とりあえず明日もお休みさせて頂き、火曜日から通常状態に戻る予定です、宜しくお願いします!
キリト達は広場を囲むように身を潜め、そこにケルベロスとキュクロプスがやってきた。
そのまま気付かずに進んでくれれば良かったのだが、
キュクロプスはケルベロスに声をかけ、広場に入って直ぐの場所で足を止めた。
『………むっ、待てケルベロス』
『キュクロプス様、どうかしましたか?』
『鉄の気配がする』
『………まさか伏兵ですか?』
『おそらくな』
ケルベロスは慌ててきょろきょろと辺りを見回した。
匂いなどを嗅ごうというそぶりは見せない為、
おそらく嗅覚ではなく視覚で敵を判断する仕様になっているのだろう。
その様子を密かに見ていたフェンリルは軽く舌打ちした。
『チッ、どうやら気付かれたか』
「どうする?」
『我がケルベロスを抑える、その間にあのでかぶつを倒してくれ』
「オーケー、一応そっちにも人をつけるか?」
『いらぬ、と言いたいところだが、今の我とあ奴の力は互角だ。
正直猫の手でも借りられると助かる』
「分かった、猫の手な」
フェンリルは自らのプライドよりも、確実な勝利を優先したようだ。
それに応え、キリトはフェンリルの要望通りの人材をそちらに振り分けた。
「それじゃあシノン、フェイリス、頼むわ」
「それは別に構わないけど、どうして私なの?」
「そんなの決まってるニャ、猫だからニャ!」
「あっ」
どうやらキリトはケットシーの中から遠隔攻撃の使い手を選択したらしい。
そう思ったシノンは、私を猫扱いするなとばかりにキリトの足を踏みつけた。
「ふんっ!」
「痛っ!ほんの軽いジョークだけど、でも適材適所だろ?」
「分かってるわよ!」
シノンはギロリとキリトを睨みつけた後、直ぐに気持ちを切り替えた。
「まあいいわ、それじゃあやりましょうか」
「やってやるのニャ!」
「アサギさんは後衛のガードに入ってくれ、セラフィム、ホーリー、頼む」
「分かりました」
「任せて!」
「善処しよう」
それから素早く作戦が立てられ、クリシュナによってフェンリルに補助魔法がかけられた。
『ありがとう、では始めるとしようか』
「おう、あいつらは必ずここで倒そう」
『ああ、必ず』
キリトとフェンリルは、拳とその鼻面をコツンと合わせ、
そしてフェンリルは敵の前に姿を現し、単独で一歩を踏み出した。
その体はまだ小さいままであったが、歩く度に大きさが元に戻っていく。
『やはりいたか、フェンリルめ』
『ここで決着をつけるぞ、ケルベロス!』
フェンリルの体から稲妻が走り、その毛が頭の方から順に逆立っていく。
『させるか!』
同時にケルベロスの体が灼熱し、キュクロプスも参戦しようと武器を振り上げる。
『フェンリルの
『はっ、申し訳ありませぬ!』
キュクロプスは避雷針にするつもりだろうか、取り出した二本の剣を地面に突き刺した。
その瞬間にフェンリルの稲妻が轟音を上げ、ケルベロスに襲いかかる。
だが地面に突き刺さる剣のせいで、その稲妻は逸らされてしまう。
そして避雷針の役目を果たした二本の剣は、バリバリッという音と共に激しく発光し、
そこを中心に凄まじい砂埃が舞い上がった。
『ぬっ』
『ケルベロスよ、警戒せよ!』
『分かっておりま………ぐわああああああ!』
『どうした!?………ぐはっ!』
ケルベロスとキュクロプスは同時に衝撃を受け、悲鳴を上げた。
そのまま直ぐに土煙が晴れていき、お互いの状況が判明した。
『貴様………』
『フン、まさかこれで終わりか?』
土煙が完全に晴れると、ケルベロスの体はフェンリルに踏みつけられていた。
そしてキュクロプスの前には、いつの間にか盾を持った二人のプレイヤーがいた。
おそらく先ほどの衝撃は、その二人の持つ盾による攻撃なのだろう。
『何者だ!』
「我が名はセラフィム、その命、貰い受ける!」
「私はホーリー、すまないが、君の命もここまでだ」
『妖精ごときが調子に乗るな!』
キュクロプスはどこからともなく新たな二本の剣を取り出し、二人に向けて振り下ろした。
単眼の巨人であるキュクロプスは、世界各地の伝承がそうであるように、
鍛治師としての側面も持ち合わせている。
故に剣を取り出したのは、おそらくそれ絡みの権能なのだろう。
セラフィムとホーリーは防御体勢をとったが、その瞬間にキュクロプスは、
頭にガツン!という衝撃を受け、その場にバッタリと倒れる事となった。
『なっ………何だ!?』
「ちょっと油断しすぎじゃないか?」
そこに立っていたのはキリトであった。
キリトはキュクロプスの不意を突き、
『なっ………ここではお前らは飛べないはず!貴様、どうやって!』
「さあ、どうやったんだろうな」
そう言いながらキリトは剣を掲げ、軽く回した。
その瞬間にフェンリルがケルベロスを離し、後方に飛ぶ。
そしてケルベロスとキュクロプスの真ん中に、二人を巻き込むような竜巻が現れた。
『これは………』
『範囲攻撃魔法です、一旦離れましょう!』
『分かった』
ケルベロスは大きく脇に飛び退り、
キュクロプスもその巨体に似合わぬ機敏さで立ち上がると、逆方向へと逃れた。
その行動を確認したかのように、竜巻がいきなり消える。
『ケルベロス!』
『キュクロプス様、今そちらに!』
それを見たケルベロスは、キュクロプスと再合流しようと走り出したが、
その目の前に、いきなり一本の矢が突き刺さった。
『ぐっ………』
そのまま次の矢、また次の矢が飛来し、その矢がどんどん自分に近くなってきた為、
ケルベロスは踵を返し、キュクロプスから遠ざかるように移動せざるを得なくなった。
『くそっ、くそっ!』
『我の事も忘れるなよ!』
『フェンリル………』
その後をフェンリルが追いかけていき、その意に反してケルベロスは後退を続けた。
こうしてヴァルハラの作戦によって、
ケルベロスとキュクロプスは完全に分断させられたのだった。
『貴様ら、やってくれたな』
遠ざかるケルベロスの背中を眺めながら、
ヴァルハラにまんまとしてやられたキュクロプスは激高していた。
「これでもう助けは来ないぜ」
『この程度で我らに勝てると思うたか!』
「勝てるんじゃないか?」
『ふん、無理に………』
そう言いかけたキュクロプスは、再び頭上から凄まじい衝撃を受け、どっと地面に倒れた。
『なっ………』
「上から来るのがキリトだけかと思ったか?」
「油断しすぎじゃないかな?」
「むふ」
その攻撃を行ったのは、クライン、ユウキ、そしてラキアであった。
『一体どうやって………』
「分からないのか?」
キリトはそう言って上を指差し、そちらを見たキュクロプスは、
頭上に何か岩のような物が浮かんでいる事に気がついた。
その岩は徐々に色を変え、トンキーの姿になった。
キリト、クライン、ユウキ、ラキアの四人が、
土煙によって視界が悪くなったタイミングでトンキーの上に乗って上空に行き、
そこでトンキーが岩に擬態し、隠れていたのだ。
『くだらぬ小細工を!だがこの程度で私を倒せると………ぐおおおお!』
今度は背中に衝撃を受け、キュクロプスは前のめりに倒れた。
その背後に立っていたのはリーファ、フカ次郎、レコンであった。
「甘い甘い」
「これで奇襲が終わりだと思ったか!なんてね!」
このシルフ三人衆は、レコンの効果範囲を拡大した姿隠しの魔法によって、
キュクロプスの背後に回り込んでいたのだった。
「よし、総員かかれ!」
「「「「「「「「おう!」」」」」」」」
そしてまだ隠れていた残りのメンバー達も姿を現し、
サトライザーやレヴィがキュクロプスに魔法銃の攻撃を叩き込んでいく。
セラフィムとホーリーはキュクロプスを挟み込むように布陣しており、
横合いから仲間達が、交互に直接攻撃を加えていく。
『ふざけるな!』
キュクロプスは怒りに燃え、その目が妖しく光を放った。
「一旦退避だ!」
それを見たホーリーが即座に仲間を避難させ、
同時にキュクロプスの顔面に盾を叩きつける。
「させないよ」
『ぐわっ!』
それでキュクロプスの特殊攻撃は止まり、再び仲間達が殺到してきた。
『な、何故だ!』
「畳みかけろ!」
『妖精ごときに!』
「その妖精相手に何も出来ず、お前はここで倒されるんだよ」
『こ、こんな、こんなはずでは………』
「マザーズ・ロザリオ!」
『よ、妖精め、妖精め!ぐおおおおおおお!』
そのユウキの大技で、遂にキュクロプスは力尽きた。
おそらく敵の巨人の中では最弱だっただろうとはいえ、
終始戦いの主導権を握り続けたヴァルハラの、これは完全勝利であった。