ハチマンくんとアスナさん   作:大和昭

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第1173話 二人目の歌姫

「ハチマン、取れたよ!」

「おぉ………ついにか、今回は苦労したな」

「うん!でもその分凄く嬉しい!」

 

 新曲の披露が終わった後、ウズメのその報告にハチマンは頬を緩めた。

 

「歌唱、吟唱、偶像(アイドル)、演技派、舞踊、か。残りあと三つだな」

「他にハチマンが知ってるのは何のスキルなんだっけ?」

「ああ、俺が知ってるのは、楽器演奏、カリスマ、癒し系、小悪魔系、大声だな。

カリスマと大声は、それぞれ歌の効果時間と能力の増加値をプラスさせるから、

出来れば取っておきたいところだな」

「そうなんだ!それじゃあそれ、いこう!」

「ちなみに癒し系は状態異常を徐々に回復の効果、小悪魔系は耐性獲得効果があったな。

楽器演奏は味方の士気を高める効果だった」

「そうなんだ………全部で八つしか取れないのかな?」

「ホーリーの説明だとそんな感じだったな。各歌姫に個性を持たせる為の措置だったらしい」

「これは迷うね………」

「もしあれならピュアと相談して担当を分け合ってもいいかもな、

あと、歌姫関連のスキルに関しては、取ったスキルでいらないものを破棄出来るらしいから、

まあ気にせず色々チャレンジするといいさ」

「なるほど………」

 

 適当に作ったにしては、それなりに考えられている仕様だなと思いつつ、

ハチマンは他のスキルの効果について、思い出していた。

 

(歌唱スキルは全ての基本で、歌に効果を乗せられる、だからいいとして、

吟唱は同時に二つの効果を歌に乗せられる、舞踊は味方の目を引き付けて効果人数拡大だったな。

そういえば演技派と偶像(アイドル)の効果を聞くのを忘れてた………)

 

 ハチマンはそう思い、ウズメにその事を尋ねた。

 

「なぁウズメ、演技派と偶像(アイドル)ってどんな効果があるんだ?」

「えっとね、演技派は歌の途中で乗せている効果を変更出来るのかな」

「ああ、歌の効果を一旦切らなくてもいいって事か、それは凄いな」

「うん、かなり融通が効くいいスキルだよね」

「で、偶像(アイドル)は?」

「えっと、歌の効果をフィールド全体に拡大、だって」

「マジか!凄えなそれ!」

「す、凄いのかな?」

「ああ、そんな事はユナにも出来なかったからな、ウズメ、凄いぞ!」

「えへへぇ」

 

 ウズメはそのハチマンの大絶賛にデレデレになった。

 

「そうなるとそれを有効活用しない手は無いな、残り一つをどうするかって事になるのか………」

「多分それ以外にも何かあるよね?」

「だな、ホーリーに聞いてみるか………」

「私に何か聞きたい事でも?」

「うわっ!」

 

 そんな二人に突然声を掛けてくる者がいた、ホーリーである。

 

「な、ななな、何でここに?」

「いや、まあ私だけじゃないんだけどね」

 

 そう言ってホーリーは振り返った。そこにはアスナ、キリト、リズベット、シリカの姿があり、

他にもシノン、セラフィム、リオン、アサギの姿もあった。

そして最後方からピュアが姿を現し、それを見たハチマンはぽかんとした。

 

「ア、アスナ、これは一体………」

「だ、だって、ピュアちゃんから、

今日ここでフランシュシュの新曲の披露があるって聞いたから、

そしたら来ない訳にはいかないじゃない?」

「そういう事か………」

「ごめんなさいハチマンさん、一人でここに来ようといたら、みんなに見つかっちゃって………」

「いや、別に構わないから気にしなくていいって」

 

 ハチマンはピュアに、気にしないように言い含めた。

そしてアスナが声を潜め、ハチマンにこう囁いてきた。

 

「ハチマン君、歌唱スキルの事は内緒にしてあるからね」

「あっ、そうなのか、分かった、それじゃあそんな感じで対応するわ」

「うん、本当にごめんね」

 

 アスナと情報のすり合わせをしたハチマンは、その事をこっそりとウズメに伝え、

せっかくだから、ピュアと二人で先ほどの曲を披露してくれないかとウズメに頼んだ。

 

「ピュアと二人で?」

「ああ、上手くいけば、ピュアにも歌唱スキルが生えるかもしれないからな」

「あ~、そっか!オッケー、それじゃあピュアと話してみる」

 

 ウズメはそう言ってピュアの方に走っていき、

少し会話した後、ハチマンに丸のジェスチャーをした。

それを受けてハチマンは、アスナ達にその事を伝え、八人は大喜びした。

 

「そんな訳だから、みんな、準備が整うまで待っててくれな」

 

 ハチマンはそう言い訳し、こっそりとホーリーに話しかけた。

 

「で、質問なんだけどよ」

「ああ、何だい?」

 

 ハチマンは自分が知っている歌唱関係のスキルを順に上げ、

他に何か無いのかホーリーに尋ねてみた。

 

「もちろんある。だがすまない、ノリで設定したから細かい内容までは覚えていないんだ」

「このポンコツが………」

「ははっ、僕にそう言ってくれるのは君だけだよ」

 

 ホーリーは普段、自分の事を私と呼び、茅場モードの時だけ僕と呼ぶ。

なので今は茅場モードだと判断したハチマンは、少し嬉しくなった。

 

「………まあいいさ、自分で見つける楽しみがあるしな」

「そう言ってもらえると僕も嬉しいよ」

 

 二人は昔のようにそう言葉を交わし、そしてウズメとピュアの新曲披露が始まった。

 

「おおおおお!」

「最高!」

「絶対この曲買うわ」

「ソレイユに入って本当に良かった………」

「私も負けずに仕事を頑張らないと」

 

 そのかなり序盤の段階で、ハチマンはピュアに歌唱スキルが発現した事に気がついた。

隣のホーリーもハチマンに頷く。

 

「来たね」

「来たな、三人目か」

 

 それからしばらくして、サビを終えた時点で二人の動きが一瞬止まった。

 

「………むっ」

「ほう?」

「何かあったか?」

「ああ、二人にカリスマと大声のスキルが、そしてピュア君に偶像(アイドル)のスキルがついたね」

「マジか………早すぎだろ」

「アイドルとしてコンサートのような事をしてるんだ、まあ当然じゃないかい?」

「そう言われると確かに………」

 

 ハチマンは、実戦は訓練の何倍も勝るみたいなものかと思いつつ、

そのまま二人の歌と踊りを楽しんだ。

聞くのは二度目だったが、一回で覚えられるようなものではない為、

未だに新鮮な気持ちで聞けていた。

そして曲の最後になって、二人はそっと頷き会うと、同時にハチマンの方を向いた。

ハチマンだけではなく他の者もその事に気付いたが、ここで野暮を言うような者はいない。

むしろハチマンにその声を届かせろとといった感じで応援すらしていた。

 

「むっ、これは………」

「ホーリー、どうかしたのか?」

「いや、今思い出したんだが、まさかこれを発現させる事が出来たなんて、ちょっと驚いた」

「新しいスキルか?」

「ああ、『ディアレスト』、効果範囲全てに降り注いでいた歌の力を一人に集中させるスキルさ。

ハチマン君は果報者だね」

「いや、別にそれ、俺だけを対象に出来る訳じゃないだろ」

「それはそうだけど、野暮は言いっこなしさ。そしてほら、ウズメ君を見てごらん、生まれるよ」

「っ!」

 

 それでハチマンは、ウズメが遂に、八個目の歌関係スキルを得た事に気がついた。

ウズメは特にエフェクトがかかった訳でもないのに、先ほどより確実に眩しく見える。

 

「二人目の誕生か………」

 

 他の者達もウズメの雰囲気が変わった事に気がついていたが、その理由が分からない。

唯一事情を知るアスナだけが、感動した面持ちでウズメの方を見ていただけであった。

そして曲が終わり、ピュアがウズメに駆け寄って抱きついた。

 

(ああ、歌唱スキルが取れた事をウズメに報告したんだな………)

 

 同時にウズメがピュアに何か言い、ピュアが驚いた顔をしたのが見えた。

同時にピュアは、闘志を燃やすかのように拳を握り締めた。

 

(………で、ウズメが歌姫になった事を知って、すぐに自分もって感じか。

次はピュアのスキル取得のアドバイスをしないとだな)

 

 ハチマンはそう考え、ここに来た仲間達に向け、厳かに告げた。

 

「みんな、聞いてくれ。実はウズメが今、歌姫になった」

 

 それから歌唱スキルの事が説明され、

ハチマンが最近ウズメと二人で何をしていたのか、その理由が分かり、場は大騒ぎとなった。

 

「うおおお!」

「凄い凄い!」

「早く試してみようよ!」

 

 そんな仲間達が盛り上がる中、ハチマンはピュアに話しかけた。

 

「ピュアももう、四つのスキルを得てるよな?」

「は、はい!」

「それじゃあ明日からはピュアの育成だな」

「お、お願いします!」

 

 それでピュアも同様に歌姫になるだろう事が判明し、場は更に盛り上がった。

 

「こうなると、ロビンはどうするのかな?」

「う~ん、ゴリゴリの近接タイプだし、見送る気もするけどね」

「所持出来るスキルの数には限界があるしなぁ………」

 

 この事実を受け、後日クックロビンがした決断は、歌唱スキルのみを所持しておく、であった。

それは置いておき、とにもかくにもALO世界で初めての、

そしてSAOから数えて二人目の、歌姫がここに誕生する事となったのだった。

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