バカと霊夢と幻想郷   作:こきゅー

52 / 64
「今年もやってきましたな」

「実に気持ちよく実行できそうであっしも嬉しい限りッス」

「ほれ、見てくだせい。この紙切れ何枚もが文字一面の収穫一覧で埋め尽くされています! 本当に今年は豊作で、神様に感謝せにゃならんな」

「皆の者、盛大に秋祭りを開催することを八百万の神々に誓うことを宣言しようではないか!」

「「「うぉぉぉおおおおおおおおーーーーー!!」」」

「さて、それじゃ早速出し物の準備と行きましょうか」

「今年は秋祭りにアリス・マーガトロイドさんの人形劇を披露していただくのはどうでしょうか。きっと盛り上がること間違いなしです!」

「おお! 是非とも誰か頼みに行ってくれると有難い!」

「しかし、あそこは魔法の森……我々にはちと厳しい環境ですぞ」

「なに、アリスさんはよく万事屋に顔を出すことがある。その時にでも頼んでみよう」

「なるほど。それもいいですね! ではステージはこちらで用意するとして、他に屋台や出し物は――」




「何だか盛り上がってますね」

「人里では毎年その年の収穫の量によって規模が変わる祭りを開催するの。なんと、今年は大量だったみたいよ?」

「秋姉妹を探すように命じたのは紫様ではありませんか。少々手間取ってしまいましたが」

「まぁ、ありがとね。本当は私が行ったほうが面白そうなんだけど」

「いえ、紫様の出向く場でもありません。私のことを紫様の式神だと言った途端怯えていましたから」

「フフフ、神様なのだからもっと堂々としないといけないのですわ」

「ごもっともです」

「さて、あとは人里の皆さんにお任せしましょうか。外来人も楽しめる素敵な一夜を期待して」

「紫様、一つ尋ねたいことがあります」

「何かしら?」

「どうして彼女たちの力を頼ったのですか。人里の人間は毎年小規模ながらも祭りを開いているではありませんか。それがどんなに凶作であろうと」

「そうね、実にシンプルかつ単純な理由だけど聞く?」

「お願いします」

「私はね、約束したのよ。折角協力してくれるのだから、私も働かないといけないじゃない?」

「外来人との約束を果たすため……? 紫様はこの幻想郷のことのために誰よりも考えて、動いておられるではありませんか。今は岡崎との拮抗状態ではありますがいつ怪しい動きを見せてくるか分かりません。さぁ、戻りましょう。藤堂様もお待ちです」

「……そうね、まぁ、私が今してあげられるのはこれぐらいかしら。騒がしかった秋が終わりを迎え、静かな冬が訪れるその時はもっと――」

「紫様」

「わかったわよ、そんなにせかせかと急がせないで頂戴」

「……申し訳ございません」


第三問

魔理沙がキノコを西村先生に食べさせてみるまでの間、ボクたちは暇を潰していた。

とりあえず、二人には今のボクたちの状況を説明して、魔理沙がなぜ急に自宅に戻っていったのか、キノコを見た途端目の色が変わったのは何故かなど話した。

そうすると事情を把握した二人はとりあえず弾幕ごっこを中断し、魔理沙を待つことにしてくれたようだ。

互いの状況を理解し合えたので、ボクたちは軽く自己紹介をした。

さっきまで戦っていた敵だけど、もしかしたら恩人になるかもしれないし、そこまで悪人ということでもないからボクも仲良くしてみようカナ。

 

「ところで、あのキノコはどこで拾ってきたの?」

 

アリスちゃんはお空に質問する。 考える動作も見せずその子は笑顔で即答した。

 

「分かんない!」

 

「分かんないっ! じゃないわよ!」

 

「まぁまぁ、仕方ないじゃないか人形のお姉さん」

 

お燐が慌てて仲裁に入る。 二人は古明地さとりのペットとのことだけど、ボクにはお空はお燐のペットに見える。

 

「お空は物覚えが悪いんだからさ」

 

「本当にどうしようもない鳥頭なのね……」

 

「えへへっ」

 

「褒めてないヨ、お空!」

 

「あれ? なんで私の名前知ってるの?」

 

「お燐から自己紹介してもらったことも忘れてる!?」

 

「うにゅ?」

 

これは飼い主も苦労するネ……でも、ペットがこうも可愛いから愛情が尽きることはなさそうだから捨てたりしなさそう。 でも、その可能性はそもそもないでしょ。この子たちがここまで来たのもさとりさんの指示。 それを嫌な顔せず、そして絶対達成して見せるという勢いがあった。

頭の中は大好きな主人のことで一杯なんだろう。

いいなぁ……今度ボクもその人と会ってみたいな。

 

「待たせたな」

 

「「魔理沙ッ!」」

 

予想以上に時間が掛かっている魔理沙を多少心配していると見据えていたかのごとくドアを勢いよく開け飛ばした。そしてずかずかと自信満々にこっちに寄って来る。

 

「工藤、喜べ、お前の教師は元に戻ったぞ」

 

「本当ッ!?」

 

「おうよ。ほら、先生っ」

 

にひひ、と笑いながら魔理沙は家の中にいる西村先生を呼ぶ。

ゆっくりと姿を現したその姿は――。

 

 

「工藤……すまないな」

 

「西村先生ッッ!!」

 

声色、焦点も正常に定まっている西村先生は申し訳無さそうに頭を掻きながら出てきた。

凶暴な牙や狼のような毛などはなく至って普通の人に戻っていた。ケド、

 

「……先生、服装はそのままですか?」

 

依然裸に大事なところは葉っぱ一枚というスタイルは変わっていなかった。

 

「ん? これか。こんな湿った環境ならいっそのこと脱いでしまっても構わんと思ったからな」

 

「もう少しモラルを考えたほうがいいかと思いますヨ?」

 

「まぁ、こんなところで人と遭遇するとは思わなかったんだ。妖怪や化物の方が比率が多いんでな」

 

そ、それなら仕方ないのかもしれない……のカナ?

そして、今まで黙っていたボクと魔理沙以外の全員が何やらそわそわしていることに気付く。しかし、時既に遅く、溜めていた感情を爆発させる。

 

「「「へ、変態だーーーーーー!!!」」」

 

「んな! 待て霧雨、工藤以外にも人がいたのか!?」

 

「いや、だってよ先生? 愛子の名前を出したら「会わせてくれ」の一点張りだったじゃないか」

 

「そ、そうか……そうだったな」

 

先生、とりあえずまともな服に着替えたほうがいいと思うヨ?

ほら、アリスちゃんたちの表情が険しくなって戦闘態勢に入ってるシ。

 

「魔理沙! この人まだ瘴気でおかしいんじゃないの!?」

 

「ちょっとお兄さん!? いくら幻想郷でもそんなの非常識だよ!」

 

「さ、さとり様……助けて……あの人怖い」

 

「な、泣くなそこの君ッ! わ、分かった! ちょっと待て! 霧雨、すまないが一緒に来てくれ」

 

「わ、私なのかぜ?」

 

「魔理沙逃げて! 中に連れ込んで何するのかたまったもんじゃないわ!」

 

「そこのカチューシャの子! 誤解を招く言い方はやめてくれ。俺に子供を襲う趣味はない!」

 

あ、ちょっとこれ楽しそうカモ。でも乱闘にでもなったら西村先生でも厳しそう。

弾幕の雨を浴びることにでもなったら笑い事にならない。目が合っちゃったこともあるので助け舟を出そうかな。

 

「アリスちゃんたち、あの人は変質者じゃないヨ?」

 

「愛子、騙されちゃダメ! あのキノコじゃ完全には治りきらなかったのよ!」

 

「俺は至って真面目なんだがな……」

 

うーん、このままだと拉致があかないな。 少々困ったことになったネ。

アリスちゃんとお燐は警戒してるし、お空はあまりの衝撃に泣き出したままだし……。

 

「工藤、あいつらに言ってやってくれ。俺は服を着替えるだけだと」

 

「ま、まぁ……頑張ってみます」

 

「それじゃ、服を借りるぞ霧雨」

 

「あー、それなんだが、男物の服はないぜ? 私女だし」

 

「………やはりこのままでいいよな?」

 

「いや、ダメだと思うぜ」

 

「ボクも同じ意見だネ。年頃の女の子の前にそんなハレンチな格好は教師ならセクハラで免許剥奪だヨ」

 

「ッ!!」

 

いや、そこまでショックされても……この幻想郷で何があったの先生。

なにか人として大事な物を落としている気がするヨ。

これじゃキリがないのでボクと魔理沙で何とか騒ぎになる前に落ち着かせよう。話を聞いてもらえばきっと冷静になるはず。

 

 

 

 

少女たち説明中...

 

 

 

 

 

「分かったかポンコツ」

 

「一方的に決めつけて悪かったわよ、でもポンコツってなによ魔理沙」

 

ボクたちはとりあえず二手に分かれて説得することにした。 魔理沙はアリス、ボクはお燐とお空を担当に当たった。 その間、悪いけど西村先生には外で待機してもらうことにしていたケド……寒くないのかな?

 

「こういうことなので、お燐もわかってくれたカナ?」

 

「そ、そういうことなら仕方ない。まさか外来人だったとはね……てっきり妖怪の類かと」

 

「お空も理解してくれたよね?」

 

「うん! ……うん!」

 

なんで二回言ったのかすごく不安だけどお燐が分かってくれたなら大丈夫カナ。

 

「さて、とりあえず俺の自己紹介をしておこう。俺は西村宗一、文月学園の教師をやっている。決して変態ではない」

 

今の葉っぱ一枚な格好で付け足すように言っても説得力が皆無ですよ先生。

 

「アタイは火焔猫 燐、お燐と呼んでおくれ」

 

「よろしくな、お燐」

 

西村先生とお燐が互いに反省の気持ちと同時に握手し、交際を結ぶ。

 

「はいはーい! 次はお空の番ね?」

 

「君は号泣していた子か……もう平気なのか?」

 

「うん! 変態じゃないなら話しても大丈夫!」

 

「そうか……それで、君の名前は?」

 

「私はお空だよ! さとり様のペット! 間欠泉センターで働いてますッ!」

 

まるで小学生のような自己紹介っぷりは演技じゃなかったんだね……この子の精神年齢が気になるところだけど、鳥頭なら諦めたほうがいいかもしれない。

 

「お空と呼べばいいんだな? 俺のことは「鉄人」と呼んでおい待て」

 

「分かった! 鉄人!」

 

「……さては工藤だな? ったく、幼気な妖怪に何を吹き込ませてるんだ」

 

「いや~、ちょっと遊んでみたくなりました」

 

ボクにとって二回目の自己紹介は少し退屈だったので、先生をからかってみた。

久しぶりにやってみたけど、調子はいい感じダネ。

 

「愛子、その道具って何?」

 

興味を示したのか瓦礫の上で退屈そうに座っていたアリスちゃんがゆっくりとボクの方に歩いてくる。

 

「これは小型録音機だよ。音とか録音したり編集して再生したりできるんだ」

 

「外の世界の科学ってわけね」

 

魔法が使えるこっちの世界では、逆にボクたちにとって日常生活を共に送っている科学は珍しいらしい。

電子レンジでチンしたりしたけど、ボクのこれを見るのは初めてだからなのかな。目がキラキラとしている。

 

「アリスちゃんの声もあるヨ? 流してみる?」

 

「いえ、遠慮するわ」

 

むぅ、折角アリスちゃんを合法的にからかえると思ったんだけどナー。

残念、ここは諦めてまたの機会を伺ってみようっと。

 

「そういえば魔理沙、ノワールはどうしたの?」

 

「「「………あ!」」」

 

危険を察知したのか、ボクの傍から離れ、ふと立ち止まるとアリスちゃんの何気ない一言で三人が一斉に思い出したかのごとくハっとする。

先生の騒ぎでみんな忘れてたみたいだね。

 

「お姉さん、アタイたちがキノコを持ってこなければこのお兄さんは今も獣化していたらしいじゃないか。ここは快くさとり様のペットを渡してくれると嬉しいんだけど」

 

お燐の言うことはもっともで、それはボクの所為で魔理沙はノワールを返さないといけないことになってしまっていた。使い魔にしたがってた魔理沙はそれが嫌で実力行使をしていたくらいだ、きっと嫌な顔一つでもするだろう。

けれどボクの予想とは裏腹に、あまり時間をかけずに魔理沙はお燐に返答する。

 

「しょうがないな、今度は逃がすんじゃねーぞ?」

 

「魔理沙……」

 

「お燐の話を聞くと、私には扱えないペットみたいだからな。素直に返すことにしたぜ」

 

帽子の唾を深く被り、表情を隠しながらボクに話す。

心なしか、ノワールが大好きだった魔理沙の声は、ボクには震えているように思った。

 

「ありがとう、ボクたちが迷惑かけて……」

 

最後に魔理沙はボクに一言小さく「気にするな」と呟くとノワールを取りに戻った。

魔理沙の部屋の中でも、そう言ってくれたよね……でも、あの時とは違い、今はやはりショックが大きいみたいだ。

 

「あなたたちも、さとりに伝えておいてよね? もう二度とペットを逃がしちゃダメよって」

 

「今度は気を付けるよ、迷惑をかけたのは事実だしね」

 

「はーい!」

 

お空がいると重い空気もどこか軽く感じられる。

そして、この状態を理解できていない先生がこっそりとボクの元に近づく。

そういえば先生はずっと暴走してましたね……魔理沙が戻ってくるまで説明を終わらせておいた。

 

「なるほど、そういうことか……」

 

「うん、だから先生が今こうして正気でいられるのはお燐たちのおかげなんだ」

 

ボクの話を聞くと先生は不思議がるお燐たちを気にせず自分のペースでゆっくりと神妙な面持ちで歩いて行った。

 

「ん? どうしたんだい?」

 

お燐は長くて複数ある黒い尻尾をゆらゆらと揺らしながら魔理沙を、いや、ノワールを待っていた。

そこに不意に西村先生が現れる。 先生はお燐に話しかけられるとその場で頭を深く下げた。

 

「大人として、まずはお礼が言いたい。ありがとう。君たちがいなければ俺は生徒をこの手で傷つけてしまっていたかもしれない」

 

ボクはこの日、初めて先生が謝罪するところを見た。

いつも学園長室でもしかするとこんな感じのやりとりが行われているのかもしれない。

けど、ボクは謝っている先生を見てると、嬉しいような、ボクたちって大切に思われているんだなって思うと心が温かくなった。

 

「お兄さん、見た目は変だけど誠実な人なんだね」

 

「変ですまないな。この森での生活はいささか不便だったんだ」

 

「まぁ、今はもう気にしてないけどさ」

 

「ありがとう」

 

ボクも感傷に浸っている場合じゃない、慌てて先生のもとに駆け寄り後に続く。

 

「ボクからもお礼を言わせて。お燐、お空、本当にありがとッ!」

 

「ハハハ、そんなに感謝されると照れるね……お空のおかげでこんな展開になるとはアタイも驚きを隠せないよ、ね?」

 

「私キノコなんて持ってないよ?」

 

「『今』は持ってないけどさ! もう……」

 

「そんな悲しい顔しないでよお燐」

 

「誰のせいよ……」

 

この二人のやり取りを見ているボクたちはほぼ同時にクスリと笑ってしまう。 どこまでも天真爛漫なお空は今後も周りの人を奔放しそうダネ。

 

ボクたちの用件が済んだところで丁度魔理沙の準備も終えたようで、ゆっくりと扉が開かれる音が聞こえる。

 

「うぉ、ちょ! 暴れるんじゃないぜ!」

 

魔理沙の腕にはボクたちが知っている黒猫が確かに居た。ノワールはお燐たちを見つけたのか外に出るとすごく暴れて今にも落としてしまいそうだ。

 

「ケージに閉じ込めてたのがかなり効いてるみたいね、悪い意味で」

 

「うわぁ……通りであの子機嫌が悪い訳だよ」

 

「もしかして、猫の言葉が分かるの!?」

 

「そりゃアタイもさとり様に飼われているペットだからね」

 

「いいなぁ……ボクも聞けるようになりたいな」

 

「それはやめといたほうがいいよ、お姉さん」

 

動物の言葉が分かるお燐に羨望の目で見ていると不意に飛んでくる台詞に思わず言葉を溢した。

 

「え? それってどういうーー」

 

「おっとっとっーー! お燐、ほら、さっさと持って帰ってくれ」

 

ボクの疑問は魔理沙とノワールによって書き消されてしまった。

お燐は魔理沙の様子を見て慌ててサポートに入る。

 

「はいよっお姉さん!」

 

少し荒々しかったが無事にノワールはお燐の腕に抱かれることに成功した。

もし落として怪我でもしたら大変だけど、この子は頭が回るみたいだから、きっと逃げ出してしまうだろうね。

 

「それじゃ、確かに預かったよ。見付けてくれてありがとうね!」

 

「おう、今度はもっといいもん落としてくれよ?」

 

「それじゃ、お姉さんの家の前に生きの良い死体でも落としておこうか?」

 

「それはいらんな……」

 

互いに笑顔を交わすとお燐とお空はその場を去る準備に入る。もう目的を果たしたわけだから早く帰ってさとりさんを安心させてあげないとネ。

 

「ところで、そこのお姉さんって外来人なんだよね?」

 

「ん? ボクのこと? そうだけど」

 

「だったら坂本雄二って聞いたことあるかな?」

 

これは驚いちゃったな、まさかお燐から坂本君の名前が聞けるなんて。 一体何をやらかしたのカナ?

新聞には吉井君が載ってるし、Fクラスは本当に退屈させてくれないネ。

 

「坂本雄二だと? 俺の生徒がどうかしたのか?」

 

先生もこれには反応せざるを得ないようで食い付くように話題に入り込む。

 

「いや、実はそのお兄さんとこいし様が一緒にいるはずだからさ、一目様子を見たかったんだけど……知らないかな?」

 

「それなら、あいつらは確か人里の方面に帰っていったな。こいし、というのは見なかったが」

 

「もしかして、『見えなかった』のかも」

 

「なんだと!?」

 

坂本君ってもしかして幻想郷の妖怪を仲間にして何をするつもりなんだろ……情報を聞くだけなら付いてこさせる必要はないと思うけど。

 

「まぁあまり気にしなくてもいいよ。幽霊とかじゃないから」

 

「アイツ、何を企んでいるんだ……」

 

流石の生徒の現状に悩まざるしかないみたいで、頭を抱えている。 いや、先生の今のその状況も深くささるものがあるヨ。

 

「それじゃ、こいし様に会ったらよろしく言っといてくれればいいからさ。お空、行くよ?」

 

「えぇー、お空もうちょっと遊びたいな」

 

「ダメだよお空、まずはこの子をさとり様のもとに届けてあげないと! さとり様に心配かけたくないでしょ?」

 

「うん!」

 

「よし! さて、お姉さんたち、お世話になりました!」

 

「またね~!」

 

お燐とお空は魔法の森の中へと歩いていった。ここで空を飛んで帰ろうとすると障気の影響により同じ場所をぐるぐると回っちゃうみたいだから、お燐たちはそれを知ってたみたいだネ。

 

「っさ、問題は一段落し--」

 

 

ッポン!(召喚獣が呼び出される音)

 

 

「「「!!?」」」

 

突然の出来事に頭が追い付かなかった。 ノワールを引き渡してお燐たちと別れて一呼吸したところでいきなりボクの召喚獣が現れた。

 

「…………愛子の子ども?」

 

「みたいだな」

 

「違うヨッ!! え? どういうこと?」

 

耳に入ってきた言葉を急いで全否定する。そして考える。

召喚獣はどのような仕組みか公開はされていなかったけど、文月学園にある機械が空間を作り、その中でのみ召喚獣は呼び出せるシステムのはず。

なんで異世界でボクの召喚獣が……慌てて西村先生に心当たりがあるか聞いてみる。唯一、教師の許可がなければこの空間は生み出せないはず。

 

「……どういうことだ? なにが起きている」

 

その反応を見る限り、西村先生に聞いても分からなそうだった。

すると一人、端から見学していた魔理沙が手の平にもう片方の手を丸めてぽんっと置いた。

 

「分かったぜ! それが召喚獣ってやつか!」

 

「魔理沙?」

 

魔理沙の口から召喚獣というワードを聞くとは思いもしなかった。

何故君たちはボクたちの学園内の仕組み知っているの? よくわからない方向に進展している。

そんな疑問が顔に出ていたのか魔理沙はボクに答えを教えてくれた。

 

「お前たちのことはある程度文の新聞に載ってるしな。今じゃちょっとした有名人だぜ?」

 

魔理沙の言葉を鵜呑みにして整理する。今の言葉は信用できる。ボクもその新聞はアリスちゃんの家で見たから。けど、そこにはこれについては書いてなかったはず。

 

「魔理沙、それは分かったけどどうして召喚獣について知ってるのかな?」

 

「前に明久たちと協力して幽香と弾幕ごっこしたときに--」

 

「ま、魔理沙……アンタ、何バカなことしてるの!?」

 

「あぁ、ちょっと一悶着あったんだよアリス」

 

「そんな危ないことはやめてよ……あー今ので寿命が縮むかと思ったわ」

 

「話したら絶対今みたいなリアクションされると思ったんだよ……許せ」

 

ボクの知らないところでいつの間にかFクラスのみんなは動いていたみたいだ。新聞には「人里に集合!」と大きく見出しが掲載されていて、場所の案内を詳細になど、それくらいのことしか書かれていなかったけど。

 

「おっと、話が逸れたぜ。まぁそんなこんなで召喚獣についてはある程度把握してるぜ」

 

「太陽の畑で何かあったとは思ったけど、魔理沙や愛子の知り合いまでもが絡んでいたなんてね……」

 

アリスちゃんもいつの間にかボクと同じ立場で魔理沙の話を聞いていた。

 

「他に聞きたいことは無いか? どうせまだ今日は時間が余ってるからな。大サービスだぜ」

 

魔理沙は厚みのあるそこら辺の煉瓦の上で立って話す。まるで朝会の時に長い話をする教師のような立ち振舞いでボクたちを見回していた。

そんな中、西村先生が声を発する。

 

「この試験召喚システムは誰が操作している?」

 

「霊夢が作ったからアイツなら止められるんじゃないかな?」

 

「学園のものと同じ仕様ならば、俺にも取り消す権利があるはず……試してみるか」

 

「ん? どういうことだ?」

 

魔理沙がここでようやくボクたちと同じように不思議そうな顔を浮かべた。

ここで立場を逆転するかのように、今度はボクが説明に入る。

 

「ボクたちの学園で召喚獣を呼び出すにはまず教師の許可が降りないとダメなんだよ。それで初めて召喚可能状態となる。教師がこれ以上召喚獣の呼び出しを必要なしと感じた場合はその空間を取り消し、召喚獣を消すことが出来るんだ」

 

ふんふん、と頭を縦に動かし理解しようとしている魔理沙。

アリスちゃんは悟りを開いているかのように微動だにしていなかった。も、もしかして分かりにくかったカナ?

もう一度説明しようか悩んでいるとゆっくりとボクの召喚獣が近寄り、

 

『………(ぎゅっ)』

 

「きゃっ!?」

 

「触れた!?」

 

アリスちゃんの袖を召喚獣の腕で引っ張った。 え? おかしいよね?

確か召喚獣は観察処分者である吉井君と西村先生を含む教師にしか物理干渉能力はなかったはず。

これには西村先生も驚きを隠せないでいる。

 

「これは……以前学園長のお遊びにこんな結果が出ていた気がするな」

 

「あ、思い出した! これってあの時の召喚獣だよ!」

 

よく見てみると武器を装備していなくて、服装はボクたちの制服に依存している。

そして子供のようなあの素振りはFクラスで遊んt――実験していたときの仕様と大きく似ている。

けど、ちょっと違うネ。あの時は本音を話したりしていた。あの時のムッツリーニ君は楽しかったなぁ。

あ! そういえば二人の子供がどうとかって面白いことをやっていたネ。 もっと早く皆と混じりたかったなぁー。

 

「うぉっほん! 工藤、そろそろ取り消してみたいんだがいいか?」

 

「あ、はい!」

 

いけないいけない、今の目的を忘れていたヨ。 準備が出来た西村先生は咳払いでボクに注意を引いた。

体裁を取り繕って合図を送る。

 

「それじゃやってみる。『これより教師権限を用いて、召喚フィールドを取り消す!!』」

 

先生はいつもやっているように召喚フィールドの取り消しコマンドを実行してみる。

結果はアリスちゃんの傍にいたはずの召喚獣を見れば分かること、ゆっくりと確認をしてみるとそこにはアリスちゃんだけが残っていた。

 

「……どうやら、この試験召喚システムは学園のものと同一の物と考えてよさそうだな」

 

「そのようですね」

 

「これは学園長先生に詳しく事情を聞かねばならなそうだ……」

 

「え? 西村先生、何も聞かされていないんですか!?」

 

「すまない、俺はグラウンドに空間の裂け目みたいなものに吸い込まれてな。吉井たちが姿をくらましたのはそれより前の出来事だったから俺はもしかすると、あいつらはここに連れてこられているんじゃないかって捜索していたんだ」

 

ボクたちを連れて来たと思われる八雲という人物の意図はまだ分からないか……アリスちゃんの説明によると、きまぐれだったり真面目だったりとよくわからない人らしい。

肩を落とし落胆するも、ボクは気になることを尋ねる。

 

「それで、吉井君たちに出会えたんですか?」

 

「ああ、吉井と坂本と土屋、木下の弟の四人と無事に再会出来た。あの時はまだ四人しかこちらの世界に来ていないそうだった」

 

「そうですか……木下君は無事ですか……」

 

優子はまだどこにいるか分からないみたいだね……木下君と出会っていればなにか手がかりが聞けると思ってたんだけど……。

 

「あいつらなら寺子屋にいるはずだ。話したいことは山ほどあるだろう、そこに向かうといい」

 

「分かりました」

 

やっぱり直接会ってみるのが一番早そうだね。

さて、これから色々と忙しくなりそう、アリスちゃんの恋のお手伝いに優子探し、ボクたちにどんな目的でこんなことをさせているのか……ボク一人ではとても背負えないからここは合流したいのが本音って感じかな。

 

「なんだ、召喚獣はもう終わりか……」

 

「……………ねえ、愛子」

 

がっかりする魔理沙とリアクションが異なるアリスちゃんの顔つきは何か考えがあるようで真剣にボクに話しかける。

 

「何かな?」

 

「召喚獣って、自分の意思で自由に動かせるの?」

 

「えっと、今の仕様じゃ操作は難しいカナ。それがどうかしたの?」

 

さらっと質問に軽く返事をするとアリスちゃんは息を吐いて、ゆっくり吸い込み、意を決してボクに伝えたいことを話した。

 

「お願い! 今度の人形劇に愛子も出てくれないかしら?」

 

「えぇぇーーーっ!?」

 

「どういうことだぜ? 人形劇っていつもアリスが人里で定期的に開催してるアレだろ?」

 

「実は……ちょっと困ったことになっちゃって……」

 

アリスちゃんが今まで黙り混んでいたのはボクの召喚獣を見てからで、急に目の色が変わった。

多分それが原因であり、この相談内容を持ち込んでみたきっかけだったんだろう。

どういうことなのか、アリスちゃんに説明を聞き出すことにした。

 

「困ったことって?」

 

「今年は人里で大きな祭りが開かれるみたいでね、いつもよりクオリティの高い人形劇に仕上げたいのだけど、人形を作る材料が買えなくて……ずっと言い出そうか考えていたのだけど、ごめんね。愛子の召喚獣を見て脳裏に刺激が走ったのよ、これだ! って」

 

「そうだったの……」

 

この時、ボクはいくつかアリスちゃんが何かボソボソと呟いているのを耳に入れていたのを思い出した。

あれは魔理沙との恋が上手くいくか不安だったとかじゃなくて、このことを話したかったんだネ。

でも、ボクにもやらなきゃいけないことはある。けど、このままだと人形劇を楽しみにしている人里の皆を悲しませてしまう。

そんな色んな気持ちを込めて、ボクにこのことを話したんだネ。

 

「アリスちゃんって、やっぱり可愛いな」

 

「な、なによいきなり」

 

「だって、そんなお願い事あるんだったらサ、ボクに出来ることなら協力しない訳ないじゃないカ」

 

「だ、だけど、アナタは友達が心配で……」

 

「吉井君たちって、幽香って人と弾幕ごっこしたって言ってたよね?」

 

少しでも触れると涙がこぼれそうに顔を歪めるアリスちゃんに向かってボクはニコっと笑顔で話す。

今まで一人で感じていた責任が音を立ててこぼれたように見えた。

 

「え、えぇ……そう、みたい」

 

「そんな人と戦っても、吉井君たちは頑張ってる。これからも元の世界に帰れるように色んな悪巧みをしているに違いないと思う。なら、ボクも頑張らないといけない。友達を探して、例え無事に見つかっても、「アタシなんかに構ってる暇があるなら、吉井君たちに手助けしなさいッ!」とか怒られそうだもん」

 

「愛子……!」

 

「うん、これからもよろしくねっ?」

 

アリスちゃんと一緒なら、ボクは何も怖くない。

それにね、何だか時々アリスちゃんが優子に見えちゃうときがあるんだ。冷静な判断力、純粋な乙女なところ、たまに起こす大胆な行動……つい優子と重ねちゃう自分がいるんた。って、こんなこと言えばアリスちゃんは笑っちゃうカナ?

 

「そういうことなら偉大なる魔法使いである霧雨魔理沙にも手伝わせてくれよ!」

 

「ふむ、召喚獣が人々を笑顔に変えるのなら、召喚フィールドは展開しておこう」

 

「西村先生ッ!」

 

状況を呑み込んだ魔理沙と西村先生はボクたちに協力してくれる。

 

「物理干渉が可能となると、悪用されたりするおそれがあるんだが、まあそんなことはどうでもいいだろう。もし問題が生じた場合、学園長先生が不在な今、俺が見てやる」

 

「ありがとうございます!」

 

今の西村先生はとても頼りになりそうでボクも思わず安堵してしまう。

 

「そうと決まれば、早速召喚獣について調べてみようぜ? ワクワクが止まらないぜ!」

 

「勝手に分解とかしちゃダメだからね?」

 

「いや、召喚獣は機械とかじゃないからネ?」

 

とにもかくにも、今後は吉井君たちと合流するのはまだ先みたい。

そのお祭りのときにでも、会えればそれでいっかな。

今はアリスちゃんが笑ってくれればそれだけでボクも嬉しいと思えるんだから、できるだけ長く一緒に過ごしたいという気持ちを大事にして今後は過ごして行こう。

 

「それじゃ、俺は服装を調達するか……どこかに店とかないか?」

 

「ここから近い店は……香霖堂かしら?」

 

「なるほど、そこを訪ねてみるとするか。アリス、と言ったか」

 

「何かしら」

 

そこにはターザン衣装でそこまで格好いいと褒められないケド、一人の大人として、教師としての姿があった。

まるでボクたちの親と接するように態度を変えた。

 

「うちの生徒をよろしくお願いします」

 

「ええ、少しの間生徒をお借りいたします」

 

両者互いに頭を下げお辞儀をする。 こうして見てるとボクのことだから恥ずかしくなってきちゃうな。

 

「さって! 愛子、中でもっかい見せてくれよ!」

 

「うん! いいよ!!」

 

「あ、ずるい! 私にも見せてよぉーっ!」

 

西村先生は呼び出しコマンドを実行するとボクたちと別れ姿を消した。恐らくアリスちゃんに紹介された店に向かったのだろう。

けど、今度会うときはもう少し普通の再会シーンを迎えることが出来るといい……カナ?




無事にボルトロスとラティオスの厳選を終えました、どうも、こきゅーです。
おっと、拳が飛んできましたね……すいません、予定よりかなり遅めになりました。

で、でも我慢だってしたんですよ?ボルトロスのH逆Vでもめざ氷だったしいいやって妥協しましたが(-_-;)この前だってスマブラ買ったのにまだ三時間しか遊んでませんからね!←
ヒードランだって厳選したいし、あとクレセリアやスイクンだって厳選しtぶべらっ!



お、お見苦しいところを見せてしまい失礼しました。今回は収集がつかなくなり、10000文字超えとなってしまいましたので、誤字脱字が半端ないことになっていると思います。
あとは文の繋がりに違和感が生じたりするかもしれませんので、大掛かりな修正をすることになった際は活動報告にてお知らせさせていただきますのでご了承ください。


次回の更新は普段通り二週間後を目指して頑張りますので、読者の皆様にはご迷惑をおかけしましたことをお詫び申し上げます。

それでは、次回もよろしくお願いしますっ!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。