仕事の事もありましたが、左下の歯茎がめっちゃ腫れてしまい、
痛みが引くまでに一週間以上かかったりとか、
PCを買い替えた為、執筆環境を整えるのに辞書登録とかで時間をとられたりとかですが、
次話は出来るだけ早く投稿出来るように頑張りますので宜しくお願いします!
ソレイユから自宅に戻った徹大は、軽い興奮状態にあった。
「まさかこんなチャンスが来ようとは思ってもいなかったな。
帰還者用学校なら、悠那の事を知っている者が必ずいるに違いない」
「私がどうかしたの?」
そんな徹大に、ぬいぐるみのユナが話しかけてきた。
「ああユナ、実は来週、帰還者用学校に行ける事になったんだ」
「そうなの!?何で?」
「今度理事長と一部の教師が交代するから、その歓送迎会があるらしい。
そこで色々と余興もやるらしいんだが、どうしても行ってみたかったから、
来賓として将来の事なんかを少し話すって事で、参加させてもらえる事になったんだよ」
「へぇ、事務的な行事でそんな事をやるなんて、自由な学校なんだね」
「そう言われると確かにそうかもしれないね」
徹大はユナにそう言われ、そんな帰還者用学校の校風を少し羨ましく感じた。
「で、余興ってどんなの?」
「ああ、私が知っているのは、八幡君のクラスで演劇をやるって事だけかな、
まあ他にも色々と何かやるんじゃないかな」
「それ、私も行きたい!」
徹大はユナがいきなりそう叫んだ為、ギョッとした。
徹大はユナが自覚のないまま八幡に恋しつつあるなどとは想像もしていなかった為、
その食いつきの良さに驚いただけであったが。
「そ、そんなに興味があるのかい?」
「うん!」
「そ、それなら連れてってやりたいところだが、う~ん………」
徹大はユナが望む事は出来るだけ叶えてやりたいと思っていたが、
しかしこのユナが人目に触れるような事は絶対に避けたかった為、悩む顔を見せた。
ユナはその表情から徹大の感情の動きを推測する。
「あっ、む、無理なら別にいいからね?」
そう言われるとどうしても叶えてやりたくなるのが父親である。
「………いや、その日はお前のデータをカメラにリンクさせて、それを持ち込もう。
だがもしカメラ類の持ち込みが禁止だったら諦めてくれよ」
「やった!ありがとう、お父さん!」
徹大は直ぐに陽乃に連絡をし、カメラの持ち込みの可否について尋ねてみたが、
結果は問題なくオーケーであった。
「オッケーだそうだ」
「やった!」
ユナは飛び上がらんばかりに喜んだ。
その姿をとても微笑ましく思いつつ、徹大は当日に備えて準備を開始したのだった。
そして迎えた当日の朝、徹大は朝ポストを見て、
そこに帰還者用学校からの郵便が届いている事に気が付いた。
「ん、これは………」
そこに入っていた冊子には、こう書かれていた。
『帰還者用学校歓送迎会のしおり』
その修学旅行的なノリに徹大は脱力しつつ、ペラペラとそのページをめくってみた。
そこに書かれていた内容は、徹大をして絶句させるものであった。
『施設概要(クローク、露店等)』
『出し物案内(演劇、自主制作映画)』
『ミニコラボコンサート、神崎エルザ&フランシュシュ』
『来賓一覧』
『プログラム進行案内』
「な、何だこれは………」
(修学旅行かと思ったら文化祭だったか………)
徹大はそう思いつつ、そのまま部屋に戻り、とりあえずしおりを詳しく見てみる事にした。
「ど、どこから突っ込めばいいやら………」
そこには真面目な文章は一切書かれておらず、ただレクリエーション面にのみ言及されていた。
「………まあいいか、別に何か困る訳じゃない」
徹大はそう割り切り、準備しておいたカメラ付きのネクタイピンを手に取った。
最初は普通にスマホと連動させようとしていたのだが、
いい大人がスマホを他人に向けて撮影するというのは徹大の精神的につらい。
なのでネクタイピン型のカメラを何とか入手し、自身で手を加え、
それによって搭載されたフォーカス機能もユナに任せる事にしたのであった。
「それじゃあ行こうか、ユナ」
「うん!」
そして二人はそのまま帰還者用学校へと向かった。
学校に到着すると、そこは既に生徒達でごったがえしていた。
一応今日までは理事長の任にある雪ノ下朱乃が手配した露店に群がっているのである。
「まるで花見………いや、夏祭りだな」
徹大はそう呟きつつ学校の敷地内に足を踏み入れた。
式の開始の時間まではまだかなりあるが、
それはそれまでの時間で余興が行われるとしおりに記載してあった為であり、
徹大はユナの希望もあって、時間よりもかなり早く来たのであった。
『うわぁ、うわぁ、凄い楽しそう!』
徹大が密かに付けているイヤホンから、そうユナの声が聞こえてくる。
「ああ、そうだね」
徹大は独り言を呟いていると誤解されないように、周囲に気を配りながらそう答えた。
一応喋れない時は返事をしないと事前にユナに言い含めており、
ユナも基本、独り言を呟くようなノリで話をすると決めていた。
「しかしこれは………」
そんな生徒達の笑顔を見ながら、徹大はそこに暗さが全くない事に驚いた。
ここにいるのは全てSAO事件の被害者である事は間違いなく、
未だにその事をひきずっている者が多数いてもおかしくはないはずだからだ。
だが生徒達の表情は皆明るい。
『みんないい笑顔をしてるね、お父さん』
「………ああ」
ユナのその言葉に徹大はそう答えたが、内心では別の事を考えていた。
(悠那は今も苦しんでいるというのに、世の中は何と不条理な事か………)
その考えによって、徹大の目が危険な光を帯びようとした丁度その時、
遠くから賑やかな集団が近づいてくるのが見えた。
『お父さん、八幡さんだよ!』
その声で徹大は我に返り、その中心にいるのが八幡だと気が付いた。
「あ、ああ、そのようだね」
そのまま観察していると、周りにいる生徒達が、
皆嬉しそうに、八幡達に挨拶しているのが分かった。
「これはまた随分と慕われているんだな」
『まあ当然じゃない?』
「それは………いや、何でもない」
徹大とてゲーム業界に深く関わっている人間であり、
SAOのようなVRMMOにおいて、トップ層にいるという事は、
妬みや嫉み、その他諸々の悪感情を持たれるのが当然だと認識しており、
この状況は徹大的に少し異常に見えてしまったのだった。
ちなみにこれは、SAOにおける、八幡の特殊な状況に起因する。
八幡は攻略後半までは、どちらかというと日陰を歩んできた人間であり、
ハッキリと表舞台に出たのは血盟騎士団の参謀に抜擢された時である。
そこからほとんど時を経ずしてSAOがクリアされた為、
八幡がSAOのクリアに貢献したという事実だけが残り、
悪評が広まる暇が全く無かったのである。
例外的に、元攻略組のメンバーだった者の中には悪感情を持っていた者も存在したのだが、
そういった者達は、最後の戦いの様子を目の当たりにしていた為、
八幡達に悪感情を持つ事はもはや不可能となっていたのである。
『何か気になる言い方だなぁ』
「いや、本当に何でもないんだユナ」
『う~ん………』
ユナはその徹大の返事に納得していなさそうだったが、
それに答えようとした時、徹大の前に誰かが立った。
「あの、重村教授ですよね?ちゃんとお会いするのは初めてですね。
私はソレイユの比企谷と申します、以後お見知りおきを」
そう、当の八幡が徹大を目ざとく見付け、声を掛けてきたのである。
「こ、これはご丁寧に、重村です」
徹大は虚を突かれ、そう答えるのが精一杯であった。
「今日はわざわざ来て頂いてありがとうございます」
八幡はそう言って丁寧に頭を下げてくれた。
こうなると徹大としては、やや居たたまれない気持ちになる。
何故ならそもそもここに来る事を希望したのは徹大自身だからだ。
「い、いや、そもそも私が希望した事だからね」
「えっ?」
どうやら八幡はその事は聞かされていなかったらしく、キョトンとした顔をした。
「帰還者用学校にご興味が?」
「ああ、実は私事で申し訳ないんだが、
亡くなった私の元教え子の事を知っている人がいないかなと思ってね」
これは事前に考えてあった言い訳である。
もっとも教え子の中に、確かにSAOで死んだ者がいた為、決して嘘ではない。
そしてそれで八幡はピンときたのか、やや気まずそうな顔をした。
「………あの、クリアが遅れてしまい、申し訳ありませんでした」
まさかそうくるとは思わず、徹大は少し慌てた。
さすがに一プレイヤーの生死に関してまで、八幡に責任があるとは思っていなかったからだ。
「いやいや、彼が死んだのは君のせいじゃない。
むしろ助けてもらった人の方が多いんだ、そんな事を気にしないで欲しい」
「………はい、ありがとうございます。
あの、もし良かったら、そのプレイヤーの名前をお聞きしても?
私が責任を持って、各クラスのリーダーに、調べてくれるように頼んでおきますので」
「本当かい?それは助かるよ。まさか来賓挨拶で、そんな事を言う訳にもいかないし、
正直どうすればいいのか困っていたんだよ」
「はい、お任せ下さい」
八幡はにこやかにそう言うと、徹大に頭を下げ、仲間達と共に去っていった。
その中に、かつて長野で一緒になった萌郁の姿があり、
萌郁から徹大に、鋭い視線が向けられていたのだが、
徹大は他に一緒にいたエルザや愛、純子、そして明日奈の方に気を取られてしまい、
その事に気付く事はなかったのであった。