ハチマンくんとアスナさん   作:大和昭

1121 / 1227
すみませんちょっと短めな上に二日開いてしまいました。
実はいきなり虫歯がひどい痛みを発してまして、全然集中出来ません。
今週は連休があり、歯医者も忙しいようで、予約出来たのは二十九日です。
それまでは更新がかなりゆっくりになってしまうと思いますので、
生暖かい目で見守っていただければと………感想返しも落ち着いたら一気にしますので、申し訳ありませんが宜しくお願いします。


第1111話 アレス討伐前哨戦

 ハチマンの不参加が決められた後、少し休憩を挟み、

アレス戦に参加する者達は旧グランドクエストの間の前にある広場に集まっていた。

 

「やっぱりここだったな」

「突入条件は?みんなで入れる?」

「上限が五百十二人とか訳の分からない設定になってたから大丈夫だ」

「えっ、何それ?もしかして凄く手強いっぽい?」

「どうだろうな、まあ駄目なら駄目で大人しく負ければいいさ」

「それだけの人数を集めるのって大変そう………」

「突入時に能力による制限とかが無かったから、そこまで強くはないと思うのだけれど」

 

 キリトを始めとするヴァルハラのメンバー達は、入り口前でわいわい話していたが、

やがて突入予定時間になり、メンバーも揃った事で、ユキノが突入の手続きを開始した。

 

「準備オーケーよ、レイドごとまとめて転送されるわ」

「よしみんな、気合い入れていこう!」

「任せろ!今宵のムラサメは血に飢えてるぜ!」

 

 ハチマンからムラサメを渡されていたクラインが、機嫌良さそうにそう叫んだ。

そんなクラインを微笑ましそうに眺めながら、一同の姿は順番に消えていった。

その瞬間にアルン中にアナウンスが響き渡る。

 

『アレス討伐戦が発生しました、

攻撃側、守備側のプレイヤーは、一時間以内に突入手続きを行って下さい。

その後、一時間は戦闘に乱入出来ますが、報酬は減額されます』

 

 

 

「お、おい、今のアナウンス………」

「これってPVPも絡めた戦闘になるの?」

「一時間?長いなおい!」

「途中参加も可能なんだね」

「というか、討伐クエストをクリアしてなくてもここには入れるのかな?」

「ちょっと調べてみる必要がありそうだな」

「というか、開始までここから出られないのかしら?」

「あっ、出られるみたいだよ」

 

 コンソールを開いて状況を確認していたアスナがそう言った。

その示す場所には、確かに開始時間までは出入り自由と書いてある。

 

「よし、今後の為にも今のうちに色々検証しておこう。

おいフカ、何人か連れて、このフィールドの調査を頼む。

アスナはスモーキング・リーフに行って、参加可能な何人かを連れてきてくれ。

リツさん達なら討伐クエストをクリアしていないから、

それでここに入れる条件が分かるはずだ」

「了解!おいレン、それにリオン、セラ、ちょっと付き合って!」

「分かった、それじゃあ行ってくるね!」

 

 

 

 フカ次郎はレンとリオンとセラフィムと共に奥へと走り出した。

 

「全体マップはさすがに用意されてないみたいだね」

「でもこうやって調査出来るのは、ホストのアドバンテージみたいな?」

「あっ、見て!遠くにお城みたいな建物が見える!」

「あそこが敵の居場所っぽいね」

「まさかの攻城戦!?」

「でも入り口の扉はオープンだから、篭城戦にはならないみたい」

「んん………ここから先は進めない?」

 

 もうすぐその城に到着出来るという位置で、

フィールドは光るカーテンのような物で移動出来なくなっていた。

 

「むむむ、準備段階だとこれ以上行けないみたい?」

「仕方ない、カーテンのこちら側を回りましょう」

「オーケー、みんな、行くよ!」

 

 フカ次郎はそう指示を出し、四人はそのまま味方側フィールドの地形を把握する為、

そして見える範囲の敵側の状況を調べる為に、情報収集を開始した。

 

 

 

「こんにちは!」

 

 その頃アスナは久しぶりにスモーキング・リーフに顔を出していた。

 

「あれ、アスナ?どうしたんだ?」

「何か久しぶりなのにゃ!」

 

 そんなアスナを出迎えたのは、リンとリツである。

 

「うん、久しぶり!でね、いきなりで悪いんだけど、ちょっと協力して欲しい事があってさ」

 

 アスナは二人に事情を説明し、二人は残りの四人を連れてくると言って奥へ入っていった。

それからしばらくして、残りの四人がぞろぞろと姿を現した。

 

「アスナ、本番前にちょっと戦う?」

 

 リョウの一言目はいきなりのそれであった。相変わらずのようである。

 

「そ、それは本番までとっておいて!」

 

 そんなアスナに甘えるように、リナが飛びついてくる。

 

「ハチマンは?ねぇハチマンは?」

「ごめんリナちゃん、ハチマン君、凄く疲れちゃったみたいで、今は外で休んでるんだ」

 

 目線の高さを合わせ、優しくそう伝えるアスナだったが、

その胸がいきなり背後から揉まれた、リクである。

 

「お、アスナ!相変わらず柔らけぇなぁ!」

「きゃっ!ちょっとリク、変な所を触らないで!」

「減るものじゃないし、いいじゃんよぉ、この手触り、俺好きなんだよなぁ」

「減るから!何かが減るから!」

「良いではないか良いでは………ぎゃっ!」

 

 リクはいきなりそう悲鳴を上げると、頭を抱えてその場に蹲った。

その後ろには棒を持ったリョクが立っている。

おそらくその棒で、リクの頭を思い切り叩いたのだろう。

 

「ごめん、うちの馬鹿姉が迷惑かけたじゃん」

「リョクちゃん!ううん、悪気は無いって分かってるから大丈夫だよ」

「アスナは甘い、そんな事言ってると、リクが益々つけあがるじゃんね?」

「それはそうかもだけど、でも友達だし、ね?」

 

 アスナは片目を瞑ってそう言い、リクの顔がパッと明るくなった。

 

「だよなだよな!それじゃあ遠慮なく………」

「調子に乗るなじゃん」

「痛っ!」

 

 リョクは再びリクの頭を叩き、ため息をつきながらアスナに話しかけた。

 

「はぁ………話は聞いたよ、時間も無いみたいだし早く行くじゃん」

「う、うん、みんな、ありがとう!」

 

 六人にお礼を言ったアスナは、少し迷うようなそぶりを見せた後、

どこかにメッセージを送り、顔を上げて六人に行った。

 

「それじゃあみんな、こっち!」

 

 こうしてスモーキング・リーフの六人は、アスナと共にグランドクエストの間に向かった。

 

 

 

「あ、あれ?人が集まってる?」

「待って、あそこにいるのは………シグルド?」

「シグ………誰?」

「う~ん、分かり易く言うと敵?かな?」

「そうなんだ、あはぁ、それじゃあちょっと戦って………」

「わぁ、リョウ待って、ちょっと待って!」

 

 アスナはリョウを必死に止め、物蔭に身を潜めてそちらの様子を伺った。

 

「この戦闘はどうやらプレイヤーが二手に分かれて戦うようだ。

勝者にも敗者にも報酬が出るらしいが、おそらくそこには埋められない差があるはずだ!

そして俺達は今日立ち上げたギルド、SDS!そのメンバーは総勢二百名いるが、

俺達は全員守備側に回る!俺達を敵に回すかどうか、

みなよく考えて陣営を選択した方が賢明だと思うぞ!」

 

 そう言ってシグルドは転送されていき、その場に残った一般プレイヤー達は、

ひそひそと囁き合った後、同様に中に転送されていった。

 

「やっぱり討伐クエストに関係なく中に入れるみたいだね。

でも私達、どっちにつくかなんて選べなかったけどなぁ」

「まあ私達がいじってみれば結果はすぐ分かるじゃん」

「アスナ、ちょっとこれを被っておこう?」

 

 騒ぎにならないようにとの配慮なのか、リョウがアスナにフードを渡してきた。

 

「あっ、うん」

 

 アスナは深く考えずにそれを受け取り、六人と一緒に入り口前のコンソールへと向かった。

 

「やっぱり選べるじゃんね」

「なるほど、討伐クエストに関係なくこれには参加出来るんだね」

 

 ちなみにシグルド達は、実は深夜にも少し狩りを行っており、

今日の午前中で討伐クエストをクリアしていた。

なので陣営は選べなかったのだが、敵を増やさない為にあんな演説めいた事をしたのである。

その効果は確かにあったようで、表示されている戦力は、

攻撃側が八十に対し、守備側が三百まで膨れ上がっていた。

 

「うわ、結構差がついてる」

「一般の人達はこっちが五十ちょっと、向こうに百みたいな感じじゃんね」

「まあいいでしょ、さ、入ろ入ろ」

 

 リョウが急かすようにそう言い、七人はそのまま中に転送される。

戦闘好きなリョウとしては、ここでアスナの正体がバレ、

攻撃側の人が増えるのを防ぎたかったのだ。

その狙いは功を奏し、この後ほとんどのプレイヤーが守備側に参加する事となったのだった。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。