ハチマンくんとアスナさん   作:大和昭

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第1127話 戦利品の行方

 グランドクエストの間の前の広場に集まった野次馬達は、

若干緊張しながら、攻撃側人数とアレスのHPの数値を注視していた。

 

「まさかあのメンバーで負けないよな?」

「むしろこれで勝てなかったら俺は開発の正気を疑うね」

「それもそうだな」

「でもあのボスのHP、さっきから全く動かなくないか?」

「中は一体どうなってるんだろうな」

 

 その言葉通り、ボスのHPはまったく動かず、ただ時間だけが過ぎていく。

 

「これってまさか………」

「敵のHPを全く削れないまま、

死なないまでも、ヴァルハラのメンバーがどんどんダメージを受けていってる状態?」

「他に説明出来ないよな?」

「もしこれで剣王様達が負けた場合、ザ・ルーラー様の出番が来るのかな?」

「って事は、剣王様を出待ちするべき?」

「死神様は中と外、どっちにいるんだろ?」

「私はサムライマスター様を………」

「「「え~?それはない!」」」

 

 どうやらクラインは、やはりオチ担当として定着しているようだ。

 

(う~ん、それにしても本当に遅くない?一体どうなってるんだろ?)

 

 アリシャですらそう心配し始めた時、いきなり事態は急変した。

アレスのHPがいきなりガツンと減り、ゼロになったのだ。

 

「「「「「「「「えええええええ?」」」」」」」」

 

 直後にアナウンスがゲーム中に響き渡る。

 

『CONGRATULATIONS』

『アレスが討伐されました、攻撃側の勝利です』

『参加した全てのプレイヤーに、報酬が与えられます、ストレージをご覧下さい』

 

 そして広場中に大歓声が巻き起こった。

 

「うおおおおおお!」

「何今の、一体何事!?」

「ヴァ~ルハラ!ヴァ~ルハラ!」

「いやぁ、いいもん見させてもらったわ」

 

(ふううううう、まったく心臓に悪いよ)

 

 そう思いつつ、アリシャはのんびりと壁にもたれかかり、

親友が出てくるのを待つ事にした。  

 

 

 

 戦闘を終え、外に出たサクヤは、アリシャの事を心配し、その姿を探した。

 

「アリシャ!」

「サクヤちゃ~ん、こっちこっち!」

 

 落ち込んでいるのではないかと心配していたサクヤだったが、

全くそんな事はなく、アリシャは元気よくこちらに手を振ってきた。

 

「良かった、いつも通りだな」

「え~?何が?」

「いや、何でもない」

 

 サクヤはそう言って微笑んだ。

 

「それよりサクヤちゃん、中で一体何があったの?」

「うむ、それがとんでもない話だったんだが………」

 

 サクヤからボス戦のあらましを聞いたアリシャは大爆笑した。

 

「あはははは、あはははははは、何それ、意味分かんない!」

「だよな………まあでもそういう事だったんだ。あとハチマン君から伝言だ、

可能な者は、休憩を挟んで一時間後にヴァルハラ・ガーデンに集合だそうだ」

「うわぁ、ヴァルハラ・ガーデンに入れてもらうのも久しぶりだね?」

「だな、あそこに入れてもらった事のある者は、

完全に身内であるヴァルハラ・ウルヴズ、スリーピング・ナイツ、

あとはスモーキング・リーフのメンバーを除けばそうそういないと思うし、

実に名誉な事ではあるな」

「だね!」

 

 二人はそんな会話を交わしながら、

ヴァルハラのメンバー達が外に出てくるのを眺めていた。

ソレイユ、ユイユイ、イロハ、ユミー、コマチ、クリシュナ、エギル、クライン、

サトライザー、ホーリーや、スプリンガー、ファーブニルらが続々と姿を見せ、

観客達は大いに盛り上がる。だが全体の半数程度が現れた後、

ピタっと誰も姿を見せなくなり、観客達だけではなく、

サクヤ、アリシャ、更には他ならぬヴァルハラのメンバー達も、戸惑いの表情を見せた。

 

「あれ、ハチマンの奴、何してるんだ?」

「話が盛り上がってるとか?」

「それにしてもな………」

「くそ、まだ中と連絡はとれないみたいだぜ」

「う~ん………」

 

 そして一同の目が、自然とクリシュナに向いた。

 

「え、な、何?」

「いやぁ、実験大好きっ子のクリシュナちゃんなら、こういう時に的確な予想をして、

実験で証明してくれるんじゃないかなって」

「それ、実験うんぬんのくだりはいりませんよね?」

 

 クリシュナはソレイユに控えめに抗議しつつ、真面目に今何が起こっているのか考えた。

そしてさすがながら、すぐに正解にたどり着く。

 

「………ええと、こういう戦闘って普通、終わったら数分で強制排出ですよね?」

「ええ、まあそうね」

「それじゃあ今回の三十分っておかしくないですか?」

「そうね、珍しいわね」

「って事はもしかしてハチマンの奴、まだ中にお宝なりなんなりが眠ってるって予想して、

残った人達に探させてるのでは?」

「あ~!」

「なるほど、筋は通ってるな」

「というか、それしかないよね」

「そういう事ならいずれ報告があると思うし、ここで待っている必要性も薄いと思うから、

予定通り、一時間後にヴァルハラ・ガーデンに集合って事で」

 

 ソレイユがそうまとめ、仲間達は散っていった。

 

「アリシャ、私達はどうする?」

「私はまああと二十分くらいだし?ユージーン君が出てくるのを待って、

そこから集合時間まで、何か美味しいものでも奢ってもらおうかなって思ってるんだけど。

助けてあげたんだからそれくらいいいよね?」

「むしろその程度でいいのかと思うがな」

「この程度な訳ないじゃん、命だけじゃなく、

多分ランキングの順位も守ってあげたんだよ?

まだ思いついてないだけで、思いついたら色々たかるつもり」

「………さすがというか」

 

 サクヤはアリシャのその言葉に苦笑した。

 

「ではあと少し、のんびりと待つか」

「だね!」

 

 それから二十分後、ハチマン達が一気に姿を現した。

やはり熱狂的なファンというのはいるもので、

これだけ時間が経った今でも、多くの()()プレイヤーがその場に残っており、

ハチマンの下に、一気に押し寄せた。

 

「おわっ!」

「はい、ストップ!」

 

 それを止めたのは、ハチマンの正妻であるアスナである。

 

「それじゃあこれから、ザ・ルーラーの握手会を始めます、希望者は順番に並んで下さい!」

「へ?」

 

 戸惑うハチマンにアスナが目配せし、ハチマンはそれ以上何も言えなかった。

 

(まあ確かにその方が穏便に事が進むか)

 

 ハチマンはそう考え、強化外骨格を駆使して希望する女性達と握手していった。

 

「………何だこれ」

「気にしない気にしない、ハチマンがあんたの盾になってくれてる部分もあるんだから、

逆に感謝しないと」

「ああ、確かにそういうのもあるか………」

 

 もちろんキリトの周りにも多くの女性が集まっていたが、ハチマンの周りほどではなく、

リズベットの仕切りで問題なく解散させる事が出来ていた。

その間にキリトがやっていたのは、その女性の名前をきちんと呼びつつ、

これからも応援宜しくと言って、微笑むだけであった。

ちなみにユージーンは、当然ながら、既にアリシャに連行されている。

 

「よ~し、それじゃあヴァルハラ・ガーデンに戻るか」

「ハチマン、アスナ、頑張れ~!」

「って、ウズメとピュアが列に並んでるぞ………」

「しっ、フカとロビンも並んでるけど、まあ放っておきましょう」

「あいつらも懲りないな………」

 

 この後、ウズメとピュアは普通に握手してもらえたが、

フカ次郎は頭に拳骨をくらい、クックロビンは笑顔で微笑まれただけであった。

 

 

 

「みんな、今日はお疲れ!」

 

 ヴァルハラ・ガーデンでは、ユイの手によって料理と飲み物が準備されており、

参加出来た者達は、存分に寛ぐ事が出来ていた。

 

「先ず最初にアレスからドロップしたティルフィングだが………」

 

 ハチマンはそう言って仲間達を見回した後、ユージーンをじっと見つめた。

 

「む?」

「これはユージーンに使ってもらおうと思う」

「………えっ?」

 

 この戦いで、ユージーンは魔剣グラムを失っていた。

もちろん修理は可能なのだが、さすがにそのクラスとなると、

色々なアイテムを必要とする為、すぐには修理出来ない事が判明している。

 

「「「「「「「「異議無し!」」」」」」」」

「す、すまん、恩に切る」

「いや、お礼を言うのはこっちのほうだ。今回は助かった、ありがとな」

 

 ハチマンはユージーンにお礼を言い、こうしてユージーンは新たな武器を手に入れた。

魔剣グラムの修理が終わったら、ユージーンは二刀流の使い手になるかもしれない。

 

「さて、それじゃあ今回のボス戦で入手出来たアイテムの詳細を報告する」

 

 とりあえず事務的な作業を終わらせてしまうつもりなのだろう、

ハチマンはそう言い、アイテムの説明を始めた。

 

「『看破の瞳』、『拡声マイク』が二つ、『浮遊光源ユニット』、『オティヌス・ボウ』、

『収納拡張バッグ』、『発煙筒』、『結界コテージ(大)』、『アレスの槌』、

あとは回復アイテムの類とハイエンド素材がそれなりに、か。

それじゃあいくつか分かりにくいアイテムの説明をする」

 

 ハチマンの説明だと、看破の瞳は近くに姿を隠している敵、

もしくはプレイヤーがいた時に教えてくれるものらしい。

拡声マイクは一定範囲にだけ声が大きく聞こえるが、

その範囲を超えると声が一切聞こえないという、まるで会議に使うような代物のようだ。

浮遊光源ユニットはどうやらスポットライトのような物で、

同時に何ヶ所かに光を当てる事が出来る。

 

「オティヌス・ボウはクロスボウタイプの弓で、

魔力を使えば撃った後の矢が増えるらしい。一人で弾幕が張れるな」

「弾幕薄いぞ、何やってんの!」

「フカ、うるさい」

「てへっ」

「これの行き先はちょっと保留だな、みんなで適当に使ってもらって、

しっくりくる奴に使ってもらう事にしよう」

 

 そしてハチマンは、アレスの槌を取り出し、ノリに差し出した。

 

「えっ?」

「ノリはもうすぐ手術だろ、これは前祝いだ」

「兄貴、い、いいの………?」

「丁度他に槌の使い手もいないしな、まあほら、遠慮するなって」

「ありがとう兄貴!私、手術頑張るね!」

「おう、早く元気になるんだぞ」

 

 同時に仲間達から頑張れよ!という声が上がり、

ハチマンはノリの頭を撫で、ノリは満面の笑みを見せた。

 

「みんな、ありがとう!」

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