その日。この国は"終わり"へと進んだ。
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「…うぅ」
少女は頭を抱え込みながらうつ伏せになる。この少女は9歳の女の子。普通であれば、学校などで勉学に励んでいる年頃だ。しかし、少女のいる場所は…
ドドドッ!
銃声が聞こえる。その流れ弾をくらうまいとうつ伏せに身をかがめる。
ザッザッザッ!
続いて聞こえてくるのは足音。兵士達の重く、力強い足音。だが、その力強い足音は少女の恐怖を駆り立てる。
「…ハァハァ」
少女はカタカタと震えている。
そう、少女がいる場所。それは、すなわち戦場。周りには銃声が響き渡り、火薬の匂いと、人間の死臭が漂っている。
「お姉ちゃん…怖いよぉ」
少女の耳に届くのは幼い少年の声。少女の弟である。弟も恐怖に屈しかけているようだ。そして、その弟の他にも少女より年齢の低い子供が一箇所に集まり身をかがめている。
「み、みんな…大丈夫だよっ…兵隊さん達がやっつけてくれるよっ…!」
少女は掠れそうな声で呼びかける。だが、恐怖心というものは単純なものでは無かった。
「うっ…グスッ…」
とうとう泣き出してしまう子がでた。
ドドドッ!
再び銃声が響く。
「うっ…」
だいぶ近い。あたりを見渡すと戦死した兵士が倒れている。
「もう、死んじゃうのかな?」
弟が弱々しい声をあげる。
「諦めないでっ…!まだ、生きて…!あの兵隊さんの頑張りを無駄にしちゃダメ!」
少女は先程の戦死している兵士を指さした。
「…うん」
弱々しく返事が帰ってきた。仕方ないであろう。なんと言っても、まだこの子達は幼い。まだ、親に甘えていたいはずだ。だが…それは叶わない。
「お父さん…お母さん…」
少女はそう呟き、首から下げているロケットを握りしめた。このロケットの中には今よりも幼い少女と弟、そして二人の両親が写っていた。
「………」
堪え難い、恐怖。絶望。
そんなものが少女の胸の中にあった。先程誰かが言った「このまま死んじゃうのかな?」と言う諦めの言葉が頭から離れない…
「…うっ…えぐっ」
少女から零れる嗚咽。形容し難い感情が押し寄せてきて堪えきれない。
…そんな時だった。
ザッザッザッ!
少女達が身を潜めているところに駆け込んで来たのは一人の兵士。
ドサッ
その兵士は壁に寄りかかり座り込んだ…その手の中には拳銃が握られている。
……その時だった、不思議と感じたのは恐怖ではなく、同情。怖いはずなのに…怖くない…。そんな不思議でモヤモヤした感じが少女の小さな胸の内を支配した。
(みんなを…守ってあげて…)
ふと、聞こえてくる女性の声。いや、聞こえたのではない。少女の記憶に残る少女の母親の声。
(みんなを…守らなきゃ…!)
母の"最期"の言葉を思い出し率先して頭を下げる。
そんな少女の葛藤の最中、兵士は自分の口に銃口を差し込んでいた。
「…うぅ」
「…?」
兵士は驚いている。少女達もまたなにが起きたのかわからず驚いている。
「ハハッ…これは、もう、自分じゃ、できないな…」
兵士はそう呟いた。壁に寄りかかりうなだれるようにして銃を持つ手を床に投げ出した。
少女はどうするべきかわからなかった。この兵士には自分達を殺害する意思は無く。幼い子供達を目の前にして、自害する事を拒む程の人情を持ち合わせている。
ドドドッ!
そんな時だった、近くで銃声が鳴り響いた。
少女達は恐怖し、怯えた。
「フフッ…最期くらいはカッコつけて死にますか」
兵士が呟いた。兵士は持っていた銃をこちら側に滑らせた。
「ひっ…!」
数人の子供が短い悲鳴をあげる。だが、それは関係ない。少女にはこれの意味がわかった。
兵士は最後の武器を自分達に授けたのだ。つまり、いま、目の前の兵士は丸腰。こんな状態で戦場に出れば恐らく、戦死する。
「まっ…
少女が言葉を発する前に…
「ハハッ…強く…生きろよ…」
兵士はそう言い残して去って行った。
ドドドッ!
すぐに銃声が聞こえた。あの兵士が見つかったのだろう。
少女は足元に転がっている拳銃を見て思う。
(助けられたの?)
少女は胸に兵士への感謝と無念、そして、罪悪感を感じた。
あの兵士は、自身を犠牲にして少女達を守る行動にでてくれたのだ。
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ドドドッ…
どんどん銃声は離れていった。
取り残されてしまった少女は、ロケットと拳銃を握りしめ。
「ありがとう」
一言、戦場に感謝の花を咲かせた…
いろんな視点で作者の思う、戦場。というものを描いていきます。