ハチマンくんとアスナさん   作:大和昭

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第1085話 偶然の顔合わせ

 迎えた四日、八幡は来れないという事でキリトが指揮をとり、

ALOで、本格的に狩りが再開されていた。

 

「アスナ、ハチマンは今日はどうしたんだ?」

「えっとね、今日はフランシュシュのミニライブがあるらしくって、

マネージャー代行のハチマン君は、そっちに行かないといけないんだよね」

「えっ、あいつ、そんな事をしてるのか?」

「うん、マネージャーさんが怪我をしちゃったらしくてね、

丁度その場に居合わせたハチマン君が、自分がやるって志願したんだって。

あと、昨日は例の二人に、こんな絵も描いてもらったみたい」

 

 そう言ってアスナは昨日ハチマンに送ってもらった全員集合の絵をキリトに見せた。

 

「ほう?いい絵だな………なるほどなぁ、いいなぁ、ハチマン………」

 

 キリトは羨ましそうにそう言った。アイドルと一日中ずっと一緒にいられるのだ、

そう思うのも当然だろう。

 

「ふんっ」

 

 その会話を横で聞いていたリズベットが、キリトの足を思いっきり踏みつけた。

 

「ぎゃっ!な、何するんだよ、リズ!」

 

 痛くはないが、衝撃は伝わる為、キリトは悲鳴を上げ、リズベットにそう抗議した。

 

「決まってるじゃない、あんたが鼻の下を伸ばしているからよ」

「は、鼻………!?いやいや、そういうんじゃないって」

「じゃあどういうのよ」

「それはえっと………」

 

 キリトは言い訳しようとしたが、上手い理由を見つけられなかった。

 

「ふんっ」

「うわぁ!」

 

 そんなキリトの姿を見たリズベットが再びキリトの足を踏もうとし、

キリトはそれを慌てて避けた。

 

「何で避けるのよ、きっとやましい事があるのね」

「理不尽だ!」

「二人とも、次の敵が来るよ!」

 

 アスナにそう言われ、二人は表情を改めた。

 

「失点は戦闘で取り返しなさいよ」

「言われなくても!」

 

 全体的に実力が上がっている事もあり、

この日ヴァルハラを筆頭とする軍団は、実に二千体の敵を葬り、

その討伐数は遂に八千体に到達する事となった。

 

 

 

 一方その頃、七つの大罪を筆頭とする邪神狩りチームもまた、

順調に討伐数を伸ばしていた。

 

「う~ん、最初はどうなる事かと思ったけど、遂に八千まで到達したわね」

 

 アスモゼウスは伸びをして、近くにいた仲間にそう声を掛けた。

この日、合同レイドの討伐数は、遂にヴァルハラと並んでいた。

正月も真面目に討伐を行っていたせいだろう。

この辺りが、不特定多数による討伐の利点である。

中心となるギルドの参加人数が減っても、その分普段は参加しないギルドが、

クエストなど関係なく経験値目当てで参加してくる為、

一日の討伐数が大きく減る事は無いのである。

 

「中々いいペースよね」

「ああ、そうだな」

「まあこんなもんじゃね?」

 

 そう返事をしたのはハゲンティとオッセーである。その中身はヤサとバンダナだ。

単純にハチマンが連絡を忘れていた為、アスモゼウスにこの二人の話はまだ伝わっていない。

アスモゼウスは二人がロザリアの元部下の誰かだと認識した上で話しかけているのだが、

お互いハチマンの意向を受けて動いている事は知らず、

この組み合わせになったのはあくまで偶然である。

 

「んん………?」

 

 その返事にアスモゼウスは違和感を覚えた。

前にこの二人と話した時は、もっと自分にチヤホヤしてくれたはずだ。

だが今はあまり自分に興味が無いように見え、さてはこの二人、彼女でも出来たのかなと、

アスモゼウスはいかにも女子高生らしい発想をした。

だが事実は単純に、実際に目にし、言葉を交わしたアイドルのオーラに圧倒され、

本物かどうか分からないゲーム内の美女への興味を失っただけである。

その時グウェンが近くに来た。GWENNではなくGWEN、

要するに小人の靴屋のグウェンとしてのキャラである。

 

「ねぇ、アス………」

 

 グウェンはアスモゼウスにそう話しかけようとし、

隣に七つの大罪のメンバーがいるのを見て、途中で止めた。

 

「ううん、何でも………あ、あれ?」

 

 グウェンは何でもないと去りかけ、

そこにいるのがハゲンティとオッセーである事に気付き、

再び足を止め、躊躇いなくアスモゼウスに近付いてきた。

グウェンには、この二人の情報が伝わっていたのである。

 

「アスモ、討伐数はどこまで増えたの?」

「今日で八千体に到達したわよ」

「オーケー、ハチマンに報告しておく」

 

 そのグウェンの言葉にアスモゼウスだけではなく、ハゲンティとオッセーもギョッとした。

 

「ちょ、ちょっとグウェン、何冗談言ってるのよ」

 

 アスモゼウスは自分でも苦しいと思ったが、二人の手前、そうフォローした。

だがグウェンはその言葉に首を振り、三人に向かって言った。

 

「大丈夫、ここにいるのは全員味方」

「えっ、そうなの?」

「マジで?」

「まさか!?」

 

 その言葉に三人は当然驚愕する。グウェンが味方な事は知っていたが、

アスモゼウスが、もしくはハゲンティとオッセーが味方だとは思っていなかったからだ。

 

「………ちょっと離れた所で話そう」

 

 四人は休憩するという名目で移動し、車座で地面に座り込んだ。

 

「えっと、俺はヤサだ」

「俺はバンダナ」

「あっ、そういえばコミマで二人をどうとかって言ってたわね」

 

 名乗られた事で、アスモゼウスは漠然と事情を理解したらしい。

 

「そういう事だな、ところで二人はいつから………?」

 

 そう問いかけてきたのはハゲンティである。

その問いに最初に答えたのはアスモゼウスであった。

 

「えっとね、実は私、ヴァルハラのシノンとアル冒のヒルダと同級生なのよね。

その流れで文化祭の時に正体がバレちゃって、それ以来かな」

「ええっ!?アスモさんってまさかの高校生!?」

「マジかよ、プロじゃなかったのか………」

「ふふん、よく演じてるでしょ?」

 

 アスモゼウスはその豊満な胸を得意げに張ったが、

現実的に考えて、女子高生でそのクラスの胸を誇る者はそう多くない。

なので確率的に、実際は小さいのだろうと、ハゲンティとオッセーはそう思う事にした。

続けてグウェンが質問に答える。

 

「知ってると思うけど、私ってSAOサバイバーじゃない?

でも私さ、親のせいで帰還者用学校に通えないで、ずっと腐ってたの。

だけど先日ハチマンさんと出会って、

その支援で学校に通えるようになってさ、その時からかな」

「そっか、親のせいでそんな事に………」

「それは辛いよな………」

 

 その二人の反応に、アスモゼウスとグウェンは顔を見合わせた。この二人はこういう話に、

こんなに親身に答えてくれるような性格はしていなかったはずだからである。

 

「ヴァルハラ側に付いた事は知ってたけど、二人に一体何があったの?」

「おう、まあ聞いてくれよ。

俺達二人は、セブンスヘルっていうサークルで同人誌を書いてたんだけどよ」

「………実はハチマン兄貴がヴァルハラのメンバーを陵辱する系の作品を書いてたんだよな」

「そ、そうなんだ」

「それはまた………って、兄貴!?」

 

 そこからどうやったらハチマンを兄貴呼ばわり出来るようになるのか、

アスモゼウスは全く想像出来ず、混乱した。

グウェンも詳しい話はまだ聞いていないらしく、驚いている。

 

「まあ多分そのせいで俺達の正体がバレてさ………あっちにはロザリアの姉御もいるからよ」

「さっき言ってた通り、年末にコミマで兄貴に捕まっちまったんだよ」

「ふむふむ」

 

 アスモゼウスもグウェンもそうする事は知っていた為、それに関しては驚かなかった。

 

「その時兄貴が俺達にこう言ってくれたんだ、

『ソレイユの専属絵師になってみないか?』って」

「それは凄い」

「えっ、そうなの?二人ってそこまで絵が上手なの?」

「まあ、それなりに自信はある」

「ああ、俺達二人が組めば無敵さ」

 

 多少調子に乗っているきらいはあるが、二人はとてもいい顔でそう答えた。

 

「そっか、おめでとう」

「良かったわね」

「おう、ありがとな」

「兄貴にはもう頭が上がらないぜ、こんな俺達に凄く良くしてくれるんだ」

 

 その表情からは、ハチマンへの本気の敬意が感じられ、

アスモゼウスとグウェンは改めてハチマンの事を凄いと思った。

 

「今度ALOのガイドブックが出版されるんだけど、その挿絵は俺達が描くんだぜ」

「えっ、そんな企画があるんだ」

「おう、買ってくれよな」

「買う買う、興味があるもの」

「あと、昨日はフランシュシュのメンバーをスケッチさせてもらったんだよな」

「アイドルってやっぱ凄えって実感した………」

「そんな事まで!?」

「実はそのCMで使うイラストも、書いてみないかって言われてるんだよな」

「凄いじゃない、大出世ね」

「そんな訳で、俺達は兄貴の為なら何でもするつもりだぜ」

「これから宜しくな」

「うん、宜しくね」

「一緒に頑張ろう」

 

 こうして偶然からの顔合わせが終了した。

四人は七つの大罪と小人の靴屋の情報を、協力してヴァルハラに流し続ける。

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