セクハラ提督と秘密の艦娘達   作:変なおっさん

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『明石のお店』

 明石のお店は、小さなコンビニのようなものだ。内容は、日用品やお菓子、お酒ぐらいしか置いていないが注文をする事が出来る。カタログで選ぶか品物を言う必要はあるが誰にも内緒で取り寄せる事も可能。他にも注文に無い間宮商品が店頭に並ぶこともあり、その際は抽選にて購入者を決めたりもする。一人一票。複数ある時は慎重に。

 

 翔鶴との話が終わった後に瑞鶴を誘い提督は明石の店に来ていた。今夜、神通が部屋に来るのでお酒の補充などをする為だ。

 

「ねぇ、提督さん。提督さんのオススメはどれなの?」

 

 瑞鶴にアロマキャンドルのオススメを求められる。翔鶴との話題にも上がったがアロマキャンドルに興味を持ったらしい。

 

「……コレなんてオススメだ」

 

 正直に言うと特に興味はない。今、瑞鶴に勧めたのも金剛が好きだと言っていたものだ。あくまでも催眠術の為に持っているだけなので訊かれても困る。

 

「ふーん。柑橘系なんだ。じゃあ、私はコレでいいかな。翔鶴姉は?」

 

「私も同じので」

 

「そうか。では、私が買おう」

 

「いいの?」

 

「私からの贈り物だ。いつも二人は頑張っているからな」

 

 二人が選んだ物を受け取り、レジに居る明石の下に向かう。

 

「羨ましいですね。提督、明石には何もないのですか?」

 

「無い。この二つを頼む」

 

「ズルいです。お給料から天引きしておきますね」

 

 買物は給料からの天引きでもできる。一部の艦娘の場合は、これ以外では買物できない。未払いは絶対に禁止。

 

「翔鶴、瑞鶴。受け取ってくれ」

 

「ありがとうございます。大切にしますね」

 

「早速、使ってみるね! 行こう、翔鶴姉」

 

 二人を見送る。これで少しでも気晴らしになればいいのだが。

 

「見て下さい、あの二人の姿。嬉しそうですね~」

 

「だといいがな。それよりもだ、明石。また例の物を頼む」

 

「……例の物ですね?」

 

 顔を近づけて行われる秘密の会話。互いに周囲を確認してから行われる。

 

「報酬は、いつも通りでいいな?」

 

「……どうしましょうか?」

 

「契約を破る気か?」

 

 明石には、本土から送られてくる贈り物の中から好きな物を選ばせている。

 

「さっきの二人の姿を見たら明石も提督からの贈り物が欲しくなりました」

 

「変わらないだろ?」

 

「……これだから提督はダメなんですよ。少しは、乙女心を学んでください」

 

 呆れを含んだ不満気な顔を向けられても困る。これでも私なりに頑張っているつもりだ。

 

「なら、どうすればいい? 明石の店の物でいいのか?」

 

「それはそれでつまらないですね。提督、今度鎮守府に行くときに明石も連れて行って下さいよ。お休み合わせますから」

 

「私は、仕事で行くがいいのか?」

 

「もちろんです。そうだ、夕張さんも誘っていいですか?」

 

 明石も夕張の手伝いで修理などを行っている。

 

「どちらかに残っていてほしいのが本心だな。だが、二人は仲が良い。数日空けておいても大丈夫なようにしておけるのなら許可する」

 

「数日ぐらいなら余裕ですよ。妖精さんも居ますから。では、早速準備に入りますね。買い物はいつも通りでお願いします」

 

 明石は、足早に店から去る。監視カメラなどはある。島なので見知らぬ者も居ない。だからと言って店を空けるのはいかがなものか。

 

「まぁ、明石を敵に回す馬鹿も居らんだろう」

 

 泊地に置いて暗黙のルールが二つある。その一つに大淀、明石を敵に回してはならないだ。この二人は、海軍本部からの派遣要員で提督の直属の部下ではない。その為、機嫌を損ねでもすれば予算や物資の獲得に影響が出る。逆に機嫌が良ければ優遇処置をとってくれることもある。

 

 例えば、提督の密書がその一例だ。明石の持つ独自のルートで検閲などはされずに秘密裏に荷物を本土から調達できる。それこそ明石もその中身を知らない程の機密性だ。

 

「確か、神通の好きな物はビールと日本酒だったな」

 

 冷蔵庫には、名札の付いた取り置き商品もある。多少なら明石の方で管理してくれるので利用する者は多い。

 

「半分近くの酒が取り置きなのか」

 

 隼鷹や那智などをはじめ酒飲み達の名前が並ぶ。コレだけではなく各自の部屋や居酒屋鳳翔での飲酒も考えるとどれだけ飲むのだろうか?

 

「ビール二本と日本酒一本でいいか。後は、乾物と缶詰でも買っておけばいいな」

 

 厨房を借りて少し調理してもいいな。いや、七輪でも出すか?

 

「なんだか趣旨から外れてしまっているな。あくまでも相談を受けるだけなのに」

 

 すっかり飲む気分になっていたが、神通は相談をしに来るのだった。あまり本格的にやるのはよくないか。

 

「おっ、提督ではないか」

 

「利根か」

 

 明石の店に利根がやって来る。

 

「何を買っておるのじゃ?」

 

「酒と肴をな。利根は?」

 

「うむ。吾輩は、茶菓子を買いに来たのじゃ。提督よ、聞いてくれ。筑摩がの吾輩に言うのじゃ。一緒に買い物に行くとな。一人でも買い物ぐらいできると言うのにのう」

 

 利根は胸を張っている――が、提督の視線の先には物陰から利根を見守る筑摩の姿がある。筑摩の方が妹になるので立場が逆な気もするが。

 

「ほう、本土ではコレが流行りなのか」

 

 商品のPOP広告を読んでいる。商品を売るための物だが見事に引っ掛かっている。手に持っている籠の中に「ふむふむ、これは良い物だ」と言いながら商品が投げ込まれている。筑摩、見ていないで止めたらどうだ。

 

「筑摩も喜ぶであろう。おや、そう言えば明石は居らんのか?」

 

「明石なら夕張の所に行った。レジの所にある紙に商品名と購入者の名前を書いておけば問題はない」

 

「そうか、なるほどのう。よし、早速やってみるとしよう」

 

 レジに備え付けられている紙とボールペンを使い利根は説明書きの通りに書いていく。筑摩が一向に来ないので代わりに様子を見るが、別に読み書きはできるので問題はない。ただ、余計な物は大量にありそうだが。

 

「籠は後で返せばいい」

 

「わかった。では、またな、提督よ。今度は、吾輩とも飲むぞ」

 

「楽しみにしている」

 

 利根を見送るわけだが、既に筑摩は撤退している。保護者も大変だな。さて、自分も書いて部屋に帰るとしよう。

 


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