バカと霊夢と幻想郷   作:こきゅー

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前回までのあらすじ

優子「それで、この試召戦争に勝つ策があるのかしら?」

雄二「ああ、任せておけ。Fクラスは戦闘経験だけはAクラスにも引けを取らないからな」

優子「それじゃ、任せるわ。秀吉! ちょっと付き合って」

秀吉「あ、ああ……何か嫌な予感がするぞい」

雄二「んじゃ俺はちょいと飲み物でも買ってくる」

明久「いってらっしゃ~い」

雄二?「おう、ただいま」

明久「あれ? やけに早いね」

雄二??「バカ久、何やってる?」

明久「お前偽物だな喰らえ鳩尾にパァンチ!」

雄二??「お前コロス」

明久「やれやれだね」

姫路「………?」

あらすじ終わり! 始まるよ!


第二問

「さて、とりあえずどうしたものかなあ(お前)

 

「俺に聞くな」

 

今目の前に広がる2人の雄二が揉めているこの現状は誰もが創造できないかっただろう。

けれど、悲しいよね。これ夢じゃないんだから。

 

「全く、誰得なんだよ。雄二が2人だなんておぞましくて仕方ないよ」

 

「「お前に言われたくはない」」

 

おお、いつの間にか仲良くなってない? 息ピッタリだよ。

 

「あ、あの……」

 

ここで声のする方へ向いてみよう。市販の目薬なんか比べ物にならないほど目が癒される姫路さんが何かを言いたそうにしている。

 

「どうしたの?」

 

「えと、お料理作ったので試食していただこうかなと思っていたのですが、今はそんな場合じゃないですよね……でも、冷めてしまうと固まるので急がないとって……」

 

(((固まる……?)))

 

「ご、ごめんなさい! 私、坂本君に詳しそうな人連れてきますね!」

 

僕たちの困惑顔を見て罪悪感に耐え切れなくなってしまったようで、僕が声を掛ける前にこの場を去ってしまった。雄二に詳しそうな人? もしかして霧島さんかな? そうなるとこの愉悦タイムは終了かな。霧島さんならきっとすぐにどっちが本物か見破ってしまうからね。

 

「固まるって、何が固まるんだ?」

 

「俺に聞くな。(お前)なら理解できるだろ」

 

「ふむ、んじゃ試食をすっぽかしてたし、今のうちに食べておこうか」

 

1人の雄二がそう言うと姫路さんの作った料理の方へと歩いて行った。うーん、ここまで来ると僕でもそう思わざるを得ない。彼が偽物だろう。

流石に雄二が自分が進んで姫路さんの料理を食べたがる訳がない。まるで初めて姫路さんのお弁当の具を食べる前の頃の雄二みたいだし、味を知らないはずがない。

 

「おうそうか、んじゃこのバカは借りるぞ」

 

おっと、こっちの雄二は僕のことの処刑に取り掛かろうとしているぞ! 何とかこの場を繋がないと僕はまだ死ねない!

 

「え? まだだよ雄二。霧島さんが来てから判断してもらおうよ」

 

「……はぁ、がっかりだよ」

 

「どうしたの雄二、そんな疲れた顔して」

 

「お前とFクラスとして共に行動してきたが、お前とは結構気が合うと思っていたんだぜ? それなのに、偽物と本物の区別もつかねえとはな。見ろ、あっちの(雄二)を、姫路の料理に顔色一つ変えずに食そうとしてやがる」

 

「そうだね」

 

「お前なら、あの行為の無謀さが理解できるはずだ。いくら単細胞だろうとな」

 

いちいちバカにされてるのが鼻につくが、この対応は本物の雄二なんだろう。

仕方ない、あんまり苛めるのも酷いからそろそろ信じてあげようかな。

 

「うーん……それじゃこっちの雄二が本物?」

 

「当たり前だ。お前との付き合いがそれを証明しているはずだ」

 

普段聞けない雄二の本音らしきメッセージも聞けたし、うん、満足かな。

 

「分かったよ雄二。僕は雄二の言葉を信じるよ」

 

「おう、やっとかこの野郎」

 

それじゃ、種明かしの時間と行きましょうか!

 

「これが姫路の作っていた料理か、どれ……」

 

僕たちが偽物の雄二へと視線を向けた直後。彼はそれをパクっと口に入れてしまった。

 

「bhんjml▼k、,∀;!!!!!!」

 

「「まあ、そうなるな」」

 

あっちの雄二はホントどうなっているんだろうか……雄二のコピー? それとも妖怪が雄二に化けたのかな?

 

「坂本君! 翔子ちゃんを連れて来ま――あれ?」

 

「………2人の雄二はどこ?」

 

いいタイミングで審判がやってきてくれた。これでどっちが本物か証明されるね。といってもあそこで今にも意識を失いそうな雄二が偽物で間違いないけど。

 

「………雄二? 大丈夫?」

 

霧島さんはまず倒れそうになっている雄二の元へと慌てて向かった。

 

しかし、息はしているが意識はないようだ。

 

「………どうしたの? 雄二」

 

仕方ない、ここはいつものようにフォローに入るか。偽物の雄二に借りを作らせておくのも悪くないよね。

 

「姫路さんの料理が美味しすぎて意識がぶっとんだみたいだよ?」

 

「そんなに美味しかったのですか? 嬉しいです!」

 

霧島さんは優しいなぁ、まずは偽物の心配をするなんてね。さぁ、本物の雄二よ、出番だよ! 残酷な真実ってやつを叩きつけてあげてよ! 床に転がっている偽物の雄二に向かってね!

 

「翔子、そんな奴は放っておけ。俺が本物だからな」

 

「………」

 

「翔子ちゃん?」

 

霧島さんは声を発した雄二に目を向ける。そして腹を抱えながら倒れている雄二を見る。そしてもう一度2人の雄二を見比べている。

 

「………雄二?」

 

「どうした? 俺が本物だ。そっちの雄二は偽物だ」

 

「……………」

 

一瞬表情が固まると思ったらすぐに次の言葉を話し始めた。

 

「………違う」

 

「え?」

 

「………雄二じゃない」

 

な、何を言っているんだ? 霧島さんが本物の雄二を否定した!?

 

「翔子? 冗談はよせ」

 

「………違う。冗談じゃない」

 

「俺だ翔子! 坂本雄二はここにいる!」

 

思わぬリアクションをされ雄二も動揺を隠せないようだ。声を荒らげて霧島さんに説得している。

 

「アイツは明久や俺、秀吉やムッツリーニしか知らない情報を知らなかったんだ、そうだろ明久?」

 

「え? でも明久君はこちらの坂本君が偽物だって……」

 

「あ、あれはちょっとしたおふざけでからかっていたんだ。でも僕もこっちの雄二が本物だと思うよ」

 

いくら霧島さんでも本物と偽物の区別がつかないはずがない。そんなことはありえないはずなんだ。霧島さんは雄二のことを大好きなのだから。それは誰が見ても分かる事実であり、僕も何度もイチャイチャを見せつけられたもん。その後雄二は服を剥がされたり拷問器具を付けられてたりしてたけど。

 

「………うん、やっぱり違う。雄二はこんな匂いじゃない」

 

「匂い?」

 

「………雄二の匂いはもっと落ち着く。でもこの雄二は……」

 

どういうことだ? じゃあ姫路さんの料理を何も知らずに食べたあっちが本物だと言うのか?

 

「そうか……」

 

雄二も霧島さんの力強い意思に屈服せざるを得ないようで何も言い返せずにいた。

 

「ゆ、雄二……?」

 

「翔子はそう判断するんだな?」

 

「………少なくとも、私は吉井とは同じ意見を持てない」

 

「なるほど、よくわかった」

 

っく、僕はどっちの雄二を信じればいいんだ! マジで分からなくなってきたぞ!?霧島さんの言うとおりなのか? でも姫路さんの料理を躊躇なく食べたんだし……んんん?

そう僕が一人で頭をかきむしっていたときだ。

 

「フフフフフフ……」

 

僕の後ろで雄二の笑い声が聞こえた。

 

「なるほどなるほど、そんなこともあるのか。ほぉ」

 

「………何が?」

 

霧島さんが険しい表情を見せる。姫路さんも雄二の異常に怯えて霧島さんの後ろに隠れた。僕は心配そうに雄二を見つめる。

 

「ど、どうしたのさ雄二?」

 

「明久、お前はやっぱりバカのようだな」

 

「どういう意味だよ!」

 

鼻で笑いながら僕を小馬鹿にする態度に思わずムカついてしまい、声を荒げる。

 

「お前はまだ(ワシ)の正体に気づかぬのじゃな(・・・)。しかしそこの女子(おなご)はあっぱれと褒めてやろう」

 

そう言うと雄二は、いや、雄二だった人(・・・・)はその瞬間、別人へと変わっていた。見たこともない、雄二の影も形もなかった。

 

「いやぁまさかバレてしまうとはのう。外来人を些か侮っていたようじゃな」

 

メガネをかけた体ほどの大きさがあるもふもふした狸のような尻尾をした女性が楽しそうに笑っていた。

 

「しかし匂いで儂を見破るとはな。いつもならそれで納得するのじゃが今回は見破れるはずがない(・・・・・・・・・・・)のじゃがな」

 

「………誰?」

 

「おっと、自己紹介が遅れたのう。儂は二ツ岩(ふたついわ)マミゾウというものじゃ。ほんでそっちにいるのが」

 

「…………」

 

「ほれ、さっさと起きんか」

 

マミゾウと名乗る人が声をかけた人物は試食をしたもう1人の雄二だった。え? どういうこと?

 

「手間のかかるやつじゃの。ほれ、薬じゃ」

 

ポケットから取り出した丸い団子のようなものを口の中に無理やり突っ込ませるともう1人の雄二は勢いよく起き上がった。

 

「ッハ、ここはどこだ! 俺は……あ、外来人、やべっ、能力が」

 

「ほれ、能力を解かんかバカタレ」

 

「あれ? マミゾウ? え? もうネタバラシ? 仕方ねえな」

 

すると僕たちがさっきまで雄二と認識していた物体がなんだかぼやけて見える。霧島さんも困惑しているのか首をかしげている。

 

「ほいっと。これで能力は解いたはずだよ。外来人諸君?」

 

声をかけられると同時にその物体にモザイクが消えはっきりとあれが誰なのか分かる。

あ、いや、見たことはないし知り合いでもないんだけど。あれ? 人? 物? それともなんだ??

 

「これお前さん、あの外来人はまだ認識していないようじゃぞ?」

 

「えぇ? もう能力は解いてるから私がどんな姿をしているか見えるはずだよ? ね? そこの外来人さん?」

 

その人物は霧島さんに声をかけるが彼女もこの状況に追いつくのがやっとのようで虚ろな返事をしている。

 

「んー? これは……やれやれ、私が気絶してる間に解除されてるはずなんだけどな?」

 

「お前さんの友人の仕業じゃなかろうか?」

 

「友達と呼べるのかな? 勝手に付いて来るようなやつだしな」

 

「さて、それでは一旦休憩と行こうかの。外の世界から来た珍客たちはしばらく様子を見るとするか」

 

「へーい」

 

マミゾウさんたちの言っていることは理解できずにいた。と、とりあえず僕は深呼吸をしてまずは落ち着こうと思った。自分を強くイメージするんだ。そう、僕は吉井明久。あれは姫路さん、こっちは霧島さん。うん、よしよし。分かることだけ分かるんだ。

勝手に混乱して自滅なんて願い下げだ、僕はまだ倒れるわけには行かないから!

 

 

 

――――☆――――☆――――☆

 

 

「さて、茶でもいただこうかな。そこの人間、淹れてくれ」

 

「………うん」

 

えっと、あれからとりあえず姫路さんや霧島さんも落ち着いて、あの場にいなかった秀吉やムッツリーニと雄二以外のメンバーに集まってもらった。

僕もやっと状況を理解できつつある。中でも確実に自信を持って言えることは……。

 

「雄二は結局どこにいるの?」

 

2人の雄二はどちらも偽物だった。なら本物は今どこに居るんだ? この霧島さんに淹れてもらった茶を飲み、寛いでいるタヌキの妖怪と、6枚の羽が歪な形をしている少女の2人が雄二に化けていたんだから、何かしら接点はあるはずだ。いざとなったら召喚獣で無理矢理にでも聞き出すしかない。

 

「坂本雄二なら、傘を差した吸血鬼と元サトリと何やら楽しそうに人里に歩いておったぞ」

 

あれ!?そういえばこいしちゃんはともかくあのフランちゃんまでいなくなってる!?

 

「あの吸血鬼勝手に外に出歩いたりして……レミリアはどういう躾をしているのかしら」

 

美波もフランちゃんがいなくなっている事実に気付き、少し苛立っているのかな。まぁ、フランちゃん強そうだし、雄二も一緒だと問題なさそうだけどね。

 

 

ズズズズズ……(タヌキの妖怪がお茶を飲み終える音)

 

 

「ふぅ、美味しかったぞい。今度命蓮寺にでも来んか? 歓迎するぞ?」

 

「………いい。それより、要件は?」

 

「まぁまて、まずは自己紹介をさせてくれぬか?」

 

「そうだね、外来人にはマミゾウの能力を見破った褒美として、特別に私の正体も教えてあげる!」

 

な、なんだか偉そうなんだけど、人間ってそんなに弱い生き物なのかな……。でも人里に住む人たちは霊夢の結界がないと対抗できる力が殆どないもんね。はぐれ妖怪が迷い込んだ時はみんなすぐ避難してたし。

 

「儂の名は二ツ岩(ふたついわ)マミゾウ」

 

「私は封獣(ほうじゅう)ぬえ、よろしくー」

 

「僕は吉井明久」

 

「お主の名は天狗の新聞で知っておる。そちらの女子(おなご)は?」

 

「………霧島翔子」

 

「ふむ、お主の坂本雄二を大切に想う気持ち、実にあっぱれであった」

 

「私の能力は流石に破けなかったみたいだけどな」

 

「無理もない、お前さんの能力には叶うはずがなかろうて」

 

「まあね」

 

マミゾウと呼ばれるタヌキの妖怪に褒められたぬえと呼ばれる女の子は嬉しそうだ。僕たちを置いてけぼりにしていることを除けばそのまま会話しててもらってもいいんだけどね? 視線をマミゾウさんに向けていると気付いてくれたのか本題に入ろうとする。

 

「それで、儂らがどうしてこんなことをしたのか、気になるじゃろ?」

 

「あっさりネタバレすると、気まぐれだったんだけどね?」

 

「気まぐれ?」

 

「………どういうこと?」

 

事の真相があっさり明らかになり、僕を含めて殆どがキョトンとしていた。

 

「なんじゃ? 鳩に豆鉄砲でもくらったような顔をしておるが?」

 

「つまり、お主らの目的はただ遊びに来ただけじゃとでも言うのか?」

 

秀吉が慌てて確認を取る。

 

「そうじゃな」

 

ここで僕は思ったことを口にする。

 

「なるほど、バカなのですね?」

 

「バカとは失礼じゃな!?しかも初対面の相手じゃぞ?」

 

「……目的はなんだ?」

 

ムッツリーニは引き続き警戒態勢を続ける。勿論、嘘を言っている可能性もあるからね。

 

「知りたいか? 外来人」

 

「……土屋康太」

 

一触即発なビリビリとした空気が両者の間を流れる。ムッツリーニは本気のようだ。

 

「といってもマミゾウと新聞に載ってた外来人をたまたま見かけて、ちょっと化けてからかってやろうぜって言い出した私がきっかけ作ったんだけどね」

 

「そうじゃな、その通りじゃ」

 

なるほど、つまりぬえって子を倒せばいいのかな?

 

「……把握」

 

ここで警戒態勢を解き、気持ちを落ち着かせる。

 

「ムッツリーニ?」

 

「……敵意がない。それで?」

 

「この後、アンタたちはまだ何かするのかしら? 折角だし、知ってること全部教えてもらおうかしら?」

 

折角出会えた妖怪だ、からかわれている僕たちは完全に敗者だ。負けっぱなしではいられない木下さんは何か情報を得ようとしている。

 

「そうじゃの……霧島が儂の能力を見破ったことじゃし、いいことを教えてやろう」

 

「いいこと?」

 

「うむ、実はお主たちの仲間を1人、命蓮寺で預かっておる」

 

「あ、それは八雲さんから聞きました」

 

「あれ、そうなのか?」

 

「他にはないの? アンタたちのことは調べれば坂本が借りてきた資料で調べればいいし、アンタしか知らない重要なこととかさ?」

 

このままでは帰さないつもりでどんどん攻勢に出る木下さん。

 

「んー。その仲間、『清水美春』といったかの。今会いに行こうとしても少々危険な状態でな?」

 

「あー、聖が面倒見てるっていう外来人? いや、あれはもう妖怪の域に達しているんじゃ……」

 

「その話、ちょっと詳しく聞かせてもらえない?」

 

うん、清水さんが命蓮寺にいることも知っている。けど何やら不味いことになっているようで、美波も気になって会話に交える。

 

「ええぞ。その清水とかいう外来人は幻想郷に馴染み過ぎたのじゃ。そして、想いが暴走して妖怪としての本能が目覚めた、と言ってたかの?」

 

「聖がそんなことを言ってたね。最近その外来人を救い出そうと色々忙しくってさ。ま、お寺の修行をサボれて私はいいんだけどね」

 

清水さんが妖怪に? 確かに清水さんからは時々人間を卒業しているかのような雰囲気を醸し出していた時があったかもしれない。けど人間という枠をはみ出すことはなかった……はず。

 

「ぶ、無事なの? 美春は無事ってことでいいの?」

 

「安心せい。回復の兆しが見えたとつい最近寅丸(とらまる)(しょう)が言っておったのを聞いたわい」

 

「そ、そう……良かったわ」

 

美波は一息つき、みんなから少し離れたところで座った。よっぽど心配だったんだね。学校内ではいつも清水さんに好かれてたんだし、美波は嫌がってたけど、いなくなっていい人ではないからね。

そう、全員で僕たちは幻想郷から元の世界に戻らないと意味がない。その重要性に改めて僕は気づかされた。

 

「それじゃ、儂らはこれで失礼するぞい。そこの幻想郷縁起に載ってないことを教えてやるつもりじゃったが、まあええじゃろ」

 

「そうだね。人間ってのはやっぱり面白くていいや。また気まぐれで遊びに来てもいい?」

 

「うん、僕としても敵じゃないのなら仲良くしたいと思ってる。ね、みんな」

 

僕の声に葉月ちゃんも含めて全員がうんと頷いてくれた。

 

「ほほぉ……妖怪を妖怪と見ておらぬようじゃな?」

 

「うん、中には悪い妖怪もいるけど、できれば協力し合いたいなって思ってる。じゃないと、僕たちだけだと今回の試召戦争には勝てないと思ってる」

 

「なるほどなるほど……まあ儂の力は当てにするでないぞ? 参加するつもりは腹からなかったからの。こうして面と向かって話せただけで満足じゃ。お前さんはどうする?」

 

「私もパス。そういうメンドくさいのはいいや。観客席で見てるのが一番楽しめそうだし」

 

ぬえちゃんとマミゾウさんの能力はどちらも内部分裂が起こる可能性がある僕が知る中で最も恐ろしい能力だ。信頼し、力を合わせることで初めてチームというのは成り立つ。なのにその中に1人でも裏切り者がいたら信頼することを恐れてしまう。僕が雄二や姫路さんを信頼できないかもしれない。そんな風に考えると僕はこの2人が敵じゃなくて心からよかったと思えるよ。

 

「それじゃ、暇になったらまた来るかの。清水美春に会いたくなったら命蓮寺に来るとよい。ぬえが聖と話をつけといてやると言っておったぞ」

 

「本当に?」

 

「ああ。むしろ聖が会いたがってたぐらいだからな。いつでも歓迎するだろう」

 

「ありがとう!」

 

これで清水さんのことはひとまず安心だ。雄二が戻ってきたら様子を見に行こうと思っていたけど、今は聖さんに任せた方が良さそうだ。

 

「あ、ぬえさん!」

 

「なんだ?」

 

2人が窓からベランダに出て、そのまま飛んで帰ろうとした時だ。美波が急に2人の前に飛び出る。

 

「聖さんに会ったら美春のことお願いしますって伝えておいてくれないかしら?」

 

「お安い御用よ。それと、私のことはぬえでいいわ」

 

「ありがとう! ぬえ!」

 

それを最後に、ぬえとマミゾウは寺子屋から去っていった。2人には振り回されっぱなしだったけど、なんだかんだ無事に終わってよかった。

 

「………雄二、遅い」

 

「仕方ないよ、こいしちゃんとフランちゃんも一緒にいるんだから」

 

思えばちょっと外に出てくると言った雄二のせいでこんなに大変な思いをさせられたんだ、一言くらい言ってやっても文句はないよね?

そう思っていると玄関の方から雄二らしき声で「ただいま」と聞こえてきた。これはチャンスだ、さっき起こったことを全部話してやる!

 

「雄二! もう遅いよー! こっちは大変だtt――」

 

あ、ありのまま今目の前に繰り広げられている光景を説明するぜ。雄二が帰ってきたと思ったら雄二が5人帰ってきてた。

 

「「「「ただいまー!!」」」」

 

「なんじゃこの数は! もう意味が分からぬぞ!」

 

「……思考が追いつかない」

 

「坂本! ア、アンタ何回増えれば気が済むのよ!」

 

「そうよ! 代表が嬉しさのあまり卒倒しちゃったじゃないの!」

 

「いや、それを俺に言われても……」

 

「そうだそうだ! 俺に言うなー!」

 

「俺にでもできないことはある」

 

「ていうか雄二って誰?」

 

「アハハハハ! 雄二さんがいっぱいだー!」

 

誰かこの状況を何とかしてェェーー!!

 

 

 

この混沌とした状況下、姫路は窓に写る人影にふと目が奪われる。

 

その人影は一瞬だったが、姫路にとって大切な人に見えた。しかし、その人が寺子屋の外にいるはずはない、となると姫路は妖怪のいたずらか錯覚だと思うことにした。

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