ハチマンくんとアスナさん   作:大和昭

239 / 1227
2018/03/01 句読点や細かい部分を修正


第238話 雪ノ下陽乃監督作品

「ん、いつの間にか新着動画が来てたのか、って、既にすごい閲覧数ではないか……

波に乗り遅れるとは、この義輝、一生の不覚!」

 

 話は一旦、前日の夜まで遡る。

 

「ほうほう、おおっ?何だこの動きは……世の中にはまだまだすごい人がいるんだな……

しかし女性でこの動きは、噂に聞く明日奈さんクラスか……」

「何ぶつぶつ言ってるの?材木座君」

「おわっ、ボ、ボス!」

「何?またえっちな動画でも見てるの?」

「そ、そんなもの、職場では一度も見た事が無いです!」

「職場では、ね」

 

 その言葉に抗議しようとする義輝を制し、陽乃はその動画を覗き込んだ。

 

「ん~?んんんんん~……ちょっと義輝君、この動画、最初から見せて」

「あっ、はい。ボスはこの動画に興味が?」

「興味というか、ちょっと気になる事があるのよね。

ちょっと待っててね材木座君。お~いアルゴちゃん、ちょっとこっちに来て」

 

 陽乃はその動画の再生を一時停止させ、アルゴを呼んだ。

 

「何だ?ボス」

「ちょっとこの動画を見てみて欲しいの」

「動画?」

「義輝君、再生して」

「は、はい」

 

 そして動画が終わり、陽乃はアルゴに感想を聞いた。

 

「アルゴちゃん、どう思った?」

「どう思ったも何も、アーちゃんはやっぱりすごいなとしカ」

「あ、やっぱり?」

「ななな何ですと!?本人だったのか……」

 

 アルゴはあっさりとそう断定した。

 

「で、これは当然ハー坊で、これは薔薇だろ?

で、こっちの小さいのは、多分こまッチで、残りの二人は知らない奴だナ」

「むむむ、あいつめ、また新しい取り巻きの女性を増やしたのか……何と羨まけしからん!」

「なるほどねぇ……ありがとう。義輝君、この動画、保存して私に頂戴」

「分かりました。でも、一体何に使うんですか?」

「そんなの決まってるじゃない、くふふふふふ」

 

 その陽乃の表情を見て、絶対に良からぬ事を考えているなと思った義輝は、

心の中で八幡に謝罪した。

 

(すまん八幡、悪いとは思うが、社畜は上司には逆らえないのだ……ってかリア充爆発しろ!)

 

 

 

 そして話は再び現在へと戻る。八幡達六人が、ケーキの素晴らしい味を堪能し、

食後のお茶で一息ついていた時、突然それは起こった。

店内の照明が暗くなり、突然天井から、プロジェクターのスクリーンが降りてきたのだ。

 

「な、何だ?」

 

 そして唐突に、スクリーンに映像が映し出された。

最初の画面に映し出されたのは『雪ノ下陽乃 監督作品』の文字だった。

 

「えっ……?ハル姉さん?」

「嫌な予感しかしないんだが……」

 

 次にBGMと共に、日本刀を持っている八幡の姿と、

それをしげしげと見つめている明日奈の姿が映し出された。

 

「あっ、これ、前ハル姉さんの家に行った時、

飾ってあった日本刀を振らせてもらった時の映像じゃない?」

「こっそり録画してやがったのか……」

 

 そして、ナレーションが始まった。

 

≪愛する少女を守る為、刀を手に取った少年は、ボスとの戦いに勝利し、

愛する少女と共に、そのまま旅に出た≫

 

 そして画面には、キットに乗り込む八幡と明日奈の姿が映った。

 

「って、ただ車に乗ってるだけの映像じゃねーか……」

 

≪そして二人は長い放浪の末、とある惑星へとたどり着いた。

その惑星は刀が通用しない、銃の世界だった≫

 

「どこだ馬鹿姉!どうやって車で他の惑星にたどり着くんだよ!」

「八幡君、ま、まあ落ち着いて」

 

≪その惑星で、少年は、新たな仲間を得た≫

 

『俺と戸部も、比企谷と一緒に戦った仲間だからね』

 

「あっ、これ、同窓会の映像だ」

「そういえば、あの時録画してるって言ってたな……」

 

≪だがその二人は、この男に殺された≫

 

 そして画面の中の葉山と戸部の顔に×が付けられ、ゼクシードの顔がアップで映った。

 

「あれっ」

「何でゼクシードの映像が……」

 

≪しかし少年はめげずに、再び新たな仲間とめぐり合ったのだった≫

 

 そして画面には、昨日の夜、ゼクシード達と対峙した時の映像が映し出された。

 

「……え?」

「おい、何でこの映像が存在してるんだ?」

「そういえばあの時、何人かが撮影してたような気がしたわね」

「まじかよ小猫……」

「小猫って言うな!」

 

『お前……それが何か戦闘に関係があるのか?お前も男なら、実力を示せよ』

『ぎゃはははは、負け惜しみかよシャナ』

『二度目は許さん』

 

≪少年は、以前仲間を殺された時の事を思い出し、そう言った。

だが宿敵ゼクシードは、余裕の態度でシャナを挑発した≫

 

『シャナ、女にもてないってのは、悲しいよなぁ』

『おいゼクシード、さすがにイラついたわ、俺はお前を、徹底的に潰す』

 

≪こうして不利な状況の中、戦いが始まろうとしていたその時、

かつての仲間達が……ん~、アルゴちゃん、もうちょっとここ、捻れないかな?

何か八幡君が、もてないひがみを言ってるように見えちゃうわよね?≫

≪根本的に、素材が足りないぞ、ボス≫

≪ん~、まあいいや、めんどくさいし、後は編集無しでいっか!≫

≪死ね、リア充!≫

 

「……え~っと」

「アルゴと材木座も噛んでやがったか……」

 

 そして映像は、シズカ達がビルから飛び出して来た所から、普通に再生され始めた。

 

『初めまして、私はシズカ。彼の半身にして、彼と永遠に運命を共にする者』

 

 その自分の恥ずかしい姿を目の当たりにした明日奈は、いきなり絶叫した。

 

「きゃああああああああああああああ」

 

 そしてシズカがシャナの顔に手を添えた瞬間に、映像が途切れた。

 

「ん、編集無しじゃないのか?」

 

≪この場面は、教育上問題があるのでお見せ出来ません。

っていうか、独り身の私に、こんな刺激的な映像を見せるなんて……≫

 

「って愚痴かよ!」

「ちょっと姉さん、ここが肝心な所じゃない!」

「明日奈、気持ちは分かるが落ち着け」

「そうよ明日奈、落ち着きなさい」

「おい詩乃、他人事みたいに言ってるけどな、次は確かお前の出番だぞ」

 

 そしてその言葉通り、次にシノンの姿が映し出された。

 

『今シズカが言った通り、私も彼と運命を共にする者』

 

「あああああ、ち、違うから、これはそういう意味じゃないから!」

「分かってるって、明日奈に合わせたんだろ?別に誤解なんかしないから、安心しろ」

「ちょっとあんた、何で誤解しないのよ、ふざけるんじゃないわよ!」

「え、ええ~……何でいきなりキレてんだよ……意味が分からん」

 

 そして次に映し出されたのは、ベンケイとロザリアだったが、

当然二人は平然としていた。

 

「私達は平気ですよね、薔薇さん」

「ええ、これも日頃の行いかしらね」

 

 そんなのんびりとした事を言った薔薇に、エルザは凍りつくような冷たい声で言った。

 

「薔薇ちゃん、とても大事な話があります。

もぎますか?もぎます、もぐ時、もげばもごう」

「ちょっ……エルザ、一体何を……」

「ダイエットに協力してあげるから、そこを絶対に動かないで」

「ち、違うの、あれはわざとじゃなくて、胸の上で手を組むのがつらかったの……」

 

 だが、その薔薇の言葉は、当然火に油を注いだだけだった。

 

「ちっ、絶対に殺す」

「ひっ……」

 

 胸を強調する薔薇に、エルザの怒りが頂点に達するかと思われたその時、

モニターに、ピトフーイを抱き寄せるシャナの姿が映った。

ピトフーイは慌てて自分のスマホを取り出し、

シャナに抱かれるピトフーイの姿を、アップで撮影していた。

 

「おいエルザ、お前何やって……いや、何でもない……」

 

 八幡は、エルザがはぁはぁ荒い息を吐いているのを見て、それ以上何も言わない事にした。

どうやらこのまま自分の胸の事は誤魔化せそうだと、薔薇は心から安堵した。

そして映像の中では、いよいよシズカが剣を取り出した。

 

「あっ、お義姉ちゃん、どうやってやったのかと思ってたけど、実は空いてる左手で、

こっそりコンソールを操作してたんだね」

「あ、バレた?こうして映像で見ると、やっぱり分かっちゃうよね」

「でもすごいよお義姉ちゃん、私には絶対出来ないもん!」

「明日奈は器用なんだね」

「動くわよ」

 

 そう薔薇が言った瞬間、シズカの姿が画面から消えた。

 

「「「「は?」」」」

「お前ら落ち着け、撮影してた奴が目で追いきれなくて、明日奈が画面の外に出ただけだ」

「いや、それにしてもだよお兄ちゃん」

「結構引いて撮影してるのにね」

「一体どんなスピードよ」

「えへっ」

 

 明日奈はその言葉に、照れながらそう答えた。

そして次の瞬間、映像が巻き戻り、スロー再生が始まった。

 

「親切だなおい。ってか編集無しとか言ってたのはどうなった」

「多分ボスも、同じように明日奈の事が見えなかったんじゃないかしら」

「魔王でも見えないとか、さすがだね!」

「ここね、来るわよ」

 

 六人は、そのまま画面を注視した。だが、やはり明日奈の姿は見えなかった。

 

「……」

「あれ?」

「見えませんね……」

「見えないね……」

「あっ、また画面が戻って、今度はコマ送りに!」

 

 ほんの少しだけ映像が巻き戻ったかと思うと、今度はコマ送りでの再生が始まった。

さすがにコマ送りなので、そこには明日奈の姿がバッチリと捉えられていた。

ただし一コマだけ……

 

「えっと、一コマだけ映ってますね」

「でもこれ、映像がブレてるんだけど……」

「えへっ」

 

 再び照れる明日奈に、詩乃は呆れたように言った。

 

「ねぇ明日奈、あんた化け物だったんだね……」

「もう~シノのん、それは褒めすぎだよぉ……」

「私、褒めてないわよ!?」

 

 そして画面に、ゼクシードに剣を突きつけるシズカの姿が映し出された。

撮影者も、どうやら何が起こったのかやっと理解し、そちらにカメラを向けたらしい。

そしてシズカが、二度三度とゼクシードを追い詰めるその姿に、四人は興奮した。

 

「まさにシズカ姫ね、すごい……」

「綺麗ね……」

「やっぱりうちのお義姉ちゃんは最強!」

「私やっぱり、明日奈の娘になる!」

「おいピト、お前もう自分が何を言ってるか分かってないだろ……」

 

 そして最後に、シズカが短剣をしまった瞬間、そこにいきなりシャナが現れた。

 

「「「「「は?」」」」」

「何で八幡君まで驚いてるの……」

「いや、映像だとこう見えるのかって、ちょっと驚いた……」

「まあ、確かにね。でもこれなら多分、すぐにコマ送りが始まるんじゃないかな」

 

 その明日奈の言葉通り、すぐにコマ送りの映像が映し出された。

そこにはちゃんと、シャナの姿が映っていた……一コマだけ。

 

「また一コマ……」

「八幡、あんたも化け物だったんだね……」

「もう~シノのん、それは褒めすぎだよぉ……」

「八幡君、真似しないで!」

「あんたにシノのんって呼ばれると、違和感が半端ないわ……」

 

 そしてそこで映像が終わり、次にノーカット版が流れ始めた。

映像で見ると、シャナが、ピトフーイが侮辱された瞬間に完全にキレているのがよく分かり、

ピトフーイを抱き寄せる所では、全員が拍手をした。

 

「八幡君、えらい!」

「お兄ちゃん、よくやった!」

「やっぱりあんたって、優しいのよね」

「いいなぁ……って、別に羨ましがってなんかないわよ!?

仲間を大切にするその姿への感想だからね!」

「詩乃、言ってる意味がよくわからん、とりあえず落ち着け」

 

 そして最後に、エルザが目をうるうるさせながら八幡に言った。

 

「八幡、私の為に怒ってくれて、ありがとう!」

「まあ、当然の事だからな」

 

 そして映像が終わり、店の照明が明るくなった。

直後にパチパチパチと拍手が聞こえ、夜子と優が八幡達の方へと歩いてきた。

 

「いや~、何ていうか、さすがですね、八幡さん、明日奈さん」

「見てたんですね……」

 

 そう言う八幡の横で、明日奈は、恥ずかしそうに頬を押さえ、いやんいやんと呟いていた。

 

「八幡さん、陽乃さんが、あなたにこれを渡してくれと」

 

 優がそう言って差し出してきたのは、

この映像が録画されているのであろう、ブルーレイディスクだった。

 

「ちなみに陽乃さんは、そう言った後、逃げるように去っていきました」

「くそっ、どうも気配が無いと思ってたら、やはり逃亡した後だったか……」

「ははっ、でも、すごくいい物を見させてもらいましたよ。

やっぱり八幡さんは、すごく仲間を大切にしてるんですね」

 

 八幡はその言葉に照れた表情を見せ、残りの五人に散々からかわれる事となり、

その姿を、夜子と優が嬉しそうに眺めていた。

 

「それじゃあ八幡さん、明日奈さん、そして皆さん、またいつでもいらして下さい」

「今日はお会い出来て、本当に嬉しかったです」

「こちらこそ、お会い出来て嬉しかったです」

「お二人とも、お幸せに」

「「「「ごちそうさまでした」」」」

 

 こうして思わぬサプライズもあったが、六人はますます交流を深める事となった。

そして数日後、八幡と明日奈、章三、京子、陽乃、菊岡の六人は、

結城本家へと向かう為、新幹線で京都へと旅立っていった。

 

 

 

 一方その頃、ゆっこと遥は、BoB決勝の映像を二人で視聴していた。

 

「見事に……」

「真っ二つだね……」

 

 そして二人は初めて、シャナの本気の戦いをその目で見る事となった。

 

「うわ……」

「やばいね……」

「この人に、私達は勝たないといけないんだ……」

「どう考えても、無理なんじゃない?」

「う、うん……でもやるしかないよね……」

「だね……」

 

 へっぽこ二人組の、無謀な戦いは続く。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。