ハチマンくんとアスナさん   作:大和昭

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2018/06/15 句読点や細かい部分を修正


第297話 第二回BoB~本戦に向けて

「よぉ、本戦進出おめでとさん」

「シャナ!皆も!」

「ちらっと見たが、最後はまさかお互いの頭を撃ち抜くとはな」

「あれはお互いに宣戦布告のつもりだったんだけど、駄目だったかな?」

「いや、別にいいだろ、あの決勝に意味なんか無いしな」

「良かったぁ」

 

 そこにロザリアも合流し、七人は祝勝会という名目で、

以前訪れた事のある高級店へと足を運んだ。

そこには珍しくゼクシード達がおり、その羽振りの良さを感じさせた。

 

「おう、これはこれはBoBに出場していないシャナさんじゃありませんか、

どうだ、ついに俺もこの店を普通に利用出来るまで成り上がったぜ!」

 

 いきなりそんな事を言い出したゼクシードの後ろでは、

ユッコとハルカがペコペコと一行に頭を下げていた。

さすがの二人も、わざわざシャナ達に突っかかる意味をまったく見出せなかったようで、

以前とは違って二人からは、GGO内の力関係への慣れが感じられた。

そしてシャナは、意外にも穏やかな笑顔でゼクシードに言った。

 

「おう、ゼクシードか、さすが熟練のいい戦いっぷりだったな、その調子で明日も頑張れよ」

「え?あっ……お、おう……」

 

 ゼクシードも、さすがにその場の雰囲気を読んだのか、そう言って素直に引き下がった。

ちなみにそのまま挑発を続けていたら、店員NPCに、

店に相応しくないからとつまみ出されて永久出入り禁止にされていた所である。

周囲にいた他の客達は、実はそうなるのを期待していたのだろう、

とても残念そうな顔をすると、自分達の会話に戻り、その場は再び穏やかな空気に包まれた。

 

「それで、二人の調子はどうなんだ?」

 

 席に着き、注文を終えた後、シャナがシノンとピトフーイにそう尋ねた。

 

「最高!」

「絶好調!」

「そうか、それなら優勝も狙えるかもしれないな。

まあどんなに強い奴でも、一瞬の隙を突かれてあっさり負ける事もあるから、

とにかく二人とも油断しないようにな、特にピトな」

「え~?私だけ?」

「お前の戦闘を見たが、言葉遣いも態度も別人じゃねーかよ、

お前、明らかに俺がいない時は、テンションがおかしいだろ」

 

 それを聞いたピトフーイは、ぽっと顔を赤らめながら言った。

 

「やだ、シャナに私のかわいい所を沢山見られちゃった」

「まったくかわいいとは思わなかったんだが……」

 

 シャナは呆れたようにそう言ったが、ピトフーイはやんやんと顔を隠し、もじもじした。

その時ゼクシード達が、食事を終えたのか、店から出ていこうとした。

ゼクシードはシャナ達のテーブルの横を通る時、ちらりとニャンゴローの方を見た。

その後もゼクシードは、未練がましそうに、

店を出るまで何度もニャンゴローの方をチラチラ見ながら去っていった。

ちなみにその視線がニャンゴローの胸のあたりに集中していたのは、多分気のせいである。

 

「先生、随分ゼクシードに気に入られたみたいだな」

「何だシャナ、妬いているのか?」

「今の俺の言葉のどこにそんな要素があったんですかね」

「まあ気に入られたのは、主に私の胸だろうがな」

「先生、自分で言ってて空しくならないんですか?」

「う、うるさい!ここは私にとっては夢の世界なのだ!

夢の中でくらいいい気になっても良いではないか!」

「まあ先生がそれでいいなら何も文句は無いです……」

 

 そして場が落ち着いた所で、ベンケイがシャナに尋ねた。

 

「ところでお兄ちゃん、今回の本線進出者の中で、誰が要注意だと思う?」

「そうだな……シノンとピト以外だと、さっきの馬鹿と、闇風と銃士Xだな」

「ゼクシードさんと闇風さんは分かるけど、銃士Xさんも?その心は?」

「あいつらは、第一回BoBの本戦出場者だからな」

「……それだけ?何か当たり前すぎてお兄ちゃんらしくない」

「まあこれは、出場した奴にしか分からない事だからな」

 

 その言葉に、ニャンゴローとロザリア以外の四人はきょとんとした。

唯一その二人だけが、GGOの実戦経験が皆無なせいで、

物事を客観的に見れるせいか、その言葉の意味に気付いたようだ。

 

「もちろん私には分かるぞ」

「私もそれ、分かるかも」

「おう、さすが先生だな、あとロザリアもか、その心は?」

「あいつらは全員、サトライザーって奴を自分の目で見ているのだろう?」

「つまりその三人は、サトライザーと対峙しても心が折れなかった」

「まあそういう事だ、心が強いんだろうな、そういう奴は強いぞ」

 

 その言葉に残りの四人も、完全に理解したとは言い難いが、何となく納得した。

 

「なるほど……あれ、って事はお兄ちゃんとも対峙したゼクシードさんって」

「正直あいつの心の強さは異次元の領域だからな、人外と言っても過言じゃない」

「それ、絶対褒めてないよね……」

「まあ俺は別にあいつの事が嫌いじゃないからな、うざくて面倒臭いだけだ」

「それ、確実に嫌ってるよね?」

「気のせいだ」

「いやいや、絶対嫌ってるよね?」

「………………………………………………………………………………ちょっとな」

 

 シャナは、長い沈黙の末に、そうぼそっと言った。

そして明日に備え、シノンとピトフーイの二人は早めに落ちる事となり、

その日の集まりはそこで解散となった。

 

「それじゃあ二人とも、明日はちゃんと見てるから、頑張れよ」

「うん!」

「銃士Xの方ばかり見てるんじゃないわよ」

「何故そこでその名前が出る……知り合いどころか会話すら交わした事も無えよ」

「だってあの子、さっき控室で見掛けたけど、かわいいじゃない」

「そうか?何となくしか見てないが」

「第一回BoBに出てたって覚えてたじゃない」

「それを言ったのはお前なんだが……そもそもそれを聞いてなかったら、

有名人である闇風ならともかく、銃士Xの名前を俺が出す事は無かっただろうな」

「ふふっ、冗談よ、それじゃあまたね」

「まったね~!」

「おう、二人とも、またな」

 

 そして他の者も順にログアウトし、その場には誰もいなくなった。

 

 

 

 自分のベッドの上に全裸で横たわっていたエルザは、ログアウトと同時に、

目の前にあった八幡の抱き枕をぎゅっと抱きしめ、こう呟いた。

 

「むふふふふ、このチャンスは絶対にモノにしないと……

何としてもシノのんよりも上の順位になって、八幡とデートして、それで……

『エルザ、今日はお前の全てを見せてもらうぞ』

『そんな、まだ心の準備が……』

『そんな事を言って、もう体の方は準備出来てるじゃないか』

『あっ、M82は……M82は駄目ええええ!』

『今日はこれで、お前を狙撃してやる!』

『ああっ!マ、マズルフラッシュ!!!!』

おっとまずい、またうちの八幡が汚れちゃう、じゅるっ」

 

 そんな欲望全開の妄想にひたっていたエルザは、慌てて自分のよだれを拭いた。

また、と言う辺り、これはどうやらエルザの日常であるようだ。

 

「あ、そういえば……」

 

 そしてエルザは、思い出したように自分の携帯を取り出し、どこかへ電話を掛け始めた。

 

「ボンジュール?調子はどう?」

「……えっと、ここはフランスじゃなくてアメリカなんですが」

「細かい事は気にしないの、エム。で、どう?ちゃんと的に当てられるようになった?」

「そうですね、初日の成果は中々でした。こっちはまだ早朝なんで、

もう少ししたらまた練習に行ってきますよ」

 

 エルザの電話の相手はエムだった。

エムは、エルザがBoBに出場する二日間のスケジュールの空きを生かして、

八幡に指示された通り、実際に銃を撃つ為にアメリカに渡っていたのだった。

どうやらその口ぶりだと、バレットサークル無しでの射撃に手応えを感じているようだ。

 

「そんなあなたにいい知らせよ、ついにシャナの許可がおりたわ、

帰ってきたら、シャナの拠点に顔を出しなさい」

「う……」

「う?」

「うおおおお、すごく嬉しいです、ありがとうございます!」

「そ、そう……」

 

 エルザは、そのエムの食いつきに少し気圧された。

エルザの独立話のせいで、少し前まで仕事が忙しかった為、

中々GGOに顔を出せなかったエムは、

どうやら空き時間にシャナの動画を色々見ていたらしく、

今ではすっかりシャナ信者になっていたのだった。

もっとも彼にとって一番大事な存在は、エルザだというのは不動なのだったが。

 

「それじゃあ張り切って練習に行ってきますね」

「そういえば私、BoBの本戦に残ったわよ」

「おおっ、おめでとうございます」

「ありがと、それじゃまたね、エム」

「はい」

 

 

 

 一方詩乃は、ログアウトした後すぐにシャワールームへと向かった。

 

「ふう、今日はかなり緊張したなぁ、でもいい結果が残せて良かった」

 

 詩乃はそう呟きながら、健康的に汗を流した。

同じ全裸でも、どこぞの変態とは大違いである。

そしてシャワーを浴び終えた詩乃は、部屋に戻るなりはちまんくんに話し掛けた。

 

「はちまんくん」

『何だ?……ってお前な、先に服を着ろ』

「あっ、ご、ごめん」

 

 はちまんくんが、慌てて顔を背けながらそう言うのを見て、

詩乃は少し恥ずかしくなったのか、はちまんくんにそう謝った。

 

『まあここはお前の家だから別にいいんだけどな、で、何か話があるんじゃなかったのか?』

「あ、うん、はちまんくんは、GGOって知ってる?」

『もちろん知ってるぞ』

「じゃあ、BoBって大会の事は?」

『俺が活躍した大会の事だな。ちっ、サトライザーの奴、次は絶対に倒してやる』

「ぷっ……」

『何だよ……』

 

 詩乃がいきなり噴き出した為、はちまんくんはじろりと詩乃を見ながらそう言った。

 

「ううん、何か本物も同じような事を言ってたなって思って」

『まあ俺は知識として知っているだけだがな』

「で、今日その第二回大会の予選があったんだけど、私、無事に本戦への出場を決めたの」

『おっ、そうか、それはおめでとう』

「ありがとう、はちまんくん!」

 

 詩乃はとても嬉しそうにそう言った。

 

『ところで俺は出場したのか?』

「俺?ああ、八幡は今回は出なかったの」

『そうなのか、って事は、サトライザーは結局姿を見せなかったんだな』

「まあそういう事。明日が本番だから、頑張るね、はちまんくん」

『ああ、直接回線を繋いで見ながら応援してやるから、頑張れよ』

「そんな事が出来るんだ……うん、応援しててね」

『おう』

 

 こうして詩乃とエルザ、二人の夜は更けていった。

明日はついに、第二回BoBの本戦である。




本戦は、さらっといく予定です。あくまで第三回へのステップですので!
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