第三問:丑の刻参りについて簡潔に説明しなさい。
霧島「五寸釘と藁人形を用いて使用する呪詛神信仰である」
教師のコメント:そうですね、皆さんが知っているような丑の刻参りはそうですが実は当初は五寸釘と藁人形を使わなかったそうです。
姫路「まず藁人形を使います。次に好きな人への思いを沢山藁人形に入れます。そしてトンカチで五寸釘を使い思いっっきり叩く恋愛成就を祈るおまじないです」
教師のコメント:誤解されないよう注意してください。
明久「遠距離攻撃(相手は呪われる)」
教師のコメント:簡潔すぎです。
勇儀「そんなもん使わなくても直接やってやるよ」
教師のコメント:死を前提とした説明をありがとうございました。
水橋「人ヲ呪イ殺ス手段ノひとツ」
教師のコメント:あなたが言うと凄く怖いです。
「雄二さ~~~~ん!!!」
「なんだ突然大声で……」
「暇!!もう無意識で先に地上に行こうよーっ!!」
俺とこいしは旧都を出て五、六分経ったばかりだと言うのにこいしが会話が続かないことに不満に思っていたようでそれがさっき爆発したようだ。
「こいし、時には我慢も必要だぞ?」
「やだ! なにか話題がほしい!!」
「といっても、俺が知りたい情報は粗方聞いたし……」
困ったなといった具合にほほをかく。
「だったら私が言う!!旧都の三丁目の店が結構おいしいんだ!」
「知るかっ!!」
これで会話は続いてると思うし、まぁいいよな。
「あ、橋だ」
気付くと目の前にはいかにもボロく、通りたくねえー橋があった。
「よしこいし、俺を運んでくれないか? 飛べるんだろ」
「えぇーっ!!しんどい」
「こんな橋渡ったら確実に落ちるだろ!!」
ロープが切れかけだしちょっと踏んでみるとメシメシともうこれ落ちますよと言ってるくらい脆いし危険だ。
ここはこいしに頼んで飛ばしてもらうしかない。
「そこをなんとか、頼む!」
「むぅ……」
こいしの表情が緩んだ。
もうひと押しか?
「……………」
ドス…
ドス……
「ん?」
「どうした、こいし」
なにやらこいしの様子がおかしい。
動こうとせず、何かを探しているようだ。
「何か聞こえてこない?」
言われてから気付いたが、確かに何かを叩く音がする。
さっきからこれの音の在り処を気になっていたのか。
「………だな。なんの音だ?」
ゴス……!!
「だんだん強くなってない?」
「あぁ……このボロ吊り橋の向こうから聞こえるな」
なにやら不気味な気がする。
俺のこの予感はなんなんだ……?
「行ってみよー」
「あ、ちょっとま――」
こいしが先にぷかぷかと飛んで行ってしまったことにより俺の命綱はなくなった。
「結局橋を自分で渡るはめになっちまったか……」
落ちるなよ、あのバカなら落ちるが俺は落ちない。
そう祈っておこう。
「ほ~ら~早~く~」
橋の向こう側で叫んでいる。
「お前は飛べるからいいよな……」
愚痴をこぼしながらも、ゆっくりと用心しながら着々と渡る。
俺もここにいたら飛べるようになってほしいものだ……。
ゴスン……!!
「お、音がさらに大きくなってるね~私先に行ってくる!」
「あ、こら!」
こいしがさらに先に行ってしまい、とうとうここからだと見えなくなってしまった……。
「大丈夫だ、これまで数々の試練(目潰しや水中鬼ごっこなどなど)を乗り越えた男だ、落ちるはずねぇ」
自分に可笑しな暗示をかける。
そうでもしないと正常に気を保てないからだ。
下を見てみろよ……底が見えないんだぜ?
洒落にならないから俺は今マジなんだよォ!!
「…………なに一人で盛り上がってんだ?」
俺はまだ酔ってんのか……落ち着け。俺。
色々文句を一人むなしく、誰にも見守られることなくなんとか渡ることが出来た。
さとりん家に行く時まではぜってー飛べるようになってやる。
そんな無謀なことを心に誓うのであった。
――――☆――――☆――――☆
ゴスン!!
さて、結構歩いたがかなり音に近づいたんじゃないか?
「雄二さん! よくぞご無事で、死んだかと」
「死ぬ前提かよ!!」
こいしが笑顔で俺の元へと歩いてきた。
簡単に殺すなっての。
とまぁ橋を渡り終えて時間が経つわけだが……。
ゴスンッ!
「あれは……誰だ?」
音のする方へと目を向けるとそこには誰かが何かを叩く仕草が見える。
洞窟自体が暗くてもう少し近づいてみないと分からねぇ。
「ここは慎重に行動したほうがいいな。凶器を持ってるかもしれん。こいし、俺の傍からはな――」
「ねぇねぇー何してるの?」
遅かったか!!
俺が注意するまえにこいしはもう謎の人物の下に行っていた。
しかも平然と話しかけてるぞ!!
「…………!」
相手はこいしが話しかけてきて驚いている様子。
仕方ねぇ、俺も行くか。
考えてみればなにかあればこいしに任せればいいんだしな。
「あ、あなたはえっと……たしか水橋 パルスィね?」
「そうよ」
小さな声で俺たちの質問を渋々返す。
「で、なに?」
見た目は日本人というより外国人に似た感じだな。
緑色の瞳、髪型……しいていうならペルシャの人の特徴に似てるが……日本語余裕っぽいし、妖怪か。
「なにしてたの?」
「見て分からない? 丑の刻参りしてたの」
「おい、それって……」
左手に藁人形と五寸釘、右手にはやや大きめのトンカチが握り締められていた。
コイツ、誰かを恨んでるのか……?
「あぁ妬ましいねたましいネタマシイ!!地上の人間が妬ましい!!!」
ど、どうしたんだ?
急に水橋が気が狂ったかのように叫び始めた。
「………私が折角妬んでいるのにそれを邪魔するあなた達はもっと妬ましい」
「あ、あぁ……邪魔して悪かった」
こういうのは無難に相手の気持ちを理解しつつ最も安全な返事を返せばなんとかなる。
「妬んでるなんて物騒ね」
「妬んでなにが悪いのよ!!ああ妬ましい!!」
「こいし!!なに相手を逆上させてやがる!!」
「えぇーっ!!だってホントのことだし」
「もう許さない……!」
そう言うと水橋は我を失い俺たちに向かって襲い掛かってきた。
その形相は凄まじく、男の俺でさえ、ビビる程だ。
ここは逃げる!
「こいしのせいだからな! 俺は逃げる!!後は任せた!」
俺はこいしを置いて、出口の方へ全力で走り出す。
「やだ!」
「マチナサイ……」
うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!
「あ、雄二さん待ってー」
一人だけ緊張感のないトーンで雄二を追いてかれまいとするこいしがいた。
「付いてくるな!!」
「やだ!」
「マチナサイアナタタチ!」
やべぇな……こりゃ完全に捕まったら殺される。
どこのゲームだよこれ、あ、ここはこういう世界か。
って納得する自分になんか腹立つ!!
俺は頭をかきむさりながら必死で走る。
「一人でなにしてるの?」
「こいし!!地上まであとどのくらいだ!?」
「え? あの橋越えたからあとちょっとじゃないかな?」
よっしゃ!!そんなに近くなら何とか逃げ切れそうだ!
あのバカがいなくて助かった。
アイツがいたら足手まといだからな。
いたらいたでボロボロの盾になるまで使って捨ててやる!
「この調子なら逃げきれそうだな……少しスタミナを温存しつつに変えるか?」
ここで一つ疑問が脳裏をよぎった。
相手は飛んでるのに……何故追いつかないんだ?
「チョウドアタラシイワラニンギョウガホシカッタノ!!」
考えてる暇なんかねぇ!!
かなりこえぇ事言ってるぞ!!
「あ、雄二さん!!」
「なんだこいし!!俺は逃げるので精一杯――」
「ちょっと聞いて! ほら! あの穴が地上への道よ!!」
こいしが指差す方向を見てみるとそこには確かに穴から光が見える。
少し遠いがあそこまで走り切れれば……!!
「…………」
「舌切雀『大きな葛籠と小さな葛籠』」
ん、なんだ?
水橋がなにかぶつくさ言ってるが……なにしてやがる?
「……………ん?」
後ろを振り向いた瞬間、俺は信じられないことが起きていた。
水橋のやつが二人になっていた。
「うおっ!!」
「ニガサナイ……」
バシュバシュバシュ!!(分身した片方のパルスィが弾を出す音)
「あいつ、とうとう弾幕を撃って来やがったか」
ちっさい弾で助かったぜ。
狙いも定まってねーようだし、このまま………っ!?
「……………」
「な、なんで………お前が………」
雄二は油断していた。
分身したところは見ていたがその後の水橋パルスィの様子を捉えておらず、もう一体の行方に気が回らなかった。
いつの間にか、雄二の前にはその水橋パルスィが攻撃態勢に入っていた。
「オワリネ……」
バシュバシュバシュ!!
「ちょ!!近すぎて避けれねぇ!!」
しかもなんだ!?こいつの弾やたらとでかい!!
どうやら、ここで終わるようだな……。
明久……姫路……あとその他……すまなかった。
翔子……お前を幸せに出来る婿を探すんだぞ。
俺の人生もここまで、そう思ったときだった。
「復燃『恋の埋火』!!」
バババババ!!
「…………ん?」
思わず目を瞑り手で塞いでいるんだが一考に被弾しない……。
気が付けば俺の前に撃たれた緑色の大弾はハート型の弾相殺されていた。
「雄二さん大丈夫?」
弾が消えたことを確認したこいしが俺を心配してこっちにくる。
「あぁ、助かった! ありがとな!」
「……………」
「ちょっとパルスィ! なんでそんなに怒ってるのよ!!」
「そんなの、私の邪魔したからに決まってるじゃない」
こいしと水橋は弾幕を撃ち合いながら話している。
今ので水橋は少し落ち着いたようだ。
「邪魔? あぁ丑のなんちゃらね。悪気はなかったの」
「悪気がないくらいで許されると思うなんて妬ましい……!」
バシュバシュバシュ!!
「わわわっ!!二対一なんて卑怯よ!」
「アナタがそれを言える立場かしら」
「まぁね、まとめてピチュらせてあげる」
こいしたちは本気なのか……?
それとも――
「もう!!雄二さんが何時までもそこにいると危ないんだけど!」
「あ、あぁ……じゃあ先待ってるからな!」
今の俺がこいしに手助け出来るとすれば俺が無事逃げ切れること、だな……。
俺は弾幕ごっこをしている二人を後ろに先に地上へと向かった。
「……………逃がさ――」
「雄二さんの邪魔はさせないよ、といっても私相手じゃキツいよね?」
後ろの方でこいしが俺を追ってこようとする水橋を止めに入る。
「橋姫を……ナめないで!!!!」
――――☆――――☆――――☆
「着いた!!」
俺はこいしに任せ先に地上へとなんとか辿り着けた。
周りを見てみると木々が沢山……神社が見える。
神社……俺はこいしとの会話を思い出していく。
「これが博麗神社だな」
見た目は俺らの世界となんら変わりないが……。
兎に角、こいしのことが心配だ。
妖怪の怨みほど怖ろしいものはない。
あの時、こいしは余裕そうだった。
「誰かいませんかー?」
取り敢えず、神社なんだし博麗の巫女を探してみるか。
元神童捜索中...
「誰もいねぇ!!」
マジかよ……神社の隅々まで探したが巫女どころか人っ子一人いねぇじゃねえか!!
「……こいしが心配だ」
只の足手まといになるかもしんねぇが………俺は!!
「そうだ、もしここの巫女が戻ってきたときようにあれを……」
ここの巫女に分かるはずない、そう自分自身に呼びかけるが今は確率が明らかに少ない方を選んだ。
「この再生プレーヤーで俺の声を録音しておこう」
もしもの時は俺が何とかする、いや、してみせるが妖怪退治のプロに任せる方が確実だろう。
「これでよし! 紙とかねーからてきとーにいじってくれることを祈る!!」
こうして、僅かな希望を神社に残し再び地底へと潜るのであった。
しかし、
「畜生、物音一つしねぇ」
俺は一度博麗神社に着き、再び地底へと戻ってきたのだが、弾幕の打ち合っていた音が聞こえない。
「さっきの場所にいるよな!?よし!」
こんなに必死になったのは小学生以来か。
あの時の俺はほんとひどかった。
神童であるがゆえに調子にのって周りをバカだアホだ思って、結果があれだ。
あの時は神童なんて全然すごくねぇって思えるほど、弱っちいやつだった。
だが、今の俺はこれで満足している……。
勉強がどうだとか、問題児がどうだとか、周りの事なんて気にしねぇ。
あの時の俺に足りないものを身に付けた。
同じ過ちは二度と繰り返さねぇ!!
「こいしぃ!!どこだーっ!?」
「あ、雄二さん!!」
って、ぅおい!!!!
「こいし?!お前……」
「なに?」
「…………いや、何でもねぇ」
「??」
冷静になれ。
こいしは今こうしているじゃねーか、ただ早すぎただけだ。
「おっと、それよりあれからどうなったんだ?」
「あれから? 普通に弾幕勝負して、私が勝ったの」
「そうか……水橋は?」
「また自分の場所に戻ったよ。ちゃんと納得してくれたし」
「謝ったのか?」
「うん!」
元気いっぱいに返事をする。
さっきまでホントに弾幕打ち合ってたのか……コイツは。
「良かった。っま、これで安心して地上に行けるな!」
「そうだね」
「よし、んじゃ行くか、地上に!」
「それよりなんで戻ってきてくれたの?」
「そりゃ………その………」
その質問はタブーだろうよ!!と、心の中でツッコんだ。
「なになに?」
こいしは純粋にただ理由を知りたいらしく俺の方を視線そらさず真っ直ぐ見てくる。
「……………心配だったから」
「え? なんて!?」
「あーもう!!行くぞ!!!」
「あぁもう待ってよーっ!!」
こいしには聞こえたかどうか分からない。
ただ、すごく恥ずかしいと思った。
「ありがとっ」
誰にも聞こえない心の淵に思い浮かんだ言葉。
雄二も当然聞こえてるはずはなかった。
「それで、巫女はどこにいるんだ?」
俺たちは水橋に襲われたが何とか助かり博麗神社前で地上の空気に浸る。
「おっかしい~なぁ~いつもはお茶飲んだりしてるのに」
全く、あれから博麗ってやつは全然帰ってきた様子がねえじゃねえか。
「あ、雄二さん!」
「なんだ!!」
「大きい声出さないで!!」
こいしも充分デカい声出してると思うが……何かあるのかと思いこいしのところまで行ってみる。
「どうし…………た……………?」
「……………zzz」
俺の前にいたのは明らかに鬼だった。
こいつも酒豪だったりしたら厄介だ。
起こさないほうがいいな。
「起きてくださーい!!聞きたいことが「うるせえっ!!」イタっ!!なにするの!?」
「なにいきなり起こそうとしてんだ!!こういうのはそっと寝かしといてやればいいんだ!」
「でもこの鬼霊夢さんと仲がいいよ?」
「きっと待ってればそのうち戻ってくる。時期にそいつも目を覚ますだろうよ」
「むぅ……」
不満げに表情を変えつつもこいしは大人しくなった。
あぶねぇ、これ以上酒を飲まされたら酔っぱらうぞ。
「それじゃ、こたつがあることだ。そこでゆっくりしていくか」
「コタツ!?」
こいしが何かに反応したのかものすごい勢いでコタツに入っていった。
「いいよねぇーコタツ………あったかーい」
「秋だからな。ちょっと早い気がするが………よいしょ」
俺も空いてるところに暖まらせてもらおう。
「ふぃーーしあわせぇ~~」
おっさんか、とでもツッコミたくなるほどくつろいでいる。
これで蜜柑でもあればよりそれっぽいんだがな……。
「あー疲れた!!寝る!!」
「雄二さん!!寝るなら布団で寝た方がいいよ?」
「すまん、そんなこと聞いてる余裕が…………zzz」
「はやっ!!え、寝たの? 熟睡?!爆睡……かな? どっちでもいいや」
「さてと、雄二さんすっかり寝ちゃって暇だな~」
「……………zzz」
「よく眠ってるよね……あら、これ……なにかな?」
ポチッとな!!
「あ、なんか押しちゃ「これを聞いた博麗霊夢へ」あれ、これ……雄二さんの声?」
『これを聞けてるということは無事に再生できたということか………悪い!!今すぐ地下に来てくれないか!?あんたんちの隣に穴があるからそこに古明地こいしが妖怪に襲われている。俺なんかの……部外者の人間なんかに頑張ってくれている!』
「雄二さん………」
『だから、もしあんたが博麗霊夢じゃなかったとしても腕に自信があるなら是非助けに来てくれ。俺は先に行くが正直助けられる自信はない。だが、俺はこいしに二度も助けられちまった………だから!!』
「………………」
『せめて………こいしだけでも………助けてやって下さい!!!』
「……………私をちっとも信じてないじゃん」
この後、再生プレーヤーからの音声は止まった。
こいしにはこれがなんの機械かよく分からない。
無意識に触ってしまったのだろうか……何時の間にか再生されて、聞いてしまっていたのだ。
「雄二さんの……………バカ」
こいしは雄二に少しずつ惹かれていった。
このコタツは、ついさっきまでの暖かさはなく、別の暖かさによって包まれている。
なぜかと言うと、隣で恋の閉じた瞳が抱擁をしているからだ。
その優しさは、ペットに餌をやる時の優しさではなく、公園のゴミを拾ったりする優しさでもない。
〝誰かを守る優しさ〟
フィロソフィ――彼もまた、哲学を愛し、優しい哲学者だったのかもしれない。
「う………ん…………」
眠い……瞼が全く開こうとしない。
「……………」
もにゅっ
「……………ん?」
謎の感触につい触れた右手に力を入れてみる。
もにゅっ
(なんだ………これ………)
重い瞼を開いて気になるものへ視線を向けてみる。
「うぉっ!!な、なんで………こいしが俺の隣に!?」
悪いことが次々と俺の頭で想像してくる。
「まさか………さっきのって………」
気のせいだ。
勘違いだ。
そう、あれは………目玉だ!
あの閉じてる目んたまみたいなのだ。
「全く………驚かせやがるぜ。ん?」
一息つこうとしてコタツから出ると隅っこに新聞を見つけた。
「新聞か………今日のだな。………!!」
俺は何か手がかりにならないかと思い新聞に目を向けた。
そこには堂々とこんな目だしが書かれている。
『文月学園の生徒は人里に集合!!』
「これは………明久!?やっぱここに来てたのかよ………」
この新聞はかなりの手がかりになったな!
「イテテテ………ホントに焼き鴉になるところだったぁ………」
「…………ん?」
こいしの声じゃないな……俺は気になって後ろを振り向く。
するとメモ帳とペンを持ちボロボロの状態の少女がいた。
「あ! あなたは………まさか!!」
「んあ? 俺を知っているのか?」
後ろに黒い羽根を生やした妖怪が俺を見ると驚く。
「知ってるもなにも、あなた! 坂本雄二さんですよね!?」
ズバリと答えたコイツ………俺を知ってる?
「あんたは誰なんだ?」
「私は射命丸 文と申します。そこの新聞を書いてるしがない記者でございますよっ」
黒い羽根についたほこりを落としながら話を進める。
そういえばそんな名前をさっきの新聞で読んだな。
「早速ですがインタビューさせてもらってよろしいですか?」
「悪いが、そういうのめんどくさいから」
「嫌です!!」
「断る!!」
「却下です!!」
「遠慮する!!」
「問答無用!!取材とは、命をかけた弾幕なのです!」
なに?!この射命丸というやつ……強引に取材取材と迫ってくる。
「しつこいなぁ、大体、あんな記事書かれるくらいだったらこっちから願い下げだ!!」
俺は新聞のそのあとの記事を射命丸に見せた。
「いくらあのバカだからって趣味が直腸観察とかないぞ!?」
「だってーそう答えたんだもん☆」
「もん☆っじゃねーっ!!」
なんなんだこの妖怪は……。
明久の存在を確認出来たのは良かったが、この記事を見る限り、こいつには関わらない方が無難のようだ。
「むぅ……取材受けさせてくれたらほかのみなさまの情報を教えようかと思ったのですが」
「……………は?」
「残念です。私は未発見の外来人を見つけに――」
「ちょっと待て!!」
「あや?」
射命丸の発した言葉に思わず食いつく。
「お前今………なんて?」
「私は他の外来人を探しに……ですが」
「明久だけじゃなく、ムッツリーニや姫路まで来てるのか!?」
「そのようですよ?」
なんてことだ………俺と明久だけかと思ったのに……皆来てるんじゃないか!?
「ささっ、ここからは取材を受けさせてくれれば全てお話しますよ?」
「…………あんたら天狗は話が上手いな」
「いえいえーこれも文々。新聞のためですからー」
こうして、俺は明久をはじめ俺の知り合い全員が幻想郷入りしたと聞かされた。
取材といっても特に何事もなく、「好きな食べ物はなんですか?」と聞かれれば「なんでも」といった具合にさらっと終わってしまった。
「全然面白くない!!こうなったら捏造でも……あややや」
「なんでガセネタ書く気満々なんだ!!」
「だって、面白くないです!!」
「おもしろ目的で新聞書くやつがいるかーッ!!」
「じゃあなに書けっていうんですかぁ?」
若干こいつに苛立ちを感じさせるような聞き方で俺に尋ねる。
「さっき質問してきた答えをそのまま書けばいいだろ……」
「だから、面白くないんです!!文々。新聞は面白くないとダメなんです!!」
「あのなぁ…………」
このままじゃ埒があかんな。
「取り合えず、明久と一刻も早く合流したい。俺は先を急ぐ」
「あ、まってください!!(何か……何かネタはないか!?……)」
「なんだ? ジーっと見てきて……」
「っ! 雄二さん一枚撮らせてもらえないですか?」
「ん、写真か……まぁいいか」
「オッケー!!早速撮らせていただきました!」
「はやいなっ!」
「ではでは~次号の文々。新聞をお楽しみに~」
射命丸はそう言うと凄い風を巻き起こしどこかへ飛んでいった。
(なんであの坂本って人はメイド服だったんだろ……まぁ、これはこれで……あやややや
――――☆――――☆――――☆
「なんだったんだ……あいつ」
ほんと、台風みたいな妖怪だったな……。
しかし、ほとんどが幻想郷に来ているのか……翔子は来ているとしたら無事だろうか。
多分大丈夫だろう、あいつは今俺を元の世界で必死に探してくれているはず。
ここにくる可能性はまずないだろう。
「ん……んゃ~!」
「お、起きたか」
こいしも起きたし、例の場所に目指してみるか。
「にゅ~……どうしたの?」
こいしが目をこすりながら眠たそうに聞いてくる。
「ちょっと風が強くなっただけだ」
「そう? ……もうちょっとコタツにはいろっと」
そう言うとこいしはさらにコタツの奥に入ってしまった。
「コタツで寝すぎると風邪ひくぞ?」
「雄二さんだって寝てたじゃん」
「俺は風邪ひかないから平気だ」
「私だって風邪ひかないもん♪」
少し話しているとこいしの目が覚めたようですっかり明るくなっている。
「それじゃ、いくぞ?」
「ほえ? どこに?」
「明久の場所が分かったんだ。俺はそこに行きたい」
「そこってどこなの?」
「人里という場所らしい。そこに行けば、少しは落ち着ける」
「へぇ~そうなんだ~」
こいしは一向にコタツに出る気はないまま俺の話を受け流すように聞いていた。
「…………ちゃんと聞いてるか?」
「無意識に聞いてるよ?」
「まだ寝ておきたいか?」
「ううん、もういけるよ? 何度か行ったことあるし」
「そっか、んじゃさっさと行くぞ!」
「…………うん」
こいしはまだめんどくさいのかよくわからないが正直外に出たくなさそうに見えた。
「あっという間に着いたな」
「そうだね~人間がたくさんだね~」
俺とこいしは特に妖怪に襲われたりすることもなく、俺はこいしの後ろ姿を見ながら歩いた。
「ここのどこかに俺の友達(どれい)がいるはずだ……」
「……………」
どこにいるんだ……家とか結構古い造りになってるっぽいが……。
科学がそんなに進んでいないのか……まぁ弾幕とか霊力とか言ってる世界だしな。
だが、その力を使って俺たちよりも未来的な文明を築けそうな気がするが……。
「……………」
「…………ところで、さっきから黙ってるが、気分でも悪いのか?」
そう、さっきからこいしはどうもおかしい。
博麗神社から出たときから様子が変だ。
どこか、違和感を感じる。
気になった俺はこいしの横へと並ぶ。
「……………じゃあ言うけどさ。雄二さんっていつまで私と一緒にいてくれるの?」
ゆっくりと口を開き、発した言葉はどこか悲しげなトーンだった。
「いつまでって………そりゃ……」
「そりゃ……なに?」
こいしが上目づかいでこちらを凝視している。
今にも泣き出しそうな、子供のような顔をしていた。
「……………お前がいたいならそれでいいんじゃないか?」
「!!!」
こいしは俺の答えを聞くとまるで春が来たかのように満開な笑顔を見せてくれた。
「うん!!!分かった!!」
「ぉい! あんまりくっつくなって!」
「やぁだ」
「んじゃ手をつなぐくらいならいいぞ?」
「わーい!」
結局よく分からねえが、こいしの不安も解けたことだし、明久探し続行しますか。
「ところで、さとりに何か言われてないのか?」
「大丈夫だよ! お姉ちゃんサトリだもん」
そういう問題なのか……?
『ハックシュン!』
『さとりさま、風邪ですか?』
『いいえ、誰かが私の事を噂しているのよ』
『風邪だったら大変ですね……温めないと!』
『え、ちょ、待って、話を聞きなさい! お空!』
『爆符「メガフレア」!』
『ギャァアアアーッ!!』
「吉井明久……しらないねぇ」
「そうですか……」
「あの、あんまり見ない人間を見ませんでしたか?」
「見ない人間ねぇ……さぁ」
俺とこいしは人里で明久を一通り探したが全然見つからない。
仕方なく聞きこみをしているところだ。
「すいません、誰かいますかー?」
できるだけ多く人に聞いて周った方がいいな。
あいつ一人じゃきてねーって話だし……。
「はいはい、なんだい? なにかほしいものでもあるのかえ?」
次に俺は万屋の店主に聞いてみることにした。
「あの、ばあさん、博麗霊夢って知ってるか?」
「博麗……あぁ、巫女様のことかぁ」
「そう、その巫女と一緒に誰かいませんでしたか?」
「そうだね~……あ!」
「何か思い出したか!?」
「アルバイトの娘にまだお給料渡していなかったわい」
「ぅおぃっ!」
「へ? あぁはいはい、その人なら見ましたよ?」
「ほんとですか!?」
ここで有力な情報が手に入れば大分役に立つ。
もう日が暮れてきたことだ、このまま野宿なんてことになったら……。
(命がなんこあっても足りないな)
元神童達聞きこみ中...
「雄二さんどうだった?」
「あぁ、あのばあさんから全部聞かせてもらった」
明久なら博麗と一緒に昼ごろに来たそうだ。
それで、ちょっとした騒ぎが起きたらしく、明久が必死になって子供を守ったとよ。
「こっちも分かったよ。寺子屋に居るみたい」
寺子屋か……あのバカにはお似合いだな。
「分かった、もう少しだ、頑張るか!!」
「おおーーっ!!」
こういう時の子供の表情っていうのはこっちまで釣られちまうよな。
まるで、さっきまでの苦労が一瞬で吹き飛んで、また頑張ろうという気持ちを湧きださせるかのような、そんな感じだ。
「なぁ、こいし」
「なに? 雄二さん」
「偶に思うんだが何時の間にか目的地に着いてるってこと多くないか?」
「気のせいだよ」
「そうか……で、寺子屋はここか」
ここに明久がいるんだな……。
「雄二さん、何だか嬉しそう」
「それはない。さっさとバカを救い出してやらないとな」
「うふふふ~」
「また寺子屋の前で騒がしいな……」
俺たちが話していると中から寺子屋の関係者と思われる人がやってきた。
「こんにちは」
「あぁ、こんにちは。君たちは?」
「あ、そっか。私は古明地こいしです」
「俺は坂本雄二。外来人だ」
「外来人だと? となると……吉井明久の知り合いか?」
「そのとおりだ」
いいぞ、俺たちは今とんとん拍子といったぐらいにうまく進んでいる。
「もぅ、慧音先生僕が代わりに出るって――」
慧音に続いて奥からやってきたのは男であり、その姿は見覚えのあるものだった。
「明久!!!」
「へ?」
へ? じゃねーよ!全く……。
「あ!!雄二じゃないか!!なんでここに!?」
「やはり知り合いだったか」
「あぁ、このバカ!!心配かけさせるんじゃねえ!!」
ドゴッ!(雄二が明久をグーで顔面を殴る音)
「いっってーッ!!!!なんで殴るんだ!!!」
こいつはほんと鈍いやつだ……一言ガツンっと言ってやらなきゃ気が済まねえ。
「お前がバカだからだ!!文句あるか!!!この大バカ野郎!!!!」
俺は様々な感情を抱える中、吐き捨てるように言葉をぶつけた。
「……………ありがと」
「よかったね、雄二さん」
「ところで、こいしと言ったな。私を知っているのか?」
「うん、あなたは私を知らないかもだけど、私はあなたの事知ってるんだよ!」
「……………そうか」
こいし、その文脈だけに刮目するとまるでストーカーだぞ。
「ところで雄二、なんでメイド服なの?」
しまった!俺としたことが、こんな失態をおかすとは!
この世界の住民には別に見られても構わん。
だが、俺たち側の人間からすると今の格好は単なる変態、これじゃ根本の野郎と変わらない!
……しかし、好都合だったな。
こいつも変態で助かった。
コイツの女装はかなりの完成度だ、俺よりも明久に皆は夢中だろう。
あとは俺の存在感を徐々に消していけば俺への記憶はうろ覚え。
記憶を瞬時に書き換えれば済む話だ。よし。
「お前こそ、なんで巫女服なんだよ」
「そ、それは!!お風呂の時に服がないから代わりに霊夢がくれたんだ!!」
「そんな格好姫路や島田が見たら発狂するぞ。あとムッツリーニも」
「え゛!?」
兎に角、俺は無事明久と合流できた。
ここにいればひとまず安全なんだそうだ。
上白沢慧音がそう言っていた。
探しに行きたいのはやまやまだが下手に動くのも命を溝に捨てるようなものだ、と止められたしな。
ムッツリーニたちは大丈夫だろうか……。
この未知の世界、なにが起こるかまだ知らないコトばかりだ。
俺は寺子屋に残り、明久と今後のことについて話をすることにした。