ハチマンくんとアスナさん   作:大和昭

1190 / 1227
第1178話 大人の飲み会?

 八幡はログアウトした後、スマホをチェックして、陽乃達がどこにいるのかを確かめた。

 

「って、ねこやかよ………」

 

 それはまさかのねこやであった。

 

「っていうか、春雄さんや晶さんも、わざわざここに来たのか………」

 

 八幡は呆れながら階段を下り、ねこやへとたどり着いた。

扉には貸切りの札が下げられており、八幡はそっと扉を開け、中を覗き込んだ。

 

「えっと、お邪魔しま~す」

「あら八幡君、いらっしゃい」

「おう、こっちこっち!」

「ども」

 

 そこには陽乃、春雄、晶と共に、黒髪のやや幼く見える女性と、金髪のスラっとした女性、

そして高校生くらいに見えるが、理知的な瞳をした肩くらいの髪の長さの女性がいた。

 

「あ、ザ・スターリー・ヘヴンズの皆さんですか?俺は比企谷八幡、ハチマンです」

「ハチマン君、今日はご足労様ぁ、私は水星楼里、ロウリィ・マーキュリーよぉ?」

「初めまして、丸三千花、テュカです」

「鈴菜怜奈、レレイ」

「初めまして、お会いできて光栄です」

 

 八幡は三人に、本心からそう言った。この三人は、ユージーンが出てくるまでは、

ソレイユを先頭にALOで最強と呼ばれた者達なのだ。

八幡としては、当然礼節をもって接するべき相手である。

 

「伊丹の次くらいにいい男よねぇ」

 

 楼里が八幡を見ながらそう言い、他の二人がうんうんと頷いた。

 

(あれ、伊丹さんの本名を知ってる?)

 

 そもそもこの三人を『Narrow』に紹介したのは八幡であり、

それでナイツ『GATE』が組まれた訳なのだが、

当然その時にコミケのリアルを紹介なぞするはずもない。

八幡はそう思いながら三人にその事を尋ねた。

 

「あの、皆さんは伊丹さんに会った事が?」

「あら、聞いてなかった?今年のコミケの時に、偶然コミケに会ったのよ。

ってこれ、おっさんギャグじゃないわよぉ?」

 

 八幡がそれを聞いて、思わず噴き出しそうになったのを見て、

楼里は念押しするようにそう言った。

 

「すみません、つい笑っちゃいました。でもへぇ、そうだったんですね」

「一応お互いに、参加するって話は事前に聞いてたのよ」

「まさか本当に会えるなんてね」

「すごい偶然だった」

「どんな風に会ったんですか?」

「ええと………」

 

 楼里は八幡にそう聞かれ、懐からスマホを取り出した。

そして何か操作をし、その画面を八幡に見せてきた。

 

「ほら、これ」

「ええと………えっ?これってコスプレですか?」

 

 そこにはALOでの姿を模したコスプレをした三人の姿が映っていた。

 

「ええ、私達はそれなりに有名なコスプレイヤーなのよ」

「おお~!」

「それで今年はリアルで『ザ・スターリー・ヘヴンズ』の格好をしようって事になって」

「伊丹に『すみません、写真いいですか?』って頼まれた」

「なるほど………」

 

 どうやらそこから、三人が伊丹に、ALOの知り合いと同じ格好だと言われ、

それで話していくうちに、お互いの正体が発覚したらしい。

 

「それは本当に偶然でしたね」

「ええ、まあ思ってたのとは少し違ったけど、

リアルでのあの掴みきれない性格が、とても魅力的に思えたわ」

 

 うっとりとそう言う楼里に、千花と怜奈も同じ表情で頷いた。

 

(伊丹さん、愛されてるなぁ………)

 

 三人のうち誰が選ばれるのか、あるいは誰も選ばれないかもしれないが、

八幡はそんな三人にエールを送った。

 

「伊丹さんの心を射止められるように、頑張って下さいね」

「ええ」

「はい!」

「うん」

 

 三人は仲良くそう答えたが、それを八幡は疑問に思った。

男が一人に女が三人なのだ、普通は女同士の争いが巻き起こっても不思議ではない。

というかそうなって然るべきだ。

なのにこの三人はまったく争うようなそぶりも見せず、とても仲が良さそうなままである。

それはどこかで見たような光景であり、八幡は自らを取り囲む環境の事を思い、こう考えた。

 

(ここでその事を聞くのは危険な気がする………)

 

 八幡は曖昧に微笑むだけで、それ以上三人に何も言わなかった。

 

(伊丹さん、ファイトですよ!)

 

 実はこの三人にリアルで偶然会った時、

伊丹も八幡に対して同じようなエールを送っていたのだが、その事を八幡が知る事は無かった。

 

「ええと………あっ、そうだ、それにしてもこのコスプレ、凄い作り込みですね、

三人ともそっくりじゃないですか」

 

 八幡は話題を変えようとしたが、この三人には初めて会ったばかりなのでいいネタが無く、

微妙に近くなってしまったが、そう話題を振った。

写真の中の楼里は、ALOのロウリィと同じく赤と黒のゴスロリ衣装を着ており、

ネコミミにも見えるヘッドドレスを付け、巨大な斧を持っていた。

千花はファンタジーに出てくるエルフが着ているような緑のチュニックを着て、

弓を肩にかけていた。怜奈は黄緑と白、青のローブを身に纏い、杖を手にしている。

二人もテュカとレレイの姿を忠実に再現しており、

三人とも実に見事なコスプレ姿だと言わざるを得ない。

 

「そう、ありがとう。本当に凄く頑張ったのよ、特にこの辺りがね………」

 

 そう言いながら楼里が八幡に身を寄せてくる。

楼里はこの三人の中では一番小柄であり、年齢不詳ではあるが、妙な色気を漂わせており、

八幡はドギマギしつつもそれを表に出さないように、強化外骨格を最大限に駆使していた。

 

「そうそう、私のこれもね………」

 

 次いで千花が八幡の隣でそう言い、怜奈が八幡の正面に立ち、

ブラが見えんばかりに前かがみになって八幡に話しかけてくる。

 

「私としてはこの辺りが………」

 

 これにはさすがの八幡もたまらない。

 

「み、皆さん、そういうのは伊丹さんに………」

「そうよそうよ、八幡君は私のなんだから、あまりくっつかないでよね」

 

 そんな言葉が背後から聞こえ、八幡の頭に重力がかかる。

八幡は慣れたくもなかったのだが、慣らされてしまったその重力の正体を看破し、

頭を変に動かさないように気を付けながら、その重力の主に抗議した。

 

「俺は明日奈のだぞ、馬鹿姉。っていうか胸を俺の頭の上に乗せるのはやめろ」

「あら、本当は嬉しいくせに」

「いや嬉しくねえよ!?」

 

 そんな二人のやり取りを見て、持たざる三人は一斉に自分達の胸に目をやり、

同時に陽乃に凄い視線を向けた。

 

「ちょっとレイさん、それは確かにやりすぎじゃないかしら」

「そうよそうよ、やりすぎ!」

「ぐぬぬ、私にだってまだ望みは………」

「あら、やる気?受けてたつわよ」

 

 多少酔っていた陽乃が、挑発するようにそう答え、四人は八幡から離れてにらみ合った。

だがその隙を見逃さない者がいた、晶である。

 

「むふぅ」

 

 晶は難なく八幡の膝の上に座り、嬉しそうに足をぶんぶんさせた。

 

「ちょ、晶さん」

「「「「あああああ!」」」」

 

 四人は慌てて晶に詰め寄ったが、晶はどこ吹く風で、鳴らない口笛を吹きつつ、

勝手に楼里のスマホを操作して、八幡と一緒に冬コミでのコスプレ写真を眺めている。

 

「ちょっとラキア、ずるくない?」

「ラキアさん、八幡君を独占なんてずるい!」

「むぅ、油断した………」

「あなた達には伊丹さんがいるでしょう?」

 

 呆れた陽乃がそう突っ込んだが、三人は口々にこう反論してきた。

 

「それとこれとは別問題よぉ?」

「今ここに若い子は八幡君しかいないんだし、

ちょっとはチヤホヤされたいって思ってもいいじゃないですか」

「伊丹と八幡さんは別腹」

「あなた達ねぇ………」

 

 陽乃は肩を竦めながら元の場所に戻った。すかさず春雄が陽乃のグラスにお酒を注いでくる。

 

「レイさん、気にしたら負けだって」

「そうね………とりあえず飲みましょうか」

「そうしようそうしよう」

 

 それから二人は困る八幡を肴に酒を酌み交わし、八幡が解放されるまで、

それから一時間もかかってしまったのであった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。