今回はプロローグとなります
かつて、この地上では女神アテナの戦士である
その戦いは聖闘士達の命掛けの奮闘により、サターンは人間に対する考えを改めたのか、サターンが地上から自らの意志で去った事で終わりを迎えたのだった。
そして、その戦いから二十五年ものの時が流れた今ではインフィニット・ストラトス、通称ISと呼ばれるパワードスーツが世界中に影響を与えていた。ISを装着した人間が上手く操縦すれば空を自由に飛び回れる上に、ISがまだ世界に名が知られていない時にとある国の軍事基地が何者かにハッキングされ、基地のミサイルが無差別に地上に放たれた時に初代のISを纏った者が放たれたミサイルを一つも残さずに撃墜した為か兵器としての能力も高い。
その上、ISには一つの機体毎に違うコアという物が装着されており、コアが反応する事でISが展開される。コアは操縦者と共鳴する事で操縦者毎に違う性能にISを進化させていき、ISは無限大に進化していくと言っても過言ではないのだ。
しかし、ISを動かせるのは女性だけであり、男性は動かそうにもISが反応すらしないのだ。おそらく、コアが男性にだけは反応しない為だろう。
以上の点を踏まえて、今の世界ではISを操縦出来る女性の方が優遇され、男性の立場が危うくなっている。かつての男社会から逆転したかの様に世界は女社会に成り果てており、女性は男性を酷く扱う事も日常茶飯事になるのも時間の問題かもしれない。
ISが世界に知れ渡って数年が経ち、ISを使っての試合を行う世界大会である第二回モンド・グロッソの決勝戦が始まる少し前に第一回モンド・グロッソの優勝者である織斑千冬の弟である織斑一夏は、今回も決勝戦まで勝ち進んだ姉の千冬が勝つだろうと確信して、買い出しに出ていた時だった。
一夏が人気の無い場所を歩いていた時に前から怪しい黒服の男達が現れると黒服の男達は一夏に近付き、一夏を拘束し目隠しをして車に乗せて何処かに連れ去ったのだ。そう、一夏は何者かの指示で動いていた黒服の男達によって誘拐されたのだ。
その瞬間をたまたま遠くから目撃した一人の青年がいた。その青年は金髪の短髪でややつり目で、その背中には巨大な黄金の箱を背負っていた。青年は一夏を誘拐した者達の目的を悟ったのか小さく声に出した。
「くだらん。あらかた前回のモンド・グロッソの優勝者である織斑千冬を棄権させる為の手段として弟である織斑一夏を誘拐し、織斑千冬が決勝戦を辞退してまで弟である織斑一夏を助ける事を解っての下種い策か。気に入らぬ!そんな方法で勝てて喜ぶ様な大した誇りも無い輩は少々大げさかもしれぬが、山羊座の
青年はそう呟いた後、直ぐに一夏を乗せた車を追い掛けた。まるで一筋の光の軌跡の様に…
誘拐されて街から離れた場所にある倉庫らしき場所に連れて来られると、黒服の男達は一夏にしていた目隠しだけを取ると、目隠しを解かれた一夏は自分を誘拐した者達に何の目的で自分を拐ったのか問い質した。
「お前達、一体何の目的で俺をこんな場所にまで連れ去ったんだ!?」
「そんな事も解らないのか?前回の優勝者である織斑千冬を決勝に出させない為さ!」
一夏の質問に答えたのは黒服の男達の後ろにいるこの男達の上司と思われる女だった。倉庫の中が暗い為か一夏は女の顔がよく見えていないが、目付きが鋭い感じの女である事だけは確かだ。
一夏は女の言った答えがピンと来ないらしく、少し困惑した表情をしていたので女は呆れながらも説明し始めた。
「まだ解らない様子だから、せめてものの優しさでもう少しだけ教えてやるよ。織斑千冬は最強のIS操縦者である事はISに関する者ならば誰もが知っている。なら、今回のモンド・グロッソも織斑千冬の総合優勝で間違いないだろう。本来ならな!だが、織斑千冬は弟であるお前が誘拐されたという情報を聞いたら、どう行動するかは弟であるお前が一番理解している筈だ、織斑一夏!」
「そういう事か!千冬姉が俺が誘拐されたと聞いたら、決勝戦を辞退してでも俺の救出を優先して動くに違いない…もしも、千冬姉が決勝を辞退してまで俺を救出しに向かった場合、当然その決勝戦は千冬姉の敗退扱いとなり、相手の不戦勝になる訳だ…」
「そういう事だ。やっと足りねえ頭でも理解出来た様だな!(まあ、真の目的はそんな事じゃないけどな)」
一夏はこの女と黒服の男達の目的が自分を誘拐すれば、姉である千冬が決勝を辞退してでも自分の救出に向かう事を確信しての犯行だという事を知り、自分のせいで姉である千冬に迷惑を掛けてしまう事に一夏は自分が情けなく思ってしまう。
「ふざけるな!!こんな勝ち方して喜べるのかよ!不戦勝で優勝しても何の達成感も無いだろ!!」
「ふん…私に聞くなよ。私もただ言われた内容通りに動いているだけだからな。私に文句を言っても何も意味は無いさ」
どうやら、女の方も更に上の者からの指示で動いているだけの様だが、それでも自分のせいで姉の不戦敗が決まるのが許せない一夏は自分の腕を縛っている綱を何とかほどこうとするが、女はそんな行動を見逃す筈も無く、黒服の男達に指示を出した。
「簡単にはほどけない様にしてるかもしれないが、もしほどけたら面倒だ。綱をほどこうとする気力が失せる様に痛めつけろ!ただし、やり過ぎて殺すんじゃねえぞ。あくまでも大事な人質だからな!」
黒服の男達は女の指示を聞き、綱をほどこうともがいていた一夏に暴力で動けない様にしようと動いた時だった。突如、倉庫の扉がまるで鋭利な刃で切られたかの様に崩れ始めると、扉の先には頭に黄金の山羊の角を思わせるヘッドギアを装着した黄金の鎧を纏う一人の青年の姿が見えた。
「ほう、まさか織斑一夏誘拐の首謀者が噂に聞いた
「おい、金ぴか野郎のテメエ…何で私の名前を知ってやがるんだ…」
「こちらが知ってるのに、そちらは俺の纏う物を見て気付かないのか?裏の世界で暗躍している亡国機業ならば知ってると思っていたのだが、そうでもないらしいな。知らぬならば教えてやろう。俺は聖闘士の一人、
「聖闘士だと!?確かギリシャ神話の女神であるアテナに忠誠を誓った戦士がそんな名前で呼ばれていたと聞くが…ば、バカな…本当に実在してたってのか!?」
「その様子だと聖闘士の名は聞いた事が有っても、都市伝説か何かと勘違いしていた様だな。残念ながら、聖闘士は実在する。その証拠に今こうして貴様の前に立っている」
一夏は突然現れた黄金の鎧を纏う青年ラインハルトは自分が女神アテナに忠誠を誓った戦士である聖闘士の一人だと言うので、話にはついてこれないが、ラインハルトが女の正体が亡国機業の幹部であるオータムだと知ってたので只者では無いと感じた。
オータムは聖闘士が存在した事に驚きつつも、部下の黒服の男達に命令し出す。
「お前ら、あの聖闘士を名乗る金ぴか野郎を始末しろ!下手に妨害されたら作戦に支障を出しそうだからな」
黒服の男達がオータムの命令通りにラインハルトに向かっていき、鉄パイプで殴り掛かったが…
「愚かな…聖闘士を相手にそんなもので挑んだところでチャンバラ未満のままごとに過ぎぬ!」
ラインハルトは男達の振るう鉄パイプに目掛けて手刀を振るうと、男達の持つ鉄パイプは鋭利な刃で切られたかの様に真っ二つになり、地面に落ちた。
「何だと!?俺達の鉄パイプがたかが手刀で真っ二つになるだと!?」
「び、ビビるな!まだ俺達には拳銃が有る。これで奴を殺せば…」
男達は手刀で鉄パイプを真っ二つに切り裂いたラインハルトに恐れを抱きつつも、ラインハルトを始末する為に懐から拳銃を繰り出し、ラインハルトに向けて発砲したが、銃弾はまるで立体映像に撃っただけの様にラインハルトをすり抜けていき、ラインハルトの後ろの壁に被弾しただけだった。男達は何が起きたのか解らない中でラインハルトが自分達に近付いて来たので、慌てて銃を撃とうとしたがラインハルトが手刀を横に振るうと拳銃の銃口が切られてしまい、拳銃まで駄目になった為か腰が抜け尻を地面に付けると命乞いをし始めた。
『た、頼む…どうか命だけは助けてくれ…』
「安心しろ。俺は無駄な殺傷は好まん。だから、逃げたければさっさと逃げるがいい!」
『ヒィィッ!!?』
男達は未だに腰が抜けているのかふらつきながらも慌てて倉庫から出て行くと一目散に逃げていった。
そんな男達を見て呆れながらもオータムは自らラインハルトを始末する事にした様だ。
「チッ、情けねえ男共だ!所詮は金で雇っただけのチンピラか…まあいい、役立たずの男共じゃ殺れないなら仕方無い。このオータム様が自ら金ぴか野郎、テメエを始末してやるよ!来い、アラクネ!」
オータムが自身が持つISアラクネを呼び出すと、オータムはアラクネを装着しラインハルトの前に立ち塞がった。アラクネと呼ばれるISはまるで巨大な蜘蛛の如く六本の長いアームを持つので、一夏から見れば蜘蛛の怪物が現れた様な感じだ。
「どうだ金ぴか野郎?このアラクネを見た感想は?」
「ギリシャ神話に出てくる上半身は人間の女だが、下半身は蜘蛛の怪物アラクネをモチーフにしたISか。機体としては手数が多そうで悪くないと思うが、果たして貴様の様な輩が使いこなせる代物かどうか見定めてやろう」
「ケッ、調子にのるなよ。金ぴか野郎、テメエのその余裕ぶっこいた態度がいつまで続くか見物だな!見せてやるよ、男であるお前じゃ扱えない最強の兵器であるISの力をな!」
オータムはラインハルトに向けてアラクネの六本有るアームを突き刺そうとしてくるが、アームによる攻撃は全て避けられてしまい、かすり傷すら与える事が出来ないのでオータムは焦りを感じていた。
「バカな…何故、当たらないんだ!?これでもこのアラクネは亡国機業の手で改造されて全てのスピードがマッハ1に到達してるんだぞ…」
「マッハ1だと?ほう、ISとやらでも最低基準の聖闘士のスピードに着いてこられる様だな」
「何だと!?マッハ1のスピードが聖闘士の中でも最低基準だと言うのか!?」
「そうだ。聖闘士にはランクが有り、まず下の
「三十万kmだと…地球を軽く七周半出来るスピードじゃねえか!?つまり、テメエは光速で移動出来るっていうのか!?」
「その通りだ。計算はちゃんと出来る様で何よりだ」
「ふざけるな!?そんなスピードで動けるなら何故、さっさと光速のスピードで私を倒さねえんだ?」
「簡単な話だ。貴様の様な輩は本気を出すにも価しない相手だからだ」
「ナメるな!!」
オータムはラインハルトが自分を本気で倒すにも価しないと言った事に腹を立てたのか、アラクネのアームで天井を貫くと天井が崩れ、瓦礫がラインハルトに降り注ぐがラインハルトは微動だにせず片腕を挙げると瓦礫は木端微塵に粉々になり、風に飛ばされていった。おそらく、ラインハルトはマッハのスピードで瓦礫を攻撃し、粉々にしたのだろう。そのスピードが速すぎて常人には見切れない為に片腕を挙げただけに見えたのだろう。
ラインハルトは腕を降ろすと直ぐにオータムに向けて、右手の人差し指を向けた。
「何の真似だテメエ?人に向けて指を指すなって教わらなかったのか?」
「一本だ」
「はあっ?」
「貴様の様な輩を相手に片腕では勿体無い。この指一本で十分だ!」
「テメエ…いい加減にふざけるのは止めやがれ!?私は亡国機業のオータム様だぞ!!テメエみてえな金ぴか野郎とは違う、絶対的な強者だぞ!!テメエだけは本気の本気でぶっ壊してやる!!アラクネの全リミッターを解除!正真正銘アラクネのフルパワーでテメエを微塵も無くぶっ壊してやらぁ!!」
「そうか。なら、俺も指一本で光速の技を見せてやろう…いくぞ!」
オータムはアラクネのリミッターを全て解除し、アラクネがフルパワーを解放するとアラクネの六本のアームから高密度のエネルギーが溢れ、光の刃となりラインハルトに向けて振るわれる。だが、その攻撃はラインハルトに当たる前に指一本と言えどラインハルトの放つ光速のスピードで出される技の前では無力に過ぎなかった。
「シャイニングインパルス!」
一夏はラインハルトの出した技を見て驚いた。ラインハルトの人差し指から巨大な光の光線が放たれたのだ。正しくはラインハルトが光速で人差し指による連続突きであるのだが、光速のスピードを見切れない一夏とオータムには巨大な光の光線が放たれたかの様にしか見えなかった。
「バカな…このオータム様が…ISを持たない奴に…しかもISを纏えない男ごときに負けるとは…すまねぇ、スコール…」
ラインハルトの放ったシャイニングインパルスによってオータムのISであるアラクネはコアを残して崩れさり、オータムはダメージで気を失う直前に自分の上司である者に向けて謝罪の言葉を発した後に倒れ気絶した。ラインハルトはオータムが気を失った事を確認すると、今の戦いの一部始終を陰から隠れて見ていたある者に向けて発言した。
「悪党と言えど、大した根性だった。ソコだけは評価してやる。だからこそ今回だけはコイツの身柄を返してやる。居るのだろ、亡国機業の幹部スコール!」
「あら、流石は黄金聖闘士と言ったところかしら。隠れていた私の気配に気付くなんてね」
一夏はラインハルトが視線を向けた先にオータムとは違う女性の姿が有ったのに気付いた。その女性の見た目は美しいが何処か危険な雰囲気も感じるので、オータムより格上の存在だと直ぐに解った。その女性は気絶したオータムに近付くとISを展開して、ISでオータムを抱え、オータムのISのコアも回収すると一夏とラインハルトに向けて発言した。
「織斑一夏、あなたの姉である織斑千冬は残念だけどモンド・グロッソの決勝を辞退してあなたの救出に出たと聞いたわ。本当なら、今回の作戦はあなたの姉のISの実戦データを取る為の手段だった訳なんだけど、黄金聖闘士がいる以上は難しそうだし、モンド・グロッソの試合でのデータだけで我慢するわ」
「ふざけるな!千冬姉のデータが欲しいなら、わざわざ俺を誘拐せずとも自ら試合を申し込めば済む話だろ!」
「違うのよ、私達が欲しいのは本当に実戦的な織斑千冬とそのISのデータな訳。只の試合じゃ意味無いのよ。本気の本気で相手を倒しにくる織斑千冬のデータが欲しかったの。でも、それは無理そうだから織斑千冬の戦闘データについては諦めるし、これからは金輪際織斑千冬と織斑一夏には手を出さないと約束するわよ。その代わりにオータムの事は見逃してくれるのよね、黄金聖闘士のラインハルトさん」
「ああ。本当に二度と貴様らが織斑姉弟に手を出さないと言うのならば、見逃してやる。この約束は守れるのだろうな?」
「ええ、守るわ。流石に私は聖闘士を敵に回す様な事だけは避けたいしね。私とオータムを含めた私の部下は二度と織斑姉弟には手を出さないと約束するわ。でも他の亡国機業の面子が何かしてくる可能性は有るから警戒してなさい」
スコールは自分と自分の配下が織斑姉弟に二度と手を出さない事をラインハルトに約束するとオータムを連れて何処かへ飛び去っていた。
スコールがオータムを連れて去っていた後、一夏はラインハルトによって拘束を解かれた。一夏はラインハルトがオータムとの戦いで見た実力は本物だと思い彼に助けてくれた事へのお礼をすると同時に尋ねた。
「ラインハルトさん、助けてくれてありがとうございます。それと聞きたい事が有ります。ラインハルトさんが所属する聖闘士はどの様な力であんなスピードで動けるんですか?」
「まあ、見せてしまった以上は隠すのは無理と言うものか。俺を含めた聖闘士は
「小宇宙?」
「小宇宙は誰もが持っているが、その力を使うには厳しい修行を積み重ねて己の中に眠る小宇宙を解放させる事で初めて扱える力だ。それ故にその力に気付かずにいる者が多いのも事実。それに小宇宙に目覚めても上手く扱えなければ只の宝の持ち腐れだ。だが、上手く扱えれば先程オータムに言った通りにマッハのスピードで動く事が可能となる」
「ええと、正直まだちんぷんかんぷんな感じですけど…何となく小宇宙の事は解った気がします。もう一つ気になった事が有るんですけれど、その鎧みたいなのは一体何でしょうか?」
「俺が今纏っているのは聖闘士の証である
「そうですか。わざわざ俺の質問に答えてくれて感謝します」
「では俺はここで失礼させて…」
一夏の質問に答えた後、ラインハルトはこの場から去ろうとしたのだが、とんでもないスピードで何かが迫っている事に気付いた一夏とラインハルトは同時に上を見上げるとISを装着した黒髪の女性の姿が見えた。その女性に一夏は見覚えが有った。無理もない、それは間違いなく自分の姉である織斑千冬なのだから…千冬はラインハルトの姿を捉えると、ラインハルトに向けて突っ込んでいく。ラインハルトは千冬に敵意が無い事を伝える為か回避だけを行い、千冬が落ち着くのを待つ事にした様だ。
「一夏、助けに来るのが少し遅れてしまったが今直ぐにその男から救ってやるぞ!」
「千冬姉…落ち着いてよく聞いてくれ。その人は俺を誘拐した犯人じゃなくて俺を助けてくれた人なんだ。誘拐した犯人はとっくにその人が懲らしめたよ…」
「そうか…すまない、私とした事が…頭に血が昇っていたようだ」
「気にする必要は無い。人間ならば、誰しもそういう時が有るものだ」
千冬は一夏の言葉でラインハルトが敵では無いと知り、ISを待機状態にした後に一夏とラインハルトから詳しい話を聞いたのだった。
話を聞いた千冬はラインハルトに感謝の言葉を送った。
「偶然と言えど、一夏が連れ去られた瞬間を見たから救出しに向かってくれた事には本当に感謝する。それにしても聖闘士か…そんな者達がいたのだな。しかも任務終わりのところで助けに向かったのだろ」
「礼などいい。俺が一夏の救出に向かえたのは任務が終わり、聖闘士の本拠地である
ラインハルトは聖闘士の本拠地である聖域に戻ろうとする中、一夏はもし自分が強ければ今回の様な事件は起きなかったのではないかと思っていた。ラインハルトが助けてくれたとは言えど、結局は千冬は強くなりたい、もう姉である千冬の手を煩わせる様な事だけは二度としたくない…
そんな弟の考えを読み取ったのか千冬は去ろうとするラインハルトを呼び止めた。
「待って貰おうか、ラインハルト殿」
千冬に呼び止められたラインハルトは千冬の話を聞く為に止まった。
「どうした、まだ何か有るのか?」
「ラインハルト殿、お忙しい中で一つだけ頼みが有る。コイツを連れて行ってくれないか」
「えっ!?千冬姉…」
「一夏を連れて行けか…それはつまり、一夏に聖闘士としての道を進ませたいという事か?」
「そうだ!コイツを立派な聖闘士になれる様に育て上げてもらいたい」
「了解した。一夏は見た限りでは聖闘士としての素養は十分に有る。連れて行っても構わないが、それは一夏自身が自分の意志で聖闘士になりたいと思ってたらの話だ。一夏の意志を聞かなければ俺は連れて行こうとは思えない。」
一夏は千冬がラインハルトに自分の事を連れて行く様に頼んだので、まさか自分の考えてる事を読み取っての行動なのかと思い驚く中で千冬は一夏の肩に手を乗せると、一夏に静かに耳打ちする。
「お前の思った事など姉である私には直ぐに解る事だ。寂しく感じるが、私がお前を守ってばかりいるのは必ずしもお前の為になるという訳では無いしな…お前が強くなって私の手を借りずとも生きられる様になるのなら、私はお前が私から離れる事になっても構わない。どうする一夏、お前はここに残って私に守られながら平凡に生きるのとラインハルト殿に着いていき、聖闘士になる道を選ぶかお前が選択しろ」
一夏は姉である千冬を守れる様な力をずっと欲しがっていた。もしラインハルトに着いていき聖闘士になれれば、姉を守れる力は手に入れられるだろう。でも、それは自分勝手な気もすると一夏は思っていた。聖闘士は女神アテナに忠誠を誓い地上の平和を守る為に戦う存在だ。なのに、姉を守る為の力を手に入れる為に聖闘士になろうと思うのは自分勝手なのではないかと思ってしまった。
そんな一夏を見たラインハルトは一夏に発言した。
「織斑一夏よ、おそらくお前は姉である織斑千冬を守れる力を得る為に聖闘士になろうと思うのは自分勝手な事だと思っているのだろう。だが安心しろ。最初からアテナに忠誠を誓って聖闘士になった者など、そんなに多くはないのだ。伝説となった聖闘士達ですら、最初は半ば強制的に自分の意志とは無関係に聖闘士としての修行を強い出されて聖闘士になった者達なのだ。その者達の中には流氷が溢れる海の底に沈んだ沈没船に眠る母に会う為に聖闘士になった者もいれば、聖闘士になったが復讐の為にその力を利用した者までいる。だが、そんな彼らも後にアテナに忠誠を誓って地上の平和を守る為に戦う立派な聖闘士になった。つまり、俺が言いたい事は聖闘士になろうと思ったのがどんな些細な理由で有ろうとも構わないという事だ。お前が誰かを守る為に戦えるのなら構わん。話は以上だ。後は聖闘士になりたいのかなりたくないのかを自分の意志で決めろ!」
一夏はラインハルトの話を聞き、どんな些細な理由でもいい。誰かを守る為に戦える力を手に入れる為に聖闘士になってもいいのなら、自分の意見は一つだ。一夏はラインハルトに自分の意志を伝えた。
「俺は千冬姉を守れる様になりたいと前から思っていた。それと同時に困っている誰かを助けられる様になりたいとも思っていた。もし、聖闘士になれたら誰かを守る為にその力を使いたい。例え、それが自分勝手な理由で有ろうとも!」
「それがお前の意志か。いいだろう、連れて行ってやろう。聖闘士の総本山である聖域にな!」
一夏の意志を聞いたラインハルトは一夏を連れて行く事にし、一夏は姉の千冬に自分に聖闘士になる道を薦めてくれた事に感謝すると同時に一時の別れの言葉も送った。
「千冬姉、ありがとう。聖闘士になる道を薦めてくれて…本当にありがとう、俺が千冬姉を守れる様になった時にまた会おうな…」
「生意気な事を言うな。聖闘士になろうが、お前は私の弟だ。簡単にお前に守られる様になる訳にはいかんからな。期待せずに待っていてやろう」
一夏は千冬としばらく会話した後、ラインハルトの後を着いていき、彼が所有するプライベートジェット機に乗って聖闘士の総本山である聖域が有るギリシャに向かったのだった。
聖域に着くと、直ぐにラインハルトの案内で聖域のトップである教皇がいる教皇の間に案内され、ラインハルトが一夏の事を教皇に紹介した後に教皇は口を開いた。
「話は解った。織斑一夏、つまりはお前は姉を守れる力を手に入れる為に聖闘士になりたいという訳か?」
「そうです。本当に自分勝手な理由かもしれませんが…それでも俺は聖闘士になりたいんです。千冬姉だけじゃない、俺が知ってる人達、これから出会うで有ろう人達を守れる様になりたいんです!」
「自分勝手な理由か…フフ、面白い弟だな!こう見えて私も血気盛んで人の骨が折れる音を聞く為に聖闘士になった様な奴でしてな。私こそ真に自分勝手な理由で聖闘士になった者だ。お前の様に誰かの為という訳では無かったのだ。まあ、そんな私も今では聖闘士を束ねる教皇になってしまった。本当に不思議なモノだな。教皇になってからは私も少しばかり礼儀が良くなってしまったからな!いいだろう、聖闘士になれる様に鍛えあげてやれ、ラインハルト!元々はお前が連れて来た訳だしな!」
「ですが、聖闘士の候補生を鍛えるパライストラが有る以上はソコで鍛えるべきでは?」
「黙れ!ラインハルト、お前は織斑千冬に弟の事を任されたのだろ?なら、お前が責任持って鍛えてやるべきだろ」
「分かりました…俺が織斑一夏に聖闘士になれる様に修行させます…はあっ、本当に滅茶苦茶な方だ…」
ラインハルトは溜め息を吐きながらも、一夏の修行は自分が責任持って面倒を見る事を了承した。
教皇に挨拶を済ませた後、一夏はラインハルトの守護する宮である磨羯宮に招かれ、ラインハルトに寝床を用意されて夜遅くになったから寝る様に催促されたので眠りに着いた。
一夏が眠りに着いた後、ラインハルトは再び教皇の間に行き、任務の報告を行った。
「教皇、任務の報告ですが…日本にて、かつて倒された筈のハーデス率いる冥王軍の戦士である
「やっぱりか…この間は
教皇はこの地上に新たな邪悪な意志が動いている事に気が付き、日本に不穏な何かが有る気がした教皇はラインハルトを派遣した訳だが、相手が最早存在しない筈のハーデスが率いていた冥闘士だったと言うのでハーデス同様の力を持った邪悪が存在すると確信するのであった。
次回は一夏が修行を始めて二年が経過し、聖闘士の証である聖衣を渡される事になります。それと一夏の仲間となる青銅聖闘士も出します。この作品では一夏の仲間となる聖闘士もIS学園に行く事になります。