ハチマンくんとアスナさん   作:大和昭

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第412話 普通の人?

 GGOからログアウトした八幡は、休む前にそのままアイとユウの下へとログインした。

 

「アイ、大丈夫か?」

「八幡……ええ、大丈夫よ。別に疲れたとかそういうのじゃないしね」

 

 そう言いながらもアイはよろよろと立ち上がり、家に向かおうとしたが、

足の震えは一向に治まる気配が無かった。

それを見た八幡はアイを抱え上げ、家の中に向かうと、アイをベッドに横たえた。

 

「体が疲労する事は無いが、かなり精神が疲弊したみたいだな、まあゆっくり休め」

「うん、そうさせてもらうわ」

「そんなに俺のプレッシャーはきつかったか?」

「ええ、とっても」

「自分じゃ分からないからな……」

 

 気が付くとアイは寝息をたてており、八幡はアイをそのままにし、家を出た。

丁度そこにユウが戻ってきた。

 

「八幡!」

「おう、ゼクシードと一緒に観戦してたのか?」

「うん、凄かった!あ~あ、ボクも出たかったなぁ……」

「悪いな、この大会が終わってある程度真実が解明されたら、一日一緒に遊んでやるからな」

「本当に?やったぁ!」

 

 ユウは無邪気にそう喜び、そんなユウに、八幡はアイに付いていてくれと頼んだ。

 

「あ、やっぱりアイは疲れてたんだね、見ててかなり無理してるなって思ったんだ」

「そうなのか、よく分かったな」

「まあ双子だし?」

 

 八幡はそのユウの言葉を受け、その顔色を伺うようにユウに尋ねた。

 

「…………アイは本戦に出場させない方がいいか?」

「あ、違う違う、そういうのじゃなくてね、やっぱり慣れない体っぽかったから、

動くのに苦労してるなって、その分疲れたんじゃないかな」

「なるほど」

「でも最後の方は慣れてきたみたいだったから、本戦だともう少しまともに動けると思うよ」

「まともに……な」

 

 八幡は、あれはまだ本気じゃ無かったのかと思い、

本戦では気を付けないと俺もやられるかもしれないなと気を引き締めた。

とにかくシャナとハチマンでは、ステータスの高さが段違いなのだ。

 

「まあとりあえずユウはアイに付いていてやってくれ、

本戦の時間に間に合うように起こしてやってくれよ」

「うん、分かった!」

 

 そしてユウは家の中に入っていき、八幡はそのままゼクシードの下へと向かった。

 

「よぉ」

「おう、シャナ、お疲れ」

「予選は見てたか?」

「ああ、今回の大会はお前の身内ばかりでうざったいったらありゃしない」

「個々の実力もかなり上がってるから、まあそうなるだろうな」

「くそっ、俺が出れていれば、その枠を一つ減らしてやったんだが……」

「まあ次の大会で頑張ればいいさ」

 

 そう八幡に言われたゼクシードは、複雑な顔をした。

 

「次の大会か………。なぁシャナ、俺の体は元に戻るのかな?」

「正直俺には医学の事はよく分からん……」

「そうか……」

 

 そんなゼクシードに、シャナは淡々とこう言った。

 

「でも治すさ、もし障害が残ったりしても、その時はうちの会社で雇ってやるから、

この空間で仕事をすればいい」

「…………うちの会社?」

「ああ、ソレイユだな」

「ソレイユ?ああ……そういえば戦争の時、妙にソレイユが関わってきてたっけな……」

「まあそういう事だ、といってもお前の稼ぎは、

全部お前の医療費に消えちまうかもしれないけどな」

「…………社畜決定か」

「ちゃんと治らなかったらの話だからな」

「まあなるべくそうならない事を祈るが…………色々ありがとな」

 

 ゼクシードはそうデレた事を言い、シャナは思わず後じさった。

 

「…………何だよ」

「いや、お前に素直に感謝されるのにはまだ違和感がな」

「馬鹿野郎、この状況でまだ突っ張るような馬鹿は、もはや人間じゃねえよ」

「違いない」

 

 そしてシャナは、大会の話をゼクシードに振った。

 

「で、大会を見た感じどう思った?」

「闇風が強くなってやがった、正直今度やりあったら勝てる気がしない」

「これまた妙に素直なんだな」

「あくまでの今のままならって事だ、絶対にまた上をいってやるさ」

「そうか、まあ頑張れ」

 

 そしてゼクシードは、他にも色々なプレイヤーの話に触れた後、ぼそっと言った。

 

「だが一番気になるのは…………シュピーゲルがいなかった事だな」

「ん、そういえば見た記憶が無いな」

「あの野郎、一体どうしちまったんだ」

「一緒に申し込みをしたんだったか?じゃあその後にキャンセルしたんだろ。

何か急用でも出来たんじゃないのか?」

「くそ、それじゃあ俺は誰を応援すればいいんだ」

「まあ見てるうちに誰か気になる奴も出てくるだろ、

せっかくの大会なんだ、お前も観客として楽しめよ」

「…………おう」

 

 その時遠くから声がして、二人はそちらの方へ振り向いた。

 

「ゼクシードさん、約束通り来ましたよ~」

「一緒にBoBを観戦しましょう!」

「ユッコ、ハルカ……」

 

 どうやら予選中に二人が来ていたらしく、二人はゼクシードに駆け寄り、

横に八幡の姿を見つけ、八幡にも普通に手を振ってきた。

 

「それじゃあゼクシードの事、頼むわ」

「あ、うん、あんたもその……大会頑張って」

「こ、今回に限り応援してあげるわ」

「おう、ありがとな」

 

 八幡は手をひらひらすると、三人に背を向けた。

 

「ゼクシードさん、お茶くらい入れられるようになりました?」

「思ったより元気そうですね、ささ、私達をもてなして下さいよ」

 

 そんな声が聞こえ、八幡は微笑を浮かべながらそのままログアウトした。

 

「さて、少し休むか……」

「参謀!本戦出場おめでとうございます!」

「八幡君、おめでとう!」

「フン、まあまあだな」

 

 戻ってきた八幡に気が付き、三人がそう声を掛けてきた。

 

「そういえばさっき、私に菊岡君から電話がありましたぞ、参謀もお知り合いですよね?」

「菊岡さんが?一体何の用事で?」

「いや、何をしているのか聞かれたんで、正直にここにいると答えたら、

それならそのままでいい、と」

 

(…………何だ?一応確認するか)

 

 そう思って携帯を取り出すと、そこには菊岡からのメールが入っていた。

 

『赤目のザザがキリト君の前に姿を現したよ、どうやら大会に出場してる中の誰かみたい。

一応任意同行を掛ける為にザザとジョニーブラックの下に人員を派遣済み、

そっちもくれぐれも注意してね』

 

「赤目のザザが……?」

 

 その言葉に対する自由の反応は激烈だった。

 

「さ、参謀、今何と?」

「あ、ああ、あの大会メンバーの中に、赤目のザザがいるかもしれないらしい。

もちろん予選落ちした可能性もあるが、一応警察の人員を家に向かわせたそうだ」

「なるほど……さっきの電話はその連絡でしたか」

「おっさんは行かなくていいのか?」

「まあそれは私の仕事じゃないですからな、上があまり出しゃばるのも良くないですしな。

今日は私はここで大人しく参謀を守る事に専念しますぞい」

「そうか、だが何かあったら直ぐ動けるように準備だけはしておいてくれ」

「分かりました」

 

 そして八幡は、清盛に状況を尋ねた。

 

「じじい、検査結果は出たか?」

「そろそろのはずなんじゃが……」

「まあ焦っても仕方ないか、それじゃあ俺は少し横になるから、

時間になったら起こしてくれ……あ、いや、やっぱりいい。めぐりん、起こして下さい」

 

 八幡は清盛にそう頼みかけ、直ぐに訂正してめぐりに起こしてくれるように頼んだ。

 

「うん、分かった、任せて!新妻みたいに優しく起こすからね!」

「あ、は、はい……」

 

 そのやり取りに、当然清盛が抗議した。

 

「何で儂に頼まないんじゃ!」

「起きて直ぐに死にかけのじじいの顔を見たら、俺が驚いて心臓麻痺とかになっちまうだろ」

「何じゃと!儂はまだまだ若いわい!」

「めぐりんと比べて自分が俺を起こすのにふさわしいとでも言うつもりか?」

 

 清盛はめぐりの顔を見て、その癒しのオーラを感じたのか、気まずそうに言った。

 

「ぐ、ぐぅ、さすがにそこまで恥知らずな事は言えんわい」

「まあそういう事だ」

 

 そして八幡はごろんと横になり、直ぐに寝息をたてはじめた。

 

「八幡君、早っ!」

「こいつもこいつなりに疲れていたのじゃろうな」

 

 

 

「キリト君、お帰り」

「ナツキさん、菊岡さんは?」

「さっき一度戻ってきて、色々と手配した後、またヴァルハラ・ガーデンに戻っていったわ」

「手配?ああ、もしかしてもう、ザザ関連の手配を?」

「ええ、任意同行を掛けるそうよ」

「さすがですね、動きが早い」

 

 そしてナツキは、和人に赤目のザザの事を尋ねた。

 

「ねぇキリト君、その赤目のザザってどんな人なの?」

「ザザはレッドプレイヤー、いわゆる好んで殺人を犯すプレイヤーです、いや、でした」

「……そうなんだ、それじゃあ今回の事件の犯人も?」

「まだ分かりませんが、その可能性は高いと思います」

「でもどうやって?」

「まだ分かりませんが、俺と八幡が必ず暴いてみせます」

「……うん、バックアップは私達に任せて!」

「はい!」

 

 そしてナツキは気を取り直し、大会の事に触れた。

 

「それにしてもキリト君、剣で銃の弾を斬るなんて、本当に人間?」

「ひどいなナツキさん、人間ですって!それにあれは、正確には弾を斬ってるんじゃなくて、

弾が飛んでくる予兆を知らせる赤い光線が飛んでくるんで、

そこに剣筋を合わせているだけなんですよ、だから当然現実であんな事をするのは無理です」

「……飛んでくる光線に剣を合わせる?」

 

(それって別に難易度は変わらないんじゃ……)

 

 ナツキはそう思い、キリトを生暖かく見つめながら言った。

 

「でもキリト君、連射された弾も全部斬ってたわよね」

「ええ、まあ……」

「ああいう銃で、弾と弾が発射される間隔ってどれくらいか知ってる?」

「えっと…………」

「ダダダダダダダダダ」

 

 ナツキがそう言い、その声に合わせて手を振った。

 

「この早さで的確に光に剣を合わせるですって?」

「あ、いや……何かすんません」

「分かってくれたみたいね、絶対に普通の人には無理だからね!」

 

 そう言われた和人は、親友の名前を引き合いに出した。

 

「あ、でも八幡なら多分いけます!」

「そうなの?」

「ええ、なので普通の人でも多分……」

「ふ~ん」

「あ、いや……」

「ふ~ん、普通ねぇ……」

「ごめんなさい、あいつも普通じゃないですよね……」

「分かればよろしい」

 

 そしてナツキは明るい声で言った。

 

「それじゃあ休憩しましょっか」

「はい、あ、その前に八幡に連絡を……」

 

 そう言って和人は八幡に電話を掛けたが、八幡が寝ていた為に繋がらなかった。

 

「繋がらないな、メールでもしておくか」

 

 そして和人は少し考えた後、携帯にこう打ち込んだ。

 

『GGOにザザがいた。情報の刷り合わせをしたい、本戦で落ち合おう』

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