ハチマンくんとアスナさん   作:大和昭

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2018/06/17 句読点や細かい部分を修正


第342話 源氏軍、最初の激戦

「GGOって何?このゲームの名前?」

「GGO、正式名称はガンゲイル・オンライン。

銃で殺しあうゲームだと思ってくれればいい」

「シャナってのは?」

「八幡のGGOでの名前だな」

「なるほど」

 

 ここではちまんくんがそう補足した。

 

「銃?それってやばくない?」

「あ、詩乃っちって銃の事が大の苦手なんじゃなかった?」

「うんうん、遠藤達が脅しに使ってたのもそれだしね」

「そうなのニャ?詩乃にゃんは大丈夫なのニャ?」

「どうやらゲームの中では平気らしいぞ。そもそもそれを克服する為に始めたらしいしな」

「そうなんだ……」

 

 そして画面の中のシャナは、仲間達に向かってこう叫んだ。

 

『今日は機動殲滅戦に移行する。向かってくる奴らは全て返り撃ちだ、源氏軍、出撃!』

『『『『『『『『『『『『おう!!!!!』』』』』』』』』』』』

 

「うわ、これってどういう事?何が起こってるの?」

「今GGOの中では、大規模なプレイヤー同士の戦争が行われているんだお、

その名も源平合戦、その源氏軍のリーダーの名前がシャナ、GGOじゃ伝説的な人だお」

「そうなんだ……」

 

 そんなダルを見つめながら、フェイリスが言った。

 

「ダルにゃん、さっきから色々と妙に詳しいのニャね?」

「そりゃもう、VRゲームは僕たちの夢だった存在ですし?

なので情報収集は欠かしてないんだお」

「確かにそれもそうニャね、それにしてもハチマン、シャナ……興味深いニャ」

「フェイリスたん、後でシャナが出てくる動画を紹介するお」

「ありがとニャ、ダルにゃん」

 

 そして画面には、次々とハンヴィーで出撃していくシャナ達の姿が映し出された。

 

「まるで映画の一シーンみたいだね」

「あっ、見て」

 

 そう焦ったように言う美衣の指差す先には、

車を並べて形成された、簡易陣地のようなものが構築されていた。

 

『平家軍も馬鹿じゃないらしいな、車の性能差をこうやって補うつもりか』

『そうね、確かにあれなら以前ほど簡単には殲滅出来ないかもしれないわね』

『さすがのグレネードも、数の力で撃ち落されそうだしな』

 

 その会話を聞いていた美衣は、画面を注視しながら言った。

 

「数の差が大きいって言ってたけど、これはそういうレベルじゃなくない?

あの陣地みたいなのの中に、凄い人数の敵がいるじゃない」

「心配か?美衣」

「うん、もちろんだよはちまんくん」

 

 それに映子も同意した。

 

「だね、八幡さんと詩乃っちはどうするんだろ……」

 

 そんな二人にフェイリスがニコニコ笑顔でこう言った。

 

「英雄様なら、きっと昔みたいに何とかしてくれるニャ」

「昔っていつの事?」

 

 そう尋ねてきた椎奈に、フェイリスは考えながらこう言った。

 

「う~ん、この世界の暦だと、数万年前になるのかニャ」

「あっ、私達三姉妹が王女と共に王国で戦ってた時期だね!」

「だニャ!」

「椎奈氏はよくフェイリスたんに付いていってるな……」

 

 そう呟くダルに、椎奈がこっそり囁いた。

 

「まあアドリブで適当な事を言ってるだけだけどね」

「アドリブですと!?連邦の椎奈氏は化け物か……」

「私、他人と友達になるのは得意なんだ、相手に合わせるのもね」

 

 そして画面の中のシノンも、同じようにシャナに質問した。

 

『どうする?』

『数の差が大きいからな、まあ木曽義仲の故事にでも倣うさ』

 

 そう言ってシャナはこんな指示を出した。

 

『各スコードロンの中心メンバーは、ちょっとこっちに集まってくれ』

 

 そしてシャナは小声で皆に作戦を伝えた。

ちなみにこれは、ネタバレを避ける為にシャナがメイクイーン組に気を遣った為である。

 

「何て言ってるんだろ?」

「さあ……」

「木曽義仲の故事って何だろね」

 

 そしてシャナの説明を受け、一人のプレイヤーが勇ましく手を上げた。

 

『その役目、俺にやらせて下さい!』

『ギンロウか、一歩間違えば死ぬかもしれないんだぞ』

『それでもやります!』

『そうか……分かった、お前に任せる』

『はい!』

 

「一体何だろ?」

「バスの後ろの窓を割ってる?」

「あ、座席に紐を付けて後ろにたらした?」

「ああいう工作も出来るのニャね、随分リアルだニャ」

「それがこのゲームの売りでもあるみたいだお」

 

 そしてシャナは、数人の仲間を呼んで指示を出した。

 

『先生、ブラックの運転を頼みます、後部座席には筋力のある俺とシノン、

G女連は俺達の後ろから付いてきてくれ、シズカは残りのメンバーを率いて北から攻撃だ。

出来るだけ敵の車の燃料タンクを狙ってくれ』

 

 そしてシャナはギンロウに頷き、ギンロウは武者震いをしながらシャナに言った。

 

『このギンロウの一世一代の晴れ舞台を見てて下さい!』

 

 そしてシズカ達が先に出撃し、ギンロウはバスに乗り込んだ。

 

「何かドキドキするね……」

「何が起こるんだろ」

 

 だがその期待とは裏腹に、シャナ達はまったく動かなかった。

そしてメイクイーン組が焦れだした頃、シャナに通信が入った。

 

『こちらシズカ、いい感じに敵の車の燃料タンクを破壊したよ、

一部火が付いてる所もあるかな』

『劣勢なのにさすがだな、よし、少し離れててくれ、今からこっちも動く』

『了解』

 

 そしてシャナはギンロウに言った。

 

『よしギンロウ、出番だ』

『はい!』

 

 そしてギンロウは、バスのエンジンをスタートさせ、ぐんぐんと速度を上げた。

その後をシャナとG女連が、ブラックと二台のハンヴィーで追いかけていく。

だが敵の陣地が見えた頃、突然ギンロウの姿が見えなくなった。

実はギンロウは運転席の下にしゃがみこみ、テープでアクセルを固定していた。

 

『固定完了、方向修正完了、今から離脱します!』

『おう、思い切って飛べ!』

『はい!』

 

 ギンロウがアクセルを固定している所は当然見えていなかったメイクイーン組は、

何を固定したのだろうかと思いつつ、バスに火線が集中するのを見た。

 

「急に銃弾が飛んでくるようになったね」

「反対側の火の手が消えたよ、消化したのかな?

多分そのせいで、こっちに攻撃を集中出来るようになったんじゃないかな」

「これからどうなるんだろ」

 

 そしてギンロウは、正面から沢山の銃弾が撃ち込まれてきている状態のまま、

危険を顧みずに後部座席の方へと走り、先ほど割っておいた後方の窓からダイブした。

 

「あっ!」

「見て、さっきの人が飛んだ!」

 

 その瞬間にギンロウの肩を敵の銃弾が貫通し、

ギンロウはそのせいでバランスを崩し、下に落ち始めた。

 

『ぐあっ』

『先生!』

『分かってる、任せろ!』

 

 そしてニャンゴローがブラックのスピードを上げ、シャナとシノンが懸命に手を伸ばした。

 

『ギンロウ!』

『届け!』

 

 そしてフェイリス達が固唾を飲んで見守る中、

シャナとシノンはギンロウの手をしっかりと掴み、ギンロウの体を車内へと収納した。

 

『先生!』

『了解だ!』

 

 その瞬間にニャンゴローは方向転換し、

その後ろを走っていたG女連の二台のハンヴィーは加速して左右に分かれ、

バスを追い抜くと、敵の左右の車目掛けて銃弾をバラ撒き始めた。

敵は迫りくるバスの姿を恐れたのか、そちらにばかり攻撃を加えており、

G女連のハンヴィーは、安全な状態で落ち着いて攻撃が出来たようだ。

見ると何台かの燃料タンクから燃料が漏れており、炎上している車もあった。

G女連はしっかりとその役目を果たしたようだ。

そしてついに、ギンロウが運転していたバスが敵の陣地に衝突し、

そのまま車を跳ね飛ばして中へと突っ込んだ。

 

『シャナさん、シノンちゃん、後は頼んます』

『回復キットは使ったか?少し撃たれただろ?』

『はい!』

『ギンロウさん、後は任せて』

『頼む!』

『よしシノン、狙いはバスの後部だ、分かってるな』

 

 そしてシャナとシノンは、バスの後部にぶら下がっているソレ目掛けて狙撃をした。

 

「こ、こんな遠くから当たるの?」

 

 その光景を見ていた美衣が、驚いた顔でそう言った。

 

「あの二人の銃は対物ライフルって言って、一キロくらい離れた所からでも攻撃出来るぞ」

「そうなんだ……えっ、あの詩乃が?」

「嘘ぉ……」

「お前らは知らなかったかもしれないが、あの二人はGGOで最強の狙撃手だぞ」

「デューク・シャナとデューク・シノンニャ!」

「お、おう、まあそういう事だ」

 

 そして二人の放った銃弾は見事にソレに命中し、その瞬間にバスは大爆発を起こした。

 

「なっ……」

「何これ?」

「あれはプラズマグレネードって言ってな、まあこの世界最強の破壊兵器だな」

「うわ……」

「敵の陣地が中心から粉々に……あっ、周りの車も爆発し始めたよ!」

 

 シャナが燃料タンクを中心に狙わせたのはこの為だった。

防御陣を形成していた車は次々と誘爆し、こうして平家軍の陣地は丸裸となった。

 

『さっすがシャナ、やる事が派手だねぇ、でもそういうのは嫌いじゃないぜ!』

『木曽義仲の故事って、あの牛の角にたいまつを付けて突っ込ませた奴か!』

『まああれは本当かどうかは分からないらしいけどな』

『さて、どうする?』

 

 そのシズカの言葉に、シャナは当然のようにこう言った。

 

『当然殲滅だ、出来るだけ足を止めず、陣地に突入を繰り返す感じでな!総員突撃!』

 

 その合図で九台のハンヴィーは突入と離脱を繰り返し、中に残っていた敵を殲滅し始めた。

 

「凄い、もう絶対勝ちじゃんこれ……」

「あんなに兵力差があったのにね……」

「さすがはハチマンさん、魅せてくれるね!」

「うおおおお、凄いもん見せてもらったお!」

「さすがは俺の本体だな」

「あのギンロウって人がMVPかニャ?」

 

 その時ブラックは停止しており、

シャナとシノンとニャンゴローはギンロウの回復を待っていた。

 

『具合はどうだ?ギンロウ』

『大丈夫っす、そろそろ動けます!』

『よし、それじゃあ俺達も手柄をあげにいくか』

 

 そう微笑むシャナに、ギンロウは嬉しそうにこう答えた。

 

『はい、一生付いていきます!』

『ギンロウさん、一生って……一体何歳になるまでゲームしてるつもり?』

 

 そう呆れた顔で言うシノンに、ギンロウは晴れやかな顔で言った。

 

『もちろん死ぬまでだ!』

『わはははは、いいじゃないかシノン、私もお前も似たようなものだろう?』

『先生……うん、確かにそうかも』

『それじゃあ行くぞ、お前ら』

 

 こうしてこの日、きちんと作戦を立てて三百人体制で戦いに臨んだにも関わらず、

平家軍はその全戦力の二割を失った。源氏軍も何人かの戦力を失ったが、

人的損耗比は実に百対一、スコードロンの比率だと四十対ゼロである。

今の表示は源氏軍の八に対して、平家軍は百五十であった。

街にいた者達は、グングン減る平家軍のスコードロン数に驚愕し、

少し後に配信された今日の戦いの動画を見て熱狂した。

 

『今日の戦いでは初めて犠牲者が出たか……』

『まああいつらも、今は街で笑顔でいると思うぜ、シャナ』

『そうだといいんだがな……ん?』

『どうした?』

『いや、今スコードロン数のゲージが……』

『あれ、確かに三つ減ってるな』

 

 見ると敵スコードロンの数が三つ減っており、表示は八対百四十七になっていた。

 

 

 

「ふう、今日のノルマ達成、やっとこれにも慣れてきた」

 

 そのプレイヤーはたった一人で一つのスコードロンを急襲して全滅させ、

そう満足げに頷いた。その手には板のような物が握られていた。

 

 

 

「三尉、敵戦力の全滅を確認しました」

「了解、っつーか階級で呼ぶなって、ここはゲームの中なんだからな」

 

 そう言われたそのプレイヤーは、

凄く言いたくなさそうな顔で隊長らしきプレイヤーをこう呼んだ。

 

「あ、はい、では……コミケ隊長」

「おう、トミー、何か付き合わせて悪かったな」

「いえ、色々と勉強にもなりますので」

 

 そしてコミケはトミーにこう尋ねた。

 

「で、ケモナーは?」

「ここっすよ、隊長!」

 

 そう言って茂みの中から一人のプレイヤーが現れた。

 

「おう、お前も付き合わせちまってすまなかったな、ケモナー」

「本当っすよ、ALOだったらネコ耳少女がいたってのに!」

「そっちかよ……」

 

 そしてケモナーは、面白そうな顔でコミケにこう言った。

 

「さっき更新されたんですけど、どうやら我が軍は今日も大勝したみたいっすね」

「ほほう、シャナだっけ?やるもんだなぁ」

「ですね、四十ものスコ-ドロンを犠牲をほぼ出さずに殲滅、今日の配信が楽しみっすよ」

「まじかよ、凄ぇなシャナ……」

「それじゃあそろそろ帰りますか」

「だな、今度シャナの所に挨拶に行こうぜ、

まあ俺達は最後の戦いには参加出来ないんだけどな」

 

 そんな会話をしつつ、その三人のプレイヤーは街へと戻っていった。

源氏軍の残り二つのスコードロンは、どうやらクセ者揃いのようである。

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