その日。この国は"終わり"へと進んだ。
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「ハァ…ハァ…」
体が焼けるように暑い。いや、熱い。
彼は、赤い鮮血が滲む傷口を抑えながら走っている。
「クソッ…どうしてこうなったんだよ…!?」
彼は、先日、徴兵された兵士である。現代では戦時国家である本国は最新の技術を取り入れたため、国はいつでも優勢だと言われていた。だから、徴兵されたとしても死亡率は限りなく低いものとされていた。
だが、彼は一人だ。
兵士とは、あまり単独行動をしないものである。するとしても、長距離から敵を狙撃する
だが、彼は、違う。先程言ったとおり徴兵されたての新兵だ。そんな新兵には長距離からの狙撃など余程の才能がない限り不可能だ。
では、なぜ彼は一人で傷を負い走っているのだろうか?
そう、答えは簡単だ。
彼の仲間は、彼を除き"全滅した"のである。
「なんで…だよっ…!俺たちは強かったんじゃねぇのかよ!」
彼の口から零れるのは愚痴。無理もないだろう。ずっと優勢と言われていた本国が"一方的に攻め続けられている"のだから。
ドサッ
彼は、座り込んだ。その手には口径9mmのハンドガンが握られている。その中には弾丸が一発のみ。残りの弾丸はこれだけだ。
「どうせ…死ぬなら…」
彼は、ハンドガンの銃口を口に入れ引金に手をかける。そのまま、引金を…引けなかった。
彼が座っているところには、数人の子供達がいた。
「…うぅ」
子供達は呻くようにして、後頭部に手を回しうつ伏せになった。少しでも銃弾を受けないようにするための構えだ。
「ハハッ…これは、もう、自分じゃ、できないな…」
口に入れていた銃口を下ろして力を抜く。うなだれるようにして壁に寄りかかり、子供達を見つめる。
「…?」
子供達はなにが起こったのかわからない様子でいた。
「ハァ…ここが俺の墓…か…」
彼は、自分の人生を思い返す。
産まれて、両親と出会い、成長して、学校に通い、卒業して、徴兵された。
「ハッ…つまらねぇ人生…だな…」
ドドドッ!
…銃声。近くで銃が火を吹いている。
「フッ…攻めて最期くらいはカッコつけて死にますか…」
彼は、手に握っていたハンドガンを子供達の方にシュルシュルーと音をたて滑らせた。ハンドガンは、回転しながら一人の少女の足に当たった。
「ハハッ…強く…生きろよ…」
彼は、駆け出した。行くあてもなく、駆け出した。
彼は、走った。
ただ、ひたすらに、走った。
後ろから銃声が聞こえる。見つかったようだ。
それでも、彼は走ることをやめない。
あの、子供達から少しでも距離を離すために。
彼は、走り続けた。
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どれくらい走っただろう…?
どれくらい撃たれただろう…?
あの、子供達は生きているだろうか…?
彼は、戦場に倒れ込み考える。
だが、もう長くは考えられそうにない…。
彼の目から、雫が流れる。涙。
彼は、泣いている。
死ぬ恐怖、自身の無能、悲惨な現実、それらが彼を襲う。
彼の口角が、ゆっくりと持ち上がる。微笑み。
彼は、笑っている。
ただ、ひとつ彼を笑顔にさせたものは、自分があの子供達を救ったという事実。
彼は、不幸だ、だが、誇れるものが出来た。
そして…彼は、旅立った。
戦場のメリークリスマスって曲を聞いてたら書きたくなってしまった…