詩乃達の空挺降下を見学した後、八幡とクルスは次期社長室で、熱心に勉強に励んでいた。
「………で、ここがこうなるので、つまりはこうなる訳です」
「なるほど、相変わらずマックスは教えるのが上手いな」
「えへっ、ありがとうございます、八幡様!」
クルスはちゃっかりと八幡の隣に座り、さりげなくボディタッチも交えており、
大満足状態であった。
「さて、それじゃあちょっと休憩するか」
「分かりました、何か飲み物でも買ってきますね!」
「いやいや、教えてもらってるのにマックスをパシリになんかさせられないだろ、俺が行くって」
「それじゃあ二人で一緒に行きましょう!」
「ん?おお、そうだな、そうするか」
八幡とクルスはそのまま部屋の外に出ると、一番近くに自販機がある遊戯室へと向かった。
「せっかくだから、ちょこっと何かやってくか?」
「そうですね、息抜きにちょっとだけならいいかもですね」
「マックスは何が得意なんだ?ゲームのジャンル的に」
「ゲーセンにあるようなのだと、クイズゲームが一番得意ですね、
音ゲーやダンス系も普通に得意ですよ」
「へぇ、それは見てみたいな」
「見てくれるんですか!?」
「へっ?何か問題でも?」
「いいえ、是非お願いします!」
「お、おう」
いきなりクルスのテンションが上がり、ハチマンは戸惑ったが、これには理由がある。
基本八幡に、いつ何を言われてもいいように備える傾向のあるクルスは、
この遊戯室が出来た直後から、こういう機会がいずれ訪れると予想し、
暇を見ては一人で魅せるダンスプレイの練習をしてきていたのだ。
もちろん八幡以外には絶対に見られないように、
他人がいる時は某作品の三色菫さん並みの重装備をしており、
徹底して《揺らさない》ように気を付けていたのだが、
今回その封印が、遂に解かれる事となったのである。
クルスのテンションが上がってしまうのも、仕方がない事だろう。
「さてと………」
遊戯室に入ると、中には誰もいなかった為、クルスは心の中でガッツポーズをした。
(よっしゃぁ!これで露出を増やせる!)
クルスはそう考え、いきなり上着を脱ぎ始めた。
「お、おいマックス………」
「はい、どうかしましたか?八幡様」
「い、いや、どうして脱ぐのかなと………」
「きっと凄く汗をかいちゃうと思うんですよ、だからですね」
「そ、そうか、それじゃあ仕方ないな」
そう答えながらも八幡の目は、
どうしてもクルスの胸とミニスカートから伸びる足へと向いてしまう。
クルスはその事に興奮してしまい、背筋にゾクゾクっと快感が走るのを感じながら、
筐体の前に立って八幡に微笑んだ。
「それじゃあちゃんと見てて下さいね、八幡様」
「ああ、頑張ってな」
それからクルスは八幡ただ一人の為に、今まで培ってきた技術を存分に披露した。
とにかく揺れる、揺れて揺れて揺れまくる。ついでに下の方も、ひらひらひらひらとめくれ、
八幡は目の焦点を一ヶ所に絞らないように、ぼ~っとクルスの全身を見ようと凄まじい努力をし、
クルスが余裕でクリアしたのを見て、大きな拍手をした。
「おおおおおおお」
八幡は感動したように唸ったが、具体的な事は何一つ言わない、いや、言えない。
凄く揺れた、とか、クルスは喜ぶのだろうが、八幡の口からそんな事を言えるはずがないからだ。
「八幡様、私のカラダ、どうでしたか?」
(いや、そこでカラダとか言うんじゃねええええ!)
八幡はそう思いながら、慎重に言葉を探した。
「や………躍動感に溢れてて、とても良かったぞ」
「ありがとうございます!一生懸命練習したんですよ、八幡様に見てほしくて!」
「そ、そうか、その気持ちはとても嬉しく思う」
(出来れば次は、もうちょっとソフトにね?)
八幡はクルスに目でそう訴えかけたが、クルスは当然別の受け取り方をした。
(ああっ、八幡様があんなに情熱的な目で私を見てる、
どうしよう、このままだと私、妊娠しちゃうかも!
よし、次はもうちょっと工夫して、八幡様が私を襲いたくなるように頑張ろう!)
八幡の受難?はこれからも続く。
パチパチパチ。
その時後ろの方から誰かの拍手が聞こえ、二人は慌ててそちらの方を見た。
「クルクル、グッジョブ!」
「アルゴか………」
「あっ、ありがとう、アルゴさん」
この時八幡とクルスは二人とも、男じゃなくて良かったとホッとしていた。
八幡はクルスの為を思ってであり、クルスは八幡以外には絶対に肌を露出させない為であったが、
結果的にその思考は一致している。
「いやぁ、クルクルはエロいよな、オレっちはガリガリだから羨ましいゾ」
「それはそれで魅せ方によってはとんでもなくエロくなるから大丈夫だよ。
それにアルゴさん、最近肉付き良くなってきたじゃない」
「ああ、確かに最近ブラがちょっときついかモ」
「うんうん、明らかに大きくなってるよね、おっぱい!」
(俺の前でそんな生々しい話をしないでくれませんかね?)
八幡は心が滝汗状態になり、慌てて話題を反らそうとした。
「と、ところで詩乃や風太達の様子はどうだ?今は何をやってるんだ?」
「んん~?二人なら早退してGGOに行ったゾ」
「GGOに?」
「あいつら何やってるんだ、防衛戦でも発生したか?」
「八幡様」
「おう、ちょっと行ってみるか」
「はい」
「お?行くのか?気を付けてナ」
アルゴはそう言いながら、自販機の方へと向かっていった。
どうやらここに来たのは八幡達と同じ理由らしい。
そして二人は次期社長室へと戻り、そのままGGOへと行ってみる事にした。
「それじゃあマックスはそこのソファーを使ってくれ、俺はこっちのソファーを使うからな」
「待ってください八幡様、そうするともし何かあった場合、ソファーの下に落ちちゃう可能性が」
「ん?ああ、まあ大丈夫だろ」
「いえいえ、八幡様の体に何かあったら私が明日奈や室長に怒られちゃいます!
なのでこうすればいいと思います!」
クルスはそう言って、二つのソファーの間にあるテーブルをどけて、
ソファーをそのままくっつけ、二人が絶対に落ちないようにした。
要するに、自分と八幡が並んで寝られるようにしたのである。
「い、いや、でもな」
「明日奈に怒られちゃいます!」
「………お、おう」
さすがの八幡も、明日奈の名前を出されるとそれ以上何も言えない、クルスの計略勝ちである。
「それじゃあ行ってみましょう!」
「ああ、行こう」
そして八幡がGGOにログインしたのを確認すると、
クルスは八幡の手のすぐ横に自分の胸がくるようにし、むふふとほくそ笑んだ。
「ログイン中に間違いよ、起これ!リンク・スタート!」
そんな欲望駄々漏れな事を言いながら、クルスもGGOへとログインした。
「シャナ様!」
「お、その姿は久しぶりだな、マックス」
「えへへ、銃士X見参です!」
「今フローリアに確認したんだが、防衛戦はまだまだ起こらないらしい」
「そうなんですね、それじゃあ二人は一体どこに………」
「フレンドリストの位置情報で見ると、どうやら砂漠地帯にいるみたいだな」
銃士Xはそう言われ、シャナに習ってフレンドリストを開いた。
「あっ、ピトとかレンちゃんもそっちにいますね」
「らしい、なのでとりあえず、サプライズを狙ってそっちに向かってみよう」
「分かりました!」
そのまま二人はゾディアック・ウルヴズの借りている車庫へと向かった。
「………ニャン号とホワイトが無いな」
「ブラックが残ってて良かったですね」
「だな、それじゃあ行こう」
「はい!」
そのままシャナは運転席へと向かったが、それを銃士Xが止めた。
「あ、シャナ様、運転は私が!」
「ん、そうか?でも大変だろ?俺が運転するって」
「いえ、ほら私、年末の忘年会で車をもらったじゃないですか、
それでこの前免許をとったんですけど、ここでちょっと練習しておきたいんですよ」
「あ、そういう事か、それじゃあ頼もうかな」
「はい!あ、あと、最初はやっぱり不安なんで、もしリアルで初めて乗る時は、
シャナ様に隣に乗ってて欲しいんですけど………」
「ん?ああ、確かに最初って不安だよな、分かった、それじゃあ今度な」
「はい、お願いします!」
(よっしゃああああああ!)
クルスはその優秀さを自分の欲望の為に遺憾なく発揮し、
こんな感じで八幡との距離を、日々確実に詰めていっているのである。
「よし、それじゃあ………ん、ストップだマックス」
「どうかしましたか?」
「いや、何か怪しい奴らがいると思ってな」
見ると確かに前方に、いかにもといった感じの装備で身を固めた四人のプレイヤーがいた。
四人はレンタルのハンヴィーに乗り込み、シャナ達が向かう予定の方向へと車を走らせていく。
「あ、あれって確か、ゴエティアとかいう最近売り出し中の、PKスコードロンですよ」
「そうなのか?よく知ってるな」
「はい、情報収集だけはしっかりやってますので!」
「ふ~む………潰すか?」
相変わらずシャナは、PKスコードロンが嫌いのようだ。
「それはまた今度にしましょう、今は早くシノンやピト達の所に行かないとですし」
「まあそうだな、よし、それじゃあ行こう」
「はい!」
銃士Xはそのままブラックを発車させ、二人は砂漠地帯へと移動を開始した。
戦闘まで行けませんでしたが、今年最後の投稿がこれというのがまた、この作品らしいのではないでしょうか!
一日は出来れば夜のうちに早めに投稿する予定です、皆さん、よいお年を!