セクハラ提督と秘密の艦娘達   作:変なおっさん

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『金剛姉妹とのお茶会』

 泊地へと帰還した金剛、霧島は榛名と共にお茶会の準備をお気に入りの場所で用意。その間に共に帰還した比叡が提督を呼びに行く。

 

「テイトクー♪ テイトクー♪ テイトクと一緒にtea time♪」

 

 金剛は、鼻歌も交えながら機嫌よく準備をしていく。

 

「金剛お姉様は、上機嫌ね。でも、榛名。本当に手紙に書かれていた話は本当なの?」

 

「はい。今の提督は、とてもフレンドリーです!」

 

「フレンドリー……どうも信じられないのよね。鬼の助平とも言われた提督が本一つでそこまで変わるなんて」

 

「霧島。本の事は内緒です。それだけは守ってください」

 

「分かっているわよ、榛名。私としてもその方が都合はいいのだし。でも、全員ではないのよね?」

 

 秘密の話。提督と一部の艦娘達には内緒にされている秘密。

 

「はい。比叡お姉様にも秘密です。提督の事は好きだとは思いますが、金剛お姉様と比べると危険です。それに比叡お姉様の場合、提督に気づかれる可能性があると判断しました」

 

「比叡お姉様に隠し事は無理よね」

 

 比叡は良い言い方をすれば純粋だ。すぐに表情や態度に出る。

 

「なんでもいいヨ! テイトクと一緒に紅茶を飲むのは私のdreamだったネ。ずっとテイトクを誘ってきたけどダメだった……それが今叶うんだから問題nothing」

 

「金剛お姉様は、提督の下に早い段階から居られるんでしたよね?」

 

「そうデース! 鳳翔や大淀達には負けてしまいますがもう何年も一緒に居マース。軍人として真面目で男らしいテイトクが好き。不器用だけど私達を守ってくれるテイトクが好き。I love Admiral」

 

「は、榛名は負けません! こればかりは金剛お姉様にも!」

 

「良い度胸ね、榛名! どっちが先にテイトクのheartをgetできるか勝負するヨ!」

 

 金剛と榛名の間に火花が散る。そんな光景を霧島は冷静に見ている。

 

(内輪揉めをしている場合ではないと思いますよ)

 

 霧島の頭の中では敵は多いと考えている。そもそもこんな馬鹿げた事を行えている以上はそう言う事なのだろう。

 

「提督をお連れしました!」

 

 そんな三人の下に提督を連れた比叡が戻って来る。

 

「お招き感謝する」

 

「テイトクー! 来てくれて嬉しいネー! Sit next to me! 此処に座って座って! 早く早く!」

 

「そうか。失礼する」

 

 金剛に促され席に座る。提督から見て左から金剛、比叡、霧島、榛名の順に続いて座っていく。

 

「今日の為に最高の茶葉を用意したの。テイトクの為に気持ちを込めて淹れるから待っててネ」

 

「金剛お姉様、不肖ながらこの比叡もお手伝いします!」

 

「Oh ……大丈夫だから比叡も待ってるネ」

 

「比叡お姉様。ここは、金剛お姉様に任せましょう」

 

「そうです。任務でお疲れでしょうから。榛名、頑張ってスコーンを焼いたんです。食べて下さい」

 

「それならお姉様も……」

 

「比叡。ここは金剛の好意に甘えようじゃないか。金剛も労いたいのだよ」

 

「そうなんですか!?」

 

「もちろんネー。だから比叡はなにもしないでいてほしいヨー」

 

 金剛の優しさに喜んでいる比叡を見て安心する。比叡は、泊地内でも少ない『料理禁止者リスト』に名を連ねている。コレに載っている者は絶対に料理当番が回ってくることはない。

 

 金剛は、手際よく紅茶を淹れていく。その動作には無駄がなく手慣れているのがよく分かる。実際に淹れてくれた紅茶は、香り高く味わいも今まで飲んだ物とは違う気さえする。

 

「あまり飲み慣れてはいないが美味いものだな。前に秘書艦をしてくれた時よりも美味い気がする」

 

「当然だヨー♪ だって今日のはspecialだからネー♪」

 

「比叡には分かります。これは、金剛お姉様の愛です。私の事を思い……うぅ……お姉様……」

 

「もう泣かないで比叡……。せっかくのtea timeが台無しだヨー。楽しく飲まないとネ?」

 

 お茶会はそんな感じで進む。主に、金剛達が話しているのを聞いているだけだが元々話をする方ではないので助かる。

 

「そう言えば、お手紙を預かっています。金剛お姉様、あの手紙です」

 

「Oh! そうでした。テイトクにお手紙がありました」

 

「私に?」

 

 金剛から手紙を受け取る。

 

「……上官からか」

 

 手紙の差出人は元上官。今は、前線の方で指揮を執っている提督の一人だ。内容は――

 

「そうか。とうとう御結婚成されるのか」

 

「今月中にも本土の方に戻られるそうです。これからは、海軍本部での任に就くそうです」

 

「その方がいい。守るべき者が居るのだ。前線に共には居られんだろう」

 

「お二人はお似合いでしたヨ。ラブラブで羨ましかったデース」

 

「よく知っているよ。相手は、私が部下だった時から傍に居た秘書艦だからな。いい加減危険な場所から離れろと皆で言ったものだ。だが、ケジメを付けるまではと……まったく頑固な男だったよ」

 

 人間が艦娘と結婚をするのは今や珍しくもない。確かに艦娘の産まれは人とは違う。しかし、艦装を本当の意味で外せば人と何も変わらない。今や人口のほとんどを深海棲艦との戦いで失った日本では、艦娘との結婚は奨励されているぐらいだ。

 

「提督は、艦娘との結婚はどうお考えですか?」

 

「私か? そうだな……」

 

 霧島の質問に考えるのだが――なんだ、この威圧感は?

 

「私の知り合いの中には、他にも艦娘と結婚している者も居る。それこそ今や一夫一妻の時代は終わり、甲斐性さえあれば重婚もできる世の中だ。複数の艦娘を嫁に迎えた者も居るからな。好き合う者同士なら問題は無かろう」

 

「本当ですか!? テイトクは、艦娘でもMarriage okay?」

 

「あぁ、特に問題はないだろう」

 

 情欲を抱いているぐらいだ。ふふふっ、少し前までは部下としてしか見ていなかったというのにな。人は変わるものだ。

 

「テイトク、少し失礼しマース。榛名、霧島、こっちに来るネ」

 

「私は、呼んでくれないのですか!?」

 

「比叡は、テイトクの相手をしててくだサーイ。二人は、こっち」

 

 金剛は、榛名と霧島を連れて少し離れた所でなにやら話をしている。

 

「提督……私は、嫌われたんでしょうか?」

 

 自分だけ呼ばれなかったショックからか比叡が涙を浮かべて落ち込んでいる。

 

「そんなはずはないだろう。私一人だけでは、招いた側として失礼にあたるとでも思ったのではないか? もしそうなら比叡のポジションはかなり大事なものになる」

 

「大事なポジション……。そうですよね、わっかりました! 比叡! 頑張って! 提督をもてなします! 今、新しいのを淹れますね」

 

 今、比叡はなんと言った? 新しいのを淹れる? 何をする気なのだ。あぁ……そんなに沢山入れなくても大丈夫なのに。

 

「どうぞ、提督! 比叡、頑張って淹れました!」

 

「そうか……ありがとう」

 

 気持ちと行動は時には切り離す事も必要である。少なくとも料理などをする時は。

 

 比叡が頑張ったのは知っている。気持ちがこもっているのも知っている。だから飲む。例え、いろいろと入れ過ぎだと分かっていたとしても。

 

「……ありがとう、比叡。比叡の気持ちはよく分かった」

 

「本当ですか! やりました!」

 

「だがすまない……少し急用を思い出した。金剛達には楽しかったと伝えてくれ」

 

 そう言い残し足早にその場から去る。部下の笑顔と気持ちを守るためなら多少の無理ぐらいは問題ではないのだ。

 

 早く、この場から離れなければ……。

 


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