ハチマンくんとアスナさん   作:大和昭

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第1016話 参加しますか?

「近いうちにまた社乙会があるんですか?」

「ええ、多分クリスマス会の後にイベントが始まって、

それが終わったら忘年会があるでしょう?

そこまでいっちゃうともうスケジュールに余裕がなくなるから、

今のうちに社乙会としての忘年会をやっちゃおうと思うの」

「確かにそうかもですね」

「という訳で、今週末を目安にメンバーに連絡を回すわ」

「はい、お待ちしてますね」

 

 こうして社乙会の開催が決まり、薔薇は仕事の合間を縫って、

ACSを使い、メンバー達に招待メールを送った。

 

「これでよし、と。後は口頭で………」

 

 薔薇はそう呟くと、隣で仕事をしている南とクルスに話しかけた。

 

「二人とも、ちょっといい?」

「あ、はい、どうかしましたか?室長」

「二人とも、今週末に社乙会の忘年会をやるけど参加出来る?」

「「もちろん参加で!」」

 

 二人は即答し、参加の意思を表明した。

 

「うんうん、そう言ってくれると思ってたわ、それじゃあ南、

遠くにいる人達が、社乙会のアドレスに参加の可否をメールしてくると思うから、

たまにそっちのチェックもお願いね」

「分かりました!うちにお任せを!」

 

 南は秘書として、自分の事を私と呼ぶように気をつけているのだが、

こういう時はたまに昔の言い方が出てしまう事がある。

そういう時に指摘してくれるよう、南はクルスに頼んであった。

 

「南、一人称」

「あっ、また出ちゃってた?ありがとうクルス」

「ううん、どういたしまして」

 

 そんな二人を微笑ましく思いながら、薔薇は立ち上がった。

 

「ふふっ、私はちょっとスカウトに行ってくるわ」

「スカウト?誰か新規加入するんですか?」

 

 第八回時点での社乙会のメンバーは十四人。

薔薇小猫、相模南、間宮クルス、折本かおり、仲町千佳、岡野舞衣、朝田詩乃、雪ノ下雪乃、

由比ヶ浜結衣、三浦優美子、一色いろは、栗林志乃、黒川茉莉、双葉理央である。

その後に桐生萌郁、川崎沙希、秋葉留未穂、レヴェッカが加わり、

今日までで、既に第九回から第十一回までの社乙会が開催されていた。

 

「最大で八人ね。もう声をかけて、今回加入が確定しているのが六人、

ただしそのうちの三人はまだ来れるか分からないわ。

そして残りの二人には、今から声をかけてくるつもり」

「うわ、一気にそんなに!」

「凄い………」

「という訳でクルス、この六人をリストに加えておいて頂戴」

「分かりました………ああ、なるほど」

 

 クルスはそのリストを見て、薔薇が来れるか分からないと言った者が誰なのか理解した。

そこに書かれていたのは、紺野藍子、紺野木綿季、小比類巻香蓮の三人はいいとして、

残りの三人は、篠原美優、霧島舞、そして神崎エルザだったのである。

南もそれを覗きこんで、ああ、と呟いた。

 

「北海道組とエルザさんは確かになんとも言えないね」

「まあそうは言ったものの、今回はエルザは絶対に来ると思うけどね」

「そうなんですか?」

「ええ、今回は八幡の着替えシーンの下着姿の盗撮動画が公開されるのよ」

「えっ、それって………」

 

 犯罪じゃ、と南が言いかけたのは当然だろう。

普通の人の感覚だと、それは明らかに犯罪であり、

南は八幡の周りだと、一、二を争う常識人だったからだ。

だがクルスはそうではなく、南は隣から荒い息遣いが聞こえてきた為ギョッとした。

 

「は、八幡様の着替え………生パンツ………はぁ、はぁ………」

「ちょ、ちょっとクルス、クルスってば!うぅ、室長、それはさすがにまずいんじゃ………」

 

 南は頭を抱え、これはさすがに止めないといけないかなと思ったが、

そんな南に薔薇が諭すようにこう言った。

 

「いい南、ソレイユではセクハラは即解雇まであるけど、

女子社員が八幡にセクハラをしても無罪放免よ」

「えっ?あっ、た、確かに………」

 

 以前薔薇が冗談めかして理央に言ったその言葉は、

女子社員の中では実は裏ルールとして深く浸透していた。

さすがに表立って八幡にセクハラする者はいないが、

大体の事は許されるという風潮が広がっているのだ。

ちなみにその旗を先頭に立って振っているのは誰であろう、陽乃である。

 

「た、確かにそうですね、それならいいのかな………」

 

 これで納得してしまう辺り、南もかなりソレイユに毒されている。

 

「それじゃあ私は行ってくるわ、といっても隣の部屋だけどね」

「隣?ああ、そういう………」

 

 隣の部屋は八幡の部屋である。

 

「南、多分もう乙女達からの連絡が殺到してきてるはずだから、チェックをお願いね」

「あっ、はい!ほらクルス、起きてってば!」

「う、う~ん………はっ、私は一体何を………」

「リストの入力をお願い、私は参加の可否をチェックするから!」

「そうだった、任せて!」

 

 そして薔薇は出ていき、クルスは隠しファイルからメンバーリストを呼び出して、

そこに六人の名前を追加した。

南はメーラーを開き、社乙会のアドレスのメールを確認している。

 

「本当だ、メールがいっぱい………」

 

 南は目を見開き、そんな南にクルスは言った。

 

「オーケー、参加の可否をお願い」

「う、うん、順番に読み上げるね。

雪乃は、『別に八幡君の下着に興味がある訳じゃないけど、喜んで参加します』だって」

「珍しいツンデレ乙?」

 

「優美子は、『藍子、やるじゃん。もちろん参加で』って………、

そっか、盗撮したのって藍子だったんだ」

「グッジョブ、藍子!」

 

「結衣も参加だね、『えっ?何それ恥ずかしい………でも参加します』」

「ムッツリか」

 

「いろはちゃんはっと………『何ですかそれ、ハッ!?先輩はわざと私に裸を見せて、

責任をとれと脅すつもりですね!私がそんな罠にはまると思われたなんて心外ですが、

でも参加しますごめんなさい』」

「いろはってこの芸風をやめれば高校の時ワンチャンあったんじゃ」

 

「あ、志乃さんと茉莉さんは無理みたい、任務で海外だって………」

「いつも日本を守ってくれてありがとう、お二人に敬礼!」

「け、敬礼!」

 

 クルスがふざけた様子も見せず、真面目な口調でそう言った為、南もビシっと敬礼した。

 

「かおりは………『何それウケる、でも行きま~す』だって』」

「いや、ウケねえから」

「あっ、その八幡の真似、凄く似てる!」

「ふふん、日々のストー………観察の賜物よ!」

「今何て言いかけた!?」

「気のせいだって、ほら、続き続き」

 

「う、うん、え~と、千佳もオーケーみたい、

『私なんかが見てもいいものなのかな?いいなら参加をお願いします』だって。

はぁ、何か安心するなぁ………」

「千佳は毎月八幡様と、合法的にデートが出来て羨ましいよね」

「うん、それは本当に羨ましい」

 

「沙希は………う~ん、これ、多分参加だよね」

「何て?」

「えっと、『高校の時の事をそれでチャラに出来るかどうか、試してみてもいいかな』、

って、これ、何の事かな?」

「ああ、確か高校の時、八幡様は沙希の黒のレースのパンツを、

思いっきり下から覗き込んだ事があるって聞いた」

「そうなの!?」

「まあ参加でしょ、沙希も丸っと」

 

「あ、レヴィも無理だって、その日は社長と一緒に関西に出張だって」

「あっ、そういえば結城病院の知盛さんに大事な話があるとか………」

「もしかしてまた誰か治るのかな?」

「そうだといいね、絶対に全員助けたいし」

「だね!」

 

「舞衣も無理みたい、ああ~、同じ日にG女連の打ち上げがあって、

さすがにそっちに行かないといけないんだって」

「そっか、それじゃあ仕方ないね」

 

「理央ちゃんも参加だね、『参加します』ってシンプルだなぁ」

「きっと恥ずかしかったんでしょ、きっと心の中では妄想が捗ってるはず」

「理央ちゃんにひどい風評被害が!?」

「ううん、あの子は相対性妄想眼鏡っ子だから、基本脳内はピンクのはず」

「そ、そうなんだ………」

 

「あ、詩乃ちゃんだ、『喜んで参加させて頂きます』………え、何かイメージが違う」

「詩乃は八幡様以外には常識人だから………もし本人が相手なら、

『し、仕方ないわね、行ってあげるから八幡はちゃんと私をもてなすのよ』くらいは言う」

「あ~………た、確かに」

 

「フェイリスは相変わらずだねぇ、

『まさか生きている間にホーリー・ランジェリーを見る事が出来るなんて驚きニャ!

万難を排して是非ともその儀式に参加しますニャ!』だって」

「フェイリスはうちじゃ、一、二を争うお嬢様なんだけどなぁ………」

 

「萌郁さんもオーケーみたい、返事は『行く』だけだけど」

「萌郁さん、でも最近は結構話してくれるようになったよね」

「うん、私、今度一緒に買い物に行くんだ!」

「そうなの?」

「クルスも一緒に行く?」

「うん、行く行く、萌郁さん、たまに凄くかわいいから好き」

 

「あっ、香蓮からも返事が来た、え~と、『ちょ、ちょっと恥ずかしいけど、うん、

出来れば参加したいです』だって」

「こっちはムッツリじゃなくて本当に恥ずかしがってるんだよね、

さすがは八幡様のお気に入り、ぐぬぬ………」

「クルスだってそうじゃない、私は出遅れちゃってるから二人が羨ましいよ」

「その自覚はあるけど、その中でもやっぱり序列があるのよ、

一番が明日奈として、二番は優里奈、三番は多分藍子と木綿季だけどまあ、

この辺りは八幡様が保護者をやってるから仕方ないね。

次が詩乃、その次が香蓮で私はその次かな、その後ろは多分理央だね。

その次に雪乃や結衣、優美子、いろはが来るのかな、この四人は正直未知数。

フェイリスも被保護者だからその次くらいにに入るね。

社長はちょっと分からないけど、多分番外」

「そうなんだ………うわぁ、私も頑張らないと」

「うん、頑張れ南」

 

「ところで藍子と木綿季にはメールを送ってないみたいなんだけど、

これって参加でいいんだよね?」

「そうなの?まあでも藍子の持込みは確定みたいだし、丸でいいね」

「だね!二人も参加で!」

 

「あっ、舞さんも来れるって!

『何ですかその素敵イベント、絶対に行きます!』」

「舞さんは八幡様の大ファンだから、こういう時の為にきっとお金を貯めてるはず」

 

「美優も来るって、二人とも頑張るなぁ。

『是非お願いします、リーダーは全裸ですか?全裸ですよね!?』って、

下着までって言ってるのにね」

「美優は欲望がだだ漏れすぎ………まあエルザと同じ人種だから仕方ないか」

「あ、あは………だね」

 

「き、来たああああああ!エルザさんも来るって」

「仕事は大丈夫なのかな?」

「『はぁ、はぁ、薔薇ちゃん、私をあんまり興奮させないでよぉ………、

今から四徹で年内の仕事を全部終わらせるから待っててね!』だって………」

「八幡様の為なら当然かな」

「当然なんだ………」

 

 こうして社乙会の忘年回の参加者が決定される事となった。




女子社員が八幡にセクハラ云々の話が出たのは628話ですね!

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