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続いて第三戦と第四戦が同時に開始された。
第三戦の組み合わせは、獅子王リッチーとミサキであった。
「ミサキさん、もし俺がミサキさんに勝ったら、GGOの中でいいのでデートし……」
「ごめんなさい」
ミサキはその頼みを光の早さで断った。
「そ、そんな……」
「今の私は精神的にはシャナ様の女ですわ、
なのでリッチーさんとはお会い出来ません、本当にごめんなさい」
それをモニターで見ていたシャナは、焦ったように呟いた。
「おいおいこれ、中継されてるんだぞ……ミサキさん勘弁して下さい……」
もちろんミサキは分かった上であえて外堀を埋めにいっているのだが、
男女の機微に疎いシャナには、まだそこまで想像する事は出来なかった。
「し、しかし闇風とは……」
「あら、闇風さんはシャナ様の大切なお仲間ですのよ?
ですので街でバッタリ会った時くらい、仲良くお話しする程度は当たり前でしょう?」
「た、確かにそうですが……」
「ですので諦めて下さいな、ごめんなさいね」
「う……ううっ……わ、分かりました……」
そして獅子王リッチーはあっさりとリザインし、そのままログアウトした。
決勝開始予定時刻までには戻ってくると思うが、おそらく一人で泣きたかったのだろう、
観客達はそう思い、獅子王リッチーに少し同情した。
同時刻に開催された第四戦は、ステルベンとダインであった。
ダインはともかくステルベンはまったく無名のプレイヤーであり、
その名前を知っている者は誰もいなかった。
予選の映像を見ても、とにかく地味だなという印象しか与えない、そんなプレイヤーだった。
だがシャナ陣営の者には、おそらくこのステルベンか、もしくはスネークという、
次の第五戦に出場してくるプレイヤーのどちらかが死銃ではないかと思われていた為、
この試合の重要度はかなり高かった。だが当然の如くステルベンは開始直後にリザインし、
その姿を誰も見る事は出来なかった。
続く第五戦は、無名のプレイヤーであるスネークと、ギンロウの対戦である。
ギンロウは目立ったライバルがいなかった為、今回初の本戦出場を決めていた。
準決勝は激戦になったが、やはりゼクシードが不在の中、
闇風と同じようにシャナの下で経験を積んだギンロウの実力が頭一つ抜けていた。
それを分かっているのか、手の内を明かす事を避けたのか、
スネークはその名の通り、人前に姿を現す事を嫌い、速攻でリザインした。
こうしてリザインが続き、観客達のテンションが微妙に下がる中、
第五戦と同時に始まった薄塩たらことペイルライダーの第六戦は大激戦となった。
「確かにロザリアさんの事は俺達が悪かった、それは謝罪する!
だがそれとこれとは別だ、ギャレットの仇は俺がとる!」
「ここでもし俺が負けたら闇風の奴が絶対に調子に乗るからな、ここは負けられん」
そんなやり取りで始まった二人の戦いは、死力を尽くしたものになった。
薄塩たらこはその能力と装備を生かし、危なげなくペイルライダーにダメージを重ねていく。
だが対するペイルライダーも負けてはいない。
ここで終わってもいいかの如く、動いて動いて動きまくる。
ペイルライダーは、本来は中距離戦が得意である薄塩たらこに肉薄し、
近接戦闘の泥仕合へと上手く持ち込んでいた。
「ちっ、しつこいなおい」
「ここで俺が簡単にやられる訳にはいかないんだよ!」
ペイルライダーは意地を見せようと、リスクを承知で攻めて攻めて攻めまくった。
だがそれは全て薄塩たらこの目論見通りだった。
薄塩たらこはペイルライダーの攻勢の限界点を慎重に見極め、
そろそろ限界というところで一気に攻勢に転じた。
「くっ……」
「まあそうなるよな、数の力に溺れるだけで、まったく自分を磨いてこなかったお前と、
少数の軍で、常に考えに考え抜いて多数を破ってきた俺達とじゃ、
根本の実力がもうとんでもなく離れちまってるんだよ!」
その言葉の通り、決着は一瞬だった。
さすがは元GGO最大スコードロンのリーダーだっただけの事はあり、
薄塩たらこは機を見る能力に長けていた。
この戦いで、消化試合に飽き飽きしていた観衆にも、若干の活気が戻る事となった。
「よし、前座の役割は果たしたぜ」
薄塩たらこはそう呟くと、自身も残りの試合を見る為に、足早にモニターの所へ向かった。
第七、八戦のオーダーが公開された瞬間、まあほとんどの者が既に知っていたのだが、
観客達は一斉に沸きあがった。薄塩たらこが自分で前座と言っただけの事はあり、
観客達の熱気は程よく温まっていた。そこにこの発表である。
第七戦、ピトフーイvs銃士X、第八戦、シャナvsハチマン。
どう考えても普通では終わらない組み合わせである。
そして本来同時に開始されるはずの二試合は、予定と違って第七戦が先行して開始された。
理由は簡単である、アチマンが一旦ログアウトしたからだ。
その為十分後に、もう一度試合開始の判定がされる事になっており、
これを三回繰り返して該当プレイヤーがいない場合、そのプレイヤーは失格となる。
何故こんな事が起こっているのかというと、これは単に、
ピトフーイと銃士Xの試合を見る為の、シャナの我侭であった。
「さて、二人はどんな戦いを繰り広げるのかな」
シャナは興味深そうにモニターを注視した。
「さてイクス、どうする?」
「どうする、とは?」
「そうねぇ、せっかくだから盛り上げたいとは思うけど、
ただ銃を撃ち合うのもつまらないじゃない?」
「まあそうだけど」
「なので私はこう提案したい、この戦いは剣のみの戦いとし、
勝った方がシャナに今度どこかに遊びに連れてってもらうって事でどう?」
「乗った」
それを見ていたシャナはため息をついた。
「あいつら、俺に確認くらいしろよ……」
同じくそれを見ていたキリトは苦笑し、シノンはギリギリと歯軋りをした。
「やっぱりあいつはGGOでもモテるんだな」
「あの二人……ずるい……」
シノンは決勝では、絶対に自分も同じような条件をシャナに突きつけようと心に誓った。
「でもあいつ、アスナに怒られたりしないのかな……」
そう呟いたキリトに、シノンは普通にこう答えた。
「それは大丈夫よ、明日奈や小町ちゃんもGGOにいるから」
「ええっ?そうなのか?」
「うん」
「ど、どこにいるんだ?」
「えっと、今は多分、ヴァルハラ・ガーデンでこの大会を、
仲間達と一緒に何食わぬ顔で観戦しているんじゃないかしらね」
「そんな事まで知ってるのか……」
そう驚くキリトに、シノンはあっけらかんと言った。
「だって私もヴァルハラのメンバーだもの、副団長様」
「………え?」
「言っておくけど入団試験は既にクリア済よ、弓ももらったわ」
「まじかよ……ハチマンの奴、俺にいくつ秘密を作ってるんだ……」
「別に秘密じゃないわよ、名簿にはもう私の名前が載っているはずなんだけど……」
「…………こ、今度ちゃんと確認しておくわ」
「うん、そうして」
そしてキリトは、続けてシノンにこう尋ねてきた。
「もしかして他にもここにうちのメンバーがいるのか?」
「ええ、え~っと、薔薇さんがロザリアさんで……」
「あいつもいるのか、まあ当たり前か、あいつはハチマンのお気に入りだからな」
「明日奈がシズカで、小町ちゃんがベンケイ」
「源氏物語かよ!」
「……源平合戦の間違いじゃなくて?」
「そ、そう言いたかったんだよ、ちょっと呂律が回らなかっただけだ!」
「呂律ねぇ……」
シノンはそう言ってクスクス笑いながら、説明を続けた。
「後は雪乃がニャンゴローで……」
「はぁ?ユキノまでいるのかよ」
「そして最後に、ヴァルハラのメンバーじゃないんだけど、
何て名前だっけな……あ、そうだ、ネズハだ、ネズハ君がイコマ君」
「え?」
キリトはその説明に呆然とした後、猛然とシノンに詰め寄った。
「まじかよ、ネズハがここにいるのか?」
「うん、この大会が終わったら、きっと感動の再会が待ってるわよ」
「そっか、そっか……」
そしてキリトは突然ぽろぽろと涙をこぼし始めた。ここでは涙は我慢出来ないのだ。
「……そんなに嬉しい?」
「おお、あいつはある意味俺達の命の恩人だからな、今直ぐにでも会いたいよ」
「そう……本当に良かったね」
シノンはそう言って柔らかく微笑んだ。そして二人は再びモニターへと視線を戻した。
予選の最中、クリスハイトは一度トイレに行くと断ってALOからログアウトした。
そして目覚めた菊岡は、ナツキに尋ねた。
「さて、こっちのモニターだと何かめぼしい情報はあったかい?」
「菊岡さん遅いですよ、こっちは上へ下への大騒ぎだったんですから!」
「え、一体何があったの?」
「どうやらあの死銃ってプレイヤー、元ラフィンコフィンの赤目のザザって人らしいですよ」
「…………えっ?」
「公安に問い合わせたところ、元々一時的な監視措置だったから、
現在は監視対象から外れているとか」
その説明に菊岡は絶句した。
まさかここでその名前が出てくるとは想定の範囲外だったからだ。
「分かった、任意同行をかけよう。こういう時に頼りになるのは……相模さんか」
そして菊岡は自由を呼び出そうとしたのだが、帰ってきた答えは有給中との事だった。
「このタイミングで有給?まさかな……」
菊岡はいぶかしみ、直接自由に連絡をとった。
「もしもし、菊岡ですが……」
「おお、菊岡君、何かあったのかい?」
「えっと、つかぬ事をお伺いしますが、今はどちらに?」
「今は眠りの森という施設にいるよ、まあガードマンみたいなものかな、はっはっは」
その自由の鷹揚な答えに事情を察した菊岡は、それならいいんですと言って電話を切った。
(相模さんは八幡君の指示で動いてもらった方がいい結果が出る気がする)
菊岡はそう思い、改めて本庁に連絡を入れ、新川昌一と金本敦への任意同行の依頼をした。
(単独犯とは思えないからね)
「とりあえず僕は中に戻るから、新しい情報が入ったら回線を切断して呼び戻してくれ」
「分かりました」
そして菊岡は、再びALOへとログインした。
菊岡が戻った時、ヴァルハラ・ガーデンも上へ下への大騒ぎだった。
「っていうかこれって銃で戦うゲームじゃないのかよ!みんな剣を使ってるじゃないかよ。
特にキリトだ。あいつ、ゲームを間違えてるんじゃないのか?
何で銃を使うそぶりがほとんど無いんだよ」
「それはキリト君だからとしか……」
その言葉と同時にその場にいた全員がうんうんと頷いた。
この辺り、キリトに対するそういった方向への信頼度は抜群であった。
「まあキリの字がそんな器用に立ち回れるはずもないよな」
「剣は器用に使うんですけどね……」
「そもそも銃の弾を斬るって何?意味分からないんだけど」
「キリトって絶対人類じゃないわよね……」
「じゃあ何?」
「ロボット?」
「ロボトですね、ロボト」
それをキッカケに、キリトの改名候補が検討され始めた。
「メカトでもいいかもしれないわね」
「私はデジトを押します!」
「ちょっと機械方面に偏ってない?」
「弾を斬るからキリト?あっ、変わってないや」
「もうめんどくさいな、変だからヘントでいいよヘントで」
そんな会話の最中に、シャナとハチマンの二回戦が順に行われ、
それを見ていたヴァルハラフレンズは一斉に固まった。
「あれ、どっちも本物……?」
「いやいや、素早く入れ替わったのかもよ?」
「そんな暇あったかあ?」
「いや、でもあのカウンターは……」
しかしいくら考えても答えは出なかった。
「ああ、もう訳が分からねえ、一体あいつは何がしたいんだよ!」
「秘密主義もいい加減にしなさいと」
「あと最近モテすぎ」
「とりあえず今度ここに顔を出したら全員でボコるしかないわね」
「賛成!賛成!」
クリスハイトはそんな光景を見て、この仲間達と一緒なら、
何も心配する事は無いんじゃないかと安心してしまう自分がいる事に気が付いた。
(いやいや、ここは僕が気を引き締めないと……この仲間達を守るためにもね)
クリスハイトはそう思い直し、何か新しい情報が得られないかと画面を注視するのだった
ちなみにスネークは、既存のキャラの誰かではなく、
特に重要なキャラではありません、ぶっちゃけただの数合わせですので!