BLAZBLUE Conception Record(ブレイブルー コンセプションレコード) 作:└(∵)」
ラグナがリオンを『兄』と慕うきっかけが出来てから少し経つ。
ラグナは定期的に何かを頼み込み、リオンと共に何かをしていた。
扉を開ける手。
その反対には少し大きな木の棒。
2人は何をしているのだろうか。
何をしに行くのだろうか。
彼の下の弟……ジンは、その好奇心で少しそっと後を付けてみようと同じように扉に手をかけた。
そーっと、そーっと。
足音が気づかれないようにゆっくりと地を踏みしめる。
きっとあの人の事だ、ちょっとした音でも気づいてしまうのだろうと彼は予想していた。
見失わないように、視界を広く使う。
草木を手で払いながら、そっと付いていく。
「ここかな……?」
彼らの姿を見失う。
但し、森の中なら微かな木漏れ日しかないが、今目の前は非常に明るく、そのままの光が差し込む。
そこを静かにのぞき込む。
「……」
その先では、木と木がぶつかり合う音があった。
低くは無いが、高くもない音。
遠くまでは聞こえず響かず、ただ近くで鈍く音を放つだけ。
木が握られているものの手は……
「くっ……もう一回だ!」
「ああ、何度でも来な」
探していた2人が、周りに木々のない自然な広場で打ち合っていた。
片方は必死に、だが確実に当てに。
片方は余裕そうに、しかし的確に防ぐ。
そう、戦っていた。
本気の殺し合いとまでは言わないが、喧嘩にも似た打ち合い。
力の限り殴りかかり、それを思い切り受け止める。
暴力的だが、時にそれが必要になるのだろうか。
そんなことをときどき義兄に問っていた。
その度に、何かとあって答えては貰えなかった。
「うぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
「大振りになってんぞ!」
ラグナはなるべく無駄な動作を少なく飛びかかる。
対するリオンは飛ぶ動作こそ無駄を無くしているが、肝心な攻撃が大ぶりになってしまっていることを指摘する。
その大振りな攻撃を防ぎ、受け流す。
「うわっ!」
「そら、終わりだ!」
リオンが振り下ろす。
ラグナの眼前でそれは止まった。
今回の、いや、今回もリオンの勝ちに終わった。
疲れたかのようにリオンはその場に座り込む。
「休憩にすんぞ、ラグナ」
「えっ?まだ時間じゃないだろ?」
「ちょっと早めにするだけだ。それに、ちょこちょこ見に来た奴もいるみてぇだしな」
そうリオンは言葉を放つと、彼が隠れている方に目を向ける。
視線はこっちに来いよと言わんばかりに。
「そうだろ?ジン!」
見つかっていた。
彼はもう隠れているジンに気がついていたのだ。
「ご、ごめんなさい、リオン兄さん」
恐る恐る、ジンは隠れていた場所から出てくる。
怒られそうで怖かったのだろう。
「あー、責めるわけじゃねぇよ?ただ、ラグナがちょっと秘密にしたがってただけで」
責める訳では無い、その一言に安心したと同時に。
兄が秘密裏にこんなことをしたがっていたのか。
なぜこんなことをしたがっていたんだろう、とジンは問う。
リオンはラグナと話し、ラグナは少々遠くで練習をしていることになった。
そこで彼は口を開いた。
「……アイツ曰く、俺みたいに強くなりたいんだとよ」
「それだったら、僕も強くなりたい……でも、僕の時はダメ、って言ってましたよね」
なぜ自分は断られたのに、兄はいいのだろうか。
それは少々理不尽じゃないかと抗議する。
その言葉にリオンは口を開く。
「ありゃあアイツが何度言っても聞かなかったからだっての……それにな、一概に強いっつっても『力』だけが全てってわけじゃねぇんだよ」
「力だけじゃない……?」
その言葉にジンは首を傾げた。
格好よく戦う、その姿に強さを感じたがそれだけではない。
それは一体どういうことなのだろうともう一度問い返す。
「『力』なんかよりももっと強いもんがある。それこそ、それはお前が向いてる方だよ」
「それは、何なんですか?」
「ここだ、ここ」
リオンは左の人差し指を頭にとんとんと当てた。
つまりは、とジン。
「……頭?」
「そう、言い方を変えれば『知恵』だな」
知恵。
考え、そして最善を導き出すための大切なもの。
人が長けて与えられた人の特権。
それもまた強さと彼は言った。
「お前は、もし争いが起きた時は、誰かを傷つけて解決するか、誰も傷つけずに解決するんだったらどっちがいい?」
「それは、誰も傷つかない方がいいですよね」
「そう、普通はそういう考えだ。だからこそ知恵は、力よりも強いと俺は思ってる。それに……」
「それに?」
「俺は馬鹿な方なんでね、お前はそうなっちゃ欲しくないんだよ。願わくば、ラグナもな」
力は、何事もねじ伏せて強制的に物事を終わらせてしまう。
対話が通じない相手であれはたしかにそれは必要であるが、彼はそれよりも、しっかり話をして最善を導き出して、一番いい終わらせ方をする知恵のほうが良いと感じたのだ。
そして彼は、それが自分にできない、と言った。
だからこそ義理ではあるとはいえ、弟達には自分のようになって欲しくないが為にあえて断っていた。
「知恵、かぁ……」
「初めは深く考えなくていいもんだよ、最初は適当に頭動かして、後々からちゃんと考えてって段階があんだからな」
初めは頭をちょっと動かして、後々に本格的に考える。
馬鹿なら馬鹿なりにと彼が考えた方法である。
「……分かりました!もし良ければ、リオン兄さんも協力してくれませんか?」
「ああ、あまり力になれるかどうかは分からねぇが、出来るんだったら協力してやるよ」
ありがとう、とジンは礼を言う。
ほら、もう昼だから休憩して飯食うぞー。
そんな気の抜けた声が響く。
お気楽に、でもそれでも、やはりしっかりと考えている人物だとジンは実感した。
道理でシィの信頼も得られるものだな、ということも思えた。
彼の言動は、目指すべき知恵の通過点と思えた。
さらに言えば、ジンはその先も見据えていた。
きっとリオンがその視点を共有して見れたのなら、感心することだろう。
ジンは改めて心に刻んだ。
力と知恵の境界は分かたれていても、同じ強さには変わりないのだなと。