ケルベロスとキュクロプスを倒し、フェンリルを失ったキリト達は、
そのままウルドがいた、空中宮殿へと繋がる門へと向かっていた。
「さて、これで門に入れるのかどうか………」
「多分大丈夫だよきっと」
「そうだといいんだけどな」
「うぅ、フカ三郎………」
「フカ、よしよし」
落ち込むフカ次郎をレンやシノンが慰める。
そして門に着いたキリト達は門扉に手をかけたが、門はまったく開く気配が無かった。
一同はまだ門が閉ざされている事を知り、落胆した。
「………まだ開かないのか」
「他にも条件があるのかな?」
「………まあ明らかにこれがラストダンジョンっぽいしなぁ」
「とりあえず一旦街に戻ってハチマンと話してみましょう」
「そうするか」
一同はそのまま、この辺りで休憩する必要もある為、一旦街へと戻る事にした。
時間は戻ってハチマン達は、第二十七層の主街区、ロンバールの片隅で、
とある建物の前に立ち、呆然としていた。
「………凄えな変態の勘」
「自分でもビックリだよ」
「でもこれはさすがに予想外ね………」
第二十七層に着いた瞬間に、クックロビンはくんくんと何か匂いを嗅ぐような仕草をし、
いきなり『あっちが怪しい気がする!』と叫んだ。
その導きに従って歩いてくると、この建物があったのだ。
そしてその建物には、『ヘパイストス鍛治店』と書いてある。
レコンがかつて作ってくれた地図を見ながらクックロビンの示した方向に歩いていた三人は、
地図に表示されていない建物がある事に気付き、その前で足を止めたのだが、
その店の名がそれだったと、まあそんな訳であった。
「………よし、早速入ってみよう」
「そうね」
「何が出るかなっ!」
ドアノブに手をかけると、いきなりドアノブが光り、ガチャリという音がした。
「お、問題なく入れるみたいだな」
「やったね!」
そしてドアを開けると、そこには偏屈そうな顔をした老人がいた。
『ふむ、よく来たな、お前達が初めての客じゃ、で、何を望む?』
「あっ、初めまして、俺はギルド、ヴァルハラ・リゾートのリーダーのハチマンと言います」
「同じく副長のユキノです、神ヘパイストスよ、お目にかかれて光栄です」
「一般隊員のクックロビンで~っす、宜しくね!」
『礼儀正しいの、ヴァルハラ・リゾートのハチマンか、覚えておこう』
ヘパイストスは鷹揚に頷くと、ハチマン達に椅子を勧めた。
「ありがとうございます」
『では改めて聞こう、何が望みだ?』
「はい、実はお尋ねしたい事が………」
『何だ?』
「スルーズ、もしくはベルという巨人の居場所をご存知ではないですか?」
その瞬間に、ヘパイストスの頭の上にクエストマークが現れ、
ハチマン達は遂に手がかりが掴めたと喜んだ。
『あ奴らか、それなら知っておるぞ』
「おお、教えて頂けますか?」
『ああ、もちろんだ。奴らはルグルー回廊の奥におる。八人で挑むがよい』
目的地がヨツンヘイムではなくアルヴヘイムだった事に一同は驚いた。
「まさかのルグルー回廊?」
「それは盲点だったわね………」
「しかも八人縛りか」
ううむと唸る一同に、ヘパイストスがこう尋ねてきた。
『ハチマンよ、お主らは奴らに戦いを挑むつもりか?』
「はい、そのつもりです」
『そうか、励めよ』
ヘパイストスはそう言ってただ頷くのみであった。
レイヤから聞いていた通り、やはりヘパイストスは、敵ではないようだ。
「それともう一つ宜しいでしょうか」
『ああ、聞こう』
「レーヴァテイン」
ハチマンがそう言った時、ヘパイストスの眉がピクリと動いた。
「………を、短剣に打ちなおしてもらう事は可能なのでしょうか」
『うむ、もちろんだ。一から作れといわれるのは無理だが、それくらいなら容易い、
というかむしろこちらから頼みたい、是非儂にやらせてくれ。
あれは我らの系統の武器ではないから興味があるのだ』
その言葉から、ギリシャ神話の神であるヘパイストスが、
北欧神話の剣であるレーヴァテインに興味深々な様子が分かる。
「はい、願ってもないです」
『契約成立だな』
二人はそう言って固く握手をした。
「あの、神ヘパイストス、私からも一ついいでしょうか」
『うむ、何だ?』
「最近ヨツンヘイムに出来た、空中宮殿の事をご存知ですか?」
『ああ、もちろんだ。作ったのは大地母神ガイア、あの方にはほとほと困らさせられる』
ヘパイスイトスは嫌そうな顔でそう答えた。ガイアとは折り合いが悪いのかもしれない。
「そこに私達が入るには、どうすればいいのでしょうか」
『そうだな、第一にケルベロスの遺産を掲げる事、第二にフェンリルの遺産を装備する事、
第三に我が妻を奪った男、アレスの遺産を示す事だ』
「アレス………ですか?」
ハチマンは、フェンリルの
初めて聞くその神の事を優先して聞く事にした。
『ああ、アレスはこの真下、アルンにおる』
「そうなんですか!?」
『ああ、アレスはここの神をひと柱倒したらしく、今はアルンにおるのだ。
その際にティルフィングという武器も手に入れたらしいのう』
ハチマンはその言葉に反応しそうになり、ぐっと堪えた。
神の話を途中で遮るのは不敬だと思ったからだ。
(アスナ達のクエストも、ここに繋がってるって事なんだな………)
ハチマンはそう思うに留め、ヘパイストスの次の言葉を待った。
「そのアレスの持つメダルを門にはめれば全ての鍵が揃う。
その奥にいる者を討てば、エクスキャリバーが得られよう」
(よし!)
ハチマン達三人は、遂に重要な手がかりが得られたと喜んだ。
折りしもその時、部屋の扉が開き、外からアスナが中に入ってきた。
「よぉアスナ、それにみんな」
「あ、あれ?ハチマン君?」
「ヒッキー?」
「先輩、どうしてここに?」
「お兄ちゃん?」
「あらやだ、私を待っていたのね、えらいわハチマン」
ハチマンは最後にそう言ったランの前に立ち、そのこめかみをぐりぐりとした。
「痛………くないけどやっぱり気持ち悪い!」
「お前はどうしていつもそうなんだっての」
「仕方ないじゃない、生まれ持った性格は簡単には変えられないのよ!」
「はぁ………」
そしてハチマンは振り返り、ヘパイストスに頭を下げた。
「ヘパイストス様、お騒がせして申し訳ありません」
『構わぬ妖精達よ、で、ハチマン、それはお主の仲間達か?』
「はい、頼りになる仲間です」
『そうか』
ヘパイストスは頷き、続けてアスナに向けて言った。
『で、そなた、そなたの求める答えは既にハチマンに授けてある、後で話を聞くといい』
「分かりました、ありがとうございます!」
その瞬間にアスナ達は、
ヘパイストスの頭の上に見えていたクエストマークが消えたのを確認した。
「よし!」
アスナは軽くガッツポーズをし、ハチマンとアイコンタクトを交わした。
それを受けてハチマンは、ヘパイストスに頭を下げた。
「それではヘパイストス様、また来ます」
『いつでも来るがよいぞ』
「ありがとうございます!」
そしてハチマン達は外に出た後、情報交換をした。
「………なるほど、ルグルー回廊、それにアレスかぁ」
「とりあえずアルンのどこにアレスがいるのか確認しないとだな」
「そうだね、ハチマン君達の方に行く八人も選抜しないとだし」
「それならここにいる八人でいいんじゃないの?」
クックロビンが軽い調子でそう言った。
「あ………確かに」
「キリト君達もまだまだ戻ってこないでしょうし、いいかもしれないわね」
「それじゃあ先にそっちに行くか、アルンの捜索は後回しでも別にいいしな」
「だね」
そして八人は、ルグルー回廊に向けて飛び立つ事にした。
幸いタンクがユイユイ、ヒーラーがユキノとアスナ、
物理アタッカーがハチマン、ラン、コマチ、クックロビン、魔法アタッカーがイロハという、
バランスのとれたパーティでの出撃である。
「ルグルー回廊に行くのは久しぶりだな」
「確かあそこで初めてキリト君がグリームアイズに変身したんだっけ?」
「おう、あいつ、敵を頭からバリバリ食ってたんだよな………」
「うえぇ、グロ………」
「俺とユキノ、ユイユイ、コマチはあの場にいたけどよ、確かにちょっと引いたわ」
「だね………」
そんな雰囲気の中、クックロビンだけが明るい声でこう言った。
「さっすがキリト君、最高だね!」
「お前の感性は俺には分からん………」
そんな会話を繰り広げながら、ハチマンはルグルー回廊へと突入した。