ハチマンくんとアスナさん   作:大和昭

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ゴールデンウィーク中に結構ストックが出来たので、明日は朝八時に二話投稿します!


第1050話 頑張るお針子達

 十二月二十四日は、ソレイユ主催のクリスマス・パーティーであるが、

実はこの集まりに参加する女性達は、ほぼ全員がサンタの格好をする事が決定している。

その理由はとても簡単で、招待状と共に、サンタの衣装のリストが送られていたからだ。

そこにはソレイユからのクリスマスプレゼントとして、

一人一着無料でプレゼントと書かれており、

事前に選んだ衣装が、二十日に各自の所、もしくはソレイユに届くシステムとなっていた。

衣装はかなり種類があり、他人と被る可能性はそこまで高くはなかったが、

一部の者達は、八幡により良い印象を与えようと、せっせと改造に勤しんでいた。

それで多くの女性達から白羽の矢が立てられたのが、沙希やまゆりである。

さすがに量が多い為、二人はかなり苦労する事となったのだが、

その分の報酬はちゃんともらっている為、

二人にとってはとてもいい収入源となっていたのである。

 

「まゆしい、そっちはどう?」

「今終わったよ、それじゃあ沙希さん、これをお願い」

「オッケー、任せて」

 

 二人は今、ソレイユ社内の一室で、共同作業を行っている。

これはたまたま事前に事情を知った八幡が、二人の為に別々に部屋を準備してくれたのだが、

その過程で二人で一緒に作業をすれば、仕事がはかどる事が分かり、

今こうして二人仲良くサンタ服の改造を行っていると、まあそんな訳なのであった。

今は片方の部屋は在庫置き場となっており、もう片方の部屋で作業が行われている。

二人は裁縫の話で盛り上がりつつ、楽しく作業が出来ており、

確かに一人で淡々と作業をするよりも、全然効率よく作業は進んでいた。

 

 そして迎えた二十二日、多くのサンタ服が、今日明日で納品される事になっていた。

 

「サキサキ、いる~?」

「サキサキ言うな」

 

 そこに入ってきたのは明日奈であった。

こうして個人で完成品を持ちに来る者が多くおり、部屋は意外と慌しい。

 

「あっ、まゆしい!トゥットゥルー!」

「トゥットゥルー!」

 

 二人はそう言って手を上げて挨拶をした。

沙希は、これがまゆりオリジナルの挨拶なのだと今では理解している為、特に驚かない。

それよりも沙希が驚いたのは、明日奈の順応性であった。

まゆりには『トゥットゥルー』、結衣には『やっはろー』など、

明日奈はそういった挨拶にすぐに順応し、相手に合わせてそれを使い分けるのだ。

 

「明日奈って、そうやって相手に合わせるの、得意だよねぇ」

「え~?そうでもないと思うけど」

「まあ私から見たら、なんだけどさ」

「ああ、サキサキと比べるとそうかもしれないけどね」

「だからサキサキ言うな」

「じゃあカワサキサキ?」

「確かに合ってるけど八幡の真似すんな」

「あはははは」

 

 そんな会話を交わしながら、沙希は明日奈に完成したサンタ服を渡した。

 

「それじゃあこれ、明日奈の分ね。もっともスカート丈をちょっといじっただけだけど」

「うん、ありがとう!」

「まあ明日奈は素材がいいから、元々オフショルダーなそれで十分魅力が出るよね。

後白のガーターベルトがいい感じ、というか足長すぎ」

「やだもう、お世辞が上手いんだから」

「いや、お世辞じゃないし、というかちょっと羨ましいし」

 

 あまり自分の体型を気にしない沙希だったが、

やはり明日奈やクルス、優里奈クラスの体型は憧れなのである。

スラッとしていて出るところは出ている、もっともその事を口に出すのは本人の前でだけだ。

 

「ついでに里香と珪子の分ももらってくね」

「あ、ひよりと芽衣美の分もお願いしていい?」

「あ~そっか、その方がいいね、それじゃあキットを借りて、そこに積んじゃうよ」

「ごめんね、ありがと」

 

 その四人の分は少し胸の部分を底上げする程度しかしていないので、

作業自体はあっさりと終わっていた。

芽衣美の参加が決まったのが直前だった為、ちょっとバタバタしただけである。

 

「それじゃあありがとう、また当日にね!」

「うん、またね」

 

 明日奈が去っていった後も、続々と他の女性陣が訪れてきていた。

 

「ハイ、沙希さん、もう出来てる?」

「あっ、詩乃、これさ、言われた通りにやったけど、

本当にここまでスリットを入れちゃって良かったの?」

「大丈夫大丈夫、これで八幡の目を釘付けにしてやるから」

「それならいいけど………」

 

 その詩乃の頼んだサンタ服は明らかに過剰なスリットが入っており、

危機感を覚えた沙希は、八幡にもらった新兵器を取り出した。

これは事前に服のデータを入力しておいて、カメラで対象の人物を捉えると、

その姿がその服を着た状態で表示されるという優れ物の機械である。

いずれ売り出すつもりはあるが、利便性をもっと向上させ、

有料アプリ化すべく、今スタッフ達が奮闘中なのである。

一番の問題は盗撮関連なのだが、それさえ解決されればかなりのヒット商品になるだろう。

 

「これを見てみて、どう?」

「あ~………」

 

 詩乃はそれを見て、一瞬迷ったような顔をしたが、

おもむろに自らのスカートをまくり上げ、どこまで見えるのかのチェックを始めた。

 

「ここか………うん、これなら大丈夫、ありがとう、沙希さん、まゆり」

「大丈夫ならいいんだけど」

「うん、下着を変えればいけるから、それじゃあまた!」

「あ、そ、そう」

 

 沙希が今目の前で見た詩乃の下着はかなり大胆なものだったが、

それ以上の物を持ってるんだ、と沙希は少し赤面した。

続けて結衣、優美子、いろはが尋ねてくる。

 

「やっはろー!」

「や、やっはろー………結衣、今回はかなり攻めたね」

「うん、でもこれくらいしないと、ね?」

「顔を赤くしてそう言われても、方向性が違う私には何ともだけどね」

 

 結衣が選んだのは胸元の露出が大きく、思いっきりヘソ出しの、

何というか、風俗店で貸し出しているようなデザインのサンタ服であった。

 

「うん、大丈夫大丈夫」

 

 詩乃と同じく画面で見せてもらった結衣は、笑顔でそう言った。

確かにこうして見ると、案外平気に見えてしまうから不思議だ。

普段着る服と違って、布地が厚いせいなのかもしれない。

 

「サキサキ、私のは?」

 

 その横から優美子がまさかのサキサキ呼ばわりをしてきた。

 

「あんたにサキサキって言われるのって違和感しかないよね、ユミユミ」

「ユミユミ言うな」

「それじゃあはい、これ、『女王様風のサンタ服』、かっこ笑い」

「………かっこ笑いとか言うなし」

「いや、らしいなって思って」

「沙希せんぱぁい、私のはどれですか?」

「いろはのはこれ、言われた通りに出来てると思うけど」

「えっと………うわぁ、やっぱり沙希先輩って凄いですね!」

「いや、『総武高校の制服風サンタ服』とか言い出すあんたの方が凄いわ………」

「えっ、何それ」

「うわ、ちょっとやられた感がある」

「ふふん、アイデアの勝利です!」

 

 優美子といろはも画面で出来栄えを確認し、三人娘はきゃっきゃ言いながら去っていった。

それと入れ替わりで、今度は紅莉栖がまゆりを尋ねてくる。

 

「まゆり、沙希さん、こんにちは」

「あ、紅莉栖ちゃん、今丁度完成したところだよ」

「真帆先輩の分も一緒にもらっていい?」

「うん、もちろんだよ!って言っても二人のは普通でサイズの微調整だけだったから、

凄く楽だったんだけどね」

「他の人って結構いじったりしてるの?」

「う~ん、どうかなぁ?」

「さっきいろはが、高校の制服風なサンタ服を持っていったわよ」

「うわ、それって私のこの服と同じ発想?」

「え?あ、その格好ってそういう事なんだ?」

「うん、自分で改造したのよね」

「へぇ、センスいいなって思ってたけど、それってどこかの制服だったんだ」

 

 紅莉栖は常識人な為、沙希も会話をするのが楽そうである。

 

「あっ、ティーナ!」

「ティーナ言うな!」

 

 このタイミングでまさかの神崎エルザが登場した。

 

「ごめんごめん、サキサキ、今回は変な頼みをしちゃってごめんねぇ?」

「あ、いや、まあそれはいいんだけど………」

 

 神崎エルザのオーラに、沙希はやや押されていた。

ALO内とは違い、やはりリアルだと、その迫力は桁違いである。

 

「それじゃあはい、これ、確認してみて」

「どれどれ………」

 

 エルザはその場で躊躇い無く下着姿になり、上からそのサンタ服を着始めた。

 

「ちょっ………」

「ん~?大丈夫大丈夫、ちゃんと誰もいない事は確認しておいたから!」

「な、ならいいけど………」

 

 そしてその直後、その場に手足の生えたプレゼントボックスが出現した。

 

「エ、エルザが選んだのってそれ!?」

「うん、面白いでしょ?」

「確かにそうだけど………」

「しかもこれ、前が開くんだよ!」

「え、嘘、本気?頭は大丈夫?」

「もう、そんなに褒めても何も出ないよぉ?」

 

 どうやら今のはエルザにとって、褒め言葉だったようである。

 

「ほら」

「うわぁ………」

 

 紅莉栖のみならず、改造した沙希自身も、その姿に若干引いた。

そして同時に、これを見せられた時の八幡の怒りを想像し、エルザに同情した。

だが二人はすぐにその考えを翻した。何故ならエルザにとって、それはご褒美だからである。

 

((わざとか………))

 

 二人は同時にそう思いつつ、口ではまったく別の事を言った。

 

「ま、まあインパクトはあるよね、でも中身は水着にしようね」

「八幡の奴、絶対びっくりするわよ」

「うわぁ、うわぁ、凄く個性的でまゆしいはいいと思うな」

 

 まゆりだけが本気でエルザを褒めていたのは言うまでもない。

 

「それじゃあサキサキ、ありがとっ!」

「あ、待ってエルザ、ちょ、ちょっとここにサインをもらってもいい?

実はうちの弟が、エルザの大ファンでさ………」

「そうなんだ?任せて!」

 

 どうやら沙希の弟の大志はエルザのファンのようだ。

だが当然の事だが、沙希はエルザの真実について大志に一切説明していない。

エルザは沙希にサインを渡し、意気揚々と引き上げていった。

 

「それじゃあ私も戻るわね」

「うん、また当日にね」

 

 そして紅莉栖も去り、沙希とまゆりは再び作業に戻った。

それからも多くの者達が押し寄せ、その日は盛況のうちに幕を閉じた。




エルザさぁ………
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