セクハラ提督と秘密の艦娘達   作:変なおっさん

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『case4 愛宕』

 

 催眠術と言うのは便利な物だ。記憶を消すだけではなく、記憶を与える事もできる。赤城には、共に鍛錬をしていた記憶を与えて無事に事を終えることに成功した。流石に白地ではダメだろうが、今までの鍛錬の記憶があれば問題はないのだろう。

 

 赤城のおかげで十分な睡眠をとれた身体で、食堂に朝食を頂きに行く。基本的には、決められた時間内であればいつでも食事を取る事ができる。やはり、二十四時間の勤務になるので全員一緒に食事を取るのは難しい。

 

「提督~♪ おはようございま~す♪ 今日は、よろしくお願いしますね」

 

 食堂に足を運ぶと愛宕が手を振って出迎えてくれた。どうやら今日の秘書艦は愛宕らしい。わざわざ私を待っていてくれたのだろう。

 

「愛宕が秘書艦か。よろしく頼む」

 

「うふふっ、もちろんです。今日は、提督の好きなお魚さんがありますよ?」

 

「此処での食事の大部分は魚だろ?」

 

 愛宕と共に食堂へと入る。数に限りはあるがAランチとBランチの二つがある。Aが焼き魚定食。Bが生姜焼き定食。一見するとBの方が良さそうに思えるが焼き魚定食には一品多く付く。魚も好きだがコレが楽しみだったりする。

 

「愛宕も焼き魚でいいのか?」

 

「せっかくなんで提督と一緒のがいいですから。早く食べましょう」

 

「そうだな」

 

 既に食堂には艦娘達の姿がある。私の姿を見るとざわめきがある。やはり、上官と同じ場所での食事は落ち着いてできないものなのだろうな。今日は、愛宕と向かい合いながら食事を共にするが普段は一人でとる事が多い。食堂の隅で一人食事を早く済ませ場を離れる。少し前まではそれが当たり前だった。今でもそう言う日はあるが中には愛宕のように気を使う者も現れ始めた。

 

(これも本を手に入れたおかげだな)

 

 本を手に入れるまでは軍人として厳しく生きてきた。真面目にその役割を果たすように。しかし、今はそれもない。今の私は、欲望に生きる獣。獣となった私には、今や世界は新しいものとして見える。

 

「どうしましたか?」

 

「いや、なんでもない」

 

 なんでもない事はないのだよ、愛宕。平然と卓を共にしている私が、愛宕の胸をチラ見しているなどとはつゆほども知らないだろう。今までは上官が部下に劣情を抱くなど愚かな行為であると自制してきたが今はもうしていない。意識して理解することにより愛宕の胸のデカさを改めて知る事になる。愛宕は、高雄型の姉妹艦になるのだが姉である高雄は真面目な性格に反するようにエロい格好をしている。流石の私も初対面の時は、どこを見て話せばいいのか分からない程にどこを見てもエロかった。胸もデカいし、尻もデカいし、太ももも――ええい、とにかくエロいのだ!

 

 それでは、愛宕はどうだ? 高雄に比べれば露出は少なくむしろ艦娘の中では重装と言わんばかりの厚着だ。他の露出がひどすぎる気もするが、一般と比べても着こんでいる方だろう。しかし、それでもエロい、エロ過ぎるのだ。服の中に無理矢理納めている双丘は常に自己主張をしており、今は見えないが黒のストッキングもまた色気を醸し出している。性格が所謂ゆるふわ系と言うものらしく、意外と無防備な姿を見る事もあるが……今の私にとっては目の毒だ。姉同様、私をどうする気なのだ?

 

「あの、提督? 先ほどからあまり箸が進んでいないように見えますけど……どこか調子でも?」

 

「いや、何の問題もない。なに、今後の事について考えていただけだ」

 

「そうなんですか。うふふっ、お食事の時にもお仕事の事を考えているなんて提督らしいですね。でも、ちゃんと食べないと作ってくれた人たちに申し訳ないですからね?」

 

「そうだな。気をつける」

 

 二人の妹が居るからか世話好きなのもダメだ。今思うと、当初から私に対しても気を使っていた。金髪碧眼と言う日本人にはない容姿なのもいけない。なんかもういろいろといけない。クソッ――なぜ、愛宕には催眠術が効かんのだ!

 

「そういえば、提督。あの遊びはもうしないのですか? 五円玉でユラユラする遊びは?」

 

「いや、そう言う訳ではないのだが……」

 

 愛宕には催眠術が効かない。正確に言えば、効果があるのかが分からない。確かに成功はした。動物の鳴きまねもしてくれたし、言われた通りに行動もした。ただ、愛宕の場合は普通にお願いしてもしてくれそうなのだ。愛宕は、普段から駆逐艦達のような小さな子達の面倒をよく見ている。その延長で、催眠術に掛かっていないにも関わらず私に付き合ってくれている可能性がある。実は、このタイプは意外と多い。それこそ姉である高雄もこのタイプだ。

 

 生真面目な大淀なら怒るか叱るかをするだろう。恥ずかしがり屋な榛名なら反応で分かる事だろう。上官の命令に対して忠実な赤城なら内容によっては確認の為に聞き返して来るだろう。しかし、優しく付き合いの良い愛宕のようなタイプは判断がし辛い。本には――

 

 《高雄型 愛宕》

 

 愛宕は、あなたのわがままをなんでも受け止めてくれます。遠慮せずに甘えちゃいましょう。但し、エッチな事は注意。いきなりはダメですよ?

 

「なぁ、愛宕」

 

「はい、なんでしょうか?」

 

「すまないが、少し走り込みを行いたくなった。先に大淀と業務の方をしておいてくれ」

 

「……わかりました」

 

 サッサと食事を済ませ、それを片付け足早に準備を行う。自分に気を使ってくれている愛宕に対して不誠実な自分が情けない。煩悩を払わなければ、今日の業務が疎かになる。

 

(急がば回れ。焦るな、時間はある)

 

 愛宕にアレコレ試したいが、もし嫌われたら執務机の一番下の引き出しに厳重に仕舞ってある物を取り出さなければいけなくなる。

 

 待っていろ、愛宕。必ず催眠術を極めて戻って来るから。そしたら――ええい、静まれ我が○○よ!

 


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