前回の投稿から1ヶ月以上経過してしまい申し訳ありません。次回の投稿もすみませんが未定とさせていただきます。リアルの方が忙しい時期に入ってしまったので……。
それでは、私からは以上です。本編へどうぞお読み下さい(クオリティ下がってなければいいなぁ……)
「それにしても雄二がいて助かったよ」
僕は香霖堂で幽香と別れてから人里でいろんな経験を積んだ。幻想郷に感化され前より酷くなったFクラスの皆に追い掛けられたり、幼気な妖怪のスカートの中に潜り込んじゃったり……こらそこ! 真性の変態とか言わない! アレはそもそも僕はなにも悪くないんだから!
兎に角、僕は雄二に寺子屋で言われた稗田さんという人のところの玄関で待たせてもらっている。本当は僕が寺子屋に戻ってから二人で行くつもりだったらしいけど、雄二一人で様子見しようとしたところ姫路さんたちも付いてくると聞かなかったらしい。僕と幽香が雄二たちを見たのもその途中だったとのこと。
「今後は人里に居る限り須川たちと会う可能性も低くなるだろう。幻想郷を心から楽しんでるようだしな」
雄二が嫌みを含めた笑いを浮かべる。うん、何を吹き込まれたのか分からないけどいくら召喚獣が物理的干渉可能仕様になったとしてもただの子供のような召喚獣を戦闘に役立てるのか? 点数だって二桁がやっとで、酷い人は一桁だっているのに。
「お待たせしてすみません」
「おう……ん?」
「あれ?」
僕たちの前に現れたのはお屋敷の主人ではなく小さな子供だった。
「私、この稗田家当主の
幼い見た目に対し着物を見事に着こなしている。二十歳の女性に負けないほどしっかりとした佇まいを見せまるで子供ではないみたい。
「小さいのに偉いね。パパとママはどこかな?」
「失礼ですね! 私がこのお屋敷で一番偉いんです!」
ハハハ、嘘が上手だな~。いくら大人びてるからってそんな事が本当なわけがひでぶっ。
「初めまして、まずはこのバカの非礼をお許しください。俺は坂本雄二、このバカは吉井明久という者です」
笑ってるところを上から手で押さえつけられ無理矢理頭を下げさせられる。
「ちょ、いたっ、なんなのさ雄二」
「お前人の話は聞けよ。見た目はチビッ子だろうとこの人の言ってることは本当だ。翔子から確認してる」
「チビッ子って……そちらのメイドの方も失礼です!」
「あ、すんません」
平たく謝る雄二に反省の色はあまり込められていない。いつも通りだね。というか雄二も早く着替えが見つかるといいねと僕は余韻に浸る。
「それでは、奥の客間に案内します」
外から見ても豪華だったけど内装もしっかりとしてる。稗田さんに付いて行く途中に頑丈そうな木材が屋敷を支えているのが分かった。
「こちらとなります。この中でしばらく待っていてください」
「ありがとうございます」
雄二が丁重に対応すると稗田さんは廊下の奥へと歩いて行った。僕たちは言われた通り中で待ってるとしようか。
「そういえばまだ聞いてなかったよね」
「何をだ?」
「ほら、ここに来た理由だよ。ついでに僕が呼ばれた理由も」
座卓に掛け軸に畳まで揃っているこの客間は江戸時代にタイムスリップしたかのような雰囲気を漂わせる。本棚には難しそうな書籍がズラリと並んでいて眺めているだけでも眠気が襲う。僕たちは取り合えず座り込み失礼のないようにしながら雄二にここに訪れた理由を確認する。
「翔子が世話になったと礼を言うためだ。あとは例の破れたページについて問い詰める」
霧島さん? なるほど、彼女は幻想郷ではここに辿り着いたんだね。そして僕も居合わせる必要があることもその一言で何となく察した。
そして間もなく稗田さんの用意が終わったのか襖をゆっくりと開けて入室する。その小さな手には一冊の本が抱えられていた。
「お待たせしました」
ゆっくりと襖を開け、客間に入る様は料亭で長年経験を積んでいる女将のような立ち振舞いだった。見た目は十才前後の可愛いお年頃だというのに本当にしっかりしている。
「ようこそいらしてくださいました。お二人の話は慧音先生から大体伺ってます」
「慧音先生が?」
僕たちと永遠亭からの帰りから見てなかったけど稗田さんの所に寄っていたんだね。
「お二人の目的も重々承知していますよ。これですよね?」
僕達のことを慧音先生から聞いたのか文の新聞を見たかは分からないけどよく理解している様子の稗田さんは持ってきた本を見せる。
「どうぞ中をご覧になってください」
そう言われ雄二が真っ先に内容に目を通す。すると段々口元が綻んでいくのが分かった。正直不気味だったので僕も中身を見てみる。
「これって……ルーミア?」
そこには霊夢と歩いている時に出会った妖怪のルーミアの絵と、ルーミアについて詳細がずらりと文字が並んでいた。
「なるほど、少し俺の思ってたのと違うようだ」
「見た目に騙されちゃダメだよ、霊夢がいなかったら僕は今頃どうなってたことやら」
「ん? 霊夢さんとお知り合いですか?」
「え? うん、そうだけど……」
霊夢は幻想郷では知らない人はいないようだ。
「外来人の方でも本当に特別な方達なのですね……」
「どういうことだ?」
雄二が一旦本から稗田さんに視線を変える。
「幻想郷に来られる外来人の方の殆どはそこのルーミアに食べられてしまうと聞いたことがありますので」
僕も食べられそうになったからね。あの時は霊夢が僕を庇う形でやり過ごしたけど僕もその外来人になっていたかもしれないと思うと背筋が寒くなるよ。一応言っとくけど、物理的に食べられるの方だからね? パクっ、もしくはムシャムシャの方。
「さて、本題に移りましょう。その書籍――幻想郷縁起にはここ、幻想郷の住人たちの記録を載せています。といっても、私が持ってきた物はスペルカードシステムが制定されてからの資料ですが」
「翔子もこれを読んだのか?」
「霧島翔子さんのことですね。はい、彼女もここを離れるまではその書籍も読んでいました」
「他はどんなものがあるんだ?」
思わず前のめりになってしまうほど雄二は目の前の事で頭が一杯らしく質問攻めを繰り返している。
「他は……残念ながら慧音先生や霊夢さんのお知り合いの貴殿方と言えどもお見せすることは出来ません」
「そうか。それと、翔子のことだが……面倒を見てくれてありがとう」
「いえ、私もあの方と話をすると楽しかったので」
「どんなことを話したんだ?」
「そうですね……自分が外の世界から来たという説明から始まりどんな外の世界なのか、自分は何者なのか自己紹介をしてくださいましたので私も幻想郷での身分を話したり。具体的に内容を明かしましょうか?」
「具体的に? 会話内容を録音でもしていたのか?」
「いえ、そんな天狗が使うような道具はあまり好みません」
どこか裏があるような稗田さんの言葉に雄二は本を机の上に置き、集中力を高める。彼女は何か隠していることでもあるのだろうか。
「……稗田、アンタは人間なんだよな?」
「はい、そうですよ」
「能力とか持ってるのか?」
「はい、ございます」
え? 稗田さんにも霊夢みたいな能力を備え持っているのか。人里に住んでいるからてっきり妖怪には太刀打ちできないタイプだと思っていたけど慧音先生みたいな感じなのか?
「といっても、私は『一度見た物を忘れない程度の能力』という求聞持の能力があります」
なんて羨ましい能力なんだ……それがあれば一度見たムッツリーニ商会の商品を丸暗記に出来る他、試験勉強なんて必要ないじゃないか!
「明久、そのバカっ面早くしまえ」
「失礼だな! そんな顔してないよ!」
「いえ、見るに堪えないお顔をしています。さながら便利な能力とでも思っているのでしょう」
うう、小さな子にまで見透かされていた。僕って本当にバカなのかな……。
「しかし能力にしてはエラいもん持ってるんだな。まるで秘術だ」
「確かにそうですね。これらの書籍は全てご先祖様が遺していった記憶を記録として置いているものですのではっきり覚えています」
「それを翔子は」
「はい、その書籍の中身はほぼ覚えたと豪語しておりました。外来人はおろか指で数える程度でしかこの幻想郷には昔の資料を読むことは出来ないはずなのに……彼女には感心させられました」
すごいな……霧島さんが幻想郷に来てからずっと資料を頭に叩き込んでいたのか。未知の世界で一人放り投げこまれたんだ、よっぽど不安だったに違いない。この世界に慣れなければきっと路頭に迷い込んでしまうからだろう。僕には真似できない芸当だ、というより彼女以外にこんなことが可能な人を僕は姫路さんしか知らない。
「しかし……」
「そうだな、次はこっちの番だ。これを見てくれ」
稗田さんが困った表情を浮かべると素早く雄二がその意図を汲み取る。
雄二が見せたのは例のページだった。
「これは……間違いありません。破り取られたページの一枚です!」
「ちょっと待て! 一枚だと?」
慌てて雄二が書籍の内容を洗いざらい目を通していく。初めから最後まで抜け目なく全部見ていった。すると明らかにおかしいページがもう一枚見つかった。
「風見幽香の項目が……無い」
「なんだって?」
「は、はい……その幻想郷縁起には風見幽香と活発に行動している妖怪たちの居場所について記しています。太陽の畑に関する情報も記録しています」
どうやら僕たちは勘違いしていたようだ、損失していたページは二枚あったということか。
「……翔子が向日葵畑に行っちまう訳だ」
「え? どういうことです? まさかあの弾幕の中に翔子さんも?」
「ああ、だが俺たちと霧雨、藤原のお陰でなんとかやつの暴走を止めることに成功した」
「風見幽香は向日葵畑を気に入っています。そこを滅茶苦茶にさえされない限り見境もなく攻撃を仕掛ける妖怪ではないはず……何百年と幻想郷を行き来している大物妖怪。なのに何故貴方達のようなひ弱な人間を」
幽香のことについてはやっぱり皆怖いという感情があるようで、そこは僕から補足に入る。
「それだけ、許せなかったってことじゃないかな。幽香も手塩にかけて花を愛していたんだ。それを一瞬で儚い華を刈り取られ……」
「そんなことがあったのですか……」
稗田さんが知らないのも無理はない。いくら彼女が過去に起きた全ての出来事を覚えているからと言ってその場に居合わせたり誰かから情報を耳にしない限り覚えられないのだろうから。
「その様子だといつページが盗まれたのかさえ分からないようだな」
「はい、慧音先生にも同じ質問をされましたが……」
黙って首を降る稗田さんの顔は少し悲しそうに見えた。
「そうか。わかった。ならこの本を借りることはできるか?」
「正当な理由があれば稗田家の資料は人妖問わずお貸しすることは可能です」
「なら、ちょっと借りていくぞ。俺たちも幻想郷について勉強しないとならないんでな」
「お力になれずすみません」
「何言ってんだ。十分すぎるほど情報を今これでもらったよ」
幻想郷縁起をパンパンと叩き雄二は感謝の意味を込めてニカっと笑う。稗田さんも釣られてか顔を綻ばせる。
「それに大体の犯人は目星ついてんだ。そいつらにあったら弁償させてやろうか?」
「そうですね、是非お願いします」
「私も……い命……ので……」
稗田さんは何か小さく呟いていたが僕と雄二にはそれを聞き取ることはできなかった。けれど雄二は気にせず話を続ける。
「おう、任せろ。ついでに明久の着てるような『普通の』着物をくれないか?」
なるほど、コイツの最終目的はそれが狙いだったのか。霧島さんの恩もあるんだろうけどあまりに親切すぎる。さっき声のトーンが明らかに上がったからようやく分かった。でも、今回は助けられたりなってるし、妨害はしないでおこう。
それにメイド服でいられるとこっちが恥ずかしいしね。
「ついでに明久に女装用の衣装を「はいストップ! 僕には巫女服があるから結構です!」だそうだからやっぱいいわ」
この野郎こっちが気を許せば何を言い出しやがる。今のは冗談だったらしく素直に引いてくれたけど、稗田さんがリアクションに困っちゃったじゃないかぁ!
「クスクス……了解しました。それでは吉井さんは玄関にて待っててください。坂本さんにはすぐ用意します……その前に使用人にサイズを計らせてもらいますので少し体をお借りします」
「感謝……圧倒的感謝……ッ!」
「そんな泣くほど嬉しかったの?」
「当たり前だろ、お前がまともな格好して戻ってきやがったときはどう巫女服に逆戻りさせてやろうかと考えてたところだ」
「アハハハ」
「余裕ぶっこきやがって……だが、それも無しだ。ようやく堂々とこの世界を探索出来る」
もしかして一人でここまで来た理由の中にそれも入って……寧ろ本命だったかもしれない。異世界とは言え公開処刑されてるようなもんだし。
「既にFクラス連中に何人か見られたがな……お前の所為も含めて」
「…………ごめん」
僕はその言葉を最後にきりがよかったので一足先に玄関へと向かっていった。書籍は雄二がしっかり持ってるだろうし、この場を去っても問題ないだろう。
そして、アイツが僕の前に再び現れた時はメイド服を着こなしていた頃とまるで別人のように思えるほどピッタリ似合っていた。
「良かったね雄二」
「ああ、あとは俺の姿を見た者全ての記憶を消す」
それはマジなのかジョークなのか分からないからやめて!
「とてもよく似合っています。それにしてもどうしてメイド服を……男性の方なら執事服では?」
「……そこは地底鴉にでも言ってやってくれ」
「地底鴉……あ、はい、分かりました」
なんだろ、僕が霊夢にされたことがまだ恵まれてると思えてくるね。
「それじゃ、色々ありがとな」
「お邪魔しました」
「はい。お二人の神隠しが無事に終わり、元いた世界へ帰れるよう祈っておきますね」
最後までおしとやかな稗田さんは外まで見送りをしてくれた。稗田亭を後にした僕たちは一旦寺子屋へと戻りみんなで試召戦争まで猛勉強する計画を立てることになるだろう。
勿論、その前にやることがまだ残っているんだけどね。
『……行ってしまわれましたか。愉快な二人でしたね』
『どうもー! 阿求さんこんにちは!』
『文さん、こんにちは』
『どうしたんですか? 今からお出掛けでも?』
『いえ、ちょっと来客の相手を』
『そうですか、あ! はいこれっ、号外です!』
『号外……向日葵畑が一面に大きく載って……なるほど』
『あー、やっぱ周知の事実ってやつですかねえ? あんだけ派手にやらかしてることだし』
『凄い弾幕でしたね』
『全く、この文様がスクープを取り逃がすとは……無念』
『いつもご苦労様』
『数少ない読者の一人ですからね、あやややや。おっと、それよりも今日は八雲紫さんより伝言を預かってて』
『妖怪の賢者が私に? 新しく幻想郷に住まう妖怪でも居たのかしら』
『いえ、ちょっと重労働と申しますか……体に負担がかかるかも……』
『勿体つけないで下さい。そりゃ私は体も弱く残り短い命ですけどやるときは頑張ります』
『ふむ。ところで今幻想入りしている外来人についてご存知ですよね?』
『この新聞にも大きく載っていますからね、それが何か?』
『その人間たちは外の世界の科学で式神を一定の範囲内なら召喚する能力があります』
『まさか……外の世界の人間にそんな力が……』
『しかし、力の源は召喚者の学力が必要なようで』
『ふむ、話が見えてきませんね』
『つまり、阿求さんにはその学力を補う役目を果たして貰いたいのと八雲紫は思ってます』
『私に……まぁ、この者たちの為でしたら喜んで協力します』
『おお! そう言ってくれると助かります! それでは具体的な手段についてはこの手順書を見てください。準備ができましたら私がすぐに駆け付けますので』
『文さんも手伝ってくれるの?』
『Yes。 というかそれ見てくれると分かるんですが印刷技術というものが天狗にしかありませんからね。我々天狗以外が河童たちに頼むと高額な金銭を要求されますので』
『……ふむふむ、なるほど。私がテストとやらの出題者になれと』
『Exactly(その通りです阿求さん)』
『分かりました。この依頼正式に受けますとお伝えください』
『了解です。では私からは以上です。また来ますね!』
『ええ、お気をつけ――こほっ、砂埃が……文さんってばせっかちなんだから……でも、これで少し楽しくなりそうですね』