ハチマンくんとアスナさん   作:大和昭

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第1140話 驚きの知らせ

「八幡、勝負よ!」

 

 ゲームスペースに着くなり、藍子が卓球台の前で、八幡にそう言い放った。

 

「いや、まあ別にいいけどな、その靴じゃ厳しいんじゃないか?」

 

 確かに今の藍子はヒールが若干高めの靴を履いており、

激しい運動をするのには適さないと思われた。

 

「うっ、それじゃあユウ、私に靴を貸すのよ!」

「いや、ユウの方がお前より足が大きいからな、無理だろ」

「どうして八幡がそんな事を知ってるの?

はっ、まさか八幡ったら、寝ている私の足に、ガラスの靴をはかせようとした事が!?」

 

(このやり取り、どこかでやったような………)

 

 八幡はそう思いつつ、藍子に淡々とこう答えた。

 

「いや、思いっきり今見てるだろ、サイズの違いは見れば分かる」

「そんなの普通は分からないわよ!

だから八幡は、絶対に私がシンデレラなんじゃないかって思ってたはず!」

「あ~、そうだそうだ、このやり取り、前にいろはとやったわ。

はいはい履かせた履かせた、でもサイズが合わなかったから、

お前はシンデレラじゃありませんごめんなさい」

「な、何ですって!?」

「もうそういうのはいいから。とにかく俺は見れば分かるんだよ。

とりあえず明日奈、アイに靴を貸してやってくれ」

「うん、分かった」

 

 八幡の見立てだと、明日奈と藍子の足のサイズは同じらしい。

事実明日奈に靴を借りた藍子は、サイズがピッタリな事でぐぬぬ状態となった。

 

「………ま、まあいいわ、それじゃあ勝負よ!」

「おう、相手になってやる」

「えらそう………」

「まあお前よりはえらいからな」

「きいいいい!」

 

 この戦いは当初から激しいものとなった。

だが悉く八幡が藍子の上をいき、その点差は既に五点差まで開いていた。

 

「くっ、まずいわ、こうなったら………」

 

 藍子は八幡に給水を提案し、二人は一旦ベンチへと戻った。

その隙に藍子は浴衣の裾をはだけさせ、再び戦いに挑んだ。

ちなみに他の者達は、この戦いを生暖かい目で観戦している。

 

「八幡、ここからが本当の勝負よ」

「ん?おう、まあ頑張れ」

 

 試合は八幡のサーブから始まり、藍子が躍動する度にその裾がヒラリとまくれる。

当然藍子の下着は八幡から丸見えのはずなのだが、

八幡はまったく顔色を変えず、淡々と球を打ち返してきた。

 

「ちょ、ちょっと、少しは動揺しなさいよ!」

「はぁ?何の事だ?」

「だ、だって………み、見えてるんでしょう?」

「見え………何がだ?」

 

 八幡がとぼけていると思った藍子は、顔を赤くしながらも、根性を出してこう言い放った。

 

「わ、私のパンツがよ!」

「はぁ?お前、俺に色仕掛けでもしてたのか?

でも残念だが、お前の身長じゃ、卓球台に隠れて何も見えないぞ。

多分全裸でも、お前の下着は俺からは絶対に見えないから諦めろ」

「な、何ですって!?」

「前にいろはと卓球をした時に確認済だ。って、痛っ、叩くな明日奈、

今言った通り、見てない、見てないからな」

 

 明日奈はそれで矛を収め、元の場所に戻っていった。

というか八幡はそもそも明日奈の接近に気付いていなかった。明日奈、恐るべしである。

 

「ぐぬぬ………こうなったら………」

 

 藍子は小さく呟き、目をきゃるんっ、とさせ、八幡の後方に視線を向けた。

 

「あっ、あっ、嘘、本当に?お~い!」

 

 それに釣られ、八幡が後方に振り返った。

 

「隙有り!」

 

 それを見た藍子が鋭いサーブを放ったが、

八幡はその瞬間に顔を戻し、そのサーブをあっさりと返した。

八幡は振りかえったように見せただけで、藍子から注意は逸らさなかったようだ。

 

「ねえよ」

「な、何で!?」

「その手も前いろはがやったからな。

だから最初から警戒してお前から目を離さないようにしてた」

「ぐぅ………それじゃあ八幡、今何時?」

「それじゃあって何だよ、時ソバもいろはがやったから、俺には通用しないぞ」

「いろはああああああああああす!!!!」

 

 藍子はここにいないいろはが高い壁となって、

自分の前に立ちはだかっているような気分になり、普段呼ばないような呼び方でそう叫んだ。

 

「はいはい、それじゃあ続行な」

「あっ、ちょっ………」

 

 そのまま藍子は敗北し、久しぶりにハンカチを口に咥えながら悔しそうにこう言った。

 

「仕方ないわね、私の負けよ。約束通り、何でも言う事を一つ聞いてあげるわ」

 

 内心で、計画通り、と思いながらも、藍子は悔しそうな演技を続け、

そんな藍子に八幡はジト目を向けた。

 

「そんな約束をした覚えはないんだけどな」

「きっと私を自分の好きに出来るって考えたせいで、興奮しすぎて脳の血管が切れたのね、

大丈夫、例え八幡が忘れていても、絶対に約束は守るわ」

「そうかそうか、それじゃあ命令だ。お前はこの旅行を存分に楽しめ、以上、解散!」

 

 八幡にそう言われ、藍子は目をパチクリさせた。

 

「………えっ?」

「何だ?俺の命令は絶対なんだろ?」

「そ、それはそうだけど、まさかこの私のエロい身体を前にして、

何もしない男なんて不能以外にはありえない!」

「あ~、はいはい、ソウデスネ~」

 

 八幡は棒読みでそう言うと、木綿季に視線を向けた。

木綿季は八幡に頷き、藍子に駆け寄った。

 

「アイ、ほら、今度はボクと遊ぼ!」

「ちょっ、ユウ、私はまだ八幡に話が………」

「往生際が悪い、敗北者はただ消え去るのみ、だよ?」

「は、八幡、カムバ~ック!」

「達者でな~」

 

 八幡はひらひらと手を振って藍子にそう言うと、疲れた顔で明日奈の隣に座った。

 

「やれやれ、まったくあの耳年増は扱いに困るわ」

「ふふっ、お疲れ様。はい、飲み物」

「おう、サンキュー」

 

 見るとビリヤード台では、詩乃と優里奈が勝負をしていた。

萌郁はその横で、二人にアドバイスしているようだ。

 

「あの二人、もしかして初めてなのか?」

「かも、もちろん私もやった事ないよ?」

「そうだったか、それじゃあ隣の台でちょっとやってみるか」

「うん!」

 

 八幡は明日奈に手ほどきしつつ、

たまに隣の台からお助けアイテム扱いでヘルプに狩り出されたりもし、

のんびりとした時間を過ごしつつ、遅い時間まで存分に楽しんだ。

 

「さて、そろそろいい時間だし部屋に戻るとするか」

「そうだね、明日は色々回らないとだし、その後はボス戦もあるしね」

「そういえばもう一つのボス戦はどうなったかな」

「あっ、そういえば私、スマホを部屋に置いてきちゃったんだ」

「俺もだ、さすがに浴衣だと入れておく場所が無いからな」

 

 他の者達も同様だったようで、一同は明日の事を話す必要もあり、

とりあえずといった形で八幡の部屋に戻った。

 

「お、和人から連絡が来てるな、どれどれ………」

 

 八幡はスマホで和人からのメッセージを確認し、ピタリと動きを止めた。

 

「ん………」

「どうしたの?」

「あ、いや、ボス戦には勝利したらしいな」

「へぇ~、それじゃあ誰かがエクスキャリパーを手に入れたんだ?」

「ルシパーが手に入れたらしい、まあ、()()繋がりだな」

「八幡、意味は分かるけど意味が分からない」

「ああいや、すまん、ちょっと動揺しちまってな」

「さっきも変だったよね、何かあったの?」

「いや、それがな………」

 

 八幡は戸惑った表情で一同の顔を見た後、続けてこう答えた。

 

「七つの大罪とSDSの同盟が決裂、戦争状態に突入したらしい」

「………えっ?」

「一緒に戦って勝利したのに即決裂?何それ?」

「だろ?意味が分からないよな?」

「理由は書いてないの?」

「一応書いてはあるんだけどよ………ルシパーがシグルドを殺したとか何とか」

「えええええ?」

「まさかのフレンドリーファイア?」

「また魔砲でもぶっ放したのかな?」

「あいつならやりかねないけど、前回は被害者だったしなぁ………、

とりあえず詳しい事を和人に聞いてみるわ、っと、言ってる傍からまたメールだ」

 

 続けて届いたそのメールを見た八幡は、今度はスッと目を細めた。

 

「………アスモゼウスとアスタルトが七つの大罪から離脱して、今うちで保護してるらしい。

今回のボス戦で、さすがに愛想をつかしたとか何とか」

「えええええ?」

「訳が分からん、もうログインした方が早いな。

みんな、それぞれの部屋に戻ってとりあえずヴァルハラ・ガーデンに集合だ」

「だね」

「一体何があったんだろ?」

「萌郁と優里奈は何かあった時の繋ぎでこっちで待機しててくれ」

「うん」

「はい!」

「それじゃあちょっと行ってくる、事情だけ把握したらすぐ戻ってくるからな」

「行ってらっしゃい」

 

 それから各人は素早く行動を開始し、ALOへと旅立っていった。

優里奈も自分の部屋に戻り、一人その場に残された萌郁は、

少し迷うようなそぶりを見せた後、微笑みながら八幡の頬をツンツンとつつき、

眠ってしまわないように気をつけながら八幡の腕を抱いて横たわり、幸せそうな表情をした。

これは普段見せない萌郁の、人には言えない甘えん坊な一面であった。

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