今後とも頑張りますので、宜しくお願いします。
2018/02/18 句読点や細かい部分を修正
「ちょっとシャナ、本気なの?ここって例の無限地獄じゃないの?
確かにこの宇宙船の艦橋に陣取れば、最初は一方的に下の敵を攻撃する事が可能だけど、
一度攻撃を仕掛けたら、その時下にいる全部の敵が上に上ってきて、
更には部屋の中にまで敵がPOPするせいで、
例えパーティで狩りに来たとしても銃での乱戦になっちゃうから、
フレンドリーファイアだらけになって結局全滅しちゃうっていう、
いわく付きの狩場じゃない!
壁を背にして戦おうとしたチームもあるみたいだけど、まったく敵が途切れないから、
結局弾切れで全滅したって聞いてるけど」
「おお、テンプレの説明的セリフだな、ピト。おかげで手間が省けた」
そのピトフーイの長いセリフのお陰で、残りの三人も、ここがどういう狩場か理解した。
「まあとりあえず俺に付いてきてくれ。艦橋部分に陣取るぞ」
五人はそのままシャナの案内で、宇宙船の残骸へと進入した。
船の中には敵はいない為、戦闘になる事も無く、安全に艦橋へと辿り着く事が出来た。
「で、これからどうするの?」
「当然下の敵を攻撃する。長い射程の銃も必要無い。まあ、練習だ、練習。
シノンは狙撃の練習で、出来るだけ遠くにいる敵を狙えばいいし、ピトは好きにしてくれ。
シズとケイは、とにかく動いている敵に、確実に弾を当てる事を覚えればいい」
「たったそれだけ?それだと結局、数の力に押し潰されちゃうだけなんじゃないの?」
シノンがそう、当然の疑問をシャナにぶつけてきた。
「まあそうだな。そこで一つ、絶対に守って欲しい事がある。
俺が指示をしたら、そこからは一切、銃を撃つのをやめてくれ。
ちなみにそれとは関係なく、フレンドリーファイア対策として、
この部屋の中で銃を使うのは禁止な、絶対だぞ」
四人はその指示に、こくこくと頷いた。そして戦闘が開始された。
「敵は人型のロボットタイプだ。急所は人と同じ、頭、首筋、心臓あたりだから、
落ち着いてしっかり狙ってな」
「「「「了解!」」」」
四人はとりあえずセオリー通りに光学銃を使い、窓から顔を出すと、
下にいる敵に攻撃を開始した。敵には反撃の手段も無い為、安心して撃つ事が出来る。
そして最初の攻撃が命中した瞬間、下にいた敵が、一斉に船へ向けて移動し始めた。
「来たよシャナ、そろそろここにも敵が沸くかも。どうする?」
「俺が全て斬り倒す。皆は銃での攻撃に集中していてくれ」
「わ、分かった」
四人はそのまま射撃に集中した。下で倒す事が出来た敵は問題無いのだが、
やはり何体かは、ダメージを負ったままではあるが、船の中に進入してきており、
敵がこの部屋に突入してくるのも時間の問題と思われた。
「今の所はまだ敵が沸いてないけど、ここも危険になってきたかな?ねぇ、シャナ」
そう言ったピトフーイの背後で、シュッという音が聞こえ、
ピトフーイは何事かと思い、慌てて後ろを向いた。そのすぐ目の前に、機械の顔があった。
ピトフーイは慌ててそちらに銃を向けようとしたのだが、その瞬間、
先ほどのシャナの言葉がピトフーイの頭をよぎり、ピトフーイは、銃を撃つのをやめた。
代わりにピトフーイは、シャナに向けて叫んだ。
「シャナ、敵が!」
その言葉と共に、目の前の敵の首が、コロンと落ち、
その敵の姿が、ポリゴンの光となって消滅した。
その向こうには、ナイフを構えたシャナの姿が見えた。
他の三人も、何事かとこちらを見たのだが、大丈夫そうだと分かると、再び射撃を開始した。
「おう、ちゃんと見てるからな、安心して射撃に集中してくれていい、ぞっと」
そう言うとシャナは、振り向き様にナイフを振るい、
後方に沸いたばかりの敵の首を刎ねた。その直後に、部屋の入り口から敵が姿を見せ始め、
その瞬間にシャナから、指示がとんだ。
「よしみんな、一度攻撃を中断してくれ。例え敵がわいても、
下手に部屋の中で、ナイフとかを振り回さないでくれよ。俺が攻撃をくらっちまうからな」
「シャナ、手伝おっか?」
人並みにナイフを使えるピトフーイが、そうシャナに声を掛けた。
シャナは、入り口から迫ってくる敵の首を刎ねながら、少し考えた後に言った。
「いや、ピトとはコンビネーションに不安があるからな、そうだな、シズ、ちょっと頼む」
「うん、分かった」
「シズには多分、こっちの方がいいよな。これを使ってくれ」
「シャナ、レイピアなんて持ってたんだ」
シャナがそう言ってシズの方に投げてきたのは、一本のレイピアだった。
「急ごしらえだが、NPCの職人に作ってもらった、シズ用の武器だな。
ピトとの決闘の前に渡しても良かったんだが、それだとハンデがちょっとな」
「どゆこと?」
きょとんとするピトフーイに、シャナが言った。
「シズの本来のメインウェポンはレイピアだからな。
もし決闘の時、シズがそれを使ってたら、お前多分、数秒で沈んでたぞ」
「いやいや、さすがにそれは……え、本当に?」
「まあ、見てれば分かる」
「は~い」
そしてシャナとシズは背中合わせの体制になり、残りの三人は部屋の隅へと避難した。
「それじゃ久々に、やるか」
「うん」
そのシズカの返事と共に、新たな敵が三体、部屋になだれ込んできた。
シャナは先頭の敵を踏み台にして、奥の二体へ向かって飛んだ。
次の瞬間、先頭の敵は、シズの連撃に貫かれて動きを止めた。
シャナは着地と共に、左右の手を横に振り、同時に二体の首を刎ねていた。
そしてシャナはすぐに振り返ると、シズに向かってナイフを投げた。
「ちょっ」
ピトフーイは、慌ててそう叫んだが、ナイフはシズの横を擦り抜け、
いつの間に沸いていたのか、シズの背後に立っていた敵に突き刺さった。
ピトフーイが感心する暇も無く、シズはそのまま前方に突撃し、シャナの横を擦り抜け、
今まさに入り口から現れようとしていた敵の首を貫いた。
シャナはシャナで、シズのいた方向へと突進し、先ほどナイフを投げた敵が消滅した瞬間に、
空中に残ったナイフを掴むと、そのまま左に向けて大きく手を振るった。
その瞬間に、左にPOPしたばかりの敵の首が宙を舞った。
「す、すご……」
呆然と呟くピトフーイの横で、同じくシノンが呆然と呟いた。
「何これ……シャナは分かるけど、シズって何者?」
「あ、知らなかったんだ。シズは閃光だよ、シノノン」
「閃光!?閃光って、あの?っていうか、閃光って女の子だったの!?」
「ですです」
ケイがそう答え、シノンは激しく戦う二人の姿を見ながら言った。
「そうなんだ……すごいね……」
シノンは、噂の中でしか聞いた事の無い、知る人ぞ知る有名人が、
立て続けに自分の前に現れた事に、ただひたすら驚愕する事しか出来なかった。
二人はまるで舞うように絶妙のコンビネーションを見せ、どんどん敵を葬っていく。
それを眺めていたピトフーイとシノンは、放心ぎみに呟いた。
「なんか、すごく綺麗だね」
「息がピッタリ……二人ともお互いをほとんど見てないね」
二人は顔を見合わせ、再びシャナとシズへと目を向けた。
「よしシズ、とりあえずここまでだ」
「了解!」
気が付くと戦闘は終わっており、二人は無傷でこちらへと歩いてくる所だった。
無限に敵が押し寄せてくるはずの場所なのに、一向に敵が現れる気配が無い。
疑問に思ったピトフーイが、シャナに尋ねた。
「あれ、シャナ、敵は?」
「とりあえずこれで全滅だな」
「え?そんな事あるの?ここって無限地獄でしょ?」
「そうだな、説明が必要だよな」
そう言うとシャナは、ストレージから飲み物を五つ取り出し、配り始めた。
四人はそれを飲み、ほっと一息つくと、シャナの言葉に耳を傾けた。
「実はここの敵はな、無限に沸く訳じゃないんだよ」
「え?でも……」
「前提が違うんだよ。ちょっと下を見てみてくれ」
そう言われ、四人は下を見た。
そこには戦闘開始前と同じように、敵が闊歩している姿が見えた。
「こっちに気付いてる気配はまったく無いけど、普通に敵が歩いてる」
「部屋の中にも、まったく敵が沸く気配が無いね」
「だろ?要するにだ」
シャナは少し間を置くと、分かりやすいように説明を始めた。
「あ~、モブはどうやってプレイヤーを見つけると思う?」
「そりゃぁ、直接見て?」
「じゃあ、地面の中からいきなり攻撃を仕掛けてくる敵は?」
「それは……足音、とか?」
「だな。要するにモブごとに、敵をどう判別しているかの基準が違うんだよ」
「あ!」
これはGGOをプレイしている層が、
ALOをプレイしている層とほとんどかぶっていないが故の盲点であった。
ファンタジー系のゲームだと、敵がこちらを感知する方法は、視覚や聴覚である事が多い。
もっともほとんどの敵は、基本視覚に設定されている。
「ここの敵はな、光学銃や実弾銃等の、音に反応するように設定されているんだよ。
だから銃を撃つのをやめれば、それ以降に沸いた敵は、こっちには反応しない。
そして、いわゆるアクティブな敵を全滅させれば、部屋に沸く事も無くなるって寸法だ」
「そんなのよく分かったね。今まで誰にも分からなかったのに」
「それはまあ、俺の持っている、このナイフのせいだろうな」
シャナはそう言うと、手に持っているナイフを強調するように、四人に見せた。
「えっと、どういう事?」
「あ、そっか!」
その時シノンが、何かに気付いたように声を出した。
シノンは、BoBの映像を何度も見ている為、
シャナと他のプレイヤーのナイフを使う技量が隔絶している事を理解していた。
「シノノン?何か分かったの?」
「うんピト、考えてもみてよ。普通のプレイヤーは、敵が接近してきたら、
銃を使って待ち伏せようとか、そういった事を考えるでしょ。
もちろん弾切れになったら、あるいはナイフを使うかもだけど、
シャナやシズのように、敵を瞬殺する技量を持っているプレイヤーは、ほぼ皆無。
だから例え近接戦闘を挑んでも、迫りくる敵を全滅させるような事は出来ない」
シャナはシノンに頷き、詳しい説明を始めた。
「正解だ。俺がここでソロ狩りが出来るのも、そういう理由だな。
最初ここに来た時、さすがの俺も銃だけじゃ対処出来なくなってな、
途中から頑張って、ナイフで延々と敵を殲滅する事になった。
そしてそろそろきついかなと思った頃、突然敵からの攻撃がやんだんだ。
それでもしかしたらと思って色々試してみた結果、さっき言った結論にたどり着いた」
「そっかぁ」
「偶然とはいえ、やるなぁ、お兄ちゃん」
「シャナ、すごいね!」
「それは確かに、あんたにしか出来ないわ」
四人は説明を聞き、口々にシャナを賞賛した。
「ちなみに普段は、光学マシンガンを使って、弾切れまで全部撃ったら、
その後は武器をしまって、ここで待ち伏せる事にしてる」
「なるほど」
「それじゃ理解してもらった所で、次のセットにいくか。
一定時間で攻撃をやめる事を考慮して、弾込めの時間を省く為に、
いくつかの武器を交互に使ってもいいと思う。そこらへんはまあ、個人で工夫してくれよな」
こうして次の狩りが開始され、五人はまた同じように、無傷で大量の敵を葬った。
それを何セットか繰り返して、この日の狩りは終了した。
「すごい……もうこんなにレベルが上がってる」
「これはちょっと反則だよね。まあシャナやシズクラスの人がいないと、
まったく成り立たない戦法だけどね」
「BoBまで一度もシャナの名前を聞いた事が無かったのは、こういう事だったんだ」
「昔からシャナは、ソロ気質だったからね」
そして口々に狩りの感想を述べる四人に、シャナは言った。
「ところで戦利品についてだが、今回はパーティで来てるから、
戦利品をプールしているウィンドウが、実はすごい事になっている。まあ見てみてくれ」
そう言われ、ウィンドウを開いた四人は、驚きの声を上げた。
「な、何これ……」
「銃がいくつかと、弾のセットに、各種アイテムがすごい数……あ、これレアな銃」
「シャナ、こんな事をずっとやってたって事は、もしかしてお金持ち?」
「自慢する訳じゃないが、かなり持ってる。
リアルマネー換算で、まあ、百万くらいにはなるだろうな」
「ひゃっ……百!?」
「ちょっ……」
この頃のトッププレイヤーの月収は、十万~二十万であった。
シャナがプレイを始めてから、実はまだ一ヶ月。これは異常な数字であった。
「という訳で、ケーキ食べ放題の金は心配しなくてもいい。
もっとも金目当てでやってる訳じゃないし、あまり現金化する気も無いけどな」
「余裕ね……」
「身の丈に合わない額の金を持つと自分がダメになりそうだから、まあ戒めだ、戒め」
そもそもピトフーイはお金に困ってはいないし、お嬢様であるシズカもそうだ。
ベンケイは常識的な観点から、シャナと同じような意見を持っていたし、
シノンも稼げればそれはそれで嬉しいが、お金に飲まれるような性格はしていなかった。
とりあえず五人はその場で相談し、いわゆる消耗品の類はそのまま山分けし、
残りの銃等は、全て売り払った後で山分けする事に決めた。
それでも一人あたりの取り分は、三万円程度になった。大金という程では無いが、
さりとて十分な額である。その為ベンケイとシノンは、思わぬ臨時収入に喜ぶ事となった。
「いや~、今日は撃ちまくったなぁ」
「うん、かなり成長出来たし、楽しかった!」
「冒険バンザイですね!」
「みんな、今日は誘ってくれて本当にありがとう」
「思った以上に上手くいったようで何よりだ。次も何日か後に冒険に出るつもりだから、
またその時は、召集をかけるかもしれないが、その時暇だったら、また宜しくな」
そして五人はお互いフレンド登録を済ませると、それぞれログアウトしていった。
ちなみにケーキ食べ放題は、予定が決まり次第、GGO内でメッセージを入れる事となった。