ハチマンくんとアスナさん   作:大和昭

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今日で暫定1000話に到達しちゃいましたね、実質1000話まであと七話です!


第993話 出海が選ぶのは

「えっ、ラキアさんと、プリンさん?」

「ど、どっちがラキアさん!?」

 

 前者は当然プリンと知り合いなアスモゼウスの反応であり、

後者はプリンと面識の無いヒルダの反応である。

 

「ええと、ラキアさん、プリンさん、こっちがヒルダでこっちがアスモ、

そしてこいつがシノンです」

「あっ、アスモちゃんだったんだ、久しぶり!」

 

 その久しぶりという言い方と、喋ったというその一点において、

唯花はそちらがプリンだと確信した。

 

「プリンさん!今日はベル君はいないんですか?」

「う~ん、それがねぇ………」

 

 そう言いながら小春はチラリと晶の方を見た。

晶は何かを誤魔化すかのように、鳴らない口笛を吹いている。

 

「実は私、今日はお酒の配達でここに来たのよ、

で、配達が終わってさあ帰ろうって思ったら、何故かラキアが後ろに立ってて、

凄い笑顔で私をここまでぐいぐい引っ張ってきたって訳なの。

だからベルは今頃家で、一人で留守番してるんじゃないかな」

「そっか、それは残念です、ベル君にも宜しくお伝え下さい」

「うん、アスモちゃんはかわいかったよって伝えておくわね」

「そ、そんな」

 

 出海はその小春の言葉に恥ずかしそうに身をよじらせた。

一方唯花は晶に挨拶をした後、そのまま晶に捕まって頭を撫でられていた。

 

「むふぅ」

「えっと、八幡さん、私はどうすれば………」

「ラキアさんが飽きるまで我慢するしかないな、

で、ラキアさん、スプリンガーさんはいないんですか?」

 

 きょろきょろと辺りを見回しながら、八幡にそう尋ねられた晶は、

唯花を解放して小春をこちらに引っ張ってきた。

晶は何か言いたげに首を傾げ、小春に向けて口をパクパクさせた。

 

「………プリンさん、ラキアさんは何と?」

「えっと、仕事を押し付けてきたから今日は来ない、代わりに私を確保した、って、

私をここに引っ張ってきたのはスプリンガー君の代わりだったんだ!?」

「むふぅ」

「なるほど………うわっ!」

 

 八幡はそのまま晶に捕まり、頭を撫でられる事となった。

 

「う………」

「八幡さん、ラキアさんが飽きるまで我慢して下さいね」

 

 唯花は先ほどの仕返しとばかりにそう言い、今度は出海が、小春にこう尋ねた。

 

「あ、あの、プリンさん、ラキアさんって一体いくつなんですか?」

「私と同い年だから、今年で四十七になったはずよ」

「えっ、嘘、プリンさんってどう見ても三十半ばくらいじゃ」

「ふふ、ありがと、でも困った事に事実なのよね、

それにラキアはもっと若く見えるでしょう?」

「た、確かに………」

 

 出海は納得したようにそう答えた。

 

「正直、二十代後半かなと………」

 

 唯花も正直にそう答え、小春は破顔した。

 

「そうなのよ、もう、妬ましいったらありゃしないわよね」

「リ、リアル美魔女………」

 

 小春のその言葉に唯花は呆然とそう呟いた。

ちなみに詩乃は、八幡に聞いて知っていたので驚いてはいなかった。

 

「ふふっ、八幡もラキアさんにかかったら形無しね」

「うるさいシノン、ラキアさんに敵う奴なんか誰も………」

 

 いやしねえ、と言いかけた八幡は、慌てて詩乃から目を逸らした。

 

「あら、どうしたの?」

「い、いやお前、そのスカート、ちょっと短すぎじゃないか?」

 

 ハチマンは今、床に座らさせられて晶に頭を撫でられていた為、

その視界はかなり低くなっていた。

その為に、極限までスカートの丈を短くしていた詩乃のパンツが、

今の八幡からバッチリ見えてしまっていたのである。

 

「今頃気付いたの?もう、遅いわよ」

「え、も、もしかしてずっとそうだったのか?」

「当たり前じゃない、ここには強敵が沢山いるんだから、

私達は過剰なくらいに若さをアピールしないと対抗出来ないのよ!」

「わ、分かった、分かったから、スカートの丈を調節してくれ」

「はぁ、仕方ないわね、ちょっと待ってなさい」

 

 詩乃はそう言って、いつも通りのスカート丈に戻した。

 

「はい、いいわよ」

「お、おう、サンキュー………って、詩乃、隠れてない、隠れてないから!」

「嫌よ、これ以上下げろと?そんな格好悪い事出来る訳がないじゃない、

私に申し訳ないと思うなら、根性を出して自力で立ちなさい」

「くっ………」

 

 八幡は頑張って晶を背負ったまま立ち上がろうとしたのだが、

間の悪い事に、丁度そこに唯花と出海がやってきた。

 

「八幡さん、そろそろ私の対戦相手を………」

「うわっ、お、お前達もか!」

 

 八幡は慌てて顔を背け、立ち上がる事が出来なくなった。

 

「お前達って、何が?」

「ス、スカートだ、スカートを直せ!」

 

 二人はぽかんとしながら詩乃の顔を見た。

詩乃は肩を竦めながら自分のスカートを指差した。

 

「やっと気付いたみたいよ」

「「あ~」」

 

 それで二人もスカートの丈を本来の長さに戻した。

もっとも詩乃同様、今の八幡の位置からは丸見えだ。

 

「八幡ったら、もっと長くしろって言うのよ」

「え、それは女子高生的に絶対無理」

「さすがに私もそれは………」

「お前達の感覚はどうなってるんだよ!?」

「え~?階段とかじゃ、ちゃんと気をつけてるし?」

「別に八幡さんに見られても、どうって事は………いや、まあ恥ずかしいけど」

「お前達もちょっとはラキアさんやプリンさんを見習え!」

 

 確かにラキアのスカートは長い。プリンも世代的に、

どちらかというと長いスカートを着用している。

丁度その時、晶が八幡を解放してくれた為、八幡はホッとして立ち上がり、振り返った。

 

「ラキアさん、助かりました………って、二人とも、やめて下さい!」

 

 見ると晶と小春が共にスカートをたくし上げており、八幡は慌ててそれを止めた。

 

「むぅ」

 

 そう拗ねる晶に八幡は慌てて弁解した。どうやら晶が何を言いたいのか悟ったらしい。

 

「別に見たくないとかじゃなくてですね、俺は常識の話をしてるんです!」

「ちぇ、残念」

「残念とか言わないで下さい、プリンさん!」

 

 八幡は何とか二人を宥め、詩乃達のスカートを見下ろして、何も見えない事を確認し、

コホン、と咳払いをしつつ、露骨に話を変えた。

 

「さてアスモ、勝負の時間だ」

「「勝負って?」」

 

 事情を知らない詩乃と唯花がそう尋ねてくる。

 

「おう、アスモと俺の代理がゲームで対戦して、

負けた方が勝った方の言う事を何でも一つきくっていう約束だ」

「え、本当に?」

「おう、本当だ」

「アスモ、本当なの?」

「あ、えっと………う、うん、

私の知り合いの女性が相手だって聞いてたから、まあいいかなって」

「なるほど」

 

 ここにいる中で、晶と小春の腕前を知っている者は八幡以外にいない。

なので詩乃は、まあそれならいいのかなと考えてしまい、

八幡が負けた時の事ばかり考えていた。

それは唯花と出海も同様であり、余裕なのは八幡ただ一人であった。

 

「ふんふん」

 

 その時晶が八幡の袖を引っ張った。すぐに小春が通訳する。

 

「八幡君、ラキアが、その条件は聞いてないって」

「ああ、いや、エロい要求とかはもちろんしませんよ、この前のイベントの件があったから、

いざという時にこいつを無理やりうちに引き抜けるように、

今から下工作をしてるみたいな、そんな感じだと思って下さい」

「むふっ」

「なるほど、それなら任せて、だってさ」

「助かります、ラキアさん」

 

 どうやら晶もこの前のイベントの件については怒りを感じていたらしく、

同時に巻き添えとはいえ、明確に狙われたアスモゼウスの事も心配していたようで、

その八幡の考えを認め、やる気に満ちた表情で頷いてくれた。

 

「それじゃあ何で対戦するか決めよう、アスモ、好きなゲームを選んでいいぞ」

「う、うん、その前に何があるか見させてもらっていい?」

「確かにそうだったな、自由に見て回ってくれ、ここまで集めるのは凄く大変だったからな」

 

 一応八幡は、もし出海がシューティングゲームを選んだ場合、

自分かもしくは小春に任せて素直に負けるつもりでいた。

春雄と晶はシューティングが苦手だと言っていたし、小春もそれほど得意ではないと、

以前言っていたのを覚えていたからだ。

昨日の経験からして、出海のシューティングゲームの腕前はとても八幡が敵うものではなく、

故に出海がシュ-ティングゲームを選んだ時点でほぼ負けが確定するのだ。

なので今回の勝負に関しては、条件は互角だと言える。

 

「うわ、うわ、これもあるんだ、ってこれ、実在したんだ、初めて見た!」

 

 出海はとても楽しそうに詩乃と唯花と一緒に部屋を回っており、

晶と小春もここに入るのは今日が初めてだった為、

懐かしいね、等と言いながら同様に部屋を回っていた。

残された八幡は、萌郁と一緒に設置されたゼロ円自販機で飲み物を買い、

そんな五人を微笑ましい物を見る目で眺めていた。

 

「そういえば萌郁はゲームは得意なのか?」

「………多分普通?あんまりやった事ない」

「そうか、それじゃあ後で何かやってみようぜ」

「うん、やり方を教えて欲しい」

「もちろんだ、任せろ」

「………ちょっと楽しみ」

 

 相変わらず口下手な萌郁であったが、以前よりは話してくれるようになっており、

頻繁に笑顔も見せてくれるようになっていた為、八幡は密かに喜んでいた。

 

「ところで私ももう少しスカートを短くした方がいい?」

 

 見ると萌郁が下着が見えるほどスカートをたくし上げており、

八幡は慌てて手を伸ばし、萌郁のスカートを元に戻した。

 

「いや、今のままで十分かわいいからそのままでいい」

「そう」

 

 淡々と答えながらもその萌郁の声は嬉しそうであった。

 

 やがて遠くから出海の声が聞こえてきた。

 

「うん、やっぱりこれにしようかな」

 

 八幡達はそちらに向かい、晶達もそこに向かった。

到着してみると、出海が選択したのは、

かつて春雄と晶が全国大会で対戦したという、スーパーストリートファイターIIXであった。

 

(よし!)

 

 八幡は内心ガッツポーズしたが、そんな態度はおくびにも出さない。

 

「よし、ラキアさんがお前の相手だ、どっちが勝っても恨みっこ無しだぞ」

「うん、それでいいよ」

 

 このゲームは実は出海にとっても一番得意なゲームであった。

そして八幡達が見守る中、ついに出海と晶、二人の勝負が始まった。




暫定1000話が、三人娘のパンツに始まり萌郁のパンツで終わってしまうとは………

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