ハチマンくんとアスナさん   作:大和昭

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2018/06/15 句読点や細かい部分を修正


第299話 第二回BoB~急展開、そして大会の終わり

 四人の位置関係は、北にピトフーイ、東にシノン、西に銃士X、

そして南にゼクシードとなっていた。ちなみに闇風は、遥か西の彼方にいた。

この遭遇戦に一番焦ったのはシノンだった。ヘカートIIは、一対一の近接戦ならともかく、

こうした複数での遭遇戦には向いていない。

悠長に次の弾を込めている時間等、まったく無いからだ。

幸い腰にはサブウェポンとしてグロックを装備していた為、戦闘自体には不安は無い。

そしてBoBでは例え武器を落とそうが何をしようが、装備をロストする心配は無い為、

シノンは即座にヘカートIIを、誰か一人を落とす為に使い捨てにする事を決め、

誰に使うか慎重にその機会待とうと決めた。

そしてシノンは、ヘカートIIを構えたままで待ちの体制に入った。

当然その事は他の三人にも分かっていた、自明の理だからだ。

だからといって、最初にシノンを攻撃するのはリスクが高すぎる。

近距離だとほぼ攻撃が必中になるのは、バレットサークルの仕様上、

誰にとっても同じなのだったが、問題はその威力だった。

ヘカートIIクラスの攻撃をくらったら、その時点でほぼ死亡が確定してしまう。

つまりシノンに攻撃しようとそちらに向かうと死亡確率は跳ね上がり、

尚且つシノン以外の三人でやりあったとしても、最初にシノンに隙を見せた者が、

一番に死亡する事になるのはほぼ確定なのだ。

これが闇風クラスの速度を誇る者だったら、回避に活路を見出す事も出来たかもしれないが、

ここにいる四人は全員STRタイプなのである。

その事が、四人の間に不気味な硬直状態を演出する事となった。

その状態に真っ先に我慢出来なくなったのは、当然ピトフーイだった。

だがピトフーイも馬鹿では無い為、真っ先に動く事のリスクを理解しており、

とりあえず舌戦を選択する事にしたようだ。当然対象はゼクシードである。

 

「ゼクシード、あんたこの中じゃ唯一の男のくせに、随分チキンなんだね」

「ふざけんなよ、こんなの最初に動いた奴の死亡がほぼ確定じゃねえかよ」

「所詮あんたは口だけって事ね、もしここにシャナがいたら、

嬉々として一人ずつ短剣で倒していったでしょうね、あのサトライザーみたいに。

同じ男として情けないとは思わないの?」

 

 丁度その時ピトフーイの姿が中継されていた為、

口の動きで何を言っているか読んだシャナは、ぽつりと呟いた。

 

「おうおう煽るねぇ、まあしかし、さすがのゼクシードも今は動かないだろうな」

 

 そのシャナの推測通り、ゼクシードはまるで別人かと思われるような忍耐力を発揮し、

ピトフーイの挑発にまったく反応しようとはしなかった。

 

「けっ、その手に乗るかよ」

 

 だがピトフーイはやはりピトフーイである。相手の嫌がる事がよく分かっているようだ。

 

「馬鹿のゼクシードが賢いフリをしても、馬鹿は馬鹿だと思うけどなぁ。

あんたシャナに何回負けてるの?」

「何とでも言え、俺の為に頑張ってくれたユッコとハルカの為にも、

俺はそんな挑発に安易に乗る訳にはいかん」

 

 ゼクシードは、意外な男気を発揮し、内心は煮えくり返ってきたのだが、

表面上は平静を保つ事に何とか成功していた。

ピトフーイは、どうやらこれは無理そうだと考え、次の標的を銃士Xに変えた。

 

「……………………………………」

 

(駄目だ、どんな人か分からないから何も思いつかない……)

 

 それでもピトフーイは、何か言う事は無いかと考えたあげく、

銃士Xが、第一回BoBの本戦に出場していた事を思い出した。

 

「あんた、そこのゼクシードと同じく、前回の大会でも本戦に出場したんだよね?

ゼクシードはシャナに真っ二つにされたけど、

あんたはサトライザーに、どうやって倒されたの?」

「一秒で首を刎ねられたけど、それが何か?」

「……えっ、そうなの?」

 

 ピトフーイはそこまでとは思っていなかった為、思わずそう聞き返した。

他の二人もその思わぬ言葉に一瞬集中を欠いた。

その瞬間に銃士Xは、タイミングを狙いすましたかのように突然伏せ、

一番危険度が高いシノンにその銃口を向けた。

 

「やばっ」

 

 シノンは慌てて銃士Xに狙いを定めようとしたが、

集中を乱したのが災いしてか、一瞬対応が遅れた。

同じく遅ればせながら、銃士Xの目標から外れた事に気付いたピトフーイとゼクシードは、

咄嗟に残る相手……ゼクシードはピトフーイを、ピトフーイはゼクシードを狙った。

次の瞬間、突然西から爆発音のような音が聞こえ、二人は何事かとそちらを見た。

方向から見て、おそらく銃士Xがトラップか何かを仕掛けていたのだろう。

銃士Xはハッとした顔をすると、シノンを狙うのをやめ、横に転がって仰向けになると、

先ほどまで自分が背を向けていた方向……足元の方に銃を向け、いきなり発砲し、

直後にシノンも銃士Xに向け、ヘカートIIのトリガーを引いた。

 

「なっ……何だぁ?」

「まさか……闇風?」

 

 ゼクシードが驚いたようにそう言い、ピトフーイがそう呟いた。

 

「闇風はかなり遠くにいたはず……

という事は、スキャン直後からずっとこっちに全力で走ってたの?」

 

 そのシノンの言葉通り闇風は、残りの四人が固まっている事が分かった瞬間、

まだ体力は六割ほどまでしか回復していなかったが、

このチャンスを逃す訳にはいかないと、そちらに向けて全力で走り出したのだった。

だが闇風は道を急ぐあまり、トラップが存在する可能性を失念していた。

事実銃士Xはブービートラップを仕掛けており、闇風はその一つに引っかかったのだが、

幸い全速力で走っていたせいか、爆発は遥か後方で起こり、闇風は命拾いする事が出来た。

そして直後に正面に、こちらに銃口を向けている銃士Xを発見した闇風は、

咄嗟に右に飛び、そのまま銃士Xへ向けて発砲した。

直後に発砲音が聞こえ、闇風の左を銃弾が通過していった。

それと同時に、闇風の放った銃弾が銃士Xの体に吸い込まれ、

銃士Xはそのまま死体となった。

銃士Xにとっては、動きづらい体制をとっていたのが災いしたようだ。

だが不運なのは闇風も一緒だった。直後にボッという音と共に、闇風の胸に大穴が開いた。

 

「なっ……」

 

 闇風はそう呟き、同じくその場で死体となった。闇風の胸を貫いたのは、

シノンの放った銃弾だった。シノンは銃士Xに発砲こそしたものの、少し焦っていたせいか、

バレットサークルがやや大きい円を描いていた瞬間にトリガーを引いてしまい、

その銃弾はわずかに左に反れており、丁度そちらに回避していた闇風に直撃したのだった。

そして残りの二人、ピトフーイとゼクシードは、あまりの展開の早さに呆然としていたが、

先に立ち直ったのはピトフーイだった。

ピトフーイは、シノンがヘカートIIを使ったのを確認すると、

サブウェポンを使うのには若干タイムラグが出ると考え、

予定通りそのままゼクシード目掛けて発砲した。

 

「くそっ、遅れた!」

 

 そのピトフーイの銃撃は、微妙に左に逸れ、ゼクシードの右肩を貫いた。

致命傷にこそならなかったが、ゼクシードはその衝撃で右手の銃を取り落とし、

焦ったゼクシードは、残る左手で腰に付けていたバッグの中をまさぐりはじめた。

その瞬間にシノンの放った銃弾が、今度はゼクシードの左肩に命中し、

ゼクシードの左手から玉のような物がこぼれ出て草むらに転がり落ち、

後方の地形がたまたま少し傾斜していたせいで、

ゼクシードは坂道を転げ落ちるように、そのまま数メートル後方へと転がった。

シノンはピトフーイとゼクシードのどちらを狙うべきか迷ったのだが、

ヘカートIIを使えない不利な状態だとしても、

ここまできたらピトフーイとサシで決着をつけるべきだろうと考え、

優先的にゼクシードを狙う事にしたのだった。

 

「くっ、こっちの練習もしておくべきだったかな……

けどまあ外したけどとりあえず結果オーライね、さて、クライマックスよ、ピト」

 

 シノンは最近ヘカートIIの習熟訓練ばかりしていた為、

サブウェポンであるグロックを使うのは久しぶりだった。

その為狙いが再び逸れ、ゼクシードの心臓を狙った弾は、左肩に命中する事となったのだ。

こうしてその場に残ったプレイヤーはシノンとピトフーイだけになり、

二人はお互いの武器を構えたまま向かい合った。

それを画面で見たシャナは、顔色を変えてこう呟いた。

 

「あいつらゼクシードの死亡も確認しないまま何やってんだよ……

それにゼクシードが何を落としたか、気付いてないのか……?」

 

 そんなシャナの焦りも二人には届かず、二人はこれで終わるという高揚感に包まれながら、

お互いに銃を突きつけたまま会話していた。

 

「これで勝った方が、優勝とシャナとのデートの権利を総取りだね」

「分かりやすくていいわね」

 

(ピッ…………ピッ…………ピッ…………)

 

「ところでシノノン、さっきから何か変な音がしない?」

「あ、それ私も思ってた。でも、どこかで聞いた事がある音よね……」

 

(ピッ……ピッ……ピッ……)

 

「そこの草むらから音がしない?」

「そっちってゼクシードがいた方……っていうか、ゼクシードが消えた所、見た?」

 

(ピッピッピッ)

 

「あっ、見てないかも。まさか……まだ生きてる?」

「じゃあこの音は……」

 

 もしゼクシードが死んでいたら、こんな音はしていなかっただろう。

何故ならその瞬間に、そのアイテムは持ち主と共に消滅しているはずだからだ。

そして直後に、そのアイテムは発動した。

 

(ピ~~~~ッ!)

 

 その音と共に、シノンとピトフーイは閃光に包まれた。

そして光が収まった後、二人の姿はその場から消滅しており、

二人がいた位置に、『DEAD』の文字が二つあるばかりだった。

どうやらゼクシードが落としたのは、プラズマグレネードだったらしい。

運の悪い事にゼクシードは、吹き飛ばされる直後にそのスイッチを押していたらしく、

それが今発動し、二人を跡形も無く吹き飛ばしたのだ。

そしてゼクシードは、運良く背後の地形が傾斜していた為に、

その爆発には巻き込まれず、辛うじて命を拾う事となったのだった。

それは一瞬の出来事であり、観客は何が起こったのか完全には理解出来ず、

そのまま中継画面に見入っていた。

そして倒れたままのゼクシードの姿が映し出され、直後にこうアナウンスがあった。

 

『第二回BoBの優勝者は、ゼクシード選手に決定致しました』

 

 そのアナウンスを聞いた瞬間、観客達は、何が起こったのかを理解し、口々にこう言った。

 

「嘘っ、あそこから逆転?」

「あれってプラズマグレネードだろ?」

「お土産グレネードとか、第一回北米大会と一緒かよ……」

「いや、あれは棚ボタグレネードだろ!」

「ゼクシードの奴、運だけで優勝しやがった……」

「これでまたあいつが調子に乗るのか……シャナ、次の大会では頼むぜまじで!」

 

 そしてユッコとハルカは、この結果に微妙さを感じながらも、

戻ってきたゼクシードを出迎え、三人は一応喜び合っていた。

 

「ユッコ、ハルカ、正直俺も微妙な気分なんだが、とりあえず優勝したわ……」

「えっと……ま、まあ結果オーライですよ」

「そうそう、何て言ったらいいか私も分からないけど、

結果的に優勝したんだから何も問題ないですよ」

「そ、そうだよな、別にルール違反とかじゃないんだし、俺の優勝は間違いないんだしな。

よし、ここは素直に喜ぼう!」

「ですね!」

「おめでとうございます!」

 

 最初はゼクシードもこんな感じだったが、時間が経つにつれ、

彼はどんどん調子に乗っていく事となる。さすがはゼクシードと言うべきであろう。

そしてそして、やらかしてしまったシノンとピトフーイは、

控室に駆けつけた仲間達に正座させられ、大説教を受けている最中であった。

 

「お前らは馬鹿か!途中までは良かったのに、何であそこで油断したのだ!」

「先生の言う通りだ、俺から特に何も言う事は無い。

まあ同率二位は立派だが、どっちが勝った訳でも無いし、

内容も微妙だから、デートの件はもちろん無しだ」

「さすがの私もあれは庇えないよ……ごめんね二人とも」

「ま、まあお疲れ様でした!お二人とも!」

「無様ね」

「「ごめんなさい……」」

 

 こうして第二回BoBは、誰もが納得しない結果で幕を閉じる事となった。

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