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「ん、んん………?」
次の日の朝、一番最初に目覚めたのは美優であった。
寝落ちすると早くに目覚めてしまう法則である。
「二人ともまだよく寝てるなぁ………」
美優はぽりぽりと頭をかきながら、窓の外がまだ暗かった為、
もう少し寝ようと再び横になった。
その視界にかなりはだけぎみな香蓮の胸が飛び込んでくる。
「むむっ、けしからん、でも胸自体は私の方があると思うんだよなぁ………」
美優はそう言いながら自分の胸を揉み、続いて香蓮の胸に手を伸ばした。
ぽよん。
その胸は柔らかく、美優は少し変な気分になったが、
その瞬間に香蓮がこんな寝言を言った。
「ん………八幡君、駄目だってばぁ………」
「ずががががああああああああああん!」
美優は驚愕のあまり目を見開いた。
「えっ?えっ?何今の寝言、もしかしてコヒーは日常的にリーダーに胸を揉まれている!?」
もちろんそんな事があるはずもなく、
香蓮はただ夢の中で八幡ときゃっきゃうふふしており、
たまたまタイミングが合って寝言を言っただけなのだが、
それは美優にとっては誤解されても仕方がない、神がかったタイミングであった。
「ぐぬぬぬぬ、今すぐ叩き起こして問い詰めたい、問い詰めたいが………」
そう呟きながら、美優は香蓮の寝顔に目を向けた。
香蓮はとても幸せそうにすやすやと寝ており、美優は少し顔を赤くしながら再び呟いた。
「ま、守りたい、この寝顔………」
結局美優は香蓮を起こすのはやめ、
何となく香蓮の胸を大きくはだけさせるに留めた。この辺りの行動に全く理由はない。
そして美優は今の衝撃ですっかり頭も冴えてしまった為、顔を洗おうと思い、外に出た。
「まだ六時半か………でもまあリーダーもそろそろ起きる時間だろうし、別にいいか」
ちなみに八幡が起きるのは七時である。
今日は学校があるので、八時にはここを出る予定だ。
その時玄関の扉がガチャッと開く音がした。
「お?」
「あ、美優さん、おはようございます」
「優里奈ちゃん、おはよ~!」
そこには手に中が見えないカゴを手にした優里奈が立っており、
二人はやや声を潜めながらそう挨拶を交わした。
「随分早起きなんですね、まだ寝てると思ってました」
「いやぁ、昨日は寝落ちたんだけど、そのせいか早くに目が覚めちゃってさぁ、
仕方ないからコヒーのおっぱいを揉んでた」
「………そ、そうですか」
優里奈は、相変わらず美優さんは自由だなぁと思いながら、慌てて自分の胸を隠した。
何故なら美優が、優里奈の胸に手を伸ばしてきたからだ。
「ちっ、残念」
「もう、私の胸まで揉もうとしないで下さい!」
「ごめんごめん、相変わらず立派だなって思ってさ~」
美優はそう言いながらも手をにぎにぎさせ、続けてこう尋ねてきた。
「ちなみにリーダーは、優里奈ちゃんのおっぱいを揉んだりはしてくれないの?」
「えっ?そうですね、残念ながら、そういうイベントはまったく発生しないんですよね」
「へぇ、よく我慢出来るよね、リーダーは理性の化け物だったり?」
「ハル姉さんは、『昔の八幡君は、自意識の化け物だったんだよ』って言ってましたね」
「自意識………う~ん、よく分からないな」
「ですね」
二人はそう言って苦笑した。
「で、私は早めに顔を洗って先に化粧をして、
コヒーに差をつけてやろうと思ってたんだけど、優里奈ちゃんは?」
「もうすぐ八幡さんが起きるんで、先に洗濯をしてから朝御飯の用意ですね」
「それだとリーダーが起きちゃわない?」
美優はひそひそと優里奈にそう囁いた。美優はこういった気配りも出来るようだ。
「あ、それは大丈夫なんですよ、美優さん、ちょっとこっちに」
「お、おう」
優里奈は美優の手を引いて、八幡が寝ている方に連れていった。
「ほら、あれ」
「お?何あれ?」
そこに横たわっている八幡は、耳まで隠れるアイマスクのようなものを装着していた。
「ソレイユってファンタジー系の服飾関係も自前で作ってるじゃないですか、
その付き合いの関係の業者さんにもらった、
外からの音もほとんどカットしてくれるアイマスクらしいですよ。
耳の所に小型の薄いマイクが仕込まれてて、目覚まし機能もついてるんですよ」
「えっ、何それ、私も欲しいんだけど」
「多分言えばもらえると思いますよ、ふふっ」
優里奈はそう言って微笑んだ。
「なるほど、だからちょっとやそっとの音じゃ起きないと」
「はい、フライパンで卵を焼いてても起きないんですよ」
「でもこれじゃあ、リーダーの寝顔がよく見えなくてちょっと残念だよね」
「ですね………さて、それじゃあ先に洗濯をしちゃいますね」
「あ、私も手伝う!」
二人はそう言いながら脱衣所へと向かった。
「えっと、美優さんの下着は色が濃いからうちの洗濯機で別に洗うとして、
残りはこっちで一緒に洗えばいいかな」
優里奈はそう言いながら、持参したカゴの中から洗濯ネットを取り出し、
てきぱきと洗濯物の仕分けをしていった。
「あ、ごめんね、気を遣ってもらっちゃって」
「いえいえ、色が移ったら困りますから。
私の部屋とここで洗濯機が二つあるから、手間も一度で済みますしね」
優里奈は同時にそのカゴに入れて持ってきた自分の洗濯物も取り出し、
一緒に洗濯機へと放り込んだ。
「レースとかも付いてないし、残りは一緒でいいですね」
そう言いながら優里奈は、残りの洗濯物も容赦なく洗濯機へと放り込んだ。
その中には八幡の下着もあり、美優は大きく目を見開いた。
「リ、リーダーのパンツも一緒に洗うんだ!?」
「ふふっ、まあ誰も嫌がったりしないですからね」
「むむむむむ、要するに一緒に洗うのは、色が薄くてレースとかが付いてない奴って事?」
「ですね、でもまあ例えば白のレース付きとかは、ネットに入れて一緒に洗いますけど」
「そこまで考えてなかった………」
「え?」
突然美優がそんな事を言い出し、優里奈はきょとんとした。
「そこまで、とは?」
「私は今まで、いつリーダーに見られてもいいように、
派手なパンツばかり選んできたんだけど、それだと今日の場合、
私のパンツだけリーダーのパンツと一緒に洗ってもらえないって事じゃない?」
「まあそうですね」
「でもシンプルなパンツなら一緒に洗ってもらえる!
これはまさに目から鱗!コロンブスの卵!
よし、今日はそれを狙ってそういうのを買う事にするよ!」
「あ、あは………頑張って下さい」
「おうよ!」
こうして美優達の今日の予定がまた一つ増えた。
「でもそれだとリーダーに衝撃を与える効果が減りそうなんだよなぁ、痛し痒しだな」
「いえいえ、そんな事はありませんよ、美優さん」
「………というと?」
「派手な下着とシンプルな下着だと、もしうっかり見てしまった場合、
八幡さんが目を背ける早さは派手な下着の方が全然早いんです」
「な、何だと!?」
美優はその言葉に衝撃を受けた。
「多分、見えた瞬間に、やばいって思っちゃうんでしょうね、
なので少しでも長く見てもらいたい時は、シンプルな下着の方が効果的です」
「分かった、アドバイスありがとう優里奈ちゃん!」
美優はそう言って優里奈の手をガッチリと握った。
「いえいえ、どういたしまして」
「よし、それじゃあ時間も無いし、洗濯物をささっと片付けちゃおう!」
「ですね!」
二人はそのまま洗濯を終え、仲良くキッチンに立った。
丁度その頃八幡がのそりと起き上がった。時刻は丁度朝の七時であった。
「お、おう、二人とも、おはよう」
「おはようリーダー!」
「おはようございます、八幡さん」
「………美優がキッチンに立ってるのは珍しいな」
「ふふん、惚れ直した?」
「いや、直したも何も惚れてた事が無いからな」
「がああああああああん!」
美優はその言葉にショックを受けるでもなく、口だけでそう言うと、
そのまま機嫌良さそうに配膳を進めていく。
その姿を微笑ましく見ていた八幡は、美優は本当に落ち着いてくれたんだなと感動したが、
当然そんな事はなく、ここまでの流れはあくまでたまたまである。
「よしリーダー、そろそろ二人を起こしてきてもらっていい?」
「え?いや、さすがにそれは………」
「大丈夫大丈夫、むしろその方が二人も喜ぶって、
さすがにこんな時期だし二人とも、ちゃんとパジャマを着込んでるからさ」
「そ、そうか?そういう事なら………」
この時点で美優は、自分が香蓮の胸を思いっきりはだけさせた事を忘れていた。
その事を思い出したのは、寝室から八幡が飛び出してきた時である。
「お、おい美優、お、お前な!」
「ん、リーダー、どしたの?」
「か、香蓮の、む、胸が………」
「………………あっ」
その八幡の言葉に美優は思いっきり気まずそうな表情をした。
「おい美優、何か心当たりがあるって顔をしてるな」
「い、いや、何もないよ?本当だよ?」
「その言い方があからさまに怪しい」
そのまま八幡に詰め寄られた美優は、正直に自分が何をしたのか白状した。
「そういう事か、この馬鹿が!」
「ぎゃんっ!」
美優は八幡に拳骨を落とされ、嬉しそうな悲鳴を上げた。
何故嬉しそうかというと、昨日からここまで一度も八幡に怒られていなかったからである。
「ありがとうございます!」
「何故お礼………」
「そ、それじゃあ私が二人を起こしてくるね!」
美優はそう言って寝室に飛び込み、しばらくして三人が寝室から出てきた。
香蓮は恥ずかしそうな顔をしていた。どうやら美優が胸の事について説明したのだろう。
「八幡さん、おはようございます!」
「ああ、舞さん、おはよう」
「あ、あの………」
「お、おう、おはよう香蓮」
香蓮はぷるぷる震えながら胸を押さえており、美優はそんな香蓮の頭を撫でた。
「良かったな、コヒー」
「ちっとも良くないべさ!」
「「おお」」
すっかり東京に慣れ、あまり北海道弁を話してくれない香蓮のその言葉に、
八幡と優里奈はそう感動したような声を上げ、香蓮は益々赤くなった。
「う、うぅ………」
美優達の東京での初日は、こんなラブコメな感じで始まったのだった。