バカと霊夢と幻想郷   作:こきゅー

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「あー、あー、てすてす。あー」

「……アナタ、何やってるの?」

「何って、見ての通りだけど?」

「私には壁に向かってあーあー言ってるようにしか見えないのだが」

「え? 普通実験って試すものでしょ?」

「ま、まぁツッコミ入れるのも疲れたんで用事を済ませるわ」

「この擬似召還獣システムの調子は万全ですよ」

「頼もしいわー、些か生まれた場所を間違えた科学者とでも言おうかしら」

「私も意外だったわ、まさかあなたがもう一度この地を訪れるなんて。それともアナタは何人目かしら」

「世界線を間違えていなければあの時の私で合ってるはずだから安心してくれ」

「そう、その岡崎さんがこんな私に得なことを教えるなんて、毒でも飲まされるんじゃないかしら」

「なぜそうなる」

「それで、様子を見に来ただけ?」

「今から私の教え子に実験させたいんだ、いけるか?」

「ええ、構わないわ」

「ありがと、八雲紫に召還獣システムを作らせてはいるものの連絡がなくてな……」

「私も驚いたわ、妖怪の賢者とまともに交渉するんだもの」

「まとも? いえ、私は今となってはイかれた比較物理学の教授よ。人質だっているもの」

「そう、そこらは私に関係ないから無視するけど」

「同罪なのに冷たい反応ね」

「とりあえず、装置は起動させたから試しに叫んでみなさいな」

「分かった。えっと……試獣召喚(サモン)!」




「………何も起きないわね」

「やはり本物でなければ私たちには扱えないということか……」

「私は魔法を科学で騙せる。けれど、理香子。アナタは科学を魔法で欺けることが出来るのではなくて?」

「うーん、やっぱり原理がよくわからないなー。腕が鈍ったかな」

「んじゃ実験は延期にしましょうか。教え子たちのところに戻るわ」

「ご苦労さん」





「………面白い実験結果になったわね。アレンジは加えているものの機械は正常に機能している。これだから科学はやめられないわッ!!」


――――★――――★――――★


「それで、僕に話ってなにかな? ちゆりさん」

「お前、教授の科学道具勝手に使ったろ?」

「ん? なんのこと?」

「これだよ、どうやって教授の部屋に忍び込んだか知らないが、明らかに使われた跡が残ってた」

「あー、それか。いや、たまたま置いてあったから使ってみたらすごいよそれ!」

「そりゃ教授の実験道具だからな」

「でも、そんな大事なものだったとは知らなかったんだ」

「……嘘じゃないな?」

「本当だよ、嘘なら舌を引き抜いてもいいよ」

「………まあ、いいか。どこも壊れてなさそうだし。それで、誰の夢に入ったんだ?」

「うーん、それは分からないね。僕の目には壊れた鏡しか映らなかったし」

「そうなのか、まあいい。話はそれだけだ、引き続き宇佐美蓮子たちの監視を頼んだぞ」

「了解~」

「……気の抜けた返事だが、まあいっか。さて、私は教授たちの様子でも見に行こうかな」





「うん、嘘は言ってないからね。僕の見た夢はもう一人の僕の夢だったんだから。いつ会えるのか楽しみで仕方ないよ……


吉井明久、もう一人の僕に早く会いたいなあ」


工藤愛子
ボクと人形と魔法の森


あれから数時間ほどが経過した。

ボクこと、工藤愛子は親友である優子にとあるお願いを頼んだ。

けれど、ボクの携帯には一向に連絡が入ってこない。

代表を探してきて、というごく日常的なことだった。

それが、今のボクの心の中では普段抱くことのない不安が襲い掛かる。

 

「えー、木下さんと久保くん、そして代表の霧島さんは気分が悪いということで早退しました」

 

昼休みが終わって、ボクはとりあえず五時間目を終えて六時間目の始めるチャイムが鳴ると同時に先生が入り、そこで優子たちの事情を聞いた。

 

「早退? 優子も?」

 

ボクの疑問はさらに根深いものへとなっていく。

おかしいな、今日の優子はいつもの下着を着用していた。

なのに気分が悪い? ボクが朝からスカート捲ったりした所為?

 

いや、そんな軽い冗談ならよかった思っただろう。

あんな出来事が起きるまでは……。

 

 

 

 

とりあえず、明日になれば優子や代表といつも通りの日常が過ごせるだろうと思い鞄に教科書を詰め込み、ボクはAクラスを後にした。

 

「はぁ……」

 

思わず溜息を零す。 今日は一段と気味が悪いことだらけだったなぁ。

最近はFクラスとの試召戦争も近くなってるから代表張り切ってたのに。

 

「今日は早く帰ろうっと」

 

早足でボクは文月学園の廊下を歩き今日はさっさと寝てしまおうと思った。

 

そんなとき、突然後ろから奇妙なことを言う謎の声が聞こえた。

 

「そんなに木下さんが気になる?」

 

「――ッ!?」

 

慌てて後ろを振り向き、そこで二度目の驚愕を強いられる。

 

「誰もいない?」

 

一人でいるはずの廊下で独りでに零れる独り言。

そのはずなのにさっきから誰かがいる気配がボクの肩を震わす。

 

「連れて行ってあげようか? 親友たちのいる世界へ」

 

「せ、世界? 何を言っているのさ……」

 

そうだ、ボクはきっと疲れているんだ。

今日は朝から体育でテンションを上げすぎたんだよ。

きっとそういうことなんだろう、そう自分を納得させた。

いや、思い込みたかった。けれど、優子の名前が呟かれることに誘いに乗らざるを得なかった。

 

「どうする? 行くの? それとも一人で待ってる?」

 

「い、行くよ! ボクも連れてって!」

 

「ふふ、了解。それじゃ、幻想郷へ一名様ご案内~」

 

気の抜けたゆるい声、ボクの見えないところで何かが動き出しているのがわかる。

けれど、それは最後まで何が何だったのかわからないまま、突如出現した床の穴に吸い込まれるように落ちてしまう。

 

『お気をつけて~』

 

急な出来事に軽いパニック症状を起こしながら、ボクはそのまま何も掴むことのない空間を落ち続けていった。

 

 

――――☆――――☆――――☆

 

 

ここは魔法の森。

人里に住む者は決して近付かない場所。

たとえ立ち入ったとしてもその者はただでは済まないだろう。

凶暴な妖怪に襲われて命を落とす? いや、違う。

その森には特殊な空気が蔓延しているからだ。

 

普通の人間には『瘴気』と呼ばれる魔力の凝縮された空気のようなものにとても耐えられないだろう。

それが魔法の森と呼ばれる由縁であり、人間には出入りがほぼ不可能な理由でもある。

 

しかし、そんな場所に神隠しとなった人間が一人……気を失っていた。

 

その少女は状況がつかめず、とにかく親友の名前をひたすら呼び、繰り返していた。

けれど、どれほど叫び、長い間さまよい続けただろうか。 次第に彼女の体に異変が起こり、目眩を起こすようになると歩くことも困難になった。

そして、そのまま少女はゆっくりと目を閉じた。

勿論、そう感じたのは彼女自身であり、時間はさほど経っていない。

つまり、それだけ苦しかったのだ。 一人でいる今の時間が……そして、独り限界を迎えた。

 

 

『さて、次の公演会に向けて頑張らないとね。いい素材も手に入ったし』

 

 

そこにたまたま通りかかる一人の妖怪、いや、魔法使いの方が適任だろう。

彼女は魔法の森で暮らす幻想郷の住人の一人である。

 

『しかし、今日は瘴気が濃いわね……視界が悪いじゃないの』

 

『足元には気を付けて帰らないと、変なキノコとか踏んだら嫌だ「むにゅ」……し?』

 

『な、何か変な感触がした……………え? 人? なんでこんなところに?』

 

彼女の名前はアリス・マーガトロイド、魔法を専門的に日夜習得している魔女とも言える少女である。

 

『意識がないようね。仕様がない。今は上海に手伝ってもらうしかなさそう』

 

彼女の扱う魔法は主に半自律人形(セミオートマトン)であり、いわば傀儡師とでも例えようか。

そんな彼女自身に物理的な力はなく、人一人背負うことも苦労を伴う作業である。

それよりか、自らの魔法を扱い、人を人形に運ばせる方が楽なのだ。

 

『この体、冷え切ってる。急いで運ばないと。魔力はそこら中にあるし、全力で行くわよ!』

 

今宵の魔法の森は草木がざわついている。。

それはこの森に何やら嫌な予感が絶え間なく続いているからだ。

アリスはそんな第六感を感じ取り、器用に複数の人形に運ばせながら人間には毒でしかない瘴気を利用し、自宅へと戻った。

 

 

――――☆――――☆――――☆

 

 

「…………ん……」

 

「あら、起きたみたいね」

 

目が覚めるとボクは一人の少女が何かを作業しながら微笑みかける姿が目に入る。

まだ頭がぼんやりしているけど、この状況を把握するのに時間はさほどかからなかった

 

「キミが助けてくれた……ってことだよね」

 

「そうなるかしらね」

 

その少女は火を止めるとゆっくりとこちらに歩み寄る。

ボクの目には大切に、とても大切に、丁寧に、そしていつまでも離さずに持ち歩いた人形が心を持ったかのような姿をした少女がいた。

その人形とも言える姿に動揺する。

 

「私の顔に何かついてる?」

 

「あ、いや、綺麗な方ですね」

 

「ありがと、あまり私を褒められることはないから嬉しいわ」

 

自分よりもやや背が低い少女は照れ隠しでもするかのごとく長いスカートを捲り椅子へと座る。

 

「いえ、とても綺麗な方にボクは見えるけど……」

 

否定する彼女に僕は違和感を覚えてたが、そんなことはないと発言する。

ただ、ボクはふと彼女の後ろが見えてしまった。

誰もいないはずなのに、キッチンからフライパンが動いているのが見えてしまう。

人影は見えない、ボクにとってそれはまるで幽霊が料理しているようにも思える。

 

「え?」

 

「どうかした?」

 

「今、何かがアナタのフライパンを……アレ?」

 

けれど、その正体はすぐにでも分かった。 それは人形だった。

ボクはその人形から目が離せなくなってしまう。

何故なら、その人形がボクのところにホットケーキを乗せたお皿を持ってきてくれたからだ。

正直、驚きを隠せなかった。 まるで自我を持っているようにしか見えなかったから。

 

「ありがと、上海」

 

人形が人形を操る……いや、ボクには若いお母さんが女の子にホットケーキを持ってこさせたようにしか思えなかった。

目が覚めても何が何だか理解するのに戸惑いしか生まれなかった。

 

「ホットケーキは嫌いかしら?」

 

「ふぇ!?」

 

「あら、意外と可愛い反応を見せるのね」

 

「あいや、そのですね、何が何だか……」

 

「……つまり、アナタ、外来人ね」

 

ガイライジン? それはなんのことかボクには理解できるはずができなかった。

 

「ごめんなさい、さらに混乱させたようね」

 

「ま、まぁ……はい」

 

「それじゃ、折角だしこの世界の説明を聞きながらホットケーキでも食べててくれないかしら、冷めると味が落ちちゃうし」

 

折角この人がボクのために心配して作ってくれた料理を確かに粗末に扱うわけにはいかないね。

ボクは運んで持ってきてくれた人形にお礼をし、受け取ると手をふりふりさせて少女の元へと帰っていく。

本当に子供にしか見えないなあ……それにしても美味しそうな狐色をしたホットケーキだ。久しぶりの食べ物に有り難みを込めて頂いた。

勿論、この人の説明もちゃんと聞きながらね。

 

 

 

 

 

少女説明中...

 

 

 

 

 

「おおよそこんなところかしら」

 

「アリスちゃん、もう少し分かりやすく説明してくれないかな? まるでゲームの世界なんだけど」

 

「……確かに私のことはアリスでいいわって言ったけどちゃん付けは……」

 

「ああ! ごめんね、つい……やっぱり、まだ他人な訳だし、アリスさんの方がいいよね?」

 

ボクは対して年の差を感じることができなかったのでつい同級生、もしくは一つ上の先輩感覚で接してしまう。

アリスちゃんの見た目はボクたちと同じただの女の子だったから。

 

「別にいいわよ。私も久しぶりに会話相手が欲しかったし」

 

「そ、そうなの? じゃあボクでよければ。あー、それと、ホットケーキ美味しかったです」

 

「ありがとう」

 

とりあえず、ボクがアリスちゃんに教えてもらったことはこの世界のこととアリスちゃんの名前ぐらいっと。

けど、弾幕っていうのがよくわからないなー。 それで物事の優劣を決めてるって言ってたけど、まるでゲームだね。

そんなアリスちゃんは味の感想を述べると僅かに表情をにこやかに変えて、今度もお皿を人形に運ばせた。

 

人形を見送るとボクはお腹が満たされ、ベッドの上でほっと一息ついた。

 

「そういえばここはアリスちゃんの家?」

 

「そうよ。魔法の森に住んでいるから薄暗くてジメジメするかも、我慢してくれる?」

 

「そんなことないよ! とっても女の子らしいと思うよ」

 

ボクは別次元の世界の情報を少しでも収集し、把握したいからかアリスちゃんの家をじろじろと見まわす。

かなり女の子っぽい色で壁などを装飾し、テーブルも洋風でまさに人形ハウスともいえる。

家具で置ける場所があると人形が必ずそこに飾ってあった。

その人形もホットケーキを運んでくれた人形とさほど外見は変わらないものが多くみられる。

 

「アリスちゃんは人形が大好きなんだネ」

 

「ええ、幼いころから興味があったの。魔法はもっと好き」

 

そうつぶやくように小さな声でアリスちゃんは同時にどこからか持ってきた本を大事にそっと持つ。

 

「それは?」

 

「魔道書よ。盗まれないように常に大切に持ち歩いてるけど、今日は買い物だけだから別にいいかなって」

 

本の表紙にはボクたちが召喚獣を呼び出すときに現れる模様――魔法陣がうっすらと書かれている。

おそらくかなりの年季がこもった本なのだろう、アリスちゃんは自分のことを魔法使いと言っていたケド。

 

「アリスちゃんって、結構長生きしてるの?」

 

「そうよ。魔法の道に入るときに人間に必要なものを殆ど捨ててきたの」

 

なるほど、よく分からないかな。

 

「見た目はこんなに可愛い女の子なのにね」

 

「……それは本心かしら?」

 

「勿論だよ。アリスちゃんの人形も同じくらいキュートだけどね」

 

ボクはお世辞を言うつもりはない。 思ったことをそのまま口にしているだけなんだ。

それを、アリスちゃんも真っ直ぐに受け取ってくれているのか顔を背けている。

しかし、アリスちゃんの代わりのつもりなのか、アリスちゃんなりのお礼なのか、人形が二体ボクの足元にやってくると子供のような笑顔でお辞儀をした。

 

「アリスちゃんって照れ屋さんなんだね」

 

「……そんなことはないわ。ただのお礼よ」

 

思わず顔がにやけてしまうほど、目の前の女の子は可愛く映った。

このままからかってしまいたいが、流石にまだ早い。 ここはもっと仲良くなってから親密な関係を抱くのも悪くない。

 

「ん? ねえアリスちゃん」

 

ふと、ボクの視線に一つの写真立てが目に飛び込んだ。

ボクは中の写真が気になりふらりと立ち上がる。

 

「あれ、見てもいい?」

 

「別に、見られて恥ずかしいものはないわ。常に整理しているし」

 

「ではでは」

 

本人の許可も得たことですし、ボクは早速行動に取り掛かった。

目指すはテーブル、目標、写真立て。

体調はアリスちゃんと話してて良くなった。

もしかすると、家族の写真とか、予想の斜め上を行くなら恋人の? ボクはこの手の話題についつい首を突っ込んじゃうんだよネ~。

 

「さーて、何が映っているのカナ~?」

 

「………ん? 工藤さん、何を――ッ!」

 

ボクはその写真をじっくりと確認した。

そこにはいかにも魔法を扱うような黒い帽子を深く被り、右手に箒を持っている金髪の少女が映っている。

 

「あ! あそこに工藤さんの友達が!!」

 

「え!? どこどこ?」

 

「隙アリ!!」

 

不意にアリスちゃんは大声で窓に指をさし、ボクの注意をそらそうとする。

けれど、そんな単純な罠には引っかかるボクじゃないんだよネ~。

 

「隙なんてどこにあるのカナ~?」

 

「ちょ、さっきの言葉撤回するわ。それだけは見ないで!」

 

「ん~。これは……アリスちゃんのコスプレ写真かな?」

 

同じ金髪だし、体型も似ている。ただ、現在進行形でアリスちゃんが慌てて回収しようとしているからよく確認できていない。

 

「え?」

 

「え?」

 

写真に写っている人物を聞いているはずなのになぜか疑問形で返されてしまう。

これはボクの経験上では……。

 

「そ、そうよ、それは私がまだ魔法を習いたての頃の「嘘だね」写真――って、話は最後まで聞きなさい!」

 

そう、こういう時は相手の心理状態はこのままこの空気に乗っかり、保身行動に移ろうとする。

ふふっ、甘いな~アリスちゃん。 より写真の人物が気になってしまうじゃないか。

 

「そんなに見られて嫌なもの……なわけないよね? そんな人の写真をわざわざテーブルの奥に置くわけないもの」

 

「仕方がないわ。こうなったら強行手段よ!」

 

そう虚勢かと思っているとアリスちゃんは手先を器用に何かを動かしているのが見えた。

手の動きを見ていると不意を突かれ写真立てを人形にあっけなく奪われてしまう。

 

「うわっ!」

 

「全く、手こずらせてくれちゃって……」

 

動きはまるでボクたちが操作する召還獣のような人形が数体同時にボクへと向かってきた。

しかし、それぞれの人形は別々の動きをしていて反応が追いつかないうちにボクの手元には何も残っていなかった。

 

「これが人形遣いという訳だネ、感心しちゃうよ」

 

「褒めても何も出ないわよ」

 

アリスちゃんは人形をそのまま操り元の場所へとそっと置いた。

そんなに大事な人なのに隠したがる理由は一体……。

 

「さて、すっかり顔色も良くなってるみたいだし、霊夢のところにでも送りつけようかしら」

 

霊夢ちゃんというのはこの世界で東の方角に建てている神社に住む巫女と聞いている。

外の世界――もとい、ボクたちの居た世界に帰るには彼女の協力が必要不可欠だと言っていた。

オススメはしないけれど、ボクをここに連れてきたとされる八雲さんに直接交渉するのも手段の一つだと言っていた。 ケド、彼女は普段滅多に姿を現さないらしい。

恥ずかしがりなのかな? ボクをこんな危険な目に合わせた罪と優子たちについてじっくり問いたださないと。

そのためにも霊夢ちゃんの協力を求めることが先決するべきだろうネ。

 

「そっか、それだとアリスちゃんとはお別れなのかナ?」

 

「あら、寂しいのかしら?」

 

さっきの人形をあれこれ弄りながら話していた手を止め、後ろを振り向く。

 

「そりゃ命の恩人だしネ、お礼も出来ずにさよなら出来ないよ」

 

「気持ちだけ受け取っておくわ。アナタを助けたのは偶然倒れているのを見つけたからよ」

 

「そうだとしてもだよ? こうしてボクは生きていることを実感出来ているんだ。ボクの気持ちが収まらないよ!」

 

ボクはアリスちゃんに訴えかけるように強く言葉を発した。

優子たちのことも心配だけど、今はこの人に恩を返さないと。

命を助けてもらう、なんて初めてだけどきっとこれが当たり前であり、優子もそうしろって言いそうだしネ。

 

「……そう、好きにしなさい」

 

「ありがとっ! アリスちゃん大好き!!」

 

ボクは衝動的にアリスちゃんを抱きしめる。

見た目も性格もこんなに愛おしいアリスちゃんに許してもらったんだから抱きついたっていいよねっ!

 

「ちょっと! やめなさい!!」

 

「えへへ~アリスちゃんの肌ってぷにぷにで白くてホント綺麗だネ~」

 

「あ~こら! そこは見ないで! 怒るわよ!」

 

「アリスちゃんになら怒られても自重できないかもネ」

 

「もう! 知らないっ!」

 

アリスちゃんの体を弄り倒しているとついに怒ってしまい自分の寝室へと足音を鳴らしながら入っていった。

怒ったアリスちゃんも可愛いんだから……これは是非とも下着を――じゃなくて、恩返しをしないと。

 

「……あれ?」

 

ここでふと状況を確認する。

ここはアリスちゃんのリビング。

ボク一人がぽつんと立っている。

机の上には先ほど奪い返された写真立てが飾られている。

 

「千載一遇のチャンスが……ふっふっふ」

 

すっかり頭に血が昇ってこちらに気を配りきれなかったのが敗北を招いたのだ。

最後に勝つのはこのボクだ!

 

「さてと、どんな思い人かなー?」

 

今度こそじっくりと舐めるように写真に写っている人物を凝視する。

 

「……………」

 

その人物をはっきりとみた時点でボクは一つの考えが浮かんだ。

 

「……ん~、誰だろう、この少女」

 

ボクはこの世界について耳にしただけでどれが何だか分かっていなかった。

 

「しまった、本人がいないと意味がない!」

 

仕方がない、この人の特徴を記憶してボクも電気を消して朝を待つとしようカナ。

傍から見れば日はとっくに落ちているのにドンチャン騒ぎをしてしまった。しかしここは魔法の森のどこか、ご近所とか当然いない訳だし、問題ないネ。

女子会とか開くにうってつけ……いや、そもそもここまで辿り着くのが難しいか。

 

っと、一人であれこれ脳裏に浮かべながら布団を被る。

久しく感じるふっかふかのベッド、おそらく部屋が空いていないからという理由からかリビングの隅に置いてある。

わざわざ買ってくれたのかな、ソファとかでいいのに……。

 

「ほんっと可愛いな~~!!!」

 

一人で悶々としながらボクは朝を待った。




お久しぶりです、こきゅーです。
前回の投稿から三週間ほどの月日が流れてしまい申し訳ありませんでした。

ようやく試験が一週間ほど前に終わり、夏休みに突入しましたので更新再開と行きたいですね!

そういった意味も込めまして、この小説の暗躍する人物の名前をいくつか公開しました。これで大体の流れが読めるのではないかと思います。

それではっ!
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