ハチマンくんとアスナさん   作:大和昭

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2018/06/18 句読点や細かい部分を修正


第371話 十狼と友好スコードロンの動向

『マスター、こちらフローリアです、応答願います』

「お、フローリアか、どうした?」

『あと百人程でまた要塞防衛戦が発生するのでご報告をと思いまして』

「もうそんなにプレイヤーが訪れたのか?」

『はい、戦争後にマスターが出たMMOトゥデイのインタビューから続々と』

「そうか、少しでも遠征の役にたってくれてればいいんだが」

『大丈夫ですよ、評判も上々です』

 

 フローリアからそう報告を受けたシャナは、戦争以来初めて『十狼』に召集を掛けた。

 

「こうやって集まるのも何か久しぶりだな、十狼としては初めてか?」

「戦争でかなり頑張りましたから」

「わ~いシャナだシャナだ」

「あんたはもっと仕事の方に集中した方がいいんじゃないの」

「その辺りはしっかりやってくれてるんで大丈夫ですよ、シノンさん」

「またイベントが始まるんだよね?今度はいい物が出るといいなぁ」

「イクスはイベントに参加するのは初めてだよね?」

「はい、凄く楽しみです」

「まあ気負わず気楽な気持ちで楽しみなさいな」

「ところでシャナ、その事で話があるんだが」

 

 各メンバーが和気藹々と話す中、ニャンゴローがそうシャナに話し掛けた。

 

「ん、何だ?先生」

「平家軍の連中もぽつぽつと要塞に訪れているようだし、

この辺りで遺恨を残さない為にも、平家軍のトップをイベントに招いたらどうだ?」

「トップってあいつかよ……他の奴じゃ駄目なのか?」

「気持ちは分かるが、トップじゃないと意味が無かろう?

それに平家軍の一部のメンバー以外はお前が敵になるように報酬で釣った面もあるだろう?」

「そうだな……いつまでもそいつらに肩身の狭い思いをさせるのは問題か」

「何、今回だけの我慢だ、こういうのは一度だけで十分だからな!」

「仕方ないな、そうするか」

 

 他の者もそれに同意した為、シャナはそう決断した。

以前直接罵倒されたピトフーイですら賛成したので、

シャナは本当にいいのかとピトフーイに念を押した。

だがピトフーイはあっけらかんとこう答えた。

 

「シャナは蚊に刺されたくらいで文句を言うの?」

「言いたい事は何となく分かったが、その場合は蚊に対して、ふざけんなくらい言うからな」

「しまった、例が悪かった!それじゃあ部屋に黒い悪魔が……」

「それは全力で叩き潰す未来しか見えないな」

「駄目だ、いい例が思いつかない!」

「あんたね……そんなのいくらでもあるでしょうが……」

 

 シノンが呆れた顔でピトフーイにそう言い、その場にいた全員が楽しそうに笑った。

 

「まあそういう事なら問題ない、とりあえず先方には俺が連絡しておく」

「シャナがゼクシードと直接?くれぐれも喧嘩はしないでよね」

「大丈夫だ、ユッコとハルカを通すからな」

「……お前、あの二人とはそんな仲なのか?」

「そんな仲の意味が分からないが、少なくとも俺と先生はあいつらの知り合いだ」

「…………そういう事か、やはり本人だったのだな」

 

 その言葉に、事情を知らない何人かはきょとんとした。

 

「本人って何の事ですか?」

「あの二人と私達は面識があるの。だよね?シャナ」

「だな、俺とシズカ、先生とピトは確実に面識がある」

「……ああ、あのクソどもか!」

 

 それでピトフーイは誰の事か分かったのか、少し怒った調子でそう言った。

 

「喧嘩するなよピト、あいつらも多少大人になったみたいだからな」

「そうなの?まあいいや、正直どうでもいいし」

「ああ、今後も積極的に関わる事は無いと思うしな」

 

 そこで話は終わり、シャナはニャンゴローを伴ってユッコとハルカを探しに出かけ、

他のメンバーは、友好スコードロンへの説明に赴く事になった。

G女連にはシズカとベンケイが、闇風と薄塩たらこの所にはロザリアと銃士Xが、

ダインの所にはシノンが赴く事になり、ピトフーイとエムは仕事に向かい、

イコマは鞍馬山で待機する事となった。

 

 

 

「お、いたいた、幸いゼクシードはいないみたいだな」

 

 そう嬉しそうに言うシャナに、ニャンゴローはやれやれといった顔で言った。

 

「幸い……ね、あなた本当にゼクシードの事が嫌いなのね」

 

 ニャンゴローは今は普通の喋り方をしていた。リアルでの知り合いの前で演技をするのは、

さすがにちょっと気恥ずかしいものがあるようだ。

 

「おう、大嫌いだ」

「本当かしら」

「本当だ、とりあえずあいつらに声を掛けようぜ」

 

 そして二人は、酒場でのんびりとしている二人に声を掛けた。

 

「よお、今ちょっといいか?」

「何よ、ナンパならお断りよ……って、シャナ……さん?」

「それにあんたは確かニャンゴローだっけ?私達に何か用?」

「あら、久しぶりだというのにつれないわね、わざわざ同窓生だけで尋ねてきたのに」

「えっ?…………あんた誰?」

「待ってユッコ、この喋り方には聞き覚えが……」

 

 そんな二人にニャンゴローは、ニコニコと笑顔で言った。

 

「文化祭と体育祭では本当に『お世話に』なったわよね、

最後にちゃんと会ったのはALOでだったかしら」

 

 ニャンゴローにそう言われた二人は固まった。

 

「ま、まさか……」

「その見た目で分かる訳が無いじゃない……」

 

 そして二人はまるで見てはいけないものを見てしまったように目を伏せ、

おとなしく二人の話を聞く体制になった。

 

「……おい先生、ALOでって何の話だ?」

「以前ALOにこの二人がコンバートしていた事があったのよ、その時ちょっとね」

「ほうほう、なあALOはどうだった?」

「あ、えっと、ちょこっとしかいれなかったから……」

「だから私達はそこまで色々見れてないの。でも空は飛んでみたかったかも」

「そうか、それは残念だったな、もし機会があれば、

もう一度コンバートして『三人で』飛んでみるといい」

 

 シャナは気さくな態度でそう言った。その言葉に他意は感じられず、

純粋にALOが好きなのだと感じられた為、二人はただ頷く事しか出来なかった。

 

「シャナ、そろそろ本題を」

「そうだったな、実は今日はイベントに誘いに来たんだよ。

先日のMMOトゥデイのインタビューは見たか?」

「あ、うん」

「そっか、あれがまた起こるんだね」

 

 その二人の言葉にシャナは頷いた。

 

「おう、理解が早いな」

「で、いつまでも元源氏軍だの平家軍だの言ってられないから、

この機会に双方のわだかまりを無くしたいと思って、

こうして平家軍の実質的リーダーの側近の二人に話を持ってきた訳なのよ」

「そっか、だから私達に……」

「直接ゼクシードに話を持っていくのは嫌だったからな、俺はあいつが嫌いだし」

 

 そのシャナの言葉にユッコとハルカは思わず噴き出した。

 

「……何だよ」

「ごめんなさい、つい」

「ゼクシードさんも同じような事をよく言ってるから」

「そこだけはあいつと気が合うんだよな」

 

 シャナがそう言い、二人は顔を見合わせた後に頷き合った。

 

「ありがとうございます、その誘い、有難く受けさせてもらいます」

「ゼクシードさんは必ず説得しておきますので」

「そうか、それじゃあ詳しい事は後でまた連絡するから」

 

 そしてシャナは二人とフレンド申請し、いつでも連絡がとれるようになった。

二人はそれが意外だったが、シャナは逆に二人にこう言った。

 

「悪いな、必要な事だとはいえ、俺と友達登録なんて違和感がありまくるよな」

「あ、いや、別にそんな事は……」

「むしろ私達でいいのかなって驚いたくらいで」

「あら、随分殊勝になったのね」

 

 ニャンゴローにそう言われた二人は、困ったようにこう答えた。

 

「GGOを始めてから、私達も色々と経験したから……」

「身の程を知ったというか、まあそんな感じ」

「そんな言い方をするなって、無理に仲良くする必要は無いが、

普通に対等のプレイヤーとして接してくれればいいから」

「そうね、また同窓会で会う事もあるでしょうし、

その時こんなこともあったねと普通に話せればそれでいいのではないかしら」

 

 その言葉に二人はまだ恐縮していたが、少しは気が楽になったようで、

リラックスしたような顔でそれに頷いた。

 

 

 

 ロザリアと銃士Xは、闇風と薄塩たらこが根城にしている酒場へと赴いていた。

 

「お、ロザリアちゃん!イクス!」

「闇風、馴れ馴れしい」

「仕方ないだろ、銃士Xってフルで呼ぶのはいい加減疲れるし、

マックスって呼んでいいのはシャナだけなんだし」

「まあ確かにその通り、それじゃあ仕方ないか」

「おう、認めてくれてありがとよ」

「で、たらこさんは?」

「奥にいるぜ、お~いたらこ、ロザリアちゃんとイクスが来たぞ」

「お?どうした?何かあったか?」

 

 酒場の中から薄塩たらこが顔を出し、嬉しそうに二人に声を掛けてきた。

 

「要塞防衛戦が発生しそうだから、誘いにきたわよ」

「お、まじか!今度こそいいアイテムが出るといいな」

「輝光ユニットとかな!」

 

 二人は嬉しそうにそう言い、必ず参加すると言ってきた。

ロザリアはゼクシードも参加する事になるだろうと二人に告げたが、

二人は嫌そうな顔をしながらも、それを受け入れた。

 

「まあシャナがそう言うなら仕方ないな」

「リベンジは別の機会にもっと広い場所でやってやるぜ」

 

 

 

 G女連の拠点では、シズカとベンケイが熱烈歓迎を受けていた。

 

「あんた達、よく来たね」

「おっかさん、お久しぶりです」

「よし、今日は宴会だよ!」

「あ、え、あの、その前に話が……」

 

 そしてシズカ達の話を聞いたG女連のメンバーは、大いに盛り上がった。

 

「聞いたかあんた達、やっぱり今日は宴会だよ!」

 

 おっかさんはそう声を上げ、二人は否応なしに宴会に巻き込まれた。

 

 

 

 ダイン達の下に赴いたシノンは、ダインとギンロウに要塞防衛戦の発生を告げた。

 

「お、まじかよ、シャナ様々だな、よしお前ら、これでまた装備を更新できるぞ!」

 

 その言葉にメンバー達は大いに盛りあがった。

シノンはそれを見て、また連絡すると言って去っていき、

その少し後にシュピーゲルが酒場に姿を現した。

 

「ギンロウさん」

「お、シュピーゲルか、喜べ、また要塞防衛戦が発生するらしいぞ」

「はい、さっきたらこさんに聞きました」

「そうか、まあ今回は嫌な奴も参加するが、我慢しないとな」

「嫌な奴?誰ですか?」

「ゼクシードだ」

「えっ?」

 

 その言葉にシュピーゲルは驚き、ダインの下へと向かった。

 

「ゼクシード達も参加するって本当ですか?」

 

 そしてシュピーゲルは経緯を説明され、納得は出来なかったが大人しく引き下がった。

 

「ニャンゴローさんが言うなら仕方ないか……」

 

 シュピーゲルはステルベンとノワールの下に戻り、ゼクシード達が参加する事を告げた。

それを聞いた二人の目が妖しい光を放った事に、シュピーゲルは気付かなかった。

 

「なあ、ゼクシードは前回のBoBで……」

「ゲーム内アイテムを選んでいた」

「そうか……この機会に何とか誘導出来ないか?」

「やってみよう、あいつにも手伝わせる」

「オーケーだ、シュピーゲルの為にもなる事だしな」

「そうだな、これからはリアルでも少しずつあいつに干渉していく」

「その辺りは任せた」




さて、徐々にGGO編の結末に向けて進んでいきます!
まあ寄り道もまだまだあると思いますが!

ユッコとハルカとユキノのALOでの絡みについては、
第288話「尊敬と恐怖の象徴」をご覧下さい!

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