているんだなと思えた。
「君も共犯者だよ霊夢。笑いを堪える姿が音で容易に想像できたよ」
「ふふっ、ごめんなさい。霖之助さん」
軽く頭を下げるとそのまま手を棚の上に伸ばし何かを取り出す。
それを霊夢はポリポリと食べ始めた。せんべいだった。何故か霊夢はこの店の煎餅を勝手に食べ始めた。
「全く、反省してるなら僕にもその煎餅分けてくれないか」
どうやら店主の物ではなかったらしい。店にあるのに霊夢の所有物となっているらしい。
「嫌よ、これは私の煎餅よ。勝手に食べてないでしょうね?」
「……あれ、今僕が霊夢に叱ってる場面じゃなかったかな? なんで僕が悪者っぽく言われてるの?」
外見は明らかにクールで銀髪の大人びた印象で眼鏡が似合う店主は一朝一夕に感情を変えている。
ついには疲労に至ったか椅子に倒れこむように座った。
「はぁ……無駄に喉を張った気がするよ」
「霊夢が素直に説教を受けるわけないでしょうに」
幽香は大人びた笑みで店主を小馬鹿にしている。僕はというとこの空気に混じれずただただ呆然としていた。
「それで、そこの君」
そんな時、店主が僕のことを指をビシっと差し呼ぶ声に驚く。
「は、はい!」
「君は外来人だね。全く、外の世界はどんな教育を受けてるんだ」
本音を思わず口にしそうになるがぐっと我慢し、素直に反省する素振りを見せる。
毎日鉄人から逃げ切っている僕らにって叱られることはあまり慣れていない。でも捕まったら最後、観念して課題でも適当にやる羽目を受ける。
今回も、この人が許してくれるのを待ったほうが良さそうだし、機嫌が直るまでゆっくりするか。
「それにしても、同じ高校生でもこう差がつくものか、僕の知っている外来人はとても――」
「ちょっと待ってください!」
おっと! 話をうっかり受け流すところだった!
そうだ、僕はここに霊夢の服もあるが久保君がいるっていう情報を聞いたんだった。
「な、なんだ急に……」
「あの、すいませんがここに久保利光という僕くらいの高校生がいたはずなんですが……」
鉄人に上辺だけの敬語で話すように店主にも同じことをする。
久保君がここにいるというのは確かなんだけど、さっきから一向に見当たらない。もしや彼に何かあっただろうか。
「あー、久保君か」
「知っているのか店主!!」
「勿論、だけど彼が今どこにいるか……」
何故か店主は目を逸らし、話の途中で歯切れが悪くなってしまう。
「どういうことなの?」
霊夢が気を遣ってくれたのか煎餅を食べる手の動きを止め、話に入る。
「いや、今朝のことなんだが……あ」
ふと店主は僕の顔を見ると何かを思い出したかのように話の腰を折る。
「そういや君の名前……もしかすると吉井君かい?」
「え、ええ……そうですが、それが何か?」
今朝何があったのか、そっちの方が僕、気になります。
「もしこの先の話を聞きたければ条件がある」
「あら、まさかの取引?」
「そうだ、といっても簡単なことだ。久保君が心配なら引き受けてくれるよね?」
むむむ、この人から悪といった雰囲気はなかったのに、この一言を言い放つ店主は物凄く悪者に見えてきた。
嫌な予感がする、けれど、久保君は僕にとっても大切な、文月学園を共に過ごす生徒なんだ!
僕は初めから否定するつもりなどなく、当たり前のようにこう言った。
「僕の身体はどうなってもいい!それで店主が満足ならロウソクでもムチでも紐なしバンジーでも――」
「「待て」」
あ、あれ? 店主が止めてくれた? いや、さらに疑問が浮かび上がった。
何故か霊夢までもツッコミが入った。
「いや、止めないで霊夢。僕は久保君も探し出して一緒に帰る! そのためならなんでもするよ」
「待て、吉井君。君にそこまでひどいことはしないよ。ただ、
「ただ……何です?」
あ、もしかして意外と冗談だったりしてくれるのかな? それならあまりに僕が真剣だったからその態度に戦いてやっぱり無条件で教えてくれるとか? それなら一番嬉しいんだけどなぁ。
「君をモデルとして写真を何枚か撮らせて欲しい」
「け、獣!!やっぱり僕の体を持て余すんじゃないか!」
だ、誰か! 変態がいますーッ!!おまわりさーァん!!
「その不名誉な言い草はやめてくれ!!」
「り、霖之助さん……そりゃ幻想郷に男っていえば雲山ぐらいしかいないけど、だからってこんな幼気な高校生を食べ」
「それ以上口を開くと縫い合わすぞ」
「そうね、明久が汚されるのは私も見てられないわ」
「幽香まで何を言うんだあ! 僕はそんな性癖は一切ない!」
ついに性癖とか言い出したよこの人! 嘘を隠せないタイプだね!
「このエロ眼鏡! 僕の裸でするんでしょ! エロ同人みたいに!!」
まだ十代の少年に大人の世界に導こうとするエロ店主の要件だけは飲めない!
「もういいです! 久保君は僕が探すので!!」
「だから! なんでマニアックな妄想で僕を陥れようとするんだ! まずは冷静に!」
「僕の写真なんて誰にも撮らせない! それが個人目的なら尚更だ!!」
ムッツリ商会でも僕の写真なんか需要はないから販売自体されてないし、僕はモテない!!
だから!
「幽香、すまないけど霊夢の服は幽香が頼んでおいて――」
「マイ・エンジェェルルゥゥゥゥ!!!の裸プロマイドがもらえると聞いて戻ってきたよォォーーーーーッッ!!!」
「ひゃあああああああああああああああああ!!!」
僕の周りに変態が湧いて出たァーー!!!
『……だ、誰か今何が起きているか説明してくれないかしら』
『簡単にまとめると、明久のあられもない写真集を霖之助さんが売りさばこうとしているところ、第一お客様が訪れたということかしらね』
『もうどうでもいいよ……店の商品さえ壊れなければ……僕は少し仮眠してくるよ』
『あ、その前に霊夢の服お願いね?』
『あー、分かった。僕が直しておくよ……それじゃ』
「吉井君のとんでも画像が幻想郷に!!これは買うしかないじゃないか!!」
「久保君! お願いだから僕を見てヨダレを垂らさないでェェーーーッ!!!」
「幻想郷最高ォォォッッ!!!アッハァ!!!」
「幻想郷イヤァァァアアアアアアアアアアアッー!!!!」
お久しぶりです。
今回はひさしぶりの投稿に少々手荒くなってしまいましたがなんとか15日という今日に投稿したくて急いで書きました。
何か特別な日なのか?まぁ私の誕生日っというね。
私も二十歳になり、成人式にも参加出来たり酒を飲んでみたりなどなど大人の階段上れたらなーって思っています。
それと詳しいことは活動報告に載せておりますのでもし私を祝ってくれるコメントをしたいという方はそちらにお願いします。
それでは。また次回。