ハチマンくんとアスナさん   作:大和昭

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2018/03/01 句読点や細かい部分を修正


第220話 南はその作戦を、前向きに見守る

「……とまあ、これが当時あった事件の全容だな」

「そんな事が……」

 

 雪乃達が『ヴァルハラ・ガーデン』でガールズトークを繰り広げている頃、

八幡達の説明も終わり、陽乃達三人は、SAO組の者達が、写真の男を嫌う理由を理解した。

 

「これがその、クラディールって訳ね」

「そんな奴だったんだ、これはもう、ぶちのめして支配下に置くしかないね!」

「支配下?」

 

 そのエルザの言葉に、南は目を丸くした。

八幡は南に、エルザも実はストーカー被害にあっていた事、今はその男を傍に置いている事、

等を軽く説明した。南はエルザを心配そうに見つめたが、

当のエルザがまるで問題の無さそうな態度をとっている為、南はそういう事もあるのかと、

何となく納得し、それ以上何か言うのをやめた。

 

「まああの時もケースもエルザのケースも、結局似たようなものなんだよな。

ストーカーされる方が、する方よりも遥かに強い場合は、油断さえしなければ、

最終的には簡単に解決出来るって、まあそんな理屈だけどな」

「現実だと中々そうはいかないよね」

「まあな」

 

 八幡はその南の言葉に重々しく頷いた。次に八幡は、エルザの方を向いて言った。

 

「あいつを支配下に置くつもりはない」

「え~?何で何で?」

 

 そのエルザの疑問に、八幡は子供っぽくこう言った。

 

「あいつの視線の触れる所に、明日奈を置く事は絶対に許さん。

あの蛇のような視線は正直気持ち悪い。とにかくあいつは嫌いだ」

「ほぉ~」

「へぇ~」

「ふ~ん」

「何だよお前ら」

 

 エルザは感心したように、陽乃は面白そうに、そして南は、少し拗ねたようにそう言った。

明日奈は両手を頬に当て、いやんいやんと体を揺すっていた。

そんな明日奈を見て、三人はアイコンタクトをとったかと思うと、

突然立ち上がり、いきなりジャンケンを始めた。

 

「やった、私が明日奈ちゃんだ!」

「私が比企谷だね」

「うわ~ん、クラディールを引いちゃった~」

「は?は?」

 

 何が起こっているのか理解できない八幡は、困ったようにゴドフリーの顔を見た。

ゴドフリーは大人らしく、落ち着いた態度で首を振った。そして寸劇が始まった。

 

み「ど、どうか、うちのアスナにだけは手を出さないで!何でもするから!」

エ「はっはぁ~、あの女は俺が好きにしてやるぜ、ずっとエロい事をやりまくりだ!」

み「ドカ~ン」

エ「ぎゃ~、お前、何で動けるんだ~」

み「そんなのお前が俺の罠にはまったからに決まってるだろ、この外道が!」

は「私もいるよっ!ゴドフリー、大丈夫?」

ゴ「お、おお?ふ、副団長?ありがとうございます?」

エ「副団長、何故ここに!」

は「そんなの決まってるじゃない、ハチマン君のいる所には、常にこの私、

  可憐で格好いい、アスナちゃんがいるのよ!」

 

 そう言いながら陽乃は、実際その指には何もはまっていないが、

左手の薬指の指輪をエルザにアピールするような仕草をし、ドヤ顔で八幡の顔を見た。

その陽乃のドヤ顔に、八幡の顔は引きつった。明日奈はもじもじと八幡の後ろに隠れた。

 

「大体合ってますな」

 

 ゴドフリーが重々しくそう宣言した。八幡は顔を赤くして四人に抗議した。

 

「ゴドフリーも、ちゃっかり小芝居に参加してるんじゃねえ!

それにお前ら、わざわざ演技してまで、一々あの場面を再現すんな!」

「だって、ねぇ……」

「うん」

「だよねぇ……」

「な、何だよお前ら」

 

 三人のジト目を受け、八幡は先ほどと同じ台詞を言った。

 

「あんな話を聞かされた後で独占アピールとか、羨ましくって砂糖を吐きそうなんですけど」

「お父さんの命を救ってくれた事には感謝するけど、

でも比企谷は、明日奈さんへの愛をアピールしすぎだから!」

「私決めた!生まれ変わって明日奈になる!」

「お前ら俺にどうしろと……」

 

 さすがに自覚はあるようだが、それでも納得がいかない八幡は、そう呟いた。

助け船を出したのはゴドフリーだった。

ゴドフリーは落ち着いた様子で、諭すように八幡に言った。

 

「まあまあ参謀、これもモテる男の宿命だと思って、ここはじっと我慢ですぞ。

かく言う私も、若い頃は……」

「お父さん、嘘はやめて」

「す、すまん南、見栄っぱりなお父さんを許してくれ」

「はぁ、お母さんには内緒にしておいてあげるね」

 

 その父娘の遣り取りで、場は一応落ち着き、本題へと戻る事となった。

 

「で、問題は、こいつをどうとっちめてやるかだけど」

「少なくとも犯罪には問えませんな、もし何か証拠があれば、儂が逮捕してやるものを」

「は?ゴドフリーの職業って、もしかして警察関係か何かなのか?」

「そういえば言ってなかったですな、儂はこういう者です」

 

 ゴドフリーはそう言うと、名刺を取り出し、八幡に渡した。

 

「警視正、相模自由って……これってかなりえらいんじゃ……」

「大きな警察署の署長くらいの役職ですな。あの事件で出世も遅れる事になりましたが」

「あら、ゴドフリーさんって、キャリアだったのね」

「まあ、そういう事ですな。なので何か事件性があれば、

例え上に睨まれようと、儂が何とかします」

 

 八幡はそんな自由を見て、呆然と呟いた。

 

「だからお前、あの頃からあんなにお堅い考え方をしてたんだな……」

「ゴドフリー、すごいすごい!」

「いやぁ、参謀と副団長にそう言われると、少し照れますな」

「俺は全然褒めてないけどな」

「それじゃあ、そっち方面はゴドフリーさんにに任せる事にしましょう」

 

 陽乃がそう話を締めくくったが、どうやら八幡には、別に何か心配事が生まれたようだ。

 

「しかしゴドフリー、これから俺達がやろうとしてる事って、脅迫罪か何かにならないか?」

 

 ゴドフリーはその問いに、少し考えながらハッキリと言った。

 

「そうですな、直接本人を脅したらそうなりますな。

なので、自主的に次期社長を降板するように仕向ければ、ギリギリ大丈夫だと思います。

実際に被害を受けている者もいる訳ですし、その辺りは許容範囲内という事で」

「なるほどな、それじゃあまず、章三さん経由でレクトにも一応話を振ってみて、

提携の話を進めてもらって、ある程度してから、そういえばって感じで、

俺達と社長との面会をセッティングしてもらって、その席にあいつを呼べばいいのか」

 

 八幡はそう考えを纏めると、更にこう言った。

 

「あいつの他に倉エージェンシーの後を継げる人材がいれば、更にベストなんだがな」

「あっ、それならさっきも言ったけど、あいつの弟がいいんじゃない?

お父さんに似てすごくまともな人だよ。

ちょっと上昇志向な所もあるみたいだから、そういう事なら最適じゃない?」

 

 エルザがそう言い、八幡は頷いた。

 

「そうか、それは最高の人材だな。よし、それでいこう」

「ついでにその場に弟も呼べばいいんじゃないかしら。当然弟への根回しはするけどね。

最初の話をその弟に持ち込むついでに、

SAO時代の兄の行動について、『事実だけを教えて』あげればいいわね」

「くれぐれも、犯罪性の無いように頼みますぞ」

「真実を教えるのは、犯罪にはならないわよね?」

「ええ、もちろんですとも」

 

 ゴドフリーのお墨付きが出た事で、こうして方針は決まり、

一同はそれに合わせて動き出す事となった。

 

「ところで最悪一度は、クラディールの前に明日奈ちゃんが出る事になる訳だけど、

八幡君的にそれはいいの?」

「う……」

 

 八幡は目に見えて葛藤していたが、そんな八幡に陽乃は再び言った。

 

「ハチマン君のいる所には、常にこの私、可憐で格好いい、アスナちゃんがいるのよ!」

「分かりました、今回は我慢しますから!もうそれはやめて下さい!

確かに俺と明日奈は常に一緒にいるのが当たり前ですから、当然今回も同行してもらいます」

「私も行くよ!」

 

 エルザがそう言い、八幡は、当然だという風に頷いた。

 

「まあお前は当事者だからな、一緒に行かない方が不自然だろう。

それに社長に、今までお世話になったお礼も言わないとな」

「うん」

「それなら儂も行きますぞ」

「ゴドフリーも?」

「儂はあいつの元同僚ですからな、同行する口実としては、問題ないでしょう。

それに儂が行って身分を明かせば、国家権力がその場にある事になる訳ですから、

あいつも何か暴力的な手段に訴えたりも出来なくなるでしょうし」

「見た目的にも怖いしね」

 

 明日奈は、ゴドフリーの頼もしい見た目に対し、そう言った。

 

「任せて下さい副団長、恩返しでもありますし、今度は私がちゃんとお守りしますぞ」

「うん!」

 

 そんな五人を、南は眩しそうに見つめていた。

そんな南に気が付いた八幡は、優しい声で南に言った。

 

「おい相模、今回はお前の出番は無いが、いずれまたこういう事があるかもしれん。

その時は、俺の片腕としてしっかり働いてもらうから、

今回は大人しく、俺達の勝利の報告を家で待っててくれよな」

「べ、別にうち、あんた達の事なんか、全然心配してないし!

でも……うん、そうなれるように、しっかり勉強して待ってるね」

 

 南はそう宣言し、ついでに八幡にこんな頼み事をした。

 

「い、いつまでもうちの事、相模って呼ぶのは、お父さんと混じって混乱するかもだから、

特別に今後はうちの事、南って呼んでもいいんだからね」

 

 八幡は、その言葉に苦笑すると、最後にこう言った。

 

「ああ、今後とも宜しくな、南」

「うんっ!」

 

 南はその言葉に、嬉しそうに返事をしたのだった。

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