闇風とレンに助けられたシノンは、建物の中に連れ込まれて直ぐに、
フカ次郎に回復アイテムを使用してもらい、一息つくことが出来た。
「ふう………みんな、ありがとう」
「シノンちゃんだけでも無事で本当に良かったよ!」
「シャーリーは最後に女を見せたな!」
「フカ、それを言うなら男でしょ!」
「ああん?レンはシャーリーが男みたいだって言いたいのか?」
「なっ………フ、フカ、違うから!あとシャーリーには言わないで、お願い!」
レンとフカ次郎がそう漫才めいた会話をする横で、
闇風はニヤニヤしながらシノンにこう答えた。
「どういたしましてだな!お前の珍しい声も聞けたし、まあ良かったよ」
闇風がそう言った瞬間に、シノンは闇風のボディを思いっきり殴った。
「ぶほっ………」
「何を言ってるの?私は何も言ってないわよ?」
「いや、お前さっき………」
「幻聴に踊らされるとか馬鹿じゃないの、落ちたらすぐに病院に行きなさい」
「お、おす………」
シノンに対抗出来るはずもなく、闇風はそう言って縮こまった。
その瞬間にシノンは鋭い目で入り口の扉を見た。さすが、シノンは敵の気配感じる感覚が鋭い。
「来たわね」
「うん、ここは一旦引こう」
そのシノンの言葉に外にけん制射撃を行なっていたピトフーイはそう答えた。
「オーケーだぜ、レン!」
「うん!」
フカ次郎とレンが、シノンを抱えて奥へと走っていく。
闇風もそれに続き、ピトフーイと薄塩たらこが最後尾を固めつつ、奥のドアの中に引っ込んだ。
その直後に入り口のドアが蹴破られ、敵が顔を覗かせる。
「クリア」
「クリア」
「クリア」
「よし、突入」
そしてヌルポが腰に剣を差し、銃を構えた状態で中に入ってきた。
「さすが、すぐに下がったか」
「ボス、この建物は結構広いみたいですね」
「まあ落ち着いて確実に敵を殲滅していけばいいだろう、隊を二つに分けろ」
「はっ!」
ヌルポは外を見張るチームと内部を進むチームを作り、
様子を見ながら外のチームを建物の背後に回すつもりでいた。
「よし、前進だ」
内部チームはヌルポの指示を受け、敵がいるであろう奥の扉へと張り付いた。
その中の一人がドアノブに手を伸ばした瞬間に、ヌルポは壁面に茶色い光が走るのを見た。
「んっ?今何か………」
「あっ、ボス!」
見るとそのドアノブに手を伸ばした部下が死亡状態に変わっており、
遅れてその胴がズレ始めた。
「なっ………」
「シャイニング・ライトソードだ、下がれ!」
その言葉に部下達は、慌てて壁から距離をとる。
「ったく、あの手この手を使ってきやがる」
ヌルポはポリポリと頭をかくと、そのまま壁に近付いていった。
「たらお、早くこっちに!」
「まあ待て、ふふん、どうだ、この俺の倶利伽羅は!」
ピトフーイが呼ぶのを手で制し、
薄塩たらこは自慢げにそう言って、輝光剣を仲間にみせびらかした。
「おお~、いつの間に!」
「ああ、前の要塞防衛戦の時にもらえたから、すぐにイコマ君に作ってもらったぜ!」
「そういえばゲットしてたね~」
その前の防衛戦というのは、
八幡達が藍子と木綿季の為にアメリカに行っていた時に行なわれた防衛戦である。
ちなみにその時にサトライザーも輝光ユニットを入手しており、
彼も薄塩たらこと一緒にイコマに輝光剣を作ってもらっていた。その名は刻命剣という。
「たらこさん、おめでとう!」
「ありがとよ!」
「ふ~ん、茶色の刀身か、でも俺の電光石火の方が格好いいな!」
そんな薄塩たらこに対抗意識を燃やしたのか、闇風がそちらに近付いていく。
「ちょ、闇風師匠まで!危ないから早くこっちに!」
「いやいや、この壁は厚いから銃弾も通らないし、今ので敵も下がっただろ、まだ平気だ」
「だな!せっかくだしもう何人か………」
調子に乗った二人がそう言った瞬間に、二人の胸元を赤黒い光が走った。
その瞬間にフカ次郎とピトフーイ、それにシノンのヴァルハラ組が、
いきなり闇風と薄塩たらこに罵声を浴びせる。
「馬鹿?」
「格好悪………」
「使えないわね」
「えっ?えっ?」
レンがその行動の意味が分からず戸惑ったが、そんなレンの目の前で、
ピトフーイとフカ次郎は、シノンの両脇を抱えて全力で後退を開始した。
同時にレンにもフカ次郎とピトフーイから声がかかる。
「レンちゃん、下がるわよ!」
「レン、急げ!」
「あんた達、後で覚悟しておきなさい」
最後に二人に引きずられているシノンからそう声がかかり、
レンは慌てて闇風と薄塩たらこの方を見た。
「やべ………」
「やっちまった………」
そして二人の胴が、先ほどの敵のように横にズレていく。
「あああああ!」
それでレンは状況を把握し、一目散に逃げ出した。
直後に扉が蹴破られ、レンに向けて銃弾が降り注いだが、
レンは自慢の快足を生かし、あっという間にその姿は見えなくなった。
「………まあいいか、二人倒したから敵の残りはあと四人だ」
そう言いつつ後ろから現れたのはヌルポである。
その手にはメイト・チョッパーではない別の武器、赤黒い光を放つ輝光剣が握られていた。
「やれやれ、これを使う羽目になるとはな、これじゃあ訓練にならねえわ」
「まあこっちもやられましたし今のはチャラって事でいいんじゃないですかね」
「それもそうか、それじゃあこれはノーカンだな」
ヌルポは笑いながらそう言って輝光剣をしまい、再びメイト・チョッパーを手にした。
「ふう、やっぱりこっちの方が手にしっくりくるな、
それじゃあお前達、さっさと残りの女狐共を狩るぞ」
「「「「「「「「はっ!」」」」」」」」
一方その女狐達は、本気で焦っていた。
「これはまずい、まずいって」
「相手はまだ精鋭が十人以上残ってるのに、こっちは四人か………」
「まったく油断しすぎなのよ、後で説教しなきゃね」
「ど、どどどどうする?どうする?」
実際のところ、ピトフーイやフカ次郎には、
キリト、あるいはハチマンやアスナのように、銃弾を斬り捨てる事など、
いいところ数発くらいしか出来はしないし、
シノンはまだ足が治っていない上に、狙撃に適する距離をとる事も出来ない。
レンの機動力も、屋内ではその実力が存分に発揮出来るとは言い難く、
こちらにとって、不利な条件が揃いすぎている。
本来なら敵に突入される前に、屋外で暴れてもっと敵の数を減らせれば良かったのだが、
敵がミニガンとRPGを持ち出した時点でそのプランは破綻している。
こうなるともう、完全勝利は不可能だと言っていいだろう。
「どうやら勝ち切るのは難しそうね、でも無様に負けるのだけは避けたいわ」
「そうね、勝敗は兵家の常だから負けるのは仕方ない、でも一矢くらいは報いたいわ」
「だなぁ、やられっぱなしは性に合わねえ」
「うん、やられたらやり返したいよね!」
ピトフーイのその意見に対し、三人は口々に同意した。
「あ、やっと治った」
ここでシノンの足が回復した。どうやら五分経ったようだ。
「ピト、何かいい案はある?」
「例え全滅しようとも、敵のリーダーは倒す。これしかないわね」
そのシノンの問いに、ピトフーイは即答した。
「それじゃあ玉砕覚悟の徹底した一人狙い?」
「そういう事。でももし目的を達成出来て、誰か一人でも生き残ったら、即座に撤退よ」
「分かったわ、それじゃあ一丁やってやりましょう」
「おう!ヴァルハラ魂を見せてやるぜ!」
「わ、私も頑張る!」
こうして四人は自らの意思で死地へと飛び込んだ。