バカと霊夢と幻想郷   作:こきゅー

55 / 64
『号外だよー! 号外号外ィー!』

「おや、あれは烏天狗か。またいつものように紙切れをバラ撒いているな。なになに? 幻想郷に新たな決闘ルールが流行中……? なんだこりゃ、私の時代はもう終わっちまったのか。んで、弾幕の次は……式神を召喚し、互いに知力で戦わせる『試召戦争ごっこ』? 弾幕ごっこの捻りか、この世界はつまらない、だがそれを利用してやれば今度こそ私が異変を成功させることが出来る。反撃の狼煙を上げるときが来たようだ、もう逃亡者だの弱虫だのそんなレッテルを剥がして、鬼人正邪の名を広めてやろうじゃないか!!」


『あ、あれ……指名手配されてるお尋ね者じゃ……』

『ホントだ、私たち妖精には分が悪いわ、ここは逃げましょ』


「……ふん、無抵抗な相手に構うほど私も暇じゃないやい。えっと……寺子屋に行けばいいんだな? 博麗神社んとこなんぞに加勢するわけがなかろう。外来人を手玉のように操ってやる……待ってろ私の幻想郷ライフゥゥゥーーッ!!」


『………紫様、アイツはいかがいたしましょう』

『別に構わないわ、幻想郷は全てを受け入れるの。お尋ね者さんもいらっしゃいよ』

『はぁ……それと、これは小耳に挟んで頂ければよいのですが――』

『あら、そうなの? 藍、早速向かってちょうだい。後で私も行くわ』

『了解しました』



『紫、ついにかい』

『ええ、藤堂さん……ここからはずっと私たちのターンに持ち込めそうよ』

『本当かい? なら、一気に攻め込んであっと言わせてやるさね!』

『そう焦らないで、今はまだ……そう、動く時ではない。チャンスは必ず生まれるものよ。その時まで……見守って行きましょう?』

『ふむ、それもそうさね。しっかり準備をしておかないと返り討ちに合ってしまう』

『理解していただき光栄です。では、藍の後を追いかけますのでお留守番よろしくねっ』

『分かった、いい報告期待してるよ』


第二問

「次は私でよろしいでしょうか?」

 

島田の番は終わったことで、俺は次の人を探しているとムッツリーニの処置をしてくれていた姫路が声を上げる。

 

「それじゃあ頼む」

 

「はいっ」

 

ムッツリーニは今はゆっくりと横になっているようで俺は安心して姫路の話に集中できる。

秀吉が側で見てくれているから多分大丈夫だろう。

 

「私が気がついたとき、そこは迷いの竹林という場所でした。一人で心細かった私は軽いパニックになりながらも辺りを捜索しました。すると落とし穴に落ちてしまったことが幸いして鈴仙・優曇華院・因幡、鈴仙ちゃんに助けて頂きました」

 

やたらなげえ名前だな……いや、俺はこの名前をムッツリーニから聞いたことがある。

同一人物かどうか念のため確認しておこう。

 

「どんなやつだった?」

 

「あ、はい。可愛い兎さんですよ?」

 

兎……ウサギの耳がどうとか言っていたな。となると姫路は迷いの竹林というところからあの場所へ向かったと予想し、答え合わせと行く。

 

「姫路がいた場所は確か永遠亭だったな」

 

「は、はい! そうです!」

 

姫路はどうして俺が分かったのか不思議そうに見ている。俺はさらっと訳を話す。

 

「実は俺と明久はそこの八意永琳に世話になったことがあるんだ。ムッツリーニも運ばれたらしい」

 

「そうだったのですね」

 

俺の言葉で納得といった様子の姫路は話を続ける。といっても大体のことはわかってるつもりだ、軽く聞き流すようにするか。

 

「その後私は風邪をこじらせてしまったり、鈴仙ちゃんや因幡てゐちゃん、八意さんに蓬莱山輝夜さんというお姫様と一緒にゲームをやらせていただいたり……あ! 手料理も振舞っちゃいました! 八意さんはお忙しいようでしたので八意さん以外に食べていただきましたが、みなさん喜んでくれました」

 

その最後の一言で俺は心に深くそいつらに同情をした。

俺たち以外にも姫路の料理に耐えられる人物がいるとはな……妖怪でも舌の感覚は同じだと思うんだが。

いや、俺たちは八意しか実際見たことはない。今はもうこの世に……まさかな。

 

「八意さんの分は輝夜さんの提案で藤原妹紅さんに分けることになりました。その後、鈴仙ちゃんと人里まで送り届けてくれて、また会いましょうって約束もしました……今はどこで何をしてるのでしょうか」

 

姫路は無事に人里にたどり着いていたようだな。どこか懐かしげに語る姫路は見ていてもその経験は辛いものではなかったようだと心がホッとする。翔子もそんな感じだといいんだがな……八雲も、それを望んでいるだろう。自分の好きな世界なら嫌われたくはないだろうしな。

 

ん? 藤原妹紅? そいつの名は聞いたことがある。というか、会ったことがあるな。

 

「藤原妹紅? そいつ、明久と俺は見たことがあるな。物凄くイラついてやがったが……」

 

「そうなのですか?」

 

永遠亭という医療施設を半壊させる程の力を持っていたが……その理由が蓬莱山輝夜の仕業だとか。

クソ姫とか思いっきり罵っていたような気がするが姫路の会話から察するに輝夜ってのは表と裏を持ち合わせていそうだな。

その後、藤原は風見との戦闘でも俺たちを助けてくれた人物でもある。悪い奴ではなさそうだ。

俺もあの時は必死だったが、風見の強烈な不意打ちをくらって情けねえ姿を晒しちまったな……もっと強くならねえと、ここでは人間と妖怪の違いは歴然だ。もっと理解しねえと。

 

風見との戦闘シーンを思い出していると俺はそこであることが頭に浮かぶ。

 

「藤原は風見との弾幕ごっこのときに助けてくれた恩人でもある。……待てよ?」

 

「どうしましたか?」

 

俺は気絶したあと、明久でも藤原でも、霧雨でもねえやつに叩き起された。

少しうやむやな記憶だった、だが姫路の言葉で俺は秀吉にいうことがあったことを思い出される。

 

「秀吉……すまない、まずは謝らせてくれないか」

 

「どうしたのじゃいきなり」

 

「報告が遅れちまったが……藤原が応戦してくれたとき、秀吉の姉――木下優子もそこにいたんだよ」

 

「それは誠じゃったか雄二!!」

 

秀吉が初めて声を荒らげ、俺に尋ねる。

演劇部に所属していて、その演技力は賜物だ。嘘をつかれても誰一人それを指摘する人物はいない。

だが、そんな秀吉が俺でもわかるように息を荒げ、真っ直ぐに俺の方へ見続けている。

 

「ああ、本当だ。だが途中で八雲に途中退場されたからその後の行方は分からない」

 

「姉上のことを知っている人物……藤原妹紅じゃな? 姫路、あとで場所を教えてくれぬか?」

 

必死な眼差しは俺から姫路へと向けられる。

しかし、姫路は答えにくそうに口を開ける。その勢いに呑まれたのか、どこかはっきりとしない。

 

「木下君の気持ちは痛いほど分かります。ですが、その……藤原さんの住所は迷いの竹林にあります。あそこは鈴仙ちゃんなどの地元に詳しい方でないとすぐにでも迷いこんでしまう迷宮のようなところだと言われました」

 

姫路の話を聞くと秀吉はこれまでの勢いが嘘だったかのようにただ一言「そうか……」と呟き、意気消沈する。

 

「心配するな、藤原と一緒に居る可能性は十分高い。無事である確率も高いはずだ」

 

「そうじゃな……」

 

気の毒だが、今は木下の問題は後回しだ。

射命丸が島田のところに現れたところ新聞を配りまわっていると見る。

 

「射命丸ってやつは姫路と会わなかったのか?」

 

「はい……私は鈴仙ちゃんや八意さんに人里なら安全だし、きっと友達も居るだろうとのことでしたので」

 

なぜ姫路の前に射命丸は姿を暗ましたのか。迷いの竹林はアイツでも迷っちまうほどの場所なのか?

もしくはアイツに何かあった……その可能性は低いと見ていいだろう。俺の感だがな。

 

「話を続けさせていただきます。私は人里で鈴仙ちゃんと別れた後に翔子ちゃんとばったり出会いました。それから翔子ちゃんの提案で向日葵畑に行くことになりまして……以上で私は終了させていただきます」

 

なるほど、それで姫路たちは太陽の畑にいたわけか。

となると確認を取らないといけないことがある。

 

「翔子」

 

「……瑞希には申し訳ないことをしたと後悔してる」

 

「いや、お前が責任を感じる必要はねえよ」

 

「そうですよ翔子ちゃん、あれは事故だったのですから」

 

「姫路の言うとおりだ。あんなの俺たちには予測不可能な事態だった、仕方ねえよ」

 

俺と姫路に慰められると翔子は首を小さく縦に振った。 同時に笑顔を少し見せる。

 

「それより、お前はどうして人里に居たのか、俺はそっちの方が気になる。そろそろお前のことも話してもらおうか」

 

「……分かった」

 

姫路の話も粗方終わったことだ、次はいよいよおおとりを飾ってもらおう。

 

「……私は、三時限目を終えて一休みするために窓を眺めていると外から人が」

 

そいつは化物なのか?

 

「……その人は八雲紫と名乗り、話があるからと使われていない教室に来てくださいと言われた」

 

「それで行ったのか?」

 

そんなやつの話なんて俺なら聞かないし、会ったことを無くしてるが。

 

「……行ってみた。けど、その教室の扉を開ければ、そこは異次元だった」

 

「まるで御伽噺のようじゃのう」

 

どこか現実離れした内容だが、それら全てひっくるめてここのやつらはやってのけるからな。

 

「ええ、神隠しみたいでちょっと怖いわ……」

 

「島田も含め俺たち全員そんなもんだがな」

 

「……気が付くと私は人間の里という場所に来てた」

 

「良かった。それなら特に起きなさそうだな」

 

翔子も風見との一件で辛い出来事があったが、それまでは何もなさそうだ。

とりあえず話を聞いてみるか。だが平凡な日々を過ごしていたなら翔子のあの自信げな表情は何だ?

 

「……そこから鈴奈庵という本屋に寄ってみた。そこで情報収集してみた」

 

「翔子の話からすると、そこに行けば幻想郷に関する資料があるということか!?」

 

「……話はまだ続いてる」

 

ほっぺたをむくりと膨らませ機嫌を損ねる翔子を見て俺は軽く謝る。

 

「すまんすまん」

 

「……そこにいた本居小鈴(もとおり こすず)さんの勧めで稗田阿求(ひえだのあきゅう)さんのところにお世話になりました」

 

「あれ? その名前……私にも少々話してくれましたね」

 

姫路にも翔子の話をしたようで、稗田阿求という名前に食いついた。

 

「……そこで私、幻想郷のあらゆることをまとめた『幻想郷縁起』という資料を読ませてもらった」

 

「何だと!?人里にそんな都合のいいもんがあったのか!」

 

そいつには是非とも会っておきたい。 色々幻想郷について知ることができそうだ。

 

「翔子の妙な自信はこれだったのか」

 

これについては正解だったらしい、翔子は笑って俺の方へ振り向き、うんと頷いた。

 

「……その本読んだから幻想郷については知り尽くしている」

 

「あれ? それなら坂本のこの話し合いって……」

 

「いや、本来の目的は失われたがこうして事実談を話し合い、ストレスを解消させるのもある」

 

島田はそうだったの、と一言残すと再び話を聞く態勢に戻る。

 

「……そこで私は九割程幻想郷のことについては知ったつもり」

 

「つもり?」

 

幻想郷縁起は幻想郷を纏めた、つまりガイドブックみたいなもの何だろ? なら全部を掌握することは難しい。そこは合ってる。

だが、’つもり’という言葉に引っかかった。

 

「……何故か、その幻想郷縁起が欠損していたらしく、一部地域については分からなかった。阿求さんは「こういうケースは大体妖怪の仕業かな?」 って言ってた」

 

「おいおい……」

 

この幻想郷では異変だの何か起きれば大体妖怪のせいなのか? 阿求のとこのセキュリティがぬるかったのか、秀吉が着てきた光学迷彩のような姿を隠すことができる能力を持つ人物の所為か。俺は今考えられる可能性を一通り洗い出してみたが、どれもピンと来ることはなかった。

 

「……ざっと他にも興味が沸いた資料を読ませてもらったけど、殆どが私には読めなかった」

 

「ここってよく分からない言葉で書いてる本とか多いわよね、ウチも図書館で本を読もうとしたんだけど記号みたいなのでさっぱり」

 

翔子の言葉に島田が深く賛同の意を見せる。そういや図書館に寄った割には情報が少なかったことを思い出す。

 

「……代々稗田家は昔から幻想郷の全てを知り尽くし、それを書き綴る使命がある。私が読めないものは恐らく先代たちが書き記した物らしい」

 

島田は説明を聞いてほぉ~っと息を漏らし理解している様子だ。 ガチの専門家が近場にいると知って俺はますます直接話を聞きたくなったし、その資料とやらを読んでみたくなった。

 

「……私が教えるからいい」

 

「いや、俺もその資料とやらに興味が沸いてきた。気になることもあるしな」

 

「気になることとな?」

 

まぁ、それは明久と俺と慧音しか知らねえことだから、ここで説明しても時間の無駄だ。

適当にはぶらかすか。

 

「大したことじゃねーよ。 それで、翔子はそこから出た後はどうした?」

 

「……たまたま瑞希に会ったから、合流した。けど正直驚いた」

 

「私もびっくりしちゃいましたよ!」

 

互いに翔子と姫路は微笑し合う。 この二人がのんびり平和に過ごしていることを俺たちは心に刻み込んでおかなければならないんだな。もう翔子が苦しむ姿を見せるわけには……。

 

「……それで、折角だから幻想郷縁起に載っていなかった太陽の畑に一緒に誘って」

 

「オーケー、分かった」

 

翔子は一度覚えたことは二度と忘れることはない。それほどアイツの記憶力は優れているということだ。

そんな翔子が興味を持ち、知りたいと思ったんだ、仕方ないとしか言いようがねえな。

しっかし、太陽の畑ねぇ~……コイツは大分お灸を添えてやる必要がありそうだぜ。

 

「んじゃ! 翔子の話も終わったことだ、次は俺と明久の話をしてやるか」

 

「アキの経験談……気になるわね!」

 

「そうですね! できれば本人から直接聞いてみたいのですが……」

 

「明久なら時期に戻ってくる。用が済めばな」

 

姫路と島田は未だに明久のことを心の隅で心配しているのか。 詳しく事情を説明すればきっと勘違いするだろう。

だから話さないで置いたが……決断力が鈍っちまったなぁ。

 

「それじゃ明久が帰るまで待つか? 俺とこいしだけの話でこの場は締めよう」

 

「「分かりました(分かったわ)!」」

 

それじゃ、第二回幻想郷報告会は俺とこいしで最後にするか。

といっても俺からは前に秀吉たちに話したことをもう一度繰り返すだけだ、さっさと終わらせ、こいしから話を聞くとしよう。

しかし、こいしも地下でのことしか殆ど知らない様子だった。

昔はよく地上にお忍びで行っていたらしいが……あくまで観光気分だったのだろう、問題はない。ここでこいしから情報を得たとしても、幻想郷縁起と稗田阿求に会うのだから支障はない。フランも吸血鬼だからだろうか、家族以外はあまり知らないようだった。

これで全員のここで過ごした出来事は聞かせてもらったことだ、後は俺は報告会を終わらせ準備が出来次第、稗田家へと向かうことにしよう。




前の投稿から一ヶ月が過ぎようとしているので流石に慌てて次の投稿を書いたこきゅーです。どうも(ニコッ

アハハ……すいません、大変遅くなりました。ちょっと春休みのリアル事情が立て込んでまして……といったな、それは嘘だ。本当は艦これの冬イベに没頭してまs(アベシッ

んっ、それと、今回ちょっとトラブルというか事前調査が足りなかったというか……なので、時間ができてしまったので書いた所存であります。

それでは、次回もよろしくお願いします。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。