バカと霊夢と幻想郷   作:こきゅー

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寺子屋での出来事
バカとバカとバカ&バカ~第一問~


『こんなところにいたのか。見張りはどうした?』

 

『あぁ、岡崎教授。こんばんは』

 

『挨拶はいい。様子はどうだ?』

 

『うん、外の世界から拐ってきた二人なら元気にやってるよ。天狗さんも、かな?』

 

『そうか。ところでこんなところに何のようだ? 話はそれだけか?』

 

『そうだね……今一度僕たちの利害の一致を確認しておきたくて。僕はあの吉井君とは違うからね』

 

『あぁ、そうだな……安心しろ、吉井明久はお前に任せる。あの常夏コンビとやらもこれからは好きに使うといい』

 

『えぇ……僕あの人たち苦手なんだけどなぁ……』

 

『ふふっ。こっちに来てからお前の呼び方をどうするか悩んでいたが、やはり贋作者というのはどうだ?』

 

『僕が吉井君の偽物? それはちょっと違うな……例えるなら無数の可能性の中のたった一粒の存在ーー吉井βってところかな?』

 

『えぇ……なんかそれダサくない?』

 

『そうですか? ではお任せします』

 

『分かった。そうだ、もうすぐ試召戦争がこの地でも行われる。お前も準備をしておけ』

 

『うーん、僕の召喚獣はあまり使いたくないけどね』

 

『私からは以上だ。ではな。体を大事にしろよ? 贋作者』

 

『結局その呼び方なのね……怒られても知らないよー?』

 

 

ーーーー☆ーーーー☆ーーーー☆

 

 

 

心地よい風が吹き荒れ、木の葉が枯れ落ちるこの季節。

幻想郷では外来人たちにより新たな異変が起ころうとしていた。

木下さんがゆっくり感傷に浸り終えるのを見計らって、寺子屋の空きスペースを使って、雄二の一声で美波や姫路さんからフランちゃんやこいしちゃんなど興味がある人たちに集まって貰った。

 

「さて、早速で悪いんだが状況を報告して欲しい」

 

秀吉のお姉さんである木下優子さんが僕たちと無事に合流を果たし、感動を迎えたところで雄二が質問をする。霧島さんも木下さんに会えて喜んでいたよ。

 

「そうね、といっても大したことしてないわよ?」

 

特に体調を崩しているなどの様子はなく、流暢に会話を進める。

 

「どんな些細なことでも構わない。俺たちはこの試召戦争に勝たなくてはならないからな」

 

「試召戦争? そういえば幽々子さんもそんなこと言ってたわね……」

 

「ほう、勿論外の世界に戻る為だ、情報を得るだけでなく、木下姉にも俺たちが知り得た情報を全て渡そう。といっても現地にいる人が一緒なら不要か?」

 

そう言いながら妹紅の方へ目を向ける雄二。話の矛先が自分に向いていると気付いた妹紅は返答する。

 

「私も竹林で独りで暮らしている身だからね……その分厚い本に載ってるんじゃないのか?」

 

「そうだろうな。だがまだ全部は読みきれていないし、覚えられる自信はない。五感全てを有効活用でもしないとすぐに忘れそうでな」

 

「私の声や私たち幻想郷各地の匂いとかで記憶に残そうとしているのか? 頑張るねぇ」

 

「今回は俺も本気を出させてもらう」

 

雄二の本気ってあんまり信用ならない気がするなぁ……小学生レベルの社会の点数は目も当てられなかったよね?

 

「明久、何か言いたそうな顔をしてやがるな?」

 

「いやいや、僕は何も?」

 

「そういや吉井君はなんであんなところに突っ立ってたのよ。誰か探してたんじゃないの?」

 

「ん? 木下さんだよ。木下さんを迎えに行ってたんだよ」

 

「あ、アタシ!?」

 

「八雲さんから話を聞いていてね、木下さんが寺子屋に来るとか言ってたから」

 

「八雲? 何だかアタシの知らないことがまだまだあるみたい……これは時間がかかりそうね」

 

それはそうだと僕は内心密かに思った。僕や雄二、美波に姫路さんとこれまで経験してきたこと全て木下さんに教えるんだったらそれは膨大な量になる。僕なら頭から湯気でも出してしまうんじゃないかな?

 

「知りたいか? 別に馬鹿丁寧に話す必要もないと思うけどな。Aクラスにいる木下姉なら一晩もあればコイツで暗記できるだろうし」

 

「そうねぇ……ちょっと面倒にも思えてきたけど、代表が雄二にべったりくっついてるところを見ると、今回は争ってる場合じゃないものね。分かったわ、その本貸して、後で出来る限り覚えてみるわ」

 

「そうか、恩に着る」

 

Aクラスの木下さんが共に戦ってくれるんだ、これは心強い味方が増えたね!

 

「んじゃ、アタシが経験してきたことを言うわね」

 

それを皮切りに木下さんは自身が経験してきたことをあらいざらい話してくれた。

 

 

 

 

 

 

 

少女説明中...

 

 

 

 

 

 

「まっ、大体こんな感じかしら? 質問ある?」

 

「明久、意識はあるか?」

 

おっと、いけないいけない、途中少し不思議な世界に入った辺りから記憶があやふやになってたよ。

 

「しっかりしなさいよね? あんたは召喚獣の扱いにだけは慣れてるんだから」

 

「ご、ごめん……」

 

「だがスペルカードシステムだったか、あれを使われたら避けるのは厄介そうだな」

 

「そうね、まるで召喚獣が付けられる腕輪みたいなものだったわ」

 

「その辺の詳しいことは今回のルールを見てもらえば分かるだろうが、デメリットとしてマイナス百点される。加えて同じスペルカードは戦闘毎に1枚しか使用できない。何とか凌ぎきれれば隙だらけということだ」

 

「本当にそうかしら……それはあくまで避けられることを前提にしているけど、吉井君以外に実行できるとは思えないのだけど」

 

「あ? 何を言っている。俺たちの基本戦術を理解していないのか?」

 

「………Fクラスを舐めてもらっては困る」

 

「そうよ! ウチたちの底力、侮らないことね!」

 

「足を引っ張らないようにが、ガンバります!」

 

雄二の言葉に感化され、ムッツリーニたちが順番にそれぞれの意気込みを高らかに宣言する。木下さんもそんな様子を見て思わず笑みを浮かべる。

 

「そうだったわね……何かと汚い手を使っているとか噂になってたっけ」

 

「最近の木下さん酷いや」

 

いくらなんでも僕たち高校生がそんなお下劣な手段で勝つわけないじゃないかー。もうやだなぁ木下さんってば。

 

「じゃあどんな作戦なのか聞かせてもらおうじゃないの」

 

「何、避ける必要はない。スペルカードには制限時間が設けられている。その間、俺たちは当たらなければいいんだ」

 

「言ってる意味がよくわかんないんだけど?」

 

流石は雄二だ、Aクラスの木下さんでも作戦をのみ込めないほど複雑なことを考えているに違いない! 異世界で初の師召戦争だ、今まで通りとはいかないだろうからね!

 

「つまり、回避不可能と判断した場合肉壁を使えばいいだけのことだ」

 

あ、今まで通りの僕たちの作戦だった。ごめん。

 

「あんたやっぱりサイテーね……」

 

「人海戦術と呼んでくれ。それにこいしたちは知らないだろうが、ここにいるコイツは特別な存在なんだ」

 

「お? 嬉しいこと言ってくれるね雄二」

 

ここで僕の名前を出されるとは、思わず立ち上がって注目を浴びてしまうじゃないかー。

 

「ん? そこのお兄ちゃんがなんなの?」

 

「吉井明久に付けられた異名それはーー『観察処分者』!」

 

ちょっと待って? 何だか入学式直後にも似たようなことがあったような気がするよ?

 

「おぉぉぉ……お? つまりどゆこと?」

 

「コイツは紛れもない『バカ』だ、ということだ!」

 

「やっぱりだよ! こんなやり取り前にもあったよね!?」

 

「バカな癖によく覚えているな。その通りだが?」

 

悪びれる様子が一切ないのが潔くって腹がすげぇ立つよ。

 

「まあ実力は折上つきだ。期待は裏切らんよ。だがこいし、フラン。お前たちの力が必要なことも変わりない事実だ。頼んだぞ」

 

「任されたー!」

 

「当たり前よ! 最初からアイツと一思いに殺り合いたかったもん」

 

「あの羽の生えた女の子、危険ね……妖怪?」

 

「あぁ、フランという吸血鬼だ。レミリアとかいう姉とバトりたいからここにいるらしい」

 

「そうなの、ふーん」

 

「さて、以上で話を終わらせる。何か質問とか報告があれば言ってくれ」

 

「そういえば葉月ちゃんはどう?」

 

「葉月ってばここのところよく寝ちゃうことが多くて……」

 

まだこの環境に慣れてないのかもね……子供の頃、旅行に連れていくといつも以上にはしゃいだりするものだから。

 

「きっと疲れてるのかも。あまり無理はさせないであげて」

 

「そうするつもりよ。あの子に無茶はさせないし」

 

もしかすると一人でずっと悩んでいるのかもしれない。葉月ちゃんの面倒を見てくれたと言う人たちのこと。深く考え過ぎなければいいんだけど……。

 

「では、会議を終了する。各自自由に過ごしてくれ」

 

「「「了解!」」」

 

「なんだかんだ意思疏通は出来てるのよね……」

 

「そこまで落ちぶれてはいないさ。その証明のために打倒Aクラスを目指しているんだしな」

 

「うん、仲間にとって不足なしね。アタシの真価を見せてあげるわ!」

 

意気揚々としてる木下さんを見ているととても頼もしいね。霧島さんや姫路さんに含め僕たちの戦力は確実に上がっていることを実感する。

 

「あれ、そういえばムッツリーニの姿が見えないけど?」

 

「西行寺の話が出た辺りから横になってる。理由は……言わなくてもいいか」

 

西行寺というとムッツリーニがお世話になった場所でそこにいる女性がナイスバディだったはず……あ、思い出したのか。なるほど。

 

「それじゃ俺はちょっと飲み物でも買ってくるわ」

 

「分かった」

 

そういうと雄二は人里のどこかへ向かった。

 

「ところで秀吉! アンタにちょっと用があるの! 付いてきて!」

 

「それは良いが姉上、何用なのじゃ?」

 

「アンタにアタシの成果を見せてあげるわッ! そこの空き部屋借りるわよ」

 

「よく分からぬが、一先ずついていくとするかの」

 

木下姉妹は僕でもわかるくらい仲良さそうに話をして何処かへ行ってしまった。

僕もちょっと疲れたし、葉月ちゃんと一緒に昼寝でもしようかな……。

 

「あ、あの……明久君」

 

「何かな? 姫路さん」

 

脱力感を出しながら歩いていると姫路さんが何やら僕に用事があるらしく声をかける。けど少し顔が赤くなっているような?

 

「お、お疲れ様です」

 

「あ、うん、僕たちの留守を任せちゃってごめんね」

 

「そんなことはないです! 明久君の方がよっぽど疲れているはずです!」

 

「あ、ありがと……」

 

んー、そんな大層なことしてるつもりはないんだけどなぁ。今は霊夢が張った結界のおかげで身の危険を感じれば召喚獣で対処できるはずだし、雄二はそれを伝えたはずだけど……。

 

「そ、それでですね? 明久君」

 

「姫路さん、大丈夫?」

 

「ふぇっ!?な、何がでしょうか?」

 

やっぱり様子がおかしい。気持ちが昂っているというか、挙動不審というか、平静を保っていない。

 

「何だか辛そうだけど……」

 

「だ、大丈夫です! ちょっと……その……頭から……れなくって……」

 

「え? ごめん、よく聞こえなかったよ」

 

「い、いえ。気にすることではないので……ほ、本題に入りますね?」

 

声がゆっくり小さくなってよく聞き取れなかった。声を出すほど辛いということだろうか。姫路さん無茶をしようとするところあるからね……けど、話だけでも今は聞いてあげよう

。その後から対処しても遅くはないだろう。

 

「あ、明久くんのためにこの世界で採れた新鮮な素材を生かした料理をしたんです! 良かったら食べてくれますか!?」

 

あ、これはあかん。今すぐこの状況から逃げ出す準備をしよう。

 

「気持ちは嬉しいけど、姫路さんの体調が悪いみたいだしあとでいただくよ」

 

帰ってきた雄二に適当なホラを吹いて食べさせてやればいいか。姫路さんの気持ちは嬉しいけど、ここで倒れるわけにはいかないッ!

 

「私は平気です。ただ……明久くんと……抱きついたあの時が忘れられなくて……」

 

「あっ……」

 

姫路さんの小さな勇気を受け止め、僕もようやく理解をした。そっか、僕と姫路さんが再会したあのときのことを照れているのか……僕も驚いたけど、元気でいてくれたことが何よりも嬉しくて、胸が……むにゅって……その……。

 

「ぐはっ!」

 

「明久くん!?」

 

しまった、僕の体に密着した姫路さんの肌の温もりや胸の感触を思い出してしまいあられもなく鼻血を……っく、早く止血しなければ。あぁ駄目だ、直視できない。

 

「あ、明久くん?」

 

「ごめん姫路さん! またあとで!」

 

「明久くん!?」

 

もう……このまま死んでしまいたい……。

思わすその場から逃げ出してしまった僕には姫路さんの声は届かなかった。

 

 

 

ーーーー☆ーーーー☆ーーーー☆

 

 

 

「ふぅ、ようやく落ち着いてきたよ……こっちに来てから僕の部屋に隠している秘蔵コレクションを拝んでいないからね」

 

あのときは僕だってムッツリスケベじゃないから素直に姫路さんの無事を喜んだよ? けど平常心で考えるんだ。僕は恐ろしいことをしていたのではないか、と。男子高校生にとってあれほど破壊力のあるものに触れられる機会はないだろう。

うん、そろそろ冷静になろう。

 

「いつまでもやましい気持ちを抱えてる訳にもいかない。僕の頭脳なら一瞬で忘れることはできるはず……だが、忘れてしまうのは惜しい!」

 

「楽しそうにやってるな明久」

 

不意に声をかけられ思わず猫の戦闘体勢のような構えをとる。何者か確認するといつの間にか帰ってきてた雄二だった。

 

「なんだ雄二か、僕の青春に首を突っ込まないで欲しいよ」

 

「何の話か分からんがまぁいいだろう」

 

「それで、これからどうするの?」

 

「取り合えず明久の状態を知りたいな」

 

「え? うん、僕は今とっても元気だけど?」

 

深い意味はないよ、うん。そのままの言葉さ。

 

「そうか? 幻想郷に馴染める外来人なんぞそう多くはない。妖怪は別だがな」

 

「うん、そうだね……けど僕はそれでも元の世界に帰るためにはなんでもするつもりだよ。姫路さんの体調が悪化するかもしれないし、何よりご両親が心配してるはずだよ」

 

「明久の家族も心配しているはずだ。自分のことを考えた方がいいぞ?」

 

「ん?」

 

どうした? 今雄二らしからぬ発言が聞こえたような……僕に気を使ってくれたのか?

 

「ん? とはなんだ、人がせっかく心配しているというのに」

 

「いや、えっと。そうだね、姉さんももちろんだけど雄二のお母さんだって心配してると思うよ?」

 

あまりコイツに心配してもらえることが少ないからか少し寒気が。ふざけてる様子がないのが更に不気味だ。何を考えている?

 

「そうだな……家族は大事にしないとな」

 

「そうだね。早く顔を見せて安心させてあげるためにも頑張ろうね雄二!」

 

「もちろんだ! 力を貸してくれると有難い」

 

ん~やっぱりなんか違和感があるようなそうでもないような? こんなに優しいと抵抗があるね。うん、僕が雄二のことをどう思っているのか改めて確認できたよ、ハハハ。

 

「では失礼するぞ」

 

「うん」

 

最後にそう言うと雄二は僕の横を通り過ぎ、この場を去った。

 

「あら、坂本君。おかえりなさい」

 

「ああ、今帰った」

 

後ろからは姫路さんと雄二が出会ったらしく喋り声が聞こえてきた。

 

「そうだ、坂本君にお願いがあるのですが……」

 

「なんだ? 俺にできることならなんでもするぞ?」

 

おっと、そうだった。僕も姫路さんの元に戻らないといけないんだった。慌てて雄二の後を追いかける。

でも姫路さんの料理をどうするか全然考えてない。まぁ雄二をうまく使ってやればいいや。

 

「実は明久君に作ったのですがいなくなってしまって……それで念のため味見をしていただけませんか?」

 

ほほぉ? コイツは面白いことになってきたぜェ! このタイミングで戻らず雄二が逃げ出す仕草を見せたらすぐさま合流して何としてでもある程度数を減らさせてやる! 姫路さんには重ね重ね申し訳ないけど少しだけ様子見させてもらうよ。

 

「味見か」

 

ふふふ、雄二が血相を変えてぼくを探しに来る映像が浮かび上がってくるよ。さぁて、うまくやり過ごさないとな……ゆーっくりとこの場を去ろうとすると後ろから雄二は一言こう言った。

 

「どれどれ……美味そうだな」

 

お、おう? おかしいな、やけに積極的な姿勢を見せるじゃないか雄二よ。

 

「えへへ、腕によりをかけて作ったんですよ?」

 

姫路さんが嬉しそうな声を上げている。さすが雄二、命の危険がかかっていると演技力が増すなぁ。

これで本当に逝ったら完璧だけど。

 

「早速いただこうかな」

 

……おかしいなぁ。この危機的状況をすんなりと受け入れている。まるで草陰に隠れているライオンの群れに気づいていないシマウマのように姫路さんの料理を食べようとしてる。逃げる様子は全く感じられない!

 

 

「そんなところでどうした?」

 

「今ちょっと忙しいからあとで」

 

「なんかあったのか? 明久」

 

「ごめんね、あとで話すから」

 

なんだかとても苛立ちを隠せない声が後ろから聞こえてくる。今雄二が姫路さんの料理に箸でごく普通に掴んだところなんだから邪魔しないでよね!

 

「とっととその道開けろよ明久」

 

声がだんだん怒鳴り気味になってきたので僕もちょっとだけ言葉を荒くする。

 

「もう! 今手が離せないんだtt」

 

僕はそう言いながら後ろを振り向くとそこに居たのは姫路さんの料理を今まさに食べようとしている雄二とは別個体の雄二がいた。もっかい言うよ? 前に雄二、後ろにも雄二がいた。

 

「雄 二 が 二 人 ! ! ?」

 

「は?」

 

僕の後ろでつんつんしてた雄二は馬鹿を見るような目で僕を凝視してくる。

僕の声に気づいたのか姫路さんともうひとりの雄二もこっちに向かってきた。

 

「どうかしましたか? 明久君」

 

「そうだぞ明久。廊下で大声を上げるもんじゃな――」

 

「「………」」

 

二人の雄二がお互いをじっくりと見つめ合い、鏡に手を合わせるように動きを合わせる。僕から見てると見事にシンクロしている。それを確認した雄二はホッと胸をなでおろし、

 

「なんだ、ただの鏡か」

 

「驚かせやがって」

 

「「ハハハハハ!!」」

 

「どう見ても坂本君が二人に増えているようにしか見えないのですが……」

 

「畜生ォォオオオ!!!」

 

「ったく、こんな面倒事付き合ってられないぞ?」

 

一人は全力でこのめんどくさそうな状況を悔やんでいて、一方の雄二は額に手を付け「やれやれ」とめんどくさそうでいる。僕はなんだかとっても楽しそうなことが起こりそうで笑みがこぼれそうになる。

 

「明久、顔を今から殴ってやろうか?」

 

おっとっと、どうやら本当ににやけていたようだ。危ない危ない。

 

「しかし、どっちが本物の雄二なんだろうな……」

 

姫路さんと話していた方の雄二がぼやく。

 

「そんなの決まってる。俺が坂本雄二だ」

 

「説得力がないな、俺にしてはおつむが弱いんじゃないか?」

 

「だろうな、俺が本物だ! 信じてくれ! って言っても信じられないよなぁ……めんどくせえ」

 

「お前さえ消えれば本物はこの俺ということになるんだがな」

 

「っふ、実にシンプルな発想だ。嫌いじゃないぜ」

 

「んじゃさっさと片付けるとするかな」

 

このまま二人の雄二が殴り合いしてもそれはそれで愉悦できる。けどやっぱ止めないと不味いよねぇ。渋々にでも間に入ろうかな?

 

「ま、待ってください!」

 

「「??」」

 

っと姫路さん? 姫路さんが大きな声で二人の会話に入り遮り、続けて言葉を発する。

 

「お、お二人の坂本君が争い合うのはよくありません!」

 

「他に手段が何かあるのか?」

 

「弾幕ごっこなら多分死なないから大丈夫だ」

 

「こんな時こそ友達を頼るべきです! ね? 明久君」

 

「え?」

 

え? ぼくぅ?

 

「そうです。明久君とは特に仲が良かった。ならば坂本君が偽物かどっちかなんて簡単にわかっちゃうはずです!」

 

「それもそうだな」

 

「俺も異論はないぞ」

 

まさか僕に雄二の運命がかかっちゃうとはなぁ~これは責任重大だなぁ。

こんな呑気にしていられるのも僕には根拠があるからだ。まず初めに、先に入ってきた雄二はいつにもまして僕に優しく接していた。

対して後から入ってきた雄二はいつも以上に冷たく、軽くあしらうように僕と接していた。

 

なら、答えは僕にでもわかるよ。僕が今それを証明してあげる!

 

「オッケー! んじゃ二人共目を閉じて。偽物だと思う方を思いっきり殴るから!」

 

「了解だ」

 

「おい待て明久、わざわざ殴る必要はない。指を差すだけでいいはずだ」

 

「その必要はないよ。僕は確信を得ているからね」

 

後から入ってきた雄二が不安そうにこっちを見ている。その行動こそが僕が思い描く行動パターン。そう、初めから答えは見えていたんだよ!

 

「………それは?」

 

「異論を唱えたお前が偽物だということだァァーッ!!!」

 

「ウ グ ボ ァ ー ッ !」

 

ふぅ、いいパンチが入ったよ。偽物の雄二め! これで変身を解くはずだ!

 

「さぁ観念するんだ偽物の雄二!」

 

「お前後でマジで覚えとけよ……!!」

 

うわぁ……あの偽雄二すごい剣幕でこっちを睨んでいるよ。怖いんだけど、これホントあとでシメるやつなきがする。

 

「そそそそその反応こそ、ほほほ本物の雄二だよ!」

 

「」

 

あ、もう言葉を交わす必要性を無くしているね。言葉というなの拳で会話するつもり満々だね彼は。こうなったら会話(肉体言語)は避けなければいけない、僕の命も危険にさらされているのだから!

 

「う~ん、明久君でもわからないとなるとどうしましょう。このままでは大変なことになります」

 

僕も結構レッドラインにいるけどね姫路さん?

 

さて、もう少しこの二人の雄二を客観的に楽しませてもらおうかな。こんな面白いこと滅多に起こらないからね。フフフ、日頃のお返しだよ雄二ィ。この際どっちが本物とか関係ないもんね~。




どうも、こきゅーです。前回から二週間。なんとか間に合ったようでホッと胸をなでおろします。

最近は新たに二次創作を書きたくなる衝動にかられこんなギリギリになってしまいましたが……(汗

では二人の雄二はもうちっとだけ続きます。どうぞ読者の皆さんもお楽しみください(笑)

それではこの辺で、次回も早めに投稿できるよう心掛けますのでよろしくお願いします。
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